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金融(銀行・保険・証券) (不良債権処理, 金融機関の破綻)

2003年06月11日 第156回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【210】 - 質問

りそな前社長・新日本監査法人理事長への参考人質疑 大口融資が経営難を招いた

 2003年6月11日、財務金融委員会で、りそな銀行への公的資金投入問題について、午前は参考人質疑、午後には政府に対し質疑が行われました。
 りそなホールディングス勝田泰久前頭取社長、新日本監査法人竹山健二理事長らを招致して参考人質疑が行われました。このなかで勝田りそな銀行前頭取は、佐々木憲昭議員の質問にたいし、関連ノンバンクなど特定の大口取引先に対する融資が不良債権化し、経営難の要因の1つとなった実態を明らかにしました。

 佐々木議員は、6月10日に公表されたりそな銀行の「経営健全化計画」のなかで、経営難に陥った要因の1つとして「関連ノンバンクも含めた大口取引先への与信リスクの集中が迅速に解消できなかった」「大口取引先への与信リスクの集中を抑制するために導入していたクレジットシーリング(与信上限規制)について、当面の収益の確保や顧客の信用面への配慮等から、結果として、制度の趣旨に沿った厳格な運用ができなかった面がありました」との記述があることに着目し、勝田前社長にたいし、大口融資先の具体的内容を明らかにするよう求めました。
 勝田りそな銀行前社長は、りそな銀行の要管理先以下債権1万1900社・2兆7000億円のうち、融資額30億円以上の大口取引先101社への融資が、要管理先以下債権の55%にあたる1兆5000億円にのぼること、業種としては、ノンバンク、建設、ビル管理を含む不動産業が大口先であることを明らかにしました。
 佐々木議員は、りそな銀行の資料によれば、要管理先債権の中小企業向け貸出の1件あたりの平均金額が、8億3000万円にのぼることを指摘し、「常識では考えられない金額だ。特定のところに巨額な金額が集中して、平均してこうなっていると理解してよいか」と勝田前社長にただしました。
 勝田前社長は、「そのように理解していただいて結構だ」と答弁しました。

 次に佐々木議員は、りそな銀行の経営難をもたらしたもう1つの要因である繰延税金資産の厳格化の経緯について、新日本監査法人竹山理事長、りそな銀行勝田前社長に事実関係をただしました。
 勝田りそな銀行前社長は、同行の繰延税金資産に対する監査法人の評価について、5月のゴールデンウイーク明けまで知らされていなかったと発言しています。これを受けて佐々木議員は、昨年11月に「竹中プラン」が繰延税金資産の厳格化を打ち出し、今年2月に公認会計士協会が会長通達を発出しているという一連の流れを指摘し、「なぜ3月、4月の時点で話がなくて、いきなりゴールデンウイーク明けになるのかというのが大変不思議に思う。(りそな銀行に対して厳格化の方針が)なぜ伝えられなかったのか」と、新日本監査法人竹山理事長にただしました。
 竹山理事長は、4月25日にりそなから正式な決算書を受け取り、5月5日に監査法人としての結論を出したと述べ、「唐突ということではなく、慎重に決議した結果だ」と答えました。
 これに対し佐々木議員は、2月には方針として出ていた繰延税金資産の厳格化が、なぜりそなにはきちっと伝わっていなかったのか、と重ねて竹山理事長に問いました。
 竹山理事長は、「我々としては、基本的には、決算数字をいただいて、そこで申し上げる」と述べつつ、「ただ、それをつくり上げる段階において、関与社員と会社とはそういう緊張感を持っていろいろな打ち合わせはなさったんじゃないか」と答弁しました。 

