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金融(銀行・保険・証券) (金融消費者保護)

2009年04月16日 第171回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【510】 - 質問

金融商品取引法改正案 横断的・包括的紛争解決機関の設置を参考人が主張

 2009年4月16日、財務金融委員会が開かれ、15日に引き続き金融商品取引法案等の審議が行われ、参考人質疑が行われました。

 早稲田大学の犬飼重仁教授は、金融トラブルについて、現行でも業界団体の相談窓口や苦情処理機関があるが「利用者から見て使いづらい」と指摘し、「公正で簡易、迅速で柔軟な第三者的紛争解決手段が存在しないことが問題だ」と強調しました。

 金融オンブズネットの原早苗代表は、「横断的・包括的な金融ADR(裁判外紛争解決制度)機関が必要」とのべ「消費者が知らないまま不利益をこうむることがないようにすべきだ」と提起しました。

 日本証券業協会の安東俊夫会長は、「協会として苦情処理、あっせんの手続きをもうけ、迅速かつ適切な解決の手段を提供している」と述べました。

 社債の格付けを行う三國事務所の三國陽夫氏は、改正案に盛り込まれた信用格付け業者に対する規制の導入について「規制監督でなく、市場によって規律が与えられるべきだ」と主張しました。

 佐々木議員は、消費者の立場に立ち、権限のそなわったADR機関が必要ではないかと各氏に質問。
 原参考人は、業界内で自己完結的に紛争解決しているところの解決件数が多いことをあげ、「外に出しての解決の方向でなく、自分の責任でやるという方向が必要だ」と指摘しました。
 そのうえで「あらためて、横断的・包括的な機関の必要性を強調しました。

議事録

○田中委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、金融商品取引法等の一部を改正する法律案、資金決済に関する法律案の両案を議題といたします。
 本日は、両案審査のため、参考人として、早稲田大学法学学術院教授犬飼重仁君、金融オンブズネット代表原早苗君、日本証券業協会会長安東俊夫君及び株式会社三國事務所代表取締役三國陽夫君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質問にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 それでは、まず犬飼参考人にお願いいたします。
○犬飼参考人(早稲田大学法学学術院教授) ただいま御紹介いただきました早稲田大学法学学術院の犬飼と申します。
 本日は、金融商品取引法の一部を改正する法案の御審議に際しまして、金融ADR制度等に関して意見を述べさせていただくこと、大変に光栄に存じております。
 私自身は、昨年早稲田大学教授に就任いたします前に、内閣府所管の総合研究開発機構、NIRAというシンクタンクに在籍をいたしまして、2003年から2年間、市場、特に金融資本市場を取り巻く諸制度、システムにつきまして、そこに参加する市民とユーザーの側に立ったグランドデザインに抜本的に変えていく必要があるというふうに考えまして、NIRAが主催し、早稲田大学が共催するプロジェクトを実施してまいりました。
 具体的には、本来日本に備わるべき包括的、横断的な金融サービス市場法制のグランドデザインというものを提言しようというかなり壮大なプロジェクトであったわけでございますが、個人を対象とする金融紛争解決制度についても、いわば広義の法制度システムの一環といたしまして市場インフラの不可欠の要素であるということですので、そのあるべきグランドデザインを提言しようと、当時から進んでいると言われていた英国の金融オンブズマン制度等もかなり突っ込んで調査をいたしました。
 ここで、個人が申し立て者となる少額の金融関連の紛争の場合に、金融ADR、裁判外紛争解決制度がなぜ不可欠かということでございますが、その点についての議論自体、日本ではつい最近まで余りなされていなかったというふうに思います。それは、金融機関等に比べまして相対的に弱い立場の個人が行う少額の紛争に、裁判、訴訟制度に不可欠の事実認定や法令解釈の厳密性を適用すること自体無理がございますし、裁判では費用や時間がかかる場合が多い。プライバシーも保てないこともある。
 また、金融関連の各業界団体が主催をいたします相談窓口や苦情処理機関もございますが、中立性、公正性の面で、利用者から見て多くの場合、信頼の面で問題なしとしない、または使いづらいということがございます。公正かつ妥当な、簡易、迅速、柔軟な第三者的紛争解決手段が存在しないこと自体、これがずっと日本における問題であったのではないかということでございます。
 有効で実効性の高い紛争解決制度が存在するということは、結局、一義的な制度維持のコストを金融機関が負担したとしても、金融機関と市場への信頼が生まれて、市場のコスト、客先が負担するコストや不確実性が最小限になりますので、市場を活発化させることができますし、お金を市場に呼び込むことができます。その好循環の中で業者が潤うということで、結局、市場を担っていけるということになります。
 我々がお手本にいたしましたイギリスの紛争解決制度には、結局、金融関連業界みずからが、1980年代初めから多くの試行錯誤を繰り返しながら工夫を重ねまして、よりよい制度をつくり出していったという伝統が生きているということが言えると思います。経験を通じて、有効で実効性の高い紛争解決制度の存在価値をみずから理解していったということであると思います。
 英国の経験からわかりましたことは、金融サービス業者と金融サービス利用者の双方に信頼される紛争解決機関の実現というものは、金融資本市場全体の信頼性と利便性を高めて、利用者全体にとって魅力ある市場を構築するための重要なインフラストラクチャーになるということでございます。
