金融(銀行・保険・証券) (不良債権処理, 金融機関の破綻)
2003年06月11日 第156回 通常国会 財務金融委員会 【211】 - 質問
りそな銀行による大口融資先の不良債権化 検査で是正できなかった金融庁の責任は重大
2003年6月11日、財務金融委員会で、りそな銀行への公的資金投入問題について、午前は参考人質疑、午後には政府に対し質疑が行われました。
佐々木憲昭議員は、りそな銀行による大口融資先に対する融資が不良債権化し、経営難の要因の1つとなった事実を指摘し、金融庁の検査・監督責任を追及しました。
この日午前の参考人質疑の中で、勝田りそな銀行前社長は、特定貸出先への異常な融資の集中が不良債権化したことを明らかにしました。これを受けて、午後の対政府質疑の中で佐々木議員は、りそな銀行の融資実態について、(1)中小企業向け融資の1件平均金額が、要管理先では8億3000万円、破綻懸念先では1億7200万円、破綻先で1億200万円となること、(2)要管理先以下債権の合計の会社数1万1900件、金額2兆7000億円のうち、融資額30億円以上の大口融資先が金額で55.6%を占める一方、件数では0.85%にすぎないことを示し、「非常に少数の会社に巨額の資金が貸し付けられていて、それが問題を起こしている」と指摘。
「こういう事実について、一体これまでの金融庁の検査では、その事実を掌握していたのか」と金融庁の対応をただしました。
伊藤達也金融担当副大臣は、「検査の子細な内容については答弁ができない」と答弁を拒否しました。
佐々木議員は、「検査で把握していなければおかしい。これを把握して是正措置を勧告しているのが当たり前だ」と重ねて金融庁の対応をただしましたが、伊藤副大臣は、「コメントできない」と事実関係を明らかにしませんでした。
佐々木議員は、「今まで検査は何度もおこなわれてきたのだから、是正されていなければならない」と述べたうえで、是正できなかったことがりそな銀行の「経営健全化計画」のなかに書かれていることを指摘し、「つまり、金融庁の検査がまともに機能していなかったことを証明している」と金融庁の対応を批判しました。佐々木議員は、「金融庁自身の反省はあるのか」とただしましたが、伊藤副大臣の答弁に反省の言葉は一切ありませんでした。
佐々木議員は、国民の税金2兆円を投入する結果を招いた原因を明らかにする必要があると述べて、不良債権化している大口融資先101社のリストを提出するよう要求しました。この要求については、取り扱いが理事会で協議されることになりました。
佐々木議員は、りそな銀行の繰延税金試算の変化をまとめた資料をこの日の委員会に提出し、小泉内閣の不良債権処理策が繰延税金資産を拡大させてきた事実を示しました。佐々木議員の資料によると、小泉内閣発足直前の2001年3月期には4792億円だった繰延税金資産が、2002年3月期では7092億円へと5割増になっています。都市銀行全体で見ても、4兆円から6兆円へと5割増です。
佐々木議員は、りそな銀行の有価証券報告書にもとづき、繰延税金資産の増加要因のうち、不良債権処理にともなうものが約半分を占めていることを示し、「繰延税金資産を増やす政策をとっていながら、大きいのはけしからんから厳正にして小さくしなければならないといって内部から締め上げていく。結果としてりそなの事態を招いたのは、どこから考えたって政府の政策によると言わざるを得ない」と小泉内閣の政策を批判しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
まず、りそな銀行の経営健全化計画の問題についてお伺いしたいと思います。
昨日この計画が承認をされて、2兆円近い公的資金が承認をされる、こういうことになっておりますけれども、この健全化計画そのものの位置づけについて、まず高木金融庁長官が、6月9日、記者会見で、この経営健全化計画に対して、審査の中で手直しされているというふうに述べました。これ、案を手直ししたという事実はありますか。
○五味政府参考人(金融庁監督局長) 申請をいただきました後で、私どもなりの、申請で示されました計画の内容なども審査をいたしまして、その過程で意見交換をいたしまして、「りそな」側で私どもの考え方なりを反映をしたもので、「りそな」として修正をした部分というのはあるというふうに承知しております。
