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税制(庶民増税・徴税), 財政(予算・公共事業), その他

2003年02月25日 第156回 通常国会 予算委員会≪公聴会≫ 【190】 - 質問

公述人に法人税と社会保障負担の国際比較について、観光産業に対する支援のあり方を質問

 2003年2月25日、予算委員会では、2003年度予算に対する公聴会が、午前と午後に開かれました。
 午後には、水野忠恒一橋大学大学院法学研究科教授、加藤出東短リサーチ株式会社取締役チーフエコノミスト、山下和彦関西経済連合会理事・文化交流委員会委員(観光集客産業検討会座長)、侘美光彦立正大学経済研究所長・東京大学名誉教授の4人の公述人が意見を述べました。

 日本共産党から、佐々木憲昭議員が質問にたち、午後の公聴会では、水野公述人にたいし法人税の国際比較の在り方や法人の負担率を考慮した法人税の国際比較の考え方を聞き、山下公述人にたいし、観光産業振興のための政策対応について意見を求めました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。きょうは、公述人の皆さん、大変御苦労さまでございます。
 まず水野公述人にお伺いしますけれども、法人税の引き下げ効果というものが実際にはあらわれてこなかった、税負担だけで国際比較をした上で引き下げる、そういう見方が正しくなかったといいますか、効果のない判断であったというふうにおっしゃっておりまして、私もそのように思うわけであります。国際化されたような状況のもとでの大企業の世界戦略の中で、各国の税制というのは既に組み込まれている、こういうお話でございました。
 同時に、私は、法人税を考える場合、単に税だけではなくて負担率というようなことも念頭に置く必要があるのではないか。つまり、社会保障の負担率などは、ヨーロッパと比較する場合には日本は比較的低い、統計上そういう数字が出ておりまして、実質的にいいますと、日本は、そういうものも含めますと、法人の税、社会保障の負担、全体としていいますと決して高くはなかったということがありますので、前提そのものが少し違っていたのではないかというような感じもいたしております。その点はどのようにお考えでしょうか。
○水野公述人(一橋大学大学院法学研究科教授) 水野でございます。いろいろ御指摘ありがとうございます。
 法人税の引き下げの問題、これは前にもお話ししましたので、ここではもうこれ以上申し上げませんが、国際比較の点につきまして先生がおっしゃってくださいましたように、企業というのはやはり非常にいろいろな戦略を練ってやるわけですので、特に多国籍企業でありましたらそのようなことは日常的に行われているわけですので、各国の法人税の税率だけを並べて比較しても余り意味はないということ、これは私が申し上げたんですが、先生も賛同いただいて、ありがたく思います。
 それで、負担率の問題ですが、確かにこれも、なかなか、我が国の場合にはこれは出せると思いますが、外国のも出てきたりいたしますので、この法人の負担率、いわゆるすべて、国のGDPに占めて大体どのぐらいであるという、個人所得税から始まって、法人税、消費税といったような形で統計などをとったりすることも見られますので、そういうものを活用することに意味があろうかと思われます。確かに、先生がおっしゃいますように、それによって日本の法人が実際にどのぐらい負担をしているのであろうか、これは全体としてしか出てまいりませんけれども、そういう形で一つの法人税のあり方というものを考えていくということ、これは非常に大事なことでありますので、私もちょっとこの点にはこれから留意したいと思います。
 どうもありがとうございました。
○佐々木(憲)委員 山下公述人にお伺いをいたします。
 観光産業のお話でありまして、私も各地の観光産業の関係者の方々とお話をいたしましたり、あるいはシンポジウムなどにも参加してまいりまして、おっしゃったように、観光産業そのものをどのように国、自治体が位置づけるかということは大変重要だと思っております。同時に、それを発展させていくためには社会全体との関係というものをどう位置づけるか、これが非常に大事だと思います。
 例えば、ヨーロッパと日本を比較いたしますと、ヨーロッパの場合にはバカンスというのがある、それに対して日本は有給休暇もなかなかとれない、こういう差がございます。それから、ゆとりといいますと、これは時間的なゆとりだけではなくて所得の上でのゆとりがなければならない。こういうことをいろいろ考えますと、最近のデフレ状態、不況の深刻化という状態の中では、なかなか観光産業自体を発展させていく前提が整っていかないといいますか、そういう意味では、国の政策全体、経済、景気政策全体というものが大変重要になってくる。それから、国民の、働く側のゆとりをどうつくるか、これももう一つの観点として大変重要ではないかというふうに考えております。