 そして、そういう観点を踏まえまして、NIRAの研究成果として、2005年の春に、金融サービス業者に対して片面的拘束を課した制度として、実効的金融ADR、裁判外紛争解決制度設置の提言を行ったものでございます。
 なお、片面的拘束とは、紛争当事者の双方の経験や知識のレベル、あるいは対応力の歴然たる差というものを背景といたしまして、制度的な調整を加味することが真の意味の公正につながるということを意味していると考えます。言いかえると、ハンディをつけることがフェアになるという理念が重要ということでございます。
 本日御審議をいただいております金融ADR、指定紛争解決機関の創設の法案は、その理念を共有し、大前提として組み立てられているというふうに感じております。そして、それをベースに制度の実効性を高めるための工夫がなされているというふうにも感じております。それは、4年前に我々が行った提言の実現に必要な前提条件の立法化でありまして、不可欠の前向きの一里塚であるというふうに考えられます。
 話は前後しますが、私は、提言を行った2005年以降も一貫して金融ADR、金融オンブズマン研究をしてまいりましたが、今からちょうど2年前に、我が国の金融紛争解決制度の問題含みの状況がずっと続いていたことにかんがみまして、我が国のさらなる制度改革に資するには2005年に行った提言だけでは不足であり、専門家の手によって我が国にフィットする金融専門ADR機関のあるべきモデルとその実現手段のあり方にまで踏み込んだ具体的な提言を策定して、それを金融機関、政府・金融庁、また立法府の方々にお訴えをする必要があるのではないかと考えるに至りました。
 具体的には、第三者的な任意団体として、一昨年、2007年の4月18日に金融ADR・オンブズマン研究会を立ち上げましたが、その趣旨に御賛同いただいた22名の弁護士、二名の司法書士、メディエーション専門家一名と私、そういう26名のメンバーで、一昨年4月から1年半、非常に密度の高い研究調査を継続し、昨年11月28日に156ページの提言を発表させていただきました。
 この提言は、各方面から前向きの評価をちょうだいしましたが、金融庁の方々にも詳しく御参照いただき、12月3日の金融審議会と12月24日の金融トラブル連絡調整協議会の場で参考資料としてそれぞれ席上配付いただき、金融庁の担当官より概要を説明いただきました。民間の一任意団体の提言がそのような公式の場で紹介をいただくというのも異例のことでなかったかと存じます。恐らく、我々の提言の中には、制度創設に必要になる理念、原則と、具体的な制度の進化、発展に合わせた手続のあり方、そこまで具体的な提案をさせていただいたことを評価いただいたのではないかと思います。
 それでは、その提言のポイントをかいつまんで申し上げます。
 個人が申し立て者となる少額紛争では、事実の認定や法令解釈の厳密性等に強くこだわることなく、良識に即した柔軟な解決、比喩的に言えば大岡裁きのようなイメージですが、これを迅速簡易に実現する金融専門の裁判外紛争解決が求められます。
 あるべき金融専門ADR機関は、金融サービス紛争の解決について、柔軟性、迅速性、簡易性、専門性及び質の確保、そしてアクセスの容易性、横断性、公正性、その公正性には独立性と透明性を含みますけれども、並びに秘密性の八つの要素、すなわち設計理念を備えていることが必要でございます。日本は制度をつくる場合形から入る傾向があるように感じられますが、制度の理念、原則について関係者の間でしっかりした考え方を共有しておくこと、これが重要であると思われます。
 また、実現への具体的な現実的ステップとして、18の業界団体がそれぞれ苦情処理機関、業界型ADRを有している日本の現状から、業界横断的な単一の金融専門ADR機関の創設を究極の目的としつつも、リアリスティックな実現プロセスが必要と考えまして、四段階の段階的なプロセスについて、概要を同時に示させていただいております。
 今回の法案の御審議に関して、一元的、横断的なADRと業界縦割りの現行のADRについて、どこが違うのか、またどういう発展形を考えているのかという御議論もあるかと存じますが、今回の法案は、現状を踏まえた理想の実現への一里塚であり、この点に関して、将来、我々の四段階ステップの考え方も参考にしていただけるのではないかと考えております。
 そして最後に、結びといたしまして、金融機関も金融サービス業者にとっても、個人の信用、信頼が非常に重要でございます。それを失わない制度構築というものが重要ということで述べさせていただいております。
 最後に、今回御審議をいただいております法案といいますのは、金融業界をまさに本気にさせるきっかけになり得る法案ではないかというふうに思います。そういう極めて重要な要素をこの法案に含んでいるというふうに考えます。その意味で、今後の制度のさらなる発展のための不可欠の一里塚として、前向きにとらえてよいというふうに考えてございます。
 以上でございます。(拍手)
○田中委員長 ありがとうございました。
 次に、原参考人にお願いいたします。
○原参考人(金融オンブズネット代表) おはようございます。きょうは参考人としてお招きをいただきまして、ありがとうございます。
 私自身は、金融オンブズネット代表ということできょうこの場に来ておりますけれども、金融審議会の委員をしておりまして、それから金融トラブル連絡調整協議会の委員もしておりまして、この問題に長くかかわってきておりますので、その立場から意見を述べたいというふうに思っております。
 金融商品取引法の制定、それから改正の方向性というものについては、高く評価をしております。金融商品取引法は公正な市場づくりと利用者保護の両輪の充実をねらいとしておりますけれども、これは、私ども消費者からしても、その立場は同じです。今回、特に金融ADRについて改正の焦点が当たっておりますので、これについて意見を述べたいと思います。
 相談、苦情の解決において、裁判外紛争処理の仕組みは一つの有用な仕組みとして評価できます。これは先ほど犬飼先生の方からお話があったとおりで、既に英国、韓国、オーストラリアなども取り組みが見られるところです。
