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金融(銀行・保険・証券) (銀行株式取得機構)

2003年06月27日 第156回 通常国会 財務金融委員会 【213】 - 質問

「銀行株式取得機構」を改悪する与党案、銀行の負担をなくし一方的に国民に損失負担を押しつけ

 2003年6月27日「銀行株式取得機構」を改悪する銀行株式保有制限法一部改正案の審議が財務金融委員会で始まり、佐々木憲昭議員が質疑に立ちました。この法案は、自民党、公明党、保守新党の与党3党が共同で提案したものです。

 「銀行株式取得機構」は、2001年に法案が成立し、02年1月に発足したもので、銀行が保有する株式を、公的資金で買い上げる仕組みを盛り込んでいます。昨年の法改正では、事業会社が保有する銀行株を買い上げる仕組みも加わっています。
 銀行は、「機構」に株式を売却する際に、売却額の8%相当を拠出金として負担することになっており、8%以上株価が下落して損失がでた場合、国民負担で損失を埋めることになります。与党案は、この売却時拠出金を廃止し、損失をすべて国民負担でまかなおうというものです。
 佐々木議員は、今回の与党案が、銀行業界の要望を受けて、銀行業界の言い分を丸のみして提出されたものだと指摘した上で、「機構」設立の法案審議の中で、8%の銀行拠出金について、政府が、「最終的には国民負担に極力つながらないようにする」(柳澤当時金融担当大臣)ために導入したものだと繰り返し答弁していたことを示し、拠出金の廃止を批判しました。
 提案者の自民党・熊代昭彦議員は、「私はもうかったときのことばかりを考えるタイプ」だと述べて、損得の「両様の可能性がある」と強調しました。佐々木議員は、「(与党案は)銀行負担を国民負担に転嫁する仕掛けをつくった、これしか言いようがない」と提案者の姿勢を批判しました。
 その上で佐々木議員は、国民負担につながる「特別勘定」の買い取り額約2200億円(今年3月末時点)から350億円の評価損が出ていること、これに対し、売却時拠出金が173億円、当初拠出金107億円であり、差し引き71億円の赤字となっていることを金融庁に答弁させ、売却時拠出金の廃止が、いかに国民負担に直結するかを明らかにしました。
 また佐々木議員は、「機構」設立の法案審議の際には、政府が、国民負担につながらない「一般勘定」が主体であると説明していたにもかかわらず、「一般勘定」の実績がわずか1件で、「特別勘定」が主体になっていることを指摘し、「いったん国民負担の道をあけるとどんどん財政資金頼りになる。今回の経過で非常にはっきりしてきた」と述べました。

 さらに佐々木議員は、政府が「機構」設立の理由を、銀行に株式保有制限を新たに課すことから、銀行が放出した株を買い取るためだとしていたことを指摘し、「現在、保有制限を超えて株を保有している銀行は何行あるか」と金融庁に問いました。五味金融庁監督局長は、2003年3月期で、みずほコーポレート銀行、三菱信託銀行、UFJ信託銀行、りそな銀行、中央三井信託銀行、足利銀行、京都銀行の7行であると明らかにしました。佐々木議員は、今回の改正案に、株式保有制限の実施時期の2年延期が盛り込まれていることをとらえ、「結果的に、この特定の5行のための支援策ではないか」とただしました。
 これに対し、提案者の公明党・上田勇議員が、機構は保有制限をクリアした銀行からも株式を買い取ることになっている、と答弁したため、佐々木議員は、「結局、株式保有制限の実施という建前は全くどこかに行ってしまって、銀行支援のためには何でもやる、こういうものだということがはっきりした」と述べました。

 次に佐々木議員は、与党案が、事業会社が保有する銀行株式の買い入れ上限の拡大を盛り込んでいることについて、改正する理由をただしました。
 02年の法改正で、事業会社が保有する銀行株の買い入れを機構の業務に加えた際には、与党提案者は、銀行は拠出金を出すけれども事業会社は出さない、そこで国民負担に極力つながらない工夫として、銀行からの買い取り額の2分の1を上限としたと説明していました。
 佐々木議員は、国民負担につながらないように設けた上限を拡大することは、「国民負担に直結しても結構だ、ということだ。全く筋が通らない」と提案者をただしました。
 提案者が国民負担の問題について一切答弁をしなかったため、佐々木議員は、「要するに、銀行のためには何でもやってあげましょう、銀行株を持っている事業会社のためにもどんどんやってあげましょう、負担はすべて国民にかぶせましょう、こういう態度だということがはっきりした」と述べました。

