2003年07月18日 第156回 通常国会 予算委員会≪集中審議≫ 【215】 - 質問
サービス残業根絶へリストラ促進の転換を 小泉総理「経団連会長に伝える」と答弁
2003年7月18日の予算委員会経済問題等集中質疑で、佐々木憲昭議員が、サービス残業の根絶のためにリストラ支援政策を転換するように求め、小泉総理大臣の認識をただしました。
時間外労働をしても残業代が支払われないサービス残業は、労働基準法が罰則付きで禁止している違法行為です。ところが、「失業者が上昇するという『人余り』現象がある一方で、就業時間が長期化している者はむしろ増えている」「大企業では全体として雇用者数を減らしながら、同時に長時間労働の社員の割合を高めている」(国民生活審議会 雇用・人材・情報化委員会「報告」2002年7月)状況にあります。
佐々木議員は、政府統計に基づく独自試算によって、人減らしの一方でサービス残業が増加している実態を示し、「これは是正すべきだ。なぜこういう状況がなくならないのか」と小泉総理の見解を求めました。
小泉総理が「最近の経済情勢の厳しさも反映している」と答弁したため、佐々木議員は、「リストラの影響が大変大きい」と反論し、「企業がリストラで従業員を削減した結果、企業に残った従業員はその分をカバーするため過大な仕事量を抱え、残業せざるを得なくなっている」との第一生命経済研究所のレポートを示しました。
次に佐々木議員は、業種別のサービス残業の状況をグラフで示し、1番多い「卸売・小売・飲食店関係」を所管する平沼経済産業大臣と、2番目に多い「金融・保険業」所管の竹中金融担当大臣に対応方針を示すよう求めました。
平沼経済産業大臣は、「(サービス残業が)あってはならないという形で、減らしていくために努力をしていきたい」と述べました。竹中金融大臣は、「法令違反がある場合には、厳正に、業務改善命令を含めて対応していかなければならない」と答弁しました。
佐々木議員は、これまでも政府がサービス残業解消のための通達を発出するなどの対策をとってきたにもかかわらず、サービス残業が増加していることについて、“労働基準監督署が調査に入っても改善されたのは当月だけで、翌月から元に戻った”などの職場からの告発も示し、「対応が実態に合っていない」と強調しました。
佐々木議員は、繰り返し是正勧告を受けた悪質な会社の企業名を世間に公表することや、労働者に割り増し賃金以上の支払をさせるなどのペナルティーを課し、サービス残業が企業にとってマイナスになるような対策をとるよう求めました。
さらに佐々木議員は、政府の対策が効果を上げていない理由について、「小泉政権の経済政策そのものに大きな問題がある」と指摘し、政府のリストラ支援政策を転換するよう主張しました。そして、小泉首相にたいし、サービス残業をなくすよう、奥田経団連会長に申し入れるよう求めました。
これに対し小泉総理は、「「経団連会長と会う機会があるので、(サービス残業を)減らすように今後もよく配慮していただきたいと申し伝えたい」と答弁しました。
佐々木議員は、エビアンサミットのG8宣言のなかで、企業には雇用を安定させていく社会的責任があることが明記されていることを指摘するとともに、サービス残業の根絶が、雇用と消費を拡大し、所得増加につながることを示し、日本経済全体を成長の軌道に乗せるための重要なポイントとして、政府の基本政策として取り組むよう要求しました。
小泉総理は、「経営者も社会的責任を十分認識して、企業の業績を上げると同時に、労働者の待遇改善に努めていただきたい。政府としても、そういう配慮を、企業側によく今後とも求めていきたい」と答弁しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
私は、失業・雇用問題を中心にお伺いをしたいと思います。
この問題は極めて深刻な社会問題でありまして、完全失業率は5・4%、完全失業者数は375万人であります。求職活動をあきらめたという方々も含めますと、この何倍もの失業者がいると想定されます。失業者が大規模に発生している反面で、職場の中を見ますと、リストラで労働者がどんどん減らされる、大変な長時間、超過密労働というのが行われております。
重大なのは、過労死あるいはサービス残業、残業しても残業代を払わない、こういう事態が急増していることであります。
いろいろな声が寄せられておりますけれども、例えば大手電機メーカーの家族の方から、土日出勤はもとより、徹夜で帰宅しないことも多く、このままでは本当に過労死してしまう、万が一のことを考えて帰宅時間をメモしています、こういう訴えがあります。
あるいは、女性団体の新日本婦人の会が、サービス残業をなくす運動の中で、たくさんのアンケートがありまして、その中に、例えばこういう母親からの訴えがあります。
いつもきょうじゅうには帰宅せず、午前1時ごろです。それも、このごろは、週2回ぐらいは、通勤時間がかかるからと会社に泊まったりします。また、山手線を3回りもするほど電車に乗ると寝込んでしまったり、終電に乗れなかったり、終点まで行って、2時間も歩いたりして帰ります。何とかしてください。息子が死んでしまったらと心配でなりません。