○佐々木(憲)委員 これは金融庁の意見に基づいて手直しをしたということでしょうか。
○五味政府参考人(金融庁監督局長) 意見交換の中で「りそな」側が私どもの意見に同意をなさるような部分については、これが修正をされた部分があるということでございます。
○佐々木(憲)委員 それはどういう部分でしょうか。
○小坂委員長 五味監督局長、答弁できますか。
○五味政府参考人(金融庁監督局長) 承認をいたしました計画が計画ということでございますので、これが「りそな」側の計画ということで、「りそな」からも公表されておりますので、その審査のプロセスで具体的にどこがということは、これはちょっと答弁を控えさせていただきたいと存じます。
○佐々木(憲)委員 この経営健全化のための計画が承認をされたということでありますが、竹中大臣にお伺いしますけれども、大臣は、これは現経営陣が考えた計画である、新経営陣で新しいビジネスモデルに基づく計画は出してもらうと。つまり、一度承認した計画ではだめだ、もう一度出し直してもらう、こういう趣旨の発言をされていますけれども、そういうことでしょうか。
○竹中金融担当大臣 先ほども申し上げましたように、今回適用している預金保険法102条というのは、迅速に金融当局が対応することによって危機の到来を未然に防ぐ、そういう一つの、迅速な行動というのを建前としております。したがって、新経営陣がまだ着任しない段階で、現「りそな」として考えられる目いっぱいの、例えばコストの削減であるとか、そういったことについて計画を出してもらって、それを承認する形で我々としても今回の資本増強の決定を行っている。
しかしながら、月末には取締役会が開かれて、今度はガバナンスの方式も一段と強化して、委員会等設置会社という形式のもとで、外から会長を迎えて、かつ社外取締役をたくさん、大勢迎え入れる形で新たな経営体制をつくっていただくことになっている。そのもとで、当然のことながら、新たなビジネスモデルの構築であるとか、より切り込んだ再建計画の議論というのがなされていく、これが自然であるというふうに思っております。そうした中では、その新たな経営陣によってそうしたものの見直しがなされれば、これは速やかに経営健全化計画という形で出していただくというのが自然なことであろうというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 つまり、経営健全化計画、一度承認したものは不十分である、よりはっきり言えば欠陥計画である、こういう認識だと思うんですね。新しい計画を出してもらうと。
一度承認したなら、この計画に基づいて新経営陣に頑張ってもらうというのが普通の言い方だと思うんですが、そうではなくて、この計画はまだ不十分である、新たな計画は出し直してもらう、こういうことでありますから、この計画は完璧ではないという認識なんですね、大臣は。
○竹中金融担当大臣 計画が不十分であるとは思っておりません。現「りそな」で考えられる目いっぱいの計画が出されたというふうに私どもも承知をしております。
しかし、新たに外部から経営者をお迎えするわけでありますから、その経営者には思う存分経営の手腕を発揮していただかなければいけない。その過程でビジネスモデルの抜本的な見直し等々議論されるようでありますから、その場合には、やはりそうしたものを経営健全化計画という形で、もう一度具体的な形にして出していただくのが自然なことであろうというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 2兆円のお金を出しているわけです、2兆円。それを、承認の前提としてこの計画はこれでよろしい、したがって2兆円承認しましょう、こういうことになったわけでありまして、その計画が、いや、これはまだ変わるんだと。これでは、いいかげんな計画を出してもらったけれども、2兆円だけは承認しましょう、こういうことになるわけでありまして、非常に私は、この決定の仕方というのは余りにも無責任だと言わざるを得ないと思います。