 2003年7月4日の財務金融委員会で、銀行株式を公的資金で買い上げる「銀行株式取得機構」を改悪する銀行株式保有制限法一部改正案が採決され、採決に先立ち、佐々木議員が反対討論に立ちました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 今回の改正案の最大の問題は、既に議論もされておりますけれども、銀行の負担する売却時拠出金を廃止するというのが一つの大きな柱であります。
 まず、与党提案者にお聞きしますけれども、前回の委員会で提案理由説明がありました。この中に、こういうふうに書かれているんですね。「関係者からは制度を利用しやすいものとしてほしいという要望が寄せられております。」ここに言う関係者というのは、だれでしょうか。
○熊代議員 申し上げましたように、BIS規制の計算上、オフバランス化しないというようなこともございまして、総体的に魅力の小さい状況であるので、これは改善してほしいというような話がございました。例えば、全銀協の会長の会見などでもそういう御意向が表明されていたというのが一つだと思います。
○佐々木(憲)委員 要するに、銀行から言われたというわけですね。例えば、寺西会長の記者会見、4月15日を見ますと、「株式市場が低迷している中、売却に際し8%の拠出金が必要となることは心理的にも相当な負担に感じられるということはある」、こういうふうに言っていますし、三木会長、会長就任の記者会見、4月22日ですけれども、「保有株式の円滑な圧縮に向けて、もう一段の枠組みの工夫・整備が必要ではないかと考えている。」「銀行等保有株式取得機構が現時点では使いづらい点もあり、その改善をお願いしたい気持ちはある。」
 要するに、ことしに入りまして株が下がった、そういう事態に直面しまして、銀行業界から、助けてくれ、こういうふうに言われて、銀行業界救済のために出してきたということが今の答弁でよくわかりました。
 この法案は、まさに銀行業界の言い分を丸のみしたものだと言わざるを得ないと思います。株式売却額の8%相当を拠出するというこの売却時拠出金というのは、買い取り株式から損失が出た場合の穴埋めに使われていくというものでありました。8%を超えて損失が出たら、これは2兆円の政府保証に基づいて国民負担が発生する、仕組み上そういうふうになっているというふうに思いますが、現行の仕組みはそういうことで間違いないですね。
○熊代議員 一つお断りしておきたいのは、私ども、いろいろな要望をお伺いしますけれども、それはいろいろな団体がそれぞれの希望をお持ちでしょうけれども、その団体の御要望が国民経済上あるいは国民の福祉上大切な点である、役立つという観点で整理せざるを得ないですね。いろいろな要望がありますから、そんなものを全部聞いていたらどうにもならないわけでありまして、やはり、国民の福祉のために役立つということで判断するわけでございます。それを一つお断り申し上げたいと思います。
 先ほどの8%のことでございますけれども、確かに、出資金、設立時の拠出金と売却時の拠出金、これは万一損害が出た場合の穴埋めに使うわけでございますが、逆に利益が出た場合は、その倍まで、16%までお返しする。ですから、基本的には会員銀行等の自主的なものでございますが、これは政府保証をつけておりますけれども、そういうことでございます。
 私どもが今回の改正で意図しましたことは、期間を長くすることによって、8%の拠出がなくても、税金で穴埋めする確率は極めて低くなる、逆に、ある程度お返しして、税金にもプラスになる可能性も高いと判断したところでございます。
○佐々木(憲)委員 「関係者からは制度を利用しやすいものとしてほしいという要望が寄せられております。」というのが提案理由の説明でしたね。今の説明ですと、いろいろ聞いているとどうにもならないので、やはり銀行の意見だけ聞いた、こういうことがよくわかりました。
 それで、8%を超えて損失が出ると、私は損失が出た場合の話をしているわけです。そうすると、当然、国民負担になる、仕掛けはそうなっているわけです。8%の売却時拠出金が廃止されるというのが今回の法案でありますが、仮に買い取り株式から損失が出た場合に、金融機関による当初拠出金というのがありますね、その残高があればそれは使われるにしましても、株式の損失は大半が国民負担になるというわけでありまして、仕掛け上、これは否定できないことだと思うわけです。
 この8%がなぜ盛り込まれたかということでありますが、機構設立の法案審議の中で、先ほどからも少し出ていますが、柳澤金融担当大臣は、機構に公的支援を行う場合であっても、最終的には国民負担に極力つながらないようにすることが重要である、このような考え方に基づく諸方策を講じたものだと。つまり、国民負担に極力つながらないようにするためにあらかじめ銀行から8%の拠出金を積んでおくんだ、こういう説明をしていたと思うわけであります。つまり、売却時拠出金というのは国民負担最小化の方策として盛り込まれていた、このことは間違いありませんね。
