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金融(銀行・保険・証券) (金融消費者保護)

2009年04月15日 第171回 通常国会 財務金融委員会 【509】 - 質問

金融商品取引法改正案 消費者の利益にたった紛争解決を

 2009年4月15日、財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、金融商品取引法改正案に盛り込まれた「金融分野における裁判外紛争解決制度」(金融ADR)について、「消費者の利益に立ち、公平に運営される紛争解決制度を」と求めました。
 佐々木議員は、現在の紛争解決制度が、金融機関の代弁者として苦情を聞き、「消費者を説得して、あきらめさせるかたちで『解決』をはかっているのではないか」と指摘しました。
 そのうえで、金融機関の不正を是正させる権限と独立性が必要だと主張しました。

 与謝野馨金融担当大臣は「金融機関に金融ADRの利用を義務づけ、資料提出や結果尊重などの偏面的な義務を課す」と述べました。
 また、「指定紛争解決機関は、公平な立場で手続きの進行や紛争の解決に向けた一定の対応を求められる」と答弁しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは法案の中身についてお聞きをしたいと思います。金融商品取引法についてでありますが、まず金融ADRについてでございます。
 現在も各業種ごとに紛争処理制度というものが設けられておりますが、相談の持ち込み件数と消費者の主張が認められて解決した件数、主な機関でよろしいですけれども、それを紹介していただきたいと思います。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 平成19年度におきまして、金融関連の業界団体等には約3万件の苦情が申し立てられておりまして、そのうち約6千件弱が解決をしております。また、256件の紛争が申し立てられておりまして、そのうち111件が解決をしております。
 このうち、主な業界団体等ごとに申し上げますと、まず、全国銀行協会におきましては、2174件の苦情が申し立てられ、そのうち359件が解決をしております。また、1件の紛争解決が申し立てられているものの、手続に入っておりません。
 生命保険協会におきましては、1万148件の苦情が申し立てられ、そのうち2501件が解決をしております。また、40件の紛争解決が申し立てられ、そのうち24件が解決をしております。
 日本損害保険協会におきましては、1万7447件の苦情が申し立てられ、そのうち1639件が解決をしております。また、26件の紛争解決が申し立てられ、そのうち8件が解決をしております。
 日本証券業協会におきましては、773件の苦情が申し立てられ、そのうち580件が解決をしております。また、173件の紛争解決が申し立てられ、そのうち73件が解決をしております。
○佐々木(憲)委員 その場合の解決というものの内容なんですけれども、銀行は2174件のうち359件が解決というふうにおっしゃいました。金融消費者の主張が認められて解決したという件数は、そのうちのどの程度あるんですか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 解決というのは当事者双方の和解という形になりますので、どういう内容で和解が行われたか、解決したのかということについての詳細は、個別のそれぞれの問題でございますので把握しておりません。
○佐々木(憲)委員 実はその中身が問題でありまして、例えば消費者機構日本常任理事の原早苗氏は、ある雑誌にこういうふうに書いているわけです。
 苦情件数の割に紛争件数が極端に少ない、なるべく顕在化させたくないという意識が働いているのではないか、苦情解決支援が業界寄りになっているのではないかという指摘に納得できる回答が得られない、銀行の苦情対応で典型的なのが、我々はちゃんとやりましたということを顧客に懇々と御説明することで解決とする方法、あなたはいかに説明を聞いていたか、そして書類に判こを押したかを諭し聞かせ、顧客はがっくりして帰っていく、これが銀行の苦情処理のやり方だ、こういうことを言っているわけです。
 したがって、苦情の申し立てというものはたくさんあるけれども、解決しましたという数が極端に少ない。少ないだけではない。その内容が、消費者の利益に沿って解決をしたものは非常に少ない。銀行が説得して、あなたの方が悪いんですよ、私たちは正しいんですよ、こういう立場でやって解決をしたと称しているのが多いのではないか、こういうふうに指摘をしているわけでございます。
 私は、今の紛争処理の解決の仕方というのを、今回の法案でどのように正せるのかというのが問われるというふうに思うわけであります。