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは、5人の参考人の皆様、本当に御苦労さまでございます。
 まず、勝田参考人にお伺いをいたしたいと思います。
 昨日、経営健全化計画というのが発表されまして、ここに持っておりますけれども、この中で「旧経営陣の対応」という部分がございまして、これは3ページですけれども、その1のところに「与信リスク等への不十分な対応」、こういうのがあります。その中で「与信費用の増大については、関連ノンバンクも含めた大口取引先への与信リスクの集中が迅速に解消できなかった」「経営不振企業に早期に経営改善・再生を促す取組が不足していた」、こういうようなことを「反省すべき点があった」というふうに書かれております。「また、大口取引先への与信リスクの集中を抑制するために導入していたクレジット・シーリング(与信上限規制)について、当面の収益の確保や顧客の信用面への配慮等から、結果として、制度の趣旨に沿った厳格な運用ができなかった」、こういうふうに書かれているわけです。
 これは、これまでの経営の一つの問題点としてこの経営健全化計画の中で取り上げられているわけですが、この具体的な内容、例えば大口取引先の会社の数ですとか債務者区分別の債権額ですとか不良債権に占める比率ですとか、そういうのがわかりましたらここで報告をしていただきたいと思います。
○勝田参考人(株式会社りそな銀行前頭取) お答えいたします。
 まず、今総論で、増大する与信リスクあるいは与信費用の増大に対する経営のコントロールができていなかった、あるいはまた、いわゆるクレジットシーリングといいますか、りそな銀行としての年間の業務純益あるいは収益から見て、1社当たりあるいは1グループ当たりに対する与信限度額というものを決めておるわけでございますけれども、私自身が、過去の大和銀行あるいは過去のあさひ銀行もそうでありますけれども、業務純益を超えるくらいの大口融資の破綻によって銀行を傷めてきたという認識を持っておりましたので、早急に切りかえるべく、例えば、1社に1千億を融資するんじゃなくて、1千社に1億ずつ1千億を貸そうというようなことを支店長会議等々で諮ってきたわけでございます。
 そういった意味での過去からの切りかえといいますか、そういうものが十分でなかったという認識で、新経営陣も、そういったところを旧経営陣の問題として指摘したんだろうというふうに理解をいたしております。
 今佐々木議員の質問の中で、関連ノンバンクも含めた大口取引先への与信リスクの集中の具体的内容ということでございますけれども、現在、手元にきちっとした資料を持っておりませんけれども、私の方で把握しているざくっとした数字で申しわけないんですが、該当する大口取引先の社数、債務者区分別の債権額等でございますが、要管理先以下が、1万1900社、これはちょっと数字がアバウトでございます、約2兆7千億。30億円以上の与信先が、101社で1兆5千億、比率は55%でございます。
 それから、債務者区分別の件数、金額ということでございますけれども、これは破綻先、実質破綻先、破綻懸念先、要管理先、要注意先、正常先というふうに分かれるのでございますが、その全部を言えということでございますか。(佐々木(憲)委員「いや、この指摘されている中身について」と呼ぶ)
 それでは、破綻先ですと、約700件で650億程度、それから、実質破綻先で、2600件で1400億程度、破綻懸念先で、5100社で5200億程度、以上でございます。
○佐々木(憲)委員 今のお答えではちょっと具体的な中身が、全体的な数字のお話でありまして……。
 関連ノンバンクも含めた大口取引先への与信リスクが集中したと。関連ノンバンクというのはたくさんありますね。具体的に言うとどんな業種で、典型的な事例で言うと何があったんですか。
○勝田参考人 大体、3業種と言われます、ビル管理を含む不動産、それから建設、ノンバンク、こういったところが大口のところだと思います。
○佐々木(憲)委員 その中で、特に特定の企業に集中しているということがここで指摘されているわけですね。
 皆さんからお出しいただいた資料を見ましても、件数と金額の関係で、例えば要管理先の数字を見ますと、中小企業の中で1件平均で8億3千万円というふうになっているんですね。要管理先の一件当たりの平均がですよ。
 こうなると、中小企業に平均で1件8億というのは非常に大きな金額になるわけです。これは常識ではちょっと考えられない金額でありまして、つまり、特定のところに巨額な金額が集中しているんじゃないか、それで平均してこうなってしまう、そういう事実があるということで理解してよろしいですね。