○竹中金融担当大臣 当初の考え方というのは、御指摘のような点であったと思います。
○佐々木(憲)委員 そこでお伺いしますけれども、売却時拠出金というのは、国民負担に極力つながらないようにするために盛り込まれたものであるということは今確認しました。今回それを撤廃するわけですから、銀行の側の負担はなくすわけであります。つまり、その分はすべて国民にかぶってもらいます、そういう仕掛けに変えたということになりますけれども、これはこれでそのとおりですよね。
○熊代議員 先生は損したときばかりをお考えですが、私はもうかったときのことばかりを考えるタイプでございまして……(発言する者あり)いやいや、そういうことでございまして、両様の可能性があるということでございますから、万一損失が生じたというときには、それは国民負担になる。それは売却時拠出金と当初拠出金を超えれば国民の負担になるというのは間違いないわけでございますけれども、2倍まではお返ししますけれども、16%を超えて利益があれば、それは国民の所得になる、そういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 つまり、今は当初拠出金と売却時拠出金と二つあるわけですね、拠出金が。それで、損が出た場合、もうかった場合もあるとおっしゃいましたけれども、16%までもうかったときは、それは銀行が持っていくわけでしょう。8%以下に下がった場合には国民負担になるんですよ。
 ですから、これは本当に銀行本位のものだと思うんですが、それも今回8%分は廃止しますというわけですから、銀行負担がその分は吹き飛んでしまって、銀行負担がなくなるわけですね、その分。これは仕組みからいったって、だれが考えたってそういうことなので、つまり、今度提案してきたものは、銀行負担を国民負担に転嫁する仕掛けをつくった、これしか言いようがないわけであります。
 それで、具体的な数字を聞いてみますけれども、現在、3月末時点で結構ですけれども、買い取り総額、それが時価で幾らで、含み損が幾ら発生したか、それから、売却時拠出金が幾らありまして、当初拠出金が幾らあるか、この点、数字を示していただきたいと思います。
○藤原政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 特別勘定におきましての買い取り業務で買い取りました実績は、約2200億円程度でございます。3月31日時点でございますが、評価損としまして350億円、売却時拠出金が173億円、当初拠出金107億円。したがいまして、仮にその時点で締めたとしますと、差し引き71億円の赤ということになっております。
○佐々木(憲)委員 つまり、その時点で締めたとしますとということなんですが、これは仮定ですけれども、結局71億円というのが当初拠出金と売却時拠出金を超えているわけですね。今で締め切ってしまえば、国民負担が71億円というのが今の説明でありました。
 そうしますと、売却時拠出金をゼロにする、つまり、173億円をゼロにするということになると幾ら国民負担になるかというと、244億円ということになりますね、計算しますと。つまり、最初、3月末の時点で締め切ったら国民負担は71億円だった、しかし、売却時拠出金を、8%だったのをゼロにして、すべてこれは国民に負担してもらいますということになりますと、244億円の負担になる、こういうわけでして、3倍以上の国民負担になるということになるわけです。この数字は間違いないですね。
○藤原政府参考人 先ほど申し上げましたのは、3月31日末時点のお話でございまして、その時点で清算するわけではございません。ずっと持っておりまして、今回……(佐々木(憲)委員「それは前提として言っているんですよ」と呼ぶ)かなりの時間を持つわけでございます。それから、その後株価等も回復しておりまして、例えば6月24日時点で申しますと、評価損は161億円まで戻っておりまして、差し引きまだ124億円、売却時拠出金とか当初拠出金を充てればプラスという状況に今なっております。
○佐々木(憲)委員 でたらめなことを言わないでくださいよ。173億円というのが売却時拠出金だと先ほど言ったわけでしょう。結局、差し引き国民負担になるのが71億円でありました。それがすべて国民負担になれば、244億円の国民負担になる。これは、そこで締め切った場合の数字を私は言っているんですよ。その数字自体は否定できない数字でしょう。それを聞いているんですよ。