 日本においては、金融商品販売法の制定、施行、これは2001年なんですが、この金融商品販売法の制定の検討をしている段階で、金融トラブルの解決の仕組みとしてどういうことがいいのかということの検討をしております。ただ、このときは、私はそのときプレゼンテーションで横断的な、包括的な金融トラブルの解決のADRの仕組みを提案したんですが、時期尚早だということで退けられまして、ただ、大変大きな課題であることは間違いないということで金融トラブル連絡調整協議会が設けられて、各業界団体のADRの仕組みを持っておられるところが加わる形でこの検討を重ねて、8年たったところになります。
 金融トラブル連絡調整協議会では、金融分野の苦情、紛争解決のモデルを策定いたしましたけれども、その後は、ここに来ておられる方は相談を担当しておられるセンターの所長さんあたりが中心でしたので、制度設計をどうするかということに踏み込んだところまでの議論をすることができずにここまで参りました。この間、地方の消費生活センターには、金融、保険にかかわる相談、苦情は増加し続けておりました。外国為替証拠金取引、無認可共済、変額個人年金保険の銀行窓販、保険の不払い問題、また未公開株などの詐欺的商法も後を絶ちません。
 現在、100万件を超える相談、苦情、これは消費生活センターに寄せられている相談、苦情の総数なんですが、100万件のうち2割弱を金融・保険商品が占めている状況です。金融にかかわる相談や苦情というのは、言ったとか言わないという争いが多く、また損害額の特定も大変難しく、被害はほとんど救済されていないのが今の現状です。紛争の性質から考えて、金融、保険分野のトラブルは裁判外の紛争処理の仕組みになじむと考えております。
 今回、金融商品取引法を改正し、金融ADRの規定を取り込むことになったことについては、以下のとおり考えております。四点、述べさせていただきたいと思います。
 最初、まず第一点なんですが、金融商品取引法に規定を置いたということは評価をしたいというふうに思っております。条文に明記をされるということで金融分野の金融商品取引法という市場の公正さをねらったルールの中で非常に大きな位置づけを占めるということで、条文に明記をされたということは評価をしております。
 今回、金融審議会で消費者からの相談、苦情について三回にわたって議論をしたわけなんですけれども、金融機関の上層部の方が消費者からの相談とか苦情という単語、文言を使って話をされるのは初めてという感じがありまして、金融機関のトップの方々が消費者からの相談とか苦情というのをどう考えなきゃいけないのかということでの意識づけになったというところでは、私は、10年かけてようやくここまで来たのかというような感じで大変感慨深いものがありまして、その意味でも、条文明記ということはよかったし、金融審議会の審議ができたということも評価をしております。
 二つ目は、条文の置き方についてなのですが、幾つかの懸念と注文のようなものを持っております。
 一つは、指定紛争解決機関についてなのですが、この指定紛争解決機関というものの範囲をどのあたりまで置いておられるのか。
 それは、今の金融トラブル連絡調整協議会に所属をしておられるところは業界団体としてしっかりしてあるところで、そしてADRの仕組みも構築をしておられるところなんですが、これ以上にどこまで膨らませて考えておられるのか。これは、今後公益法人改革の見直しも進みますので、公益法人改革の見直しが進んだその後の姿がどうなるかによって、この指定紛争解決機関も定まってくるだろうと思うし、そうすると、どの範囲までを考えてこの条文に置かれたのかなというところを、まだやや詰め切れておらずに、注視をしております。
 それから、尊重規定が幾つか入りました。手続の応諾、調査への協力、結果の尊重規定が入ったことは評価をしております。
 それから、また指定紛争解決機関になりますけれども、この監督に関する規定が条文に盛り込まれております。内閣総理大臣による指定紛争解決機関への報告徴取、立入検査などについては、恐らく、金融庁としては要件を満たしているかどうかという形式的な部分の観点からの調査をなさるんだというふうに思っておりますけれども、そのときのやはり最大の眼目は、透明性の確保がされているかどうかというところに置いてほしいと考えています。
 ADRの非常にメリットというのは、秘匿性、秘密性にありますけれども、紛争解決機関として適正なものかというのは、どういう方々で人的構成がされているのか、どういう案件をどのように解決したのか、どれが解決できなかったのかという、これは個人情報は秘匿しなければいけませんけれども、透明性を確保するということに眼目を置いて行政が目配りをして、それが開示をされることで消費者それから一般の社会がチェックをできる、私はそういう形にしていただきたいというふうに思っております。
 それから、やはり今の状況から少しでも改善がされることを望んでおります。特に、現行のADRの仕組みの中でも苦情はたくさん扱っておられるんですけれども、苦情から紛争解決、ADRに行く数が極端に少ないんですね。なぜこんなに少なくなるのかというところについて、このあたりが改善をしていくような仕組みになっていただきたいと思っております。
 それから三点目なんですが、他のADR機関などとの関係についてです。
 ことしの4月から、国民生活センターにADRが発足をしております。また、法務省による認証ADRについても、消費生活アドバイザー・コンサルタント協会などが認証を取得しておりますし、また新たに金融トラブルに特化したADR機関が登場してくることも考えられます。こういったものとの役割分担とか連携とかということも意識をしていただきたいと思っておりますし、金融庁の中に設けてあります金融サービス利用者相談室の働きも改善が必要です。個別の紛争解決というところは、行政は民事不介入ということで手を出しておられませんけれども、ひもをつける形で各ADRに出されて、どういう結果にしたのかということの回答を得るというようなことは私は十分可能だと思っております。