○勝田参考人 そのように理解していただいて結構です。
○佐々木(憲)委員 今、大変重大な経営の実態がわかったわけですけれども、そのほかの破綻懸念先などを見ましても、あるいは破綻先を見ましても、中小企業という概念のその中で、1件当たりで計算しても、平均して大変な巨額の金額になるわけです。
 今おっしゃったように、特定のところに異常に集中して、それが経営に非常にマイナスの影響を与えた。しかも、そこを是正できなかったということがこの経営健全化計画の中で指摘されているわけでありまして、この点は、金融庁との問題も午後の質疑の中で私は取り上げていきたいと思っております。
 さてそこで、今回の公的資金注入のきっかけになりました繰り延べ税金資産の評価の問題であります。
 この点につきまして、勝田参考人は、5月の17日の記者会見で、5月に入って監査法人から突然厳しい言い渡しが行われて、非常に唐突な感じがあったけれども、大変厳しい交渉をやった、しかし、撤回が難しく、受け入れざるを得なかった、こういうふうにおっしゃっているわけです。
 そうしますと、4月の時点では、ある程度自己資本の水準は保てると考えていたというふうにおっしゃっているわけですから、4月までの監査法人からの話と5月になってからの話、これが大きく変わったというふうにおっしゃっているんだと思うんです。そういうことなんでしょうか。
○勝田参考人 委員御指摘のとおりでございまして、私自身が繰り延べ税金資産についての考え方の変更というものをじきじきに聞いたのは、5月の6日の新日本監査法人の来訪によって聞いたわけでございます。正確には、前の晩に財務部長から電話があって、事態の深刻さを伝えられております。
 しかし、私自身は、4月中にそういった問題については何ら聞いておりませんでした。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 4月の時点で監査法人との話し合いというのはあったんでしょうか。
○勝田参考人 私は、4月の3日に、このたび、監査人制度の変更といいますか強化といいますか、朝日監査法人、新日本監査法人の監査法人が約7名お越しになったと思いますが、私、経営者との懇談というのが4月3日にございました。これは、今後のホールディングスとしての業務運営、あるいはりそな銀行をどういうふうに運営するか、収益計画については預金の伸び、貸出金の伸びをどう考えるかというようなお話をさせていただいた記憶がございます。
 それ以外に、4月中、私は監査人との交渉は一切持っておりません。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、この繰り延べ税金資産の評価について、5月のゴールデンウイーク明けまでは全く知らされていなかったということであります。大変唐突な話だったと思うんですね、銀行側としては。
 個人的には、同じ会計年度でルールを変えるのはおかしいと思いますというふうに記者会見でおっしゃっています。物差しが変われば何を信用したらいいのかということになります、少なくとも変えるのであれば、理由と時期の明示と変えるまでの猶予期間が与えられないと事業が犠牲になりますというふうにもおっしゃっています。
 これは、つまり、従来の、昨年ぐらいまでの繰り延べ税金資産の評価の仕方と、いわば竹中プランが出されて、厳格な評価をすべきだという流れができて、公認会計士協会にそれが申し入れが行われ、それを受けて公認会計士協会としても対応する、そういう流れの中で出てきたというふうに思うんですが、私、不思議なのは、そういう状態でありながら、なぜ3月、4月の時点で話がなくて、いきなり5月のゴールデンウイーク明けになるのかというのが大変不思議に思うわけであります。
 そこで、竹山参考人にお伺いしますけれども、5月の時点で、ゴールデンウイーク明けにいきなりこういう形で出したというのが事の経過だというのはわかりました。なぜそういうふうになったんでしょうか。2月に既に公認会計士協会の会長の通牒というのが出されているわけでありますから、当然、それに沿って、こういう方向でいきますよ、従来どおりではありませんよというのは伝えてしかるべきでありますし、それがなぜ4月の末まで伝えられていなかったのか。
 その点についてお伺いしたいと思います。
○竹山参考人(新日本監査法人理事長) それでは、お答えいたします。
 御指摘の件でございますけれども、5月の5日は、あくまで新日本監査法人の最終結論を出した日でございまして、基本的には、正式に決算書を我々がいただいていますのは、4月の25日に、会社の方から決算案というのはいただきました。当然、4月の決算書の案をいただく前から、関与社員を含めて、あるいは審査会を含めて審査をずっと続けてきております。