この計画の内容について若干触れてみたいと思いますが、例えば、これまでの「りそな」の経営のあり方についてどのような反省をしているかという点で一つ挙げますと、「旧経営陣の対応」というところで、これは午前中の参考人のときにもお伺いした点なんですけれども、「関連ノンバンクも含めた大口取引先への与信リスクの集中が迅速に解消できなかった」「経営不振企業に早期に経営改善・再生を促す取組が不足していた」「与信リスクに見合った適正な利鞘確保に向けた取組が十分ではなかった」「反省すべき点があった」、こういうふうに書いてあります。あるいは「大口取引先への与信リスクの集中を抑制するために導入していたクレジット・シーリングについて、当面の収益の確保や顧客の信用面への配慮等から、結果として、制度の趣旨に沿った厳格な運用ができなかった」、こういうふうにこの中で書いているわけですね。つまり、今までの経営のあり方について、若干の反省がここに出ているわけです。
そこで、私は、参考人質疑で、具体的なこの内容について聞いたわけであります。そうしますと、貸し出しの中で特定の企業にやはり異常に集中して貸し出している、それがいわば不良債権化したか、あるいはしつつある、こういうことになっているというのが、けさの参考人質疑で前社長が告白していました。
例えば、中小企業向けの要管理先の部分だけ取り出してみますと、この中で、金額と件数を比較して一件当たり計算しますと、一件平均8億3千万円なんです。つまり、中小企業向け貸し出しの平均が、要管理先の部分だけ取り上げますと一件当たり8億を超えるんですね。これは極めて異常なんです。あるいは、例えば破綻先だけ取り上げますと、一件当たり1億を超えております。それから、破綻懸念先は1億7200万円という、一件当たりですよ、平均して。これは余りにも偏った部分にどかんと貸していて、中小企業には全体として平均的に貸していますけれども、そうすると、その部分が非常に問題がある。
平均して見ますと、このりそな銀行の大口融資先の状況、どうなんですかとお聞きしました。参考人の勝田前社長はこう言っていました。要管理先以下の債権の合計、これは会社の数でいいますと1万1900社ある、金額では2兆7千億円だと。そのうちで30億円以上の大口融資先、これが101社、金額にして1兆5千億円。ですから、30億円以上の大口融資先というものは全体の55・6%を金額で占めているんです。しかし件数、社数で言いますと1%以下なんです、0・85%。非常に少数の会社に巨額の資金が貸し付けられていて、それが問題を起こしている。そのことを十分チェックできなかった、是正できなかったという反省の一端が、この計画の中に書かれているわけです。
こういう事実について、一体これまで金融庁の検査では、その事実を掌握していたのかいなかったのか、まずこの点だけお聞きしておきたいと思います。
○伊藤金融担当副大臣 「りそな」も、これは主要行と同じように、通年専担検査の体制の中で、私どもとしましては、自己査定の正確性、あるいは償却引き当ての適切性、自己資本の状況について、検査で検証を行っているところでございます。
ただ、先生今具体的なお問い合わせでございますので、この点につきましては、検査の子細な内容でもあり、私どもとしては答弁ができないということについては御理解をいただきたいというふうに思っておりますが、私どもとして、一般論として、検査で問題点を指摘するということがあれば、それは当然、監督としても見ていくわけでありまして、そうした中で、銀行の健全性を確保していくために私たちとしても適宜適切にしっかり対応していきたいというふうに考えておりますし、今日まで対応してきたということでございます。
○佐々木(憲)委員 今の答弁じゃ、さっぱり何が何だかよくわかりませんね。
具体的に聞きましょう。
直近の検査はいつ行われましたか、大和銀行、あさひに対して。
○伊藤金融担当副大臣 旧大和銀行に対しては、14年の12月3日に立ち入りをさせていただいて、15年の2月24日までの間検査を実施いたしております。
そして、あさひ銀行につきましては、14年の4月18日から6月14日まで検査の立ち入りを実施しております。