 それから、金融トラブル連絡調整協議会についても、レベルアップを図って改善を図っていただきたいと思っております。
 それから、私は今、消費者庁の新設にかかわっておりますけれども、新設が検討されている消費者庁と連携をとり、各地の消費生活センターの相談、苦情の解決にも寄与するような連携をお願いしたいと思っております。
 もう時間がなくて大変恐縮なんですが、最後、あと一言なんですが、将来の方向性についてです。これは、今犬飼先生もおっしゃられたとおりで、金は出すが口は出さない、こういう横断的、包括的な金融ADR機関を設けてほしいと思っております。
 私は、10年来、この主張は変わっておりません。金融審議会で検討しているときも、私どもは優等生ですからというようなお話があって、頑張っておられるところはすごい頑張っておられるんですが、印象として、そこに来たわずかな人の解決はすごく図っておられるんですけれども、一般社会としては、一般消費者としてはすごく遠巻きに見ているんですね。今の業界中心のADRのあり方というのは非常に遠巻きにして見ていて、やはり半分まだ信用できないなという印象で見ているので、そのことを全然察知しておられないという印象があります。ですから、私は、金融業界、金融全体としてこの制度設計をどうするかということを考えてもらいたいというのがあります。
 冒頭、金融機関の上層部の方のお話をいたしましたけれども、金融の相談とか苦情を見ていて非常に感じるのは、ほかの業界と違って、絶対にミスを犯してはいけないというふうに金融機関は考えておられて、ミスがあることはひた隠しにしたいという体質があるように思っております。ですから、相談とか苦情とかが表に出てこない。ここをやはり変えない限り、真の意味での消費者の苦情とか紛争の解決には至らないというふうに私は考えておりますので、ぜひコンプライアンスの考え方の中でも検討していただきたいと思います。
 それから、最後、一言ですが、相談とか苦情に上がっているものを見ると、販売、勧誘のトラブルがほとんどです。消費者が持っている苦情はそういうところなのかというふうに思わないでほしいと私は思っています。それは、そこだけしか私たちには見えないからわからないからです。私はやはり、商品設計ですとか手数料の体系ですとか公正な市場が構成されているのかなど、消費者が知らないままに不利益をこうむることがないようになっているかどうかということを注視していきたいというふうに考えております。
 ちょっと時間が長くなりましたけれども、私の意見とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○田中委員長 ありがとうございました。
 次に、安東参考人にお願いいたします。
○安東参考人(日本証券業協会会長) おはようございます。日本証券業協会の会長を務めております安東でございます。よろしくお願い申し上げます。
 常日ごろ、諸先生方におかれましては、証券市場、証券界に対しまして御理解と御支援を賜り、ありがとうございます。この場をおかりして、厚く御礼申し上げたいと思います。
 御高承のとおり、我が国の証券市場は、世界的な金融経済危機の影響、それに起因する為替相場の大幅な変動などにより企業業績が大きく悪化いたしまして、日経平均は1時7千円台まで下落いたしたわけであります。その後、各国の財政金融政策の効果を市場は好感いたしまして、8千円台後半まで回復し、3月の年度末も乗り切ることができ、一時期の危機的な状況からはやや持ち直しておるところであります。
 しかしながら、3月決算銘柄の今後の決算発表が連休前後から始まりますけれども、それによりましては、もう一段の株式市場の下落があり得るとも指摘されておりまして、本格的な景気回復にはまだ道半ばの感があるわけであります。
 このような市況を反映して、証券会社、これは319社の合計ですが、証券会社の業績も大変厳しいものとなっております。
 3月期末の証券会社の決算はまだ出そろっていないために、2月末時点の数字で申し上げますが、上場株式の売買代金の大幅な減少あるいは公募株式投信の設定額の大幅な減少などを原因といたしまして、319社のうち216社の会社が赤字となっております。これは業界全体で68%を占めております。また、昨年2月末と比べましても、営業損益ベースでは、昨年の6579億円の利益から、概算で約2千億の赤字となる見込みであります。
 こうした中、我が国経済の底割れリスクを回避して安定成長を実現することが、今日の日本経済の最も重要な課題であります。証券界といたしましては、我が国の国民が安心して投資を行うことのできる金融資本市場の機能の向上と信認の確保に全力で取り組むとともに、貯蓄から投資への流れを加速、確実なものとするために、さまざまな施策に取り組んでいるところでございます。
 さて、金融商品取引法は、先生方御承知のとおり、第一に利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上、第二に貯蓄から投資に向けての市場機能の確保、三番目に国際化への対応の三つを大きな柱といたしまして、平成19年9月30日から施行されたわけであります。
 今回の金融商品取引法の改正案では、信頼と活力のある金融資本市場の構築を目的として、第一番目に金融ADR制度、すなわち金融分野における裁判外紛争解決制度の創設、第二に有価証券店頭デリバティブへの分別管理義務の導入、第三に信用格付業者に対する規制の導入、四番目に金融商品取引所と商品取引所の相互乗り入れなどを初めとする内容となっておるわけであります。
 証券界といたしましては、この法案が国会での御審議を経て速やかに成立し、早期に実施されることを望んでおります。何とぞよろしくお願い申し上げたいと思っております。
 その中の、法律案の内容のうち、金融ADR制度について一言申し述べたいと存じます。
