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財政(予算・公共事業), 景気回復, 医療・介護・年金 (予算案)

2003年02月25日 第156回 通常国会 予算委員会≪公聴会≫ 【189】 - 質問

公述人に社会保障給付と公共事業のあり方、景気と家計消費の関係を質問

 2003年2月25日、予算委員会では、2003年度予算に対する公聴会が、午前と午後に開かれました。
 午前中には、伊藤隆敏東京大学先端科学技術研究センター教授、正村公宏専修大学名誉教授、長谷川聰哲中央大学経済学部教授、中西啓之前都留文科大学教授の4人の公述人が出席し、意見を述べました。

 日本共産党推薦の中西啓之都留文科大学前教授は、中低所得層への負担増の再考など所得税制の問題、社会保障給付のGDP比が欧米と比べ低い現状、庶民の暮らしと結びついた公共事業への転換、地方財政の状況と市町村合併などについて意見をのべました。

 日本共産党から、佐々木憲昭議員が質問にたち、中西公述人にたいし、社会保障給付についての考え方や、福祉的・地域密着型の公共事業についての見解を求め、伊藤公述人にたいし、GDPの6割を占める個人消費についての認識をたずねました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、質問がなかなか順番が回っていかない中西参考人の方からお伺いをしたいと思います。
 先ほどの意見の陳述の中で、公共事業と社会保障の関係についてお触れになるはずであったと思うんですけれども、この社会保障給付の問題について触れる時間がなかったんだと思うんですが、この部分の説明を一つはお願いをしたいなと思っております。
 それから、大型公共事業の問題点についてお触れになりましたが、公共事業の中にもいろいろな種類があると思います。その中で、特に、福祉的な公共事業といいますか、あるいは地域密着型といいますか、これの雇用ですとか、あるいは中小企業に対する波及的な効果というのは私は大変大きいと思うんですけれども、公共事業の内容の問題についてどのようにお考えか、この二点についてまずお伺いしたいと思います。
○中西公述人(前都留文科大学教授) 社会保障給付について少し時間がなくて飛ばしたわけでございますが、先ほども御発言がありましたけれども、各国の社会保障給付のGDP比は、これは1988年から99年の資料、2002年11月の「世界の社会福祉年鑑」によりますと、日本の場合14・6%、ところが、イギリスは26・9%、イタリアは25・3%、ドイツは29・6%とか、さらに30%を上回っている国々もございまして、GDP比にして日本は先進国の大体半分という現状であります。
 これが問題は、社会福祉とか社会保障の現場でどういう問題を引き起こしているかということが問題になるわけですが、これは非常に複雑でありまして、一言で言うことは難しいわけですが、一つは、底辺で働く福祉の労働者の非常に劣悪な労働条件をつくり出しているわけであります。
 先ほど、正村先生が、オランダにおけるパート労働のことをちょっと出されましたが、日本で社会福祉労働というのは圧倒的にパート労働者によって行われているわけですが、オランダにおけるパート労働について、時間差による労働差別禁止法という法律がつくられていまして、基本的に同じ質の労働であれば、正規の職員と時間当たりの単価賃金は変わらない、こういう状況をつくり出しております。したがって、労働の形態というのが非常に多様でありまして、圧倒的にパート労働が多いけれども、働いている人の疎外感というのはない、なおかつ、報酬としても非常に劣悪というわけではないという状況がございます。
 それと、もう一つ非常に重要な点は、この社会福祉の水準が非常に高いということでありまして、私が訪問いたしましたロッテルダムの老人福祉施設で、例えば、重度の高齢者に対して職員を、今は二人に一人だけれども、これを一対一に今後変えていきたいと。なおかつ、その一部屋の面積が53平米ございました。これはもう私にとって大変な驚きでございまして、つまり、社会保障給付の額や率の違いというのが福祉の水準の違いを生み出しているということが非常に重要ではないかと。
 こういう点で我が国は非常におくれているわけでありまして、これを計画的にどういうふうに引き上げていくかという、これはやはり福祉労働者の労働条件の改善ですね。これは厚生労働省にぜひ頑張っていただきたいということが一点であります。