○佐々木(憲)委員 昨年既に、春と冬に行われていたと。その段階で、当然これは、ずっと以前からもそうなんですけれども、こういう事態が生じていたということは把握していなければおかしいわけであります。当然、これを把握していればその是正措置を勧告しているというのが当たり前のことでありますが、そういうことをやっていたんですか、いなかったんですか。
○伊藤金融担当副大臣 個別のお問い合わせでございますので、その内容については、大変申しわけございませんが、私どもとしてコメントさせていただくことについては御容赦をいただきたいというふうに思っております。
なお、一般論といたしましては、検査結果の通知後において、事務ガイドラインに従って、指摘された事項の事実確認、そして発生の原因分析、改善対応策について、検査結果通知と同日付で、銀行法の第24条に基づく報告を求め、監督上適切なフォローアップを実施いたしているところでございます。
その際に、それぞれの指摘の内容に応じ、例えば健全な融資制度というものを確立するための具体的な方策というものがとられているのかどうか、あるいは、不良債権の発生の未然の防止というものがしっかりなされているのかどうか、自己査定の実施の適正性あるいは資産の健全性に関する管理の状況にかかわる内部管理体制というものがしっかり確立されているのかどうか、そうした点について着眼の上、所要の監督を行っているところでございます。
○佐々木(憲)委員 着眼の上、実際に監督し是正していれば、今までずっと検査というのは何度も行われてきたわけですから是正されていなければならぬのですけれども、最終的には是正できなかったというのがこの計画の中に書かれているわけです。つまり、金融庁の検査がまともに機能していなかった、このことをこれは結果として証明していると思うわけです。
そういう点を一体どのように考えているのか。結果として是正されていなかったことはもう明確なわけですから、しかもそれがこの「りそな」の経営難の大変大きな要因としてここに指摘されているわけです。
金融庁自身の反省というのがなければならない。これは反省はあるんですか、ないんですか。
○伊藤金融担当副大臣 先ほどから御答弁をさせていただいているように、私どもとしては、先生御指摘の具体的な内容についてコメントすることはお許しをいただきたいというふうに思っております。
先生御指摘の、この経営健全化計画に書かれている内容でございますが、これは公的資本増強の必要性の認定を受けるに至った原因についての分析が記載されておりまして、これは「りそな」として、今般の事態を招いた事実を重く受けとめて、これは法定記載事項ではございませんけれども、あえて記載を行ったものと承知をいたしております。
いずれにいたしましても、本計画に記載されているとおり、新たな経営体制のもとでさらに原因等の究明が行われて今後の経営に反映されていくことが重要であるというふうに私どもは考えております。
○佐々木(憲)委員 そんないいかげんな答弁じゃだめなんで、こういう結果を招いた原因についてこの計画の中で触れているわけですから、その原因について、金融庁として検査をやっていながら具体的な是正を行ってこなかった、これは結果としてそうなっているわけです。したがって、そこには反省がなければならない。今の答弁じゃ何も反省がない。今までもよくやってきた、これからもよくやっていきます、そういう話じゃ話にならないんですね。
では、具体的な資料を出してください。ここで前社長が、30億円以上の大口融資先というのは101社ある、こういうふうに言っていました。この101社のリスト、内容、これを提出していただきたい。
○五味政府参考人(金融庁監督局長) 金融機関の取引先に関する具体的な情報でございますので、これは債務者にとってもあるいは銀行にとっても、その正常な企業活動を妨げるおそれがあります。したがいまして、これを御提出することはできません。
○佐々木(憲)委員 それじゃ全然話にならないわけでありまして、一体、「りそな」のこういう、国民の税金2兆円を投入する結果となるかもしれないという極めて重大な決定を政府がやったわけであります。しかも、そういう結果を招いた銀行の中の、このような融資の極めて重大な問題点、これが明るみに出ている。その問題について、この委員会で、2兆円が正しかったのかどうかということがずっと議論されている。原因となった資料も出さない、政府の責任もはっきりしない、こういうのじゃ全然議論ができないじゃないですか。