 その上で、国の予算の面でありますが、国際比較をなされまして、日本は極端に少ないと。私も全くそう思いまして、これは予算をふやすべきだと思います。その上で、例えば具体的にどういう面で財政的な措置をとればいいのか。税制上の問題もあるでしょうし、それから地方自治体の場合には、観光地の自治体というのは、例えば水道にしろ、あるいはごみ処理にせよ、普通の自治体と比べますと、外から来るお客さんが多いわけでありまして、それだけ負担が重いんですね。そういうものに対する例えば交付税上の措置をふやすとか、あるいは補助金をどうするとか、いろいろあると思うんですけれども、この点での予算上、財政上の観光産業あるいは自治体に対する支援というものをどのように求めておられるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
○山下公述人(関西経済連合会理事・文化交流委員会委員(観光集客産業検討会座長)) 今、先生の御指摘の前段の問題は、これはむしろ日本人のマインドの問題とか余裕の問題とかということでありますので、我々が今わいわい言っておりますのは、外からお客さんをどう持ってくるかという論議を詰めておるわけですから、それはちょっとおいておいていただきまして、外からどうして入りやすいように構築するかというところが大事なところだろう、第一点に関しましてはそういうふうに思います。
 第二点に関しましては、非常に難しい問題であります。観光立国というか観光日本をどう売り出すかということは、一つにはやはりおのおののメニューがしっかりしていなきゃいけない。それをどういうふうにサポートすればいいか、あるいはサポートしてほしいかというような実態をピックアップしまして、それに検討を加えなきゃいけないだろう。そして、ドレスアップもしなければならない。今我々の持っていますストックで一番強いのは、やはり歴史、古都遺産でありますけれども、これも、それだけにおぶさっておってはいかぬ、なおかつそれもドレスアップをしなきゃいかぬだろう。
 最近、歴史遺産ということで、恐らく来年は、今度は高野山と熊野古道が世界遺産に認定されるというようなこともありますが、そういう発掘もやはり一方ではメニューとして考えていって、世界に向けて提言をしていくというようなことも必要でありますし、そういうことを今度はどういうふうにPRしていくのが一番効果的なのか。
 考えてみてください。4、5年前に金大中さんが、あれは三カ月間、観光コマーシャルに出演をいたしました。あれは日本だけじゃございませんで、中国とアメリカとEUと四カ所に向かってやっているわけです。国を代表する大統領がその国の観光コマーシャルに出演をしているわけですね。やはりそういうPRということも今度はメニューに合わせて必要であろうかと。
 では、それにはどれぐらいお金がかかるのか、そしてドレスアップにはどれぐらい、インフラの整備にはどれぐらい、研究開発にはどれぐらいお金がかかるんだというふうなことを全部精査して積み上げていきながら、財界が担当すべきもの、そして自治体が担当すべきもの、国が担当すべきものというようなものを、お互いに寄り合いながら、意見を出し合いながらやっていかなければならない。
 私は、さっきお話が出ておりましたけれども、アメリカの大恐慌、このときに、時のフランクリン・ルーズベルト大統領の例のニューディール政策の中で最も効いたのはやはり文化支援だったというふうに承知しております。これによってニューヨークのマンハッタンのフォーティセカンドストリートはあそこで完成するわけですね。世界に向かって、エンターテインメントの町をついにパリからニューヨークに奪取するわけですね。しかも、ハリウッドがそこからできるわけです。世界の映画の都がそこからできてきた。これによって、アメリカ人は首を垂れておったのが上へ上げてくるわけですね。
 このマインドコントロールというのは、こういう景気支配について非常に重要な要素になりますから、金融政策も財政政策もいろいろ大事だとは思う、私はわかりませんから、そのところは。したがって、わかるところを申し上げているのは、マインドを上げないかぬ、そのためにどうすればいいかということも、財政政策、金融政策と同じように考えていただかなきゃいけないんじゃないかというふうに考えております。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。

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