○藤原政府参考人 先生御指摘のとおり、その時点で締めればそういうことでございますが、まだ現実に売っているわけではございませんで、したがって、最近の時点で評価すれば、そこは随分株価の上昇に伴いまして縮まってきておりまして、先ほど申しました三角71億円というのに合わせますと、例えば6月24日ベースでいいますと、それはプラス124億円という状況であるということを申し上げたわけでございます。
○佐々木(憲)委員 本当にいろいろごまかそうと必死になっておりますが、根本的にはこれは変わらないんですよ、多少株が上がっただけですから。そうでしょう。国民負担が本来の3倍ぐらいになるという事実は、これは何も変わらないわけです。多少株価が3月から比べると上がった、それはありますよ。この先下がるかもしれませんからね。
 ですから、私は仕掛け上の問題を聞いているわけであります。だから、6月4日付の読売などを見ますと、今回の改正によって「金融庁も「国民負担が生じるリスクは高まった」」こう言っているわけです。「銀行にとって使いやすくなる反面、国民負担が生じやすくなる懸念もある。」こういう記事が載っているわけでありまして、これは、国民負担をふやそう、銀行負担を軽くした分を国民にかぶせる、こういう仕掛けだということは、だれが見たってこんなものははっきりしているわけであります。
 次に、機構の買い取り実績についてお聞きしますけれども、特別勘定、一般勘定、この二つがある。特別勘定には政府保証がつくけれども、一般勘定にはつかない。このそれぞれの買い取り実績、数字を示してください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、特別勘定の方でございますが、平成14年2月15日から買い取りを3回にわたってやっておりまして、平成15年の4月25日までの間にわたりまして、合計で2181億円の株式買い取りを行っております。また、新たに平成15年の4月28日から平成15年10月31日までの買い取り期間を定めまして、現在買い取り業務を実施しておりまして、現時点での特別勘定での買い取り実績は2200億円となっております。
 また、一般勘定でございますが、一般勘定につきましては、主に証券会社によるETF等の組成、あるいは事業法人による自社株取得のための買い取り、これを媒介することを念頭に置いてやっておりますが、去る6月3日に、民間証券会社によりますETFの組成に際しまして、初めて67・5億円の買い取りの媒介が行われたところでございます。
○佐々木(憲)委員 結局、一般勘定はほとんどなくて、大部分が特別勘定ということになっているわけですね。法律の制定時の審議の中で、政府は、極力国民負担につながらないようにする方策として、特別勘定というのは特例的なものである、一般勘定の買い取りが機構の中心だ、それが業務の中心だと言っていたわけですね。これは間違いありませんね。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 一般勘定と特別勘定がございまして、極力、証券市場の育成等も踏まえまして、一般勘定で媒介を行っていきたいというふうに言っておりましたし、またそういうことを望んでおりました。
 しかし、残念ながら、一般勘定につきましては、買い取り希望の株と売り出し希望の株、そのミスマッチ等がございましてなかなかうまくいかなかったところでございますが、先ほど申しましたように、最近におきまして新たな事例が出てまいりましたので、今後それがますます伸びていくことを期待しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 一般勘定が使われなくて特別勘定が使われた、その理由は何ですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 一般勘定がなかなか使われなかったのは、先ほど申し上げましたように、買い取りを希望する銘柄と売り渡しを希望する銘柄の、なかなかそのマッチングがうまくいかなかったというようなところが大きな要因だと思っております。
 もう一つは、例えば、銘柄が合わなかったものもありますし、保有している銀行サイドが、株価低落の局面で、こういうものはまだ売りたくないというようなこともあったやに聞いております。
○佐々木(憲)委員 今の説明はよくわからない説明でありまして、実際上、特別勘定が使われてきた理由は政府保証があるからであります。どんどん下がっていけば国民負担になってしまうから、銀行は負担しなくていい、こういう仕掛けがあるから、当然、そちらに行くわけですよ。しかも、この特別勘定に買い取り拠出金が8%ついている、これも邪魔だ、それも外してしまえ、これが今回の法案の性格でありまして、余りにもこれは、銀行にとって使い勝手はいいかもしれないけれども、国民にとっては迷惑な話なんですよ、それだけ国民に対して負担が広がるわけですから。本当にひどい形になっていると思うわけであります。