委員長、この資料提出について、理事会で検討していただきたい。
○小坂委員長 理事会で協議いたします。
○佐々木(憲)委員 今回もう一つの問題は、繰り延べ税金資産の評価の問題であります。
お配りした資料を見ていただきたいんですけれども、繰り延べ税金資産は、「りそな」の前の大和銀行、あさひ銀行、上の段にありますように、平成12年、2001年3月期でありますけれども、この時点では4791億円、これが、平成13年、2002年3月期では7092億円と、約5割増になっているわけであります。右側の都市銀行の全体の合計金額を見ましても、4兆円から6兆円と、これも約5割増しであります。
これはどうしてこんなにふえたのか、その理由について説明をしていただきたいと思います。
○五味政府参考人(金融庁監督局長) 平成13年度の決算における大幅な繰り延べ税金資産の増加につきましては、繰り延べ税金資産の計上額を公表資料で見てまいりますと、この増加の内容としては、不良債権処理に係る繰り延べ税金資産、これが前年度に比べて大幅に増加をしているというのが要因でございます。
なお、もう一つ、この14年3月期の特徴といたしましては、有価証券の償却損などに係る繰り延べ税金資産の増加というものもかなりのウエートを占めている、こういう状況でございます。
○佐々木(憲)委員 結局、この2001年3月の直後に小泉内閣が発足しているわけであります。小泉内閣の構造改革の中心の柱は不良債権処理の加速である、こういうことでありました。つまり、不良債権処理を急げば急ぐほど繰り延べ税金資産というのは当然ふえていくわけです。
例えば、その下にありますように、貸倒引当金が大幅に積み上がっている。この原因をつくったのも、不良債権処理のため、資産査定の厳格化、引当金を積み増す、したがって、当然繰り延べ税金資産というものがふえていくわけです。
不良債権処理を進めることによってこれがふえてきた、この事実関係は大臣もお認めになりますね。
○竹中金融担当大臣 不良債権処理を進めると繰り延べ税金資産がふえるというのは、理論的に間違っていると思います。
これは、オフバランス化をどう進めるかということと絡むわけでありますから、例えば、オフバランス化を全部今進めたら繰り延べ税金資産は理論上ゼロになるわけですから、それは資産査定をどのように厳しく行っていくかということ、それとオフバランス化をどのように進めていくかということ、それをどのように各社が戦略上行っていくかによって、結果的にその途中でふえたり減ったりしていくものでありますから、一概に申し上げられるものではないと思います。
○佐々木(憲)委員 先ほどの五味局長の答弁では、不良債権処理のために膨らんだ、こう言ったわけですね。これは違うじゃないですか、答弁。どうなっているんですか。
○竹中金融担当大臣 ですから、例えば、短期的に資産査定を厳しくして、それによって引き当てを積んだといたします。それが有税償却でやったとします。その瞬間、オフバランス化が余り進まないといたします。そのような場合には、繰り延べ税金資産はふえます。しかし、例えば、もしオフバランス化を一気に進めれば、これは繰り延べ税金資産を立てる必要がないわけでありますから、それは減る場合もある。
現実には、全体として、この期、繰り延べ税金資産はふえておりますが、減っている銀行もあります。
○佐々木(憲)委員 引当金を積み増したり有税償却をすれば繰り延べ税金資産がふえるのは当たり前なんです。午前中の参考人質疑でも、新日本監査法人の竹山さんでしたか、そのようにおっしゃっていましたし、実際に、例えばりそなホールディングスの有価証券報告書、昨年3月期を見ますと、繰り延べ税金資産のうち、貸倒引当金及び貸出金等償却損金算入限度超過額、これが全体の繰り延べ税金資産の半分を占めているわけです。引当金が積み増しされる、有税償却を行う、このことによって、これが全体の繰り延べ税金資産の半分のウエートを占めているわけですね。つまり、これは膨れているわけです。