 今回の制度化は、金融商品・サービスに関するトラブルの苦情処理、紛争解決について、利用者の信頼感、納得感、実効性の向上を図るため、苦情処理、紛争解決を行う民間団体を主務大臣が指定し、紛争解決の中立性、公正性を確保しつつ、金融機関に手続に応じる義務を課し、事情説明、資料提出や結果尊重等の対応を業法上の義務として求めるものであり、金融ADRの新たな法的枠組みを設けるためのものと理解しております。
 本協会は、御高承のとおり、金融商品取引法上の認可金融商品取引業協会であります。このために、既に証券取引の分野においては、証券会社及び銀行等の金融機関とお取引されるお客様に対して、苦情処理、あっせんの手続を設け、迅速かつ適切な解決の手段を提供しております。
 具体的に申し上げますと、本協会の中に証券あっせん・相談センターという専門部署を設け、専従の職員で20人の相談員を置き、さらに弁護士をあっせん委員として選任し、その人員も31人体制を確保し、加えて、あっせんの会場を全国50カ所に設置し、投資者の利便性にも配慮した運営を行っているところであります。また、昨年6月には、本協会はADR法に基づく法務大臣の認証を得たADR機関となっており、万全を期した運営を行っているところであります。
 一方、利用者の利便性を高め、速やかな苦情処理、あっせん手続を実現するために、昨年1月から、金融商品取引法上の他の自主規制機関、具体的には、金融先物取引業協会、投資信託協会、日本証券投資顧問業協会、日本商品投資販売業協会と一緒に、フリーダイヤルによる受付窓口を一本化しております。加えて、今後この横断的な機能をさらに実質化するとともに、中立性、公正性を高めるため、本協会の証券あっせん・相談センターを証券・金融商品あっせん相談センターとして独立させまして、他の四つの自主規制機関の所管する苦情あっせん機能との一本化を図ることを予定しておるところであります。
 今回の法律案における金融ADR制度は、私どもの今後の苦情あっせん機能の整備拡充への取り組みの延長線上に位置づけられるものと理解しております。
 最後に、本協会の業務につきまして申し述べたいと存じます。
 御承知のとおり、本協会の組織は、証券戦略部門と自主規制部門とに分かれております。証券戦略部門とは証券市場の健全な発展を推進する業務、自主規制部門は証券市場の公正かつ透明性、信頼性の高い市場運営を推進する業務と言うことができ、いわば車の両輪のごとく機能することが求められております。
 本協会としては、今後もその自律性、専門性等の特性を生かしつつ、法令を補完し、適切に機能するよう種々の課題に取り組んでまいる所存であります。
 以上、いろいろ申し上げたわけでございますが、私ども証券界といたしましても、さらなる証券市場の活性化に取り組んでまいりたいと存じますので、引き続き御理解と御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
 以上で私のごあいさつとさせていただきます。(拍手)
○田中委員長 ありがとうございました。
 次に、三國参考人にお願いいたします。
○三國参考人(株式会社三國事務所代表取締役) おはようございます。三國事務所の三國でございます。
 私どもは、83年7月より、三國債券格付情報を国内及び海外の投資家向けに提供してまいりました。私は、投資家のために格付ランク情報と格付の理由を説明いたします財務諸表分析を提供する仕事を、26年間にわたってやってまいりました。その立場から、今回の金融商品取引法改正案のうち、信用格付業者に対する公的規制の導入について、私の意見を述べさせていただきたいと考えております。
 今回、公的規制として、登録制の導入、登録業者への規制、監督、無登録業者の格付を利用した勧誘の制限をうたっております。登録制の導入は、金融行政による信用格付の利用に呼応するものであると理解しております。ただ、私どもの三國格付は、投資家、正確に申しますと融資、企業間信用等の与信先の管理ということになりますけれども、投資家向けの信用情報を提供するサービスという立場にあり、当初より金融行政での活用の枠組みの外に存在してまいりました。したがって、金融行政における格付の使われ方がどうであるか、そのために登録が必要かどうか等につきましては、当事者ではございませんので、特段の意見はございません。
 格付は、本来、投資家が投資の際に参照するものであります。そこに格付の最大の機能が存在いたします。この点において、いわゆる依頼格付、起債会社が依頼し、起債会社が格付費用を負担する格付でございますが、それであろうと、勝手格付、投資家の依頼により投資家が費用を負担する格付でございますが、両者においては違いはないと考えております。行政が利用する指定格付機関の格付あるいは登録業者の格付であろうと、指定外の格付、無登録業者の格付であろうと、いずれも投資家に参照してもらうことを最終的な、そして最も大切な機能と考えています。
 そこで、投資家の利用に絞って幾つかのポイントを申し上げたいと考えております。
 格付が扱っております信用リスクの判断は、本来、投資家が自分で下すものであります。投資家が自分で信用リスクを判断し、自分で投資を決めるからこそ、自分で責任をとることができます。具体的には、社債が債務不履行となり損失が発生した場合に、投資家がみずから納得して損失を甘受することができるというわけでございます。
 したがって、投資家が自分で判断できないことを格付会社がかわってやるのかというと、そうではないと考えております。もし判断の代行をするのであるならば、投資家は格付会社の格付に依存するしかないということになります。この時点で格付は、一つの意見ではなく、専門的な権威のある意見であり、投資家は自分で考えずに格付に従うしかないということになります。これは、投資家が判断する余地をなくしてしまうという意味で問題があると言わざるを得ません。