 やはり、公平に運営される紛争解決制度が必要でありますが、その紛争を解決する主体となるべき機関の性格、これが非常に大事だと思うんです。例えば、銀行の側にまずいという点があればそれを指摘して是正させる、最低限そういう権限がなければならないというふうに私は思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○与謝野財務・金融担当大臣 金融ADR制度においては、金融機関に金融ADRの利用を義務づけるとともに、資料提出や結果尊重などの片面的な義務を課すこととしております。
 このような規定に基づきまして、指定紛争解決機関は金融機関に対して、公平な立場で手続の進行や紛争の解決に向けた一定の対応を求めることができ、紛争解決の実効性の確保が図られるものと考えております。
○佐々木(憲)委員 では具体的に聞きますけれども、金融ADRの資金はどこからの拠出によるものなのか、それから業界からの独立性というのはどのように保障されるか、これをお聞きしたいと思います。
○与謝野財務・金融担当大臣 金融ADRに関する費用については、顧客に過大な負担がかからないように、主として金融機関より徴収する負担金で賄うこととされております。
 このため、金融ADR制度においては、紛争解決手続を実施する紛争解決委員について、少なくとも一人は弁護士等を含めるとともに、当事者と利害関係を有する者を排除することを求めることとしております。また、指定紛争解決機関が公正かつ的確に業務を遂行できるよう、主務大臣が指定、監督を行うこととしております。これらにより、金融ADRの中立性、公正性は確保されるものと考えております。
○佐々木(憲)委員 金融機関に対して、情報開示を求める権限を持っているかどうか、もう一度確認したいと思います。
○与謝野財務・金融担当大臣 本法律案は、金融機関に金融ADRの利用を義務づけるとともに、紛争に関する説明、資料提出の片面的な義務を課しており、これにより、指定紛争解決機関は、金融機関に対し、紛争に関する情報提供を求めることが可能となっております。
○佐々木(憲)委員 この問題について、消費者の立場からいろいろ問題提起をしております、先ほど御紹介した消費者機構日本常任理事の原早苗氏を参考人としてぜひお呼びいただいて、御意見をお聞かせいただければと思いますが、検討していただきたいと思います。
○田中委員長 また御検討させていただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 理事会でしっかり検討してください。
 次は、資金移動サービスの問題です。
 これまで10年間、銀行以外が行う資金移動サービスというのはどのくらいふえたのか。主なものとして、収納代行サービスと代金引きかえサービス、この二つについてお答えいただきたい。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) お答えいたします。
 収納代行サービス及び代金引きかえサービスの市場規模についてでございます。確たる統計はございませんが、2007年度における主要コンビニ4社の収納代行の取扱高の合計は、私ども推計をいたしますと、約6兆円でございます。主要代金引きかえ事業者2社の取扱高の合計額は、約2兆円となっているものと承知をしております。
○佐々木(憲)委員 配付した資料の最後のところに、例えばコンビニエンスストア収納代行取扱高という統計がありまして、2002年度1兆9700億円、これが2006年度には5兆6267億円と急増しているわけであります。
 そこでお聞きしますけれども、現行の法制度のもとでは、銀行以外の者が為替取引、資金移動を業として行うということはできないというふうになっていると思いますが、そのとおりですか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 現行法のもとでは、銀行等のみが為替取引を行うことが認められておりまして、いわゆる収納代行サービス等の事業者を含めまして、為替取引を行うことは認められておりません。
○佐々木(憲)委員 ということは、現在、銀行にしか認められていない事業、為替取引を銀行以外のコンビニ等々が行っている、これは違法行為を行っている、こういうことになりますか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 御指摘のいわゆるコンビニ収納サービスでございますけれども、そのサービスの態様によりましては、為替取引に該当する可能性はあり得るのではないかとも考えられますけれども、現時点におきまして、利用者保護の観点から大きな問題が生じているとの状況にあるとは承知しておりませんで、金融庁としては、必ずしも違法であるとの判断は行っているところではございません。