 一たん国民負担の道をあけるとどんどんこういう財政資金頼りに改悪されるというのが、今回の経過で非常にはっきりしてきたと私は思うんです。これはとんでもない話であります。これをモラルハザードというわけであります。
 次に、銀行株式保有規制と機構の株式買い取り業務の関係についてお聞きしますけれども、機構の設立は、銀行の株式保有制限を新たに課すから、その放出した株を買い取るためだというふうに言われていました。これが立法の趣旨だったと思いますが、まずそれを確認したいと思います。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 当初政府で閣法として提出しました法律につきましては、銀行に対しまして新たに株式保有制限を課す、その際の、市場に与える不測の事態を避ける、いわばセーフティーネットとしてこの買い取り機構の買い取りを行うということでございました。
○佐々木(憲)委員 法律の条文でも、機構の目的として、銀行等による株式等の保有の制限の実施に伴う銀行等によるその保有する株式の処分により、「株式の価格の著しい変動を通じて信用秩序の維持に重大な支障が生ずることがないようにするため、銀行等の保有する株式の買取り等の業務を行う」と、第五条、こういうふうに確かに明記されております。
 当時、政府は、機構の設立の必要性を説明するために、大手16行で保有制限を超えて株を保有している、保有制限以上持っている、その額はティア1の1・6倍になるというデータを示しておられました。
 そこで、金融庁に聞きますけれども、現在、保有制限を超えて株を保有している銀行は何行ありますか。その銀行名を述べてください。
○五味政府参考人(金融庁監督局長) 15年3月期の決算短信に基づきまして、その他有価証券のうちの株式の保有額がティア1の額を超えている銀行、これを拾ってみますと、七行ございます。
 銀行名は、みずほコーポレート銀行、三菱信託銀行、UFJ信託銀行、りそな銀行、中央三井信託銀行、足利銀行及び京都銀行、以上でございます。
○佐々木(憲)委員 そうすると、大手で5行ということになりますね。地銀で保有制限を超えたところは当時からほとんどなかったわけでありますが、当時、私は、この法案審議の中で、機構を活用する必要があるのはほとんど大手銀行ではないかというふうに聞いたことがあります。大銀行支援策そのものだということで批判をしたわけですけれども、その大手行もこの2年の間に売却が進んで、保有制限を超えて保有しているのは今五行にとどまっているわけであります。
 今回の改正案は、株式保有制限の実施時期の2年延期というのを盛り込んでいますけれども、結果的に、この特定の5行のための支援策ということになるのではないかと思いますが、提案者、いかがでしょうか。
○上田(勇)議員 委員御指摘になったように、今、ティア1を超えて株式を保有しているのは、大手では五行でございます。まずは、その5行がティア1の範囲、制限の規制を満たすように株式を売却していくということが最優先の目的であることはそのとおりであるというふうに思っております。
 ただ、それだけじゃなくて、銀行が、ティア1以内であったとしても、多額の株式を保有しているということは、価格の変動リスクに対して、経営の安定性に対するリスクを伴うということでありますので、この保有機構におきましては、ティア1の制限を満たしている部分につきましても一定の要件のもとで買い取ることになっておりますので、そういう目的もあわせ持っているということを御理解いただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、今の答弁を聞いて大変驚いたんですけれども、株式をティア1の水準を超えて保有しているので、それを放出する、その受け皿といいますか、その対処のためにこういう機構が必要なんだということで提案をされていたんだけれども、しかし、今の説明を聞きますと、それだけじゃないと。つまり、銀行が持っている株式を、危ないところならみんな買ってあげるんだ、こういう説明に聞こえたわけであります。つまり、ティア1をクリアして、それ以内の株式も買い取る、これはもう一度確認しますけれども、事実ですね。
○藤原政府参考人 当初の閣法の仕組みでございますので私の方から御説明させていただきますが、ティア1を超えない銀行からも株式を買い取ることができるとしておりますのは、株式市場の動向等、株価が上がったりしますと銀行の自己資本に対する株式保有割合が変動する可能性があることなどを踏まえまして、銀行による株式処分に柔軟に対応できるようにするためにこういうことにしておるわけでございます。