 それから、二番目の御質問でありますが、私が申し上げたかったのは、これまで高度成長期に、高速道路であるとかあるいは新幹線であるとか、そういう大型公共事業について非常に大きな財源を投下してきたと思うわけですが、しかし、現状では、それが緊急を要しない大型公共事業に非常に大きな金がかかり過ぎているんじゃないか、こういう意味でございまして、そういう点では、例えば今非常に深刻なのが、老朽化した住宅をどうするかとか、あるいは住宅の改修をどうするかとか、これは、新築の住宅がどんどん今建設されております。これはもう明らかに過剰投資になっていくわけでありまして、そうじゃなくて、実際の生活で非常に深刻化している老朽化住宅をどういうふうに補修するかというふうな、ここのあたりにもっと目を向けていくならば、これは、庶民の暮らしの向上と公共事業投資というのが結びつくわけです。
 それで、御参考までに申し上げておきますと、オランダのアムステルダム市の住宅の8割は公共住宅です。プライベートな住宅は2割です。この公共住宅の家賃は極めて低廉であるということを申し上げて、御参考に供したいと思います。
○佐々木(憲)委員 それでは、伊藤公述人にお伺いをしたいと思います。
 先ほどのお話では、デフレスパイラルに既に入っているんではないかと、こういう御認識でございました。特に、消費、投資が冷えて、総需要が不足し、さらにデフレが加速しと、こういういわば悪循環のような状態になっている。私は、この中で特に、全体としての総需要をどのように拡大していくかというのが視点として非常に大事だと思うわけでありますが、伊藤公述人は、この中で、とりわけ、GDPの約6割近くを占めます個人消費の位置づけ、家計消費の位置づけ、これをどのような位置づけをされておられるのか。
 お話を聞きますと、それも重要であるという感じも受けますし、また、場合によってはこの負担もやむを得ないというような感じも受けますし、その点の位置づけといいますか、私は、個人消費というのは非常に大事な分野で、これこそまさに、今政府が挙げて刺激をしっかり与える、支えるといいますか、そういうことが大事だと思っておりますので、その点の御認識をお伺いしたいと思っております。
○伊藤公述人(東京大学先端科学技術研究センター教授) もちろん、GDPの中の60%を占める個人消費というのは非常に重要なところで、ここが刺激されなければ、最終的にGDPの成長というのはないというふうに思っております。
 したがって、消費を促進するような方策というものが重要で、その中で、やはり一番重要なのは不安感をなくすということで、将来に対する不安感、あるいは、経済システムあるいは銀行システムに対する不安感というものをなくすることによって、安心して消費ができる、安心して広いうちを買う、家具を買うといったものに結びついていくような、それを少し後押しするような政策が重要ではないかというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 個人消費の問題でいいますと、税制というのは非常に重要だと思うので――もう時間が来ました。ちょっと一点だけ、済みません。
 中西参考人に、先ほど、直接税というところの、特に最高税率の引き上げのお話をされましたが、間接税の部分も含めて、全体の税のあり方といいますか、簡潔に、どういうふうにお考えなのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。
○中西公述人 私は、先ほどの正村先生の御発言とちょっと共通したところがあるわけですが、消費税の引き上げについては、非常に国民のいわば反感といいますかアレルギーといいますか、そういうものがございます。
 それで、ヨーロッパで消費税が非常に高いと言われますけれども、食料品は実は非常に低いわけですね。オランダでいいますと、6%据え置きで、その他は19・5%と、これは非常に高い。高いけれども、食料品や住居とか生活必需品は安い。イギリスなんかでも、ゼロ税率とか、あるいは、イタリアのように4%とか1%とか、そういうふうな、つまり生活必需品には税率を低くして、例えば奢侈品であるとかそういうものには高くするというふうなやり方をとっているわけですね。ここは、私は大いに研究する必要があるんじゃないかというのが一点ですね。
 それで私は、消費税の問題というのは避けて通れない問題だとは思いますけれども、しかし同時に、所得税の最高税率をこれだけ引き下げてきた、こういう経過があるわけで、ここをいじらないことには国民はちょっと税制改革について納得しないんじゃないかということで、ここが先だろうというのが私の意見です。
○佐々木(憲)委員 わかりました。

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