 しかしながら、こうしたサービスについて、利用者保護に欠ける事態や資金決済システムの安全性等が損なわれる事態が生じることがないよう、引き続き注視してまいりたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 合法とは認められないけれども、つまり違法なんだけれども、実際にはもうはびこってしまう、これだけ広がっていると。それで、問題が起こっていないからまあいいだろうというのは、これもちょっと何か私は理解できませんね。
 例えば、このお金をどこどこに届けてください、例えば税金の納付というのがありますね、これを行うということは、これは現在の法のもとでは違反なんでしょうか、あるいは合法とはっきり言えるんでしょうか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 自治体が地方税の納税にコンビニ収納を利用するというような場合であろうかと思いますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、私どもとしては、サービスの態様によりまして、為替取引に該当する可能性もあり得るものであるというふうには考えておりますけれども、現在は、現時点において利用者保護の観点から大きな問題が生じていないというようなことで、利用者保護を図るための制度というもので考える場合に、これを必ずしも取り込むということではございませんで、金融庁としては、これについて、現段階において必ずしも違法であるとの判断を行っておらないということでございます。
○佐々木(憲)委員 銀行しかできないわけでしょう、為替取引や資金移動サービスというのは。銀行しかできないのにほかがやっている、ほかの業界がやっている。これは現行法では違法である。しかし、問題が起こっていないので法違反ではない。何かよくわからぬですね。それが本当によくわからないんですよ。
 例えば、コンビニからの納税は、国税はやっているんですか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 国税についてもやっております。
○佐々木(憲)委員 違法なのかグレーゾーンなのかというのは、どうもはっきりしないんですね。銀行しかできないという法律を持っていながら、銀行以外の者がやって、それがどんどん広がってしまった。当初問題にせずに、こんなに広がってしまって、まあ余り問題も起こっていないようだから違法とは言わないようにしよう、しかもそれを国税庁は利用しておりますと。これはよくわかりませんね。
 大臣、どう思いますか。
○与謝野財務・金融担当大臣 払う方は便利になっていいんじゃないかと思います。
○佐々木(憲)委員 いや、聞いているのはそういうことじゃなくて、便利なことは便利ですよ、それは。要するに、法的に一体どういう位置づけなのかというのを聞いているわけです。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 送金業、法律的には為替取引というものでございますけれども、これは銀行法第二条に規定をされておりまして、この銀行業とは次に掲げるいずれかを行う営業をいうというところで、「為替取引を行うこと。」というのが入っております。しかしながら、為替取引というものの定義が実は法律上ございません。
 そこで、平成13年に最高裁の決定がございまして、これによりますと、「「為替取引を行うこと」とは、顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行することをいう」ということでございますけれども、この為替取引については、こうした見方は出ておりますが、これをどう現実のさまざまなサービス提供について当てはめるかということについては、いろいろと議論があるところでございます。
○佐々木(憲)委員 最高裁の判例ですか、今のは。そこでは、このお金をどこどこに届けていただきたいということで、特定の業者を介して届けてもらう、そういう資金の移動の依頼、これが為替取引であると。
 そうすると、もう法的にはそういう定義が明確になされているのに、いや、いろいろな解釈がある、いろいろな解釈があっていいんですと。こういうのも本当にあいまいで、非常に私はおかしいと思いますよ。どうも理解できない。便利だからいいと大臣はおっしゃいましたけれども、やはりこれはおかしいですよ。きちっとけじめをつけてもらわないと。
 そこで、もう一つ確認します。
 資金の保全義務であります。銀行については、送金について資産の保全が義務づけられていると思いますけれども、その内容はどういうふうになっておりますか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 銀行の場合には、送金に係る資産の保全というものはございませんで、銀行の全体としての健全性を保持するという規制からそれを担保するという仕組みでございます。