 専門の格付会社の役割は、投資家が判断できないことをかわりに判断することではなく、数多くの銘柄、企業について、長期にわたって信用リスクのユニバースを描き、比較感を提供することにあると考えております。私どもの場合、現在約1100社の格付を行っております。
 投資家が自分の意見を持ち、多くの意見を参照できることが、市場を通じた価格形成にとって不可欠であります。投資家が自分の意見を形成するときに、格付会社の格付を参考にいたします。したがって、信用格付はあくまでも一つの意見にすぎないという立場を守り切ることが極めて大事なことはおわかりいただけると思います。
 私どもは、金融行政に利用されることを目的としておりません。その枠組みの外で投資家向けに格付情報を提供することを仕事としてやってまいりました。したがって、全く一つの意見にすぎないという立場を守れます。しかし、金融行政で利用される格付あるいは登録業者の格付には、一つの意見以上のものであると受けとめられる危険性があることは確かです。したがって、一つの意見にすぎないという立場をこうした格付ではどうしたら貫徹できるかという問題はありますが、いずれにしろ、市場にはさまざまな意見が存在していることが望ましいと考えます。
 一つしか意見がないと極めて危険な状況が生まれることは、一昨年来の米国サブプライムローン関連商品の格付の問題が示したとおりでございます。したがって、例えば社債が発行されたときには、登録格付業者による取得格付があり、登録とは無関係な例えば三國格付があり、あるいは格付ランク以外の形で提示される信用リスクについてのさまざまな意見も存在するという状況があってよろしいのですし、また、こうした多様な意見が混在することが大事だと考えております。
 昨年来の議論として、問題がある格付会社が放置されるのはいかがなものか、厳しく監督して規制すべきという意見がございます。私は、規制、監督ではなく、規律を与える役割が必要だと考えています。それは、基本的に市場、マーケットが果たすものだと考えております。例えば、妥当性を欠く高過ぎる格付、低過ぎる格付、不十分な分析による格付などは、市場参加者の役に立たず、参照されないことになるでしょう。まともな格付こそが投資家によって参照されていく結果、規制、監督という形をとることなく、市場自体が規律を働かせていくことになることが正しい道だと考えております。
 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
○田中委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
【佐々木議員質問部分】
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。貴重な御意見をありがとうございます。
 まず、犬飼参考人にお伺いをいたします。
 ある雑誌にこのように書かれておられるわけですが、全体として見ると日本の金融サービスにかかわる相談や苦情対応、紛争解決はばらばらで不十分で、個人など利用者の立場からは使い勝手が悪い、問題が起こったときに相手の金融機関に相談しても泣き寝入りとなる、一つの金融機関の窓口であらゆる種類の金融商品が販売されているため、苦情を受けてもそこだけでは対応できないということで、二回、三回たらい回しにされる、このような実情を指摘されまして、やはり包括的で機能横断的な金融専門ADRによる紛争解決が望ましい、こういうふうに指摘をされて、私もそのとおりだと思うんです。
 今回の法案の中身は、先生の立場から見てどの程度の段階にまで来ているのか、その辺の評価をまずお聞かせいただきたいと思います。
○犬飼参考人 佐々木先生、御質問ありがとうございます。また、私の書いたものをお読みいただいて、本当に恐縮でございます。
 御質問でございますが、包括的、横断的なADR、望ましいものとしてそういうものがあるわけですけれども、では、今回の法案の中身というのはどこに当たるのか、どの辺なのかという御質問であります。
 先ほど来、何回か私御返答申し上げたんですけれども、非常に重要な一里塚であるという言い方をさせていただいております。第四コーナーでないことは確かですけれども、第一コーナーなのか第二コーナーなのか、そこは非常に難しい問題と思います。ただし、これをやらないとその次のステップに行かないという意味においては、極めて重要なステップ、これが今回法案の中身に入っているという理解でございます。
 そういう意味でいうと、縦割りのADR、そのまま残しているではないかということではありますけれども、法案をよくお読みいただきますと、今回の指定紛争解決機関というものは、必ずしも縦割りの、特殊な業界の、ある業界部分のADRのみをやるということでなくてもいいわけですね。これは非常に重要な進展だと思いますけれども、そこの、新設かどうかわかりませんが、手を挙げて指定機関となるADR機関が、やる気さえあれば横断的な業種、業態のADRを引き受けることも、実際、今回の法案でも可能になっております。そういう意味において、これは非常に重要な進展ではないかというふうに評価している次第でございます。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 原参考人にお伺いします。
 今、紛争の現状というのは、非常にふえているというふうに聞いております。今までの、金融関連の協会を中心とするADRが、例えば全銀協の場合は、2007年度ですけれども、相談件数が3万8700、これに対して苦情申し立て件数が2174、紛争申し立て件数がたった1ということですね。日本証券業協会の場合は、それぞれ6438、773、173。これは比率としては、紛争申し立て件数はかなり高い。
 それぞれのADRの特徴というのはあると思いますが、なぜこういう差が生まれるのか。今までの仕組みで問題点があるとすれば、どういうところにあるのか。その現状の評価をお聞きしたい。
 それから、金融といっても、簡保ですとか郵便局で扱う投資信託というのもトラブルもあると思うんですけれども、これは一体どういうふうに扱われることにすべきなのか。その辺も含めてお伺いしたいと思います。