何のためにこれをやるかといえば、小泉内閣になってから、不良債権処理をより一層進めていくんだ、そのためにこれは膨れているわけです。今も大臣も、一時的には積み増しされるとおっしゃいました。五味監督局長も、一時的と言わないけれども、先ほどの答弁でそのようにおっしゃいました。
これは結局、繰り延べ税金資産がふえたのは政府の政策の結果じゃありませんか。
○竹中金融担当大臣 不良債権処理の加速という場合に、いつも申し上げておりますけれども、やはり資産査定をきっちりとやらなければいけません。そのときに、資産査定をきっちりと行って、引き当て不足があれば引き当て不足は積んでいかなければいけない。同時に、我々はこれをしっかりとオフバランス化して、オフバランス化することによってしか不良債権比率は減りません、不良債権比率を今の2年間で半分にするということは、その間にしっかりとオフバランスを進めてくださいということを意味しているわけです。
繰り返し申し上げますけれども、オフバランス化が進めば繰り延べ税金資産は減るわけです、当然のことながら。そういう観点からいうと、我々はそれを両方ともしっかりやっていこう。
しかし、資産査定をいいかげんにしておきましょう、資産査定はいいかげんにしておいて、引き当て不足があっても引き当て不足を積まない方がいいじゃないですか、そんなことにはどう考えてもならないのではないでしょうか。そこはやはりしっかりしていかないと、銀行全体が世間から信用されない。その意味では、資産査定をしっかりとやっていく、それでオフバランスも進めていく。
しかし、そこには税務会計と財務会計の間でのバランスの差はございますから、繰り延べ税金資産に関しては、税の繰り戻し還付も含めて、我々としては、税制上の措置はとっていただきたいということは繰り返し税務当局にはお願いをしているわけです。
○佐々木(憲)委員 都市銀行全体で4兆円から6兆円へと繰り延べ税金資産がふえている、この原因は、不良債権処理を加速するという政府の政策が大変大きな要因として作用している、これは大臣だってお認めになるわけでありまして、最終的にオフバランス化ということをおっしゃいましたけれども、そういう問題を私は言っているわけじゃありません。オフバランス化して中小企業をつぶすのは我々は反対ですけれども。私はこの数字がふえた原因を聞いているわけです。
資産査定の厳格化、そのことによって繰り延べ税金資産がふえるじゃないか、これは公認会計士協会の方もそう言っているし、それから五味局長も先ほどもそのように言って、大臣もそのとおりだ、短期的にはそうなると。
そのことを確認いたしますと、繰り延べ税金資産が大きいのがけしからぬ、もっと厳しくすべきだ、こういうことを、一方で昨年の秋から竹中プランによって推進された。つまり、原因を政府の政策によってつくっておきながら、その原因によってつくられた結果がけしからぬと。自分でつくっておいて、それはけしからぬから厳しくするんだということで査定の厳格化というのが行われた。査定といいますか、繰り延べ税金資産の評価を厳正化する、それを申し入れて、結果的にこういう「りそな」の事態が生まれてきた。ですから、私は、そういう政府の政策そのものに根本的な問題点を感じるわけであります。
繰り延べ税金資産の評価を厳正化しなさいといって、「りそな」そのものの経営の内容の問題点というのは、私、最初に指摘しました、内部における融資のあり方が根本的に問題点があるということ、それについて、政府も検査をしていながらまともに是正をさせてこなかったという責任がある。同時に、繰り延べ税金資産をふやす政策をやっていながら、大きいのはけしからぬからこれは厳正にして小さくしなきゃいかぬ、こう言って、内部から締め上げていく。結果としてこのような「りそな」の事態を招いたのは、どこから考えたって政府の政策によってこういう事態がつくられたと言わざるを得ないですよ。
私は、そういう点で、政府の政策の根本的な転換、今までやってきたことがすべて正しかったなどという姿勢をとっている大臣はやはりやめてもらわなきゃならぬというふうに思います。最後にこの点を指摘して、終わります。
関連ファイル
- 【配付資料1】繰延税金資産の推移(pdf)