○佐々木(憲)委員 要するに、できると、つまり銀行が持っている株なら何でも買える、こういうことですね。
 これはまたひどい話でありまして、この法案の趣旨は何なんですか。銀行が保有している株式の保有制限の実施に伴う、銀行等による、その保有する株式の処分を進めるために機構をつくったわけでしょう。制限があるから、その制限に対応してこういう機構をつくった。それなら、法案そのものの名前がおかしいんじゃないんですか。銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部改正法案、これは、条文というよりも、この法案のタイトルそのものを変えなければならぬのじゃないですか。銀行株式買い取り法案、こうすべきじゃないんですか。いかがですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 当初の法律におきましては、最終的には各銀行の株式保有額をティア1以内におさめるということでございますが、実は、その間に株価が上昇しましたり、あるいは不良債権処理に伴いましてティア1が減少したり、そういうような変動要素がございますので、最終的にはティア1におさめるという株式保有制限でございますが、その間の変動に対しまして、あるいはその状況の変化に対しまして柔軟に対応できるようにこういうふうにしているところでございます。
○佐々木(憲)委員 提案者に聞きますけれども、今回のこの改正は、結局、銀行が持っている株式を自由に買ってあげましょう、その制限はありません、こういう内容だということですね。
○熊代議員 銀行等の持ち株をティア1の範囲内におさめるという規制をするに伴いまして、しかし、それの間接の影響も含めて、株価の著しい変動に対してセーフティーネットをつくるというのが目的でございます。
 日銀の方は、ティア1を超えては買わないということははっきりしていますが、私どものこの法案の方は、ティア1を超えて買うこともある。しかしそれは、今答弁もございましたように、株価は常に変動するものでございますから、それに柔軟に対応できるようにということでございまして、そういう趣旨でございます。
○佐々木(憲)委員 本当にびっくりしましたね。この法案は、株式保有を制限する、そのために受け皿としてつくった機構だと思っておりましたら、銀行が持っている株はすべて買ってあげましょう、こういう法律だと。
 だから、東京三菱グループなんというのは既に保有制限をクリアしておりますが、その東京三菱の三木社長は、決算発表の記者会見で、機構が売却額の8%を徴収する拠出制度を撤廃したら利用するか、こう聞かれまして、利用していきたいと。なるほど、ティア1を超えている株ではなくて、ティア1をクリアして、その枠におさまっていても利用したい、こう言っている意味が大変よくわかりました。
 要するに、保有制限をクリアした銀行からも株を買いましょう、こういうことになっているということであります。結局、株式保有制限の実施という建前は全くどこかに行ってしまって、いわば方便でありまして、法律の目的に照らしても全くおかしな方向に中身が変わっている。銀行支援のためには何でもやる、こういうものだということが今の説明ではっきりしたと思います。
 私は、これはとんでもない話だ。何でそういうところに、国民の税金負担がふえる可能性があるのにどんどんつぎ込んでいくのか。よっぽど銀行から、いわばひもがついているというか強い圧力があったというか、そうとしか考えられない。
 もう一つお聞きしたいんですけれども、改正案にある、事業会社保有の銀行株式買い入れ上限の拡大についてお聞きしたい。
 現行法は、機構の買い取り対象として、持ち合い解消に伴い事業法人が放出する銀行株等も認めております。ただし、事業会社から買い取る銀行株式の価額は、銀行から買い取る事業会社株の価額の2分の1を上限としている。
 上限を設けた理由について提案者にお聞きしますけれども、昨年の改正案の審議の中でこれはどう説明していたんですか。
○上田(勇)議員 昨年の改正時の提案者ではありませんので、そのときの記録等に基づきましてお話をさせていただきます。
 昨年の株式保有制限の改正時には、銀行と事業法人が相互に保有し合っている株式のうち、銀行が保有する事業法人株と事業法人が保有する銀行株のトータルの比率を勘案して、機構が事業法人から買い取る銀行株を当該銀行から買い取った当該事業法人買い取り価額の2分の1に限定したとしても、持ち合い解消の動きにはおおむね対応できるのではないかというふうに判断をしてこのような上限を設けたものだと承知いたしております。
○佐々木(憲)委員 おおむね対応できるのなら、何でこれを拡大するんですか。対応できたらそれでいいんじゃないですか。