 一方、資金移動業につきまして、今回御提案をしている資金移動サービス、これについて資産の保全を義務づけるということでございます。
○佐々木(憲)委員 今、決済に関する新しいサービスというのは、お配りした資料のように非常に多様化しておりまして、どんどん拡大しているわけです。一方で、破綻が起こった場合の消費者保護などは法的に保障されていない。
 この法案は、消費者保護制度を一定程度盛り込むというものでありますが、この表に挙げたものは、すべて消費者保護制度の対象になるんですか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 私どもとしては、本法案におきまして、銀行のみに認められている為替取引を銀行以外にも認めるということでございまして、現行の商品券やプリペイドカードと同様に、コンピューターのサーバーなどで管理する前払い式支払い手段についても規制の対象とするということでございます。
 ここに資料お示しの、主なコンビニエンスストアによる収納代行の取り扱い、これがどうであるかについては必ずしも、本法案の保護の対象になるかどうかについては、個別の問題でもございますので、現段階でお答えはできないということでございます。
○佐々木(憲)委員 最後、言葉がよく聞こえないんです。いや、聞こえますか。何を言っているのかよく聞こえない。そうなのかそうでないのかというところが聞こえないんですよ、一番肝心なところが。
 具体的に言いますと、例えばコンビニとか運送会社などはどうなるんですか。対象になるんですか、ならないんですか。はっきり言ってください。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) もう一回お答えいたします。失礼しました。
 本法案は、銀行等に認められてきた為替取引を、銀行等以外の者にも行うことができるよう、新たな制度整備を図るというものでございます。
 代金引きかえサービスや収納代行サービス等の定義は必ずしも明らかではございませんが、現行法令において適法に行われているサービスに対して、本法案が新たな義務を課すというものではございません。
 なお、本法案に基づく登録を受けた事業者が破綻した場合には、資産保全等の措置によりまして、利用者は、本法案による保護が受けられるということになるわけでございます。
○佐々木(憲)委員 聞いたことに答えてくださいよ。運送会社とかコンビニが入るのか入らないのか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) ですから、収納代行サービス業につきましては、これが現在の法に基づいて適法に行われているというサービスでございましたら、これについては、新たな今回の法案の枠組みの中には入ってこないということでございます。
○田中委員長 ただいまの佐々木憲昭君の御質問に対して、もう時間が来ておりますけれども、もう少し明確な御説明なり答弁ができないものか。内藤局長、どうでしょうか。私も、聞いていてちょっとわかりづらい。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 現在の法律に基づいて、為替取引に当たるかどうかは先ほど申し上げましたけれども、収納代行サービスにつきまして、それが非常に、為替取引に当たる可能性もある。しかしながら、私どもとしては、現在のサービスについては必ずしも違法であるとは考えておりません。
 そういうことから考えますと、現在、このサービスは、引き続き適法に行えるものであろうと考えておりますが、一方で、今回提案をしております送金業というものについての枠組みの中には今のところ入ってこない。もちろん、登録をして入ってくるということは可能ではございますけれども、現在のところ入ってこないということですので、これについての新たな制度の枠組みについての法的な保護は保障はされておりません。
○佐々木(憲)委員 要するに、当事者の業界が金融審議会の中で、うちは入れるな、外せと言って大きな声を出してやった。大きな声かどうかわかりませんけれども、かなり強力に主張して、その結果これが後退をしたというのが実態じゃないんですか。
 私は、そんないいかげんなやり方で対象を狭めたり広げたり、こんなでたらめなやり方はないと思います。法の解釈も非常にあいまいだし、この法案というのは一体何なんだろう、何を決めようとしているのか、そこを今後さらにしっかり詰めていきたい。
 以上で終わります。

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