○原参考人 今、銀行協会と証券の取り組みと比較してお話しになりましたけれども、このことがきっかけで、今回の改善のステップがスタートしたというふうに思っております。
 というのは、二通り手法があって、一つは、自分の協会の中で紛争解決まで自己完結でおやりになっておられるところと、それから、銀行協会は外部の弁護士会の仲裁センターに紛争解決の部分は依頼をされておりまして、それが非常に数は少ないですね。数が少なくて、一昨年度ですか、それでも二件あったんですが、一件は、当該銀行がテーブルに着かなかったために不調に終わって、一つは解決になった。非常に数も少ないということで、そういった外に出しての解決を図る方向ではなくて、もう少し自分の責任でやるというふうにした方がいいというので、今回のステップが組まれています。
 それから、簡保とか郵政の関係のところですが、これは今、金融トラブル連絡調整協議会にはオブザーバーみたいな形で出席はなさっておられるので、私はやはり、ぜひ全体的な仕組みに入ってきていただきたいと考えております。
 それから、ちょっと先取り的な回答になってしまうのかもしれませんが、この仕組みが制度設計されると消費者の苦情解決が随分進むのかというと、決してそうではないですね。半数以上は詐欺的な商法が多いので、これは未公開株もそうなんですけれども、円天もそうですけれども、ほとんどこの中に入ってこないので、金融トラブルが大半解決するかというと、決してそうではないというところは理解しておいていただきたいと思います。
 最終的には、私も犬飼先生と同様に、私どもはホップ、ステップ、ジャンプという言い方をしているんですが、ステップの段階だというふうに思っておりまして、やはりジャンプの段階にぜひ進んでいただきたい、これはぜひ附帯決議にでもつけていただきたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。
 原参考人にもう一点ですけれども、金融行政全般について、消費者の立場から何か注文があれば言っていただきたいと思います。
○原参考人 金融行政にはたくさん注文があります。これは、消費者庁ができましたら、おいおいにまたやっていきたいとは思っているんですが、まず、消費者にとって大変不親切なんですね。
 金融庁設置法の中には利用者の保護とか利便と書かれているんですけれども、金融庁のホームページのトップを見ると、消費者に向けた顔というのは、教育のところはあるんですけれども、例えば今回の大和生命の破綻でどんなふうなことになったのかとか、三菱UFJ証券の個人情報の漏えいの話がどうなったのかなと思って金融庁のホームページをあけても、全く情報はないんですね。
 やはり消費者に対しての情報提供は確実におくれていると思いますし、それから、今回の苦情・紛争解決の仕組みをとっても、銀行が変額個人年金保険を売って、これを保険と思わずに買ってしまった人たちの窓口でのトラブルが多かったですけれども、これは今の仕組みの中でも多分見えてくると思うんですが、保険の不払いは、このADR法の整備で見えてくるかというと見えてこないですね。今回の保険の不払いの発覚は偶然の産物なんですね。
 ただ、消費生活センターでは、生命保険の苦情相談というのはいつも20位のあたりに、ワーストトゥエンティーのところですね、ずっと何十年も続いているわけなので、ここを分析できるともっと早くに保険の不払いの問題は見つけられたかなというふうに思うんですけれども、多分今のこの法整備の中では見つけ切れないので、こういった大きな問題にどう取りかかるのかというのは、消費者から見ると、相変わらず金融行政に課せられている課題だというふうに私は考えております。
 以上です。
 消費者庁答弁になっているかもしれないですけれども、どうぞよろしく。
○佐々木(憲)委員 どうもありがとうございます。
 それでは次に、安東参考人にお伺いをいたします。
 証券業協会の紛争処理でありますが、先ほど私数字を紹介しましたけれども、苦情処理に対して紛争処理という機能が、比較的ほかの業界よりは比率は高いという感じがいたします。
 それで、その違いを確認したいんですけれども、日証協の場合の法的な根拠、何かほかと違うんじゃないかと思うんですが、その辺はどうなのか。それから、実態面で、体制としてはどういう違いがあるのか。それから、参加している企業に対して、どの程度の独立性と権限を持って指導し得る状況にあるのか。この辺が、ほかの銀行あるいは保険と比べるとどうも違うのではないか。まず、その特徴を説明していただきたいと思います。
○安東参考人 お答えいたします。
 証券業、証券にかかわる苦情というのは、やはり変動商品を扱っているものですから、買った買わないという段階から、非常にいろいろなケースがありまして、いわゆる紛争解決といいますか、そういった取り組みは、私どもとしてはまず1973年から協会内にスタートしております。
 その後いろいろ経まして、先ほどから申し上げますように、昨年の6月には、いわゆる法務大臣認証のADRというものを正式に協会が受けたというところで、ほかとの違いといいますと、まず構成メンバー、これは、業界あるいは証券会社出身の人を決してその中に入れていない、まず公正性を担保しているということと、それから弁護士、これは先ほど申し上げましたけれども、全国で31人の弁護士と契約をして50カ所の相談場所を設置しているということで、実質的にそういう意味での紛争解決の場になっている。
 あと大事なことは、このADRが、顧客のコストが非常に低いということですね。金額によってコストは違いますけれども、通常の裁判と比べますと非常にコストが低い、かつ適切な判断をするというようなことで、解決件数が増加しているということだろうと思います。