○上田(勇)議員 今回、この2分の1の上限を廃止する理由でありますけれども、それは、個別の持ち合い関係を見てみますと、持ち合い比率はそれぞれ異なっておりまして、トータルとしてはおおむね2分の1で対応できるわけでありますが、事業法人の持ち合い保有する銀行株の価額が、その銀行の持ち合い保有する事業法人の2分の1を上回るというようなことも十分あり得るわけでございます。そうしたことを踏まえて、このような場合に、機構による事業法人からの銀行株の買い取り額の上限を拡大いたしまして、銀行による事業法人株の売却額と同額までとすることによりまして、持ち合い解消の動きをより適切に、機動的にできるようにしようというふうに考えましてこのような改正案を提案させていただいているところでございます。
○佐々木(憲)委員 どうも説明が、それこそ支離滅裂でありまして、この提案をされたときの議事録を見ますと、昨年7月17日の衆議院財務金融委員会で、これは公明党の石井啓一議員が答弁されていますけれども、「事業法人から買い取る場合は売却時拠出金を求めないというふうにしたわけでありますけれども、その際、なるべくそれが将来の価格変動リスクで国民負担に極力つながらないような工夫をやはりすべきではないかという法案制定のときの議論がございました。」
 つまり、銀行は8%拠出金を出すけれども、事業会社は出さない。そこで、国民負担が余り大きくならないようにしなければならない、そういう工夫をまずすべきだと言っているんですよ。
 それで、「今現実に、全体的に見ますと、銀行が持っている事業法人株と、あるいはその事業法人が持っている銀行株、持ち合い株ですね、その全体の総量が大体10対4ぐらいの割合であるということも参考にいたしまして、2分の1にしようという議論にさせていただいた」こういう説明をしているわけです。
 つまり、2分の1にした理由は、一つは、国民負担になるべくつながらないようにする、もう一つは、現実に保有している株式の量を見ますと、銀行が10だとすると事業会社は4だ、そういうことで2分の1という上限にしたんだ、こういうふうに言っているわけですね。
 今回、これを全部外すというのは、つまり、国民負担は結構です、負担は回避しなくてもいい、国民負担に直結しても結構なんです、それから、銀行と株式会社の持ち株の大きさはどうでもいいんです、ともかく上限を外すんだ、こういうわけですから、これは全く筋が通らないんじゃないですか。これをどう説明するんですか。
○上田(勇)議員 お答えいたします。
 上限を外すというわけではなくて、従来2分の1までとしていた上限を同額まで広げるということでございます。これは、先ほども申し上げましたように、全体のトータルの数字からいえば、銀行の保有している事業法人の株式と事業法人が保有している銀行の株式との比率は、先ほど先生からもお話がありましたように10対4の比率であるということでございますけれども、個別の銀行と事業法人との関係を見たときに、それを超えているというようなことも想定されるわけでございまして、持ち合いを解消することを促進していくという観点から、その2分の1という上限を、今回は同額までという上限に拡大するということを提案させていただいているところであります。
○佐々木(憲)委員 全然答弁になっていないですよ、それは。なぜそういうふうにしなきゃならぬという説明になっていないでしょう。
 国民負担を極力回避するということで設けた2分の1という制限、それを取り払うということは、国民負担も大いに結構です、こういうことになるんじゃありませんか。しかも、量的にいっても、10対4だからまあ2分の1、それを撤廃してしまうと。要するに、銀行のためには何でもやってあげましょう、銀行株を持っている事業会社のためにもどんどんやってあげましょう、負担はすべて国民にかぶせましょう、こういう態度だということが非常に今の答弁ではっきりしてしまったと私は思います。
 今回の改正案は株価対策だと言っていますけれども、与党金融政策プロジェクトチームが5月8日に、当面の緊急経済対策というもので、銀行の保有株式の市場への放出が株価の下げ圧力になっている、だからそれを支えるんだと。要するに、公的資金によって株価操作を行うようなものでありまして、しかも、国民負担はどんどんふやすが、銀行負担は軽減する。
 一体これが、前回の改正案のときの説明とも、全く支離滅裂で一貫性がない。こんな法案を通せなどというのは全く信じられないような状況でありまして、我々は、これは徹底的な審議を要求したい。これは2、3回で終わるようなものじゃないということをはっきり申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。

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