 したがいまして、今おっしゃいました竹中プランでありますとか会長通達等、いわゆる繰り延べ税金資産自体の状況が、基本的に今の経済状況、何度か申し上げていますけれども、銀行を取り巻く経済状況が非常に厳しいので、それについて十分対応してほしいというようなメッセージでございまして、これは、会社であれ監査人であれ、両方に同じように共通に私は伝わっていたと思います。したがって、両者とも、監査法人も銀行も、この繰り延べ税金資産については相当な意識を持って臨まれたことだと私は思っております。
 私自身が、この結果、そして基本的な方法、今回言われておりますような方法でいくということを、責任者として、審査会から正式に私の耳に入ってきたのは5月1日の時点でございます。したがって、それまでの間、一番は、4月25日に決算書をいただきますから、それが最終的な銀行の決算の案でございますから、そこに繰り延べ税金資産の計上が具体的に出てくるということについて検討したということでございますから、唐突ということではなくて、むしろ慎重に決議した結果出した、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 勝田参考人にお伺いしますけれども、ゴールデンウイーク明けのこういう通知というのは、毎年こんなようなタイミングで行われるんでしょうか。昨年などはどうだったんでしょうか。
○勝田参考人 頭取として監査人とお会いするケースというのはことしが全く初めてでございまして、私は、企画部長あるいは企画担当の専務あるいは副頭取のときに、大体5月の15日前後に、監査人との間で監査報告会というのがございまして、そして決算承認をいただいて決算発表にまで行くわけでございまして、もう4月を超えて5月に入れば、通常であれば、私どもは、決算確定をして作業に入るというところでございます。
 以上、お答え申し上げます。
○佐々木(憲)委員 そうすると、今回唐突だとおっしゃったのは、通常のタイミングの唐突というよりも、繰り延べ税金資産の評価を変えるといいますか、より厳格になるということを知らされたのが非常に唐突な感じがした、こういうことですね。
○勝田参考人 そうでございます。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、繰り延べ税金資産の評価をより厳格にするという方向を、昨年の秋以来、金融庁それから監査法人の方もそういう方向を非常に強めてきている、すべての企業、銀行に対してそういう対応をしてもらう、こういう方針で監査法人は臨んできたと思うんです。
 竹山参考人は、そのことを「りそな」に対してどの程度伝えていたのか。内容については、5月に、ゴールデンウイーク明けに初めて伝えられたというふうに今勝田参考人はおっしゃっていますが、既に方針は2月の段階で皆さんのところに通達が出されているわけですから、これはもう確認、それを踏まえてやるということははっきりしているわけですね。
 なぜ4月までそういうことがきちっと伝わらなかったんでしょうか。
○竹山参考人 基本的には、私たちの今回の意見の表明は、平成15年3月末の決算の数字をもって意見表明するということでございまして、2月の時点に会長通達が出ておりますが、まだ我々自体は銀行の全体の財務内容はわかっておりませんし、したがって、それを銀行が固めて我々に御提示なさるものが4月25日であった。
 当然ながら、繰り延べ税金資産については、これは一般的によく言われていますように、不良債権の償却を加速すればするほど、日本の場合はそれがいわゆる損金算入にならないという仕組みがございまして、片一方でそれに見合う繰り延べ税金資産が膨れ上がるということで、特に金融機関を中心に、繰り延べ税金資産自体がこの2、3年、かなりの勢いでふえてきている。それは一方で言いますと、それだけ不良債権の償却が進んだ、こういう一体的な問題でございます。
 したがって、我々といたしましては、基本的には、決算数字をいただいて、そして、そこで申し上げる。
 ただ、それをつくり上げる段階において、関与社員と、あるいは会社とはそういう緊張感を持っていろいろな打ち合わせはなさったんじゃないかと私は思っていますが、私自身は、冒頭に申し上げましたように、責任者として、5月の1日にこういう決定になった、審査委員会、関与社員と十分煮詰めて答えを出しましたという報告を受けました。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。

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