 そういう仕組みをとっているのが一番大きいのではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 証券業界はこれまでもいろいろな不祥事がありまして、あるいは社会的にも非常に指弾されるような事態も発生したことがありました。今回、こういう体制をつくるきっかけになったのは何かあったと思うんですけれども、それは何か言っていただけますか。
○安東参考人 きっかけは、やはり日本の中において市場といいますか、証券というものがより深く理解されて、よりその機会が高まっていくということをするための前提として、まず証券会社が信頼されることが極めて重要である。
 第二番目に、投資者に対するいろいろな教育でございますとか、そういった啓蒙活動も重要であるというようなことで、これはかなり年数をかけて継続的にやってきておるわけでして、その中の一環として、顧客との紛争等につきましても、やはり中立的な立場を完全に貫くようなものをつくる必要があったというようなことで流れてきていることだと思っています。
○佐々木(憲)委員 私もきのう、この法案質疑の中で金融庁にも確かめたんですけれども、紛争処理で解決したのはこうだというふうに数字が出るんですけれども、一体その中身は何だろう。銀行やあるいは証券会社、保険会社の言うことが通った、説得したということで、消費者が説得されてしまって解決したというのは果たして解決なのか。
 やはり、消費者自身の申し立てに真摯に対応して、その期待にどうこたえるかというのが一番基本だと思いますし、また第三者的な性格をしっかり持って、権限を持って業界に対して指導できる、そういう体制が必要だというふうに思っております。これは今回第一歩ですけれども、さらに横断的な、包括的なものというものが求められてくるというふうに思っております。
 最後に三國参考人にお伺いしますけれども、アメリカの金融バブルというのが非常に発生をした結果、世界じゅうから資金を集めて、あのような崩壊状態が生まれて、大変な事態にサブプライムローン以降なっているわけです。そのときに、格付会社の問題というのが大変大きな国際的な問題として指摘されているわけです。
 先ほど御説明では、これは投資家の自己責任の問題というのが基本なんだ、こういうふうにおっしゃいました。アメリカのああいう事態を発生させた格付会社の責任というのはどのように認識をされているのか。問題は投資家だけだよということではないと思うので、やはり仕組み上もいろいろな問題があったのではないか、今指摘されておりますけれども。
 どのように見ておられるのか、改善すべき点は、どのような点が改善すべき点なのか、格付会社の側からどういうふうにそれを見たらいいのか、お聞かせいただきたいと思います。
○三國参考人 質問、どうもありがとうございます。
 まず第一点ですが、先ほども申し上げましたけれども、私どもは直接、仕組み債の格付をやっておりませんから、その点、私が知り得る話というのは、要するに報道されている記事を読んでの話、若干感想みたいなものだということで御了解していただきたいと思います。
 格付会社の責任ということでございますけれども、格付というのは、先ほども申し上げているようにあくまでも一つの意見でございまして、一つの意見であるということは、格付会社は、社債が債務不履行になってもその社債を肩がわりするようなことは絶対しない、要するに、あくまでも一つの意見だということでもともとやっている話でございます。ということは、私の方から見ておりますと、先ほども御質問がございましたけれども、結局、格付会社が一つの意見であり続けるために条件というのがあると思います。
 社債の格付の場合は、アメリカの場合でもそれなりの信頼を得てきて今日に至っていると思いますけれども、その場合にありますことは、企業内容開示制度というものに基づいて情報がだれでも手に入る。それから、その分析手法が100年以上の歴史があって、皆さん大体そこそこの専門家の方が御理解している。その中で意見が出てくる。だから、いっぱい、たくさん意見がありますから、格付会社の格付自体が高過ぎると必ずチェックされるというんでしょうか、そういうことが起こり得るわけです。
 ところが、今回のように、企業内容開示制度の対象外の私募債みたいな形のときには、これは格付会社がオリジナルのデータをもらう。オリジナルのデータについて、企業内容開示制度みたいに粉飾決算とかそういうものを禁止するような、そういうことができていないというんでしょうか、恐らくそうだろうと思います。
 それからもう一つは、コンピューターモデルがだれもがわかるというわけじゃなくて、ごく、仕事に従事している方々しかわかりにくいということでやりますと、一つの意見というものが、要するにいつの間にやら非常に権威のある意見になってしまうというんでしょうか、そうなりますと、投資家もその権威ある意見に引きずられていくというんでしょうか、それで反対意見とかいろいろな意見が出てこないということになっていると思います。
 したがって、今回もいろいろ改善策が議論されておりますけれども、一つは、やはり開示制度のもとでやるべきであったんじゃないかというような議論というのは結構あると思います。
 それから、これは私に聞かれれば私はこういうふうに答えざるを得ないんですけれども、格付自体が確かに、今回のサブプライムローン絡みについては若干不正確だとかそういう議論が、不正確というか高過ぎたとかいう議論はあるかもしれません。さりとて、金融行政が格付会社に対して、適切な格付をしなさいということを法律で義務づけてみてもなかなか大変じゃないか。野球のピッチャーにストライクゾーン以外は投げちゃいけないと法律をつくっても、それはどうしようもないというんでしょうか、それに似た話だと思います。
 ですから、マーケットというのは、それぞれの方が自己責任で損をするという世界でありましたら、みんなが一つ一つの意見を持つ、それができるような仕組みになっているということが基本じゃないかというふうに考えております。
 どうも失礼しました。
○佐々木(憲)委員 どうもありがとうございました。

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