こういう声が、一方で、失業者がどんどんふえて、働く職場がないという事態でありながら、今度は、職場の中ではこのような大変異常な事態が広がっているわけであります。
厚生労働省の資料を見ましても、この5年間で、過労死の請求件数というのは76%増でありますし、認定件数は3・5倍になっております。過労自殺を含めますと、さらにこの数は大きな数字になるわけです。
残業しても残業代が払われない、これは明らかに違法な行為だと思いますけれども、まず確認をしておきたいんですが、サービス残業があった場合、どのような罰則があるか、お答えをいただきたい。
○青木政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官) いわゆるサービス残業と言われておりますものは、私ども、賃金不払い残業と言っておりますけれども、多くは、労働基準法第37条に違反するものと考えられます。
これに違反した場合には、同法第119条によりまして、六カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処することとされております。
○佐々木(憲)委員 サービス残業というのは、企業の犯罪なんですね。ですから、懲役刑あるいは罰金、こういう処罰が科されるわけであります。
ところが、サービス残業というのは、今、大変蔓延しておりまして、例えば、連合が昨年12月12日に公表しました生活アンケートというのがありますが、それを見ますと、サービス残業をしていると答えた労働者は、男性で48・5%、半分近くがやっていると答えている、あるいは、女性で42・3%。
これは民間だけじゃありません。公務員の職場でも同じ状況がありまして、国公労連が残業アンケートをしたところによりますと、実際の残業に対して超過勤務手当が何%程度支給されたかと聞いたところ、全額支給されたと答えたのは1割しかありません。7割以上が不払いがある、こういう状況であります。
坂口厚生労働大臣にお聞きしますけれども、全体として見まして、この間、サービス残業というものは減っているんでしょうか、それとも、どうも今の状況を見ますとふえているように思うんですけれども、その趨勢はどのように把握されておられますか。
○坂口厚生労働大臣 いわゆる賃金不払い残業でございますが、これは、労働関係の行政の中におきましても最近特に注意をいたしまして、そして各企業の状況等を見ているわけでございます。
今までよりも厳しく見ているということもございますが、全体といたしまして件数はふえてまいっております。それに対する我々の方の指導監督と申しますか指導の方も、これはふえてきている状況にございます。
○佐々木(憲)委員 ここに、国民生活審議会の総合企画部会の雇用・人材・情報化委員会の報告というのがございます。これは去年の7月に出たものであります。
これを見ますと、大変な状況だというのが書かれておりまして、失業率が上昇するという人余り現象がある、その一方で、就業時間が長期化している者はむしろふえている、大企業では全体として雇用者数を減らしながら、同時に長時間労働の社員の割合を高めているという様子がうかがえる、いわゆるサービス残業が増加している可能性を示唆する統計データもある、こういうふうに指摘をされております。
この指摘は、これは事実ですね。これは確認できますね。
○永谷政府参考人(内閣府国民生活局長) 今御指摘いただきましたように、昨年、国民生活審議会のもとでこの委員会を開催したということであります。
その報告書の中身でありますけれども、これも今先生がおっしゃいましたとおりでありますけれども、失業率が上昇するという人余り現象がある一方で、500人以上の、いわゆる大規模の事業所における男性雇用者のうち週60時間以上働いている者の割合が、平成6年の14・1%から13年には20%に高まっているという事実を指摘しております。それで、そういう事実を踏まえながら、大企業では、全体として雇用者数を減らしながら、30代を中心に長時間労働者の割合が高まっている様子がうかがえるという指摘をしております。
それから、サービス残業の話でありますけれども、これにつきましても、どういうふうにとらまえるかというのは若干技術的に難しいんですけれども、私どもで一定の前提を置きまして推計しておりますけれども、月当たりのサービス残業時間が、平成6年の8・3時間から平成13年には9・5時間へと増加しているということになっております。
○佐々木(憲)委員 今ありましたように、サービス残業というのは、これは企業犯罪なんですよ。そういう事態がどんどん広がっていて、ふえているということは、大変私は重大だと思うわけであります。
こういう試算は、今お話にありましたような統計がありますけれども、同時に、例えば民間では第一生命経済研究所で、最近の6月26日に同じような試算が出されております。これは、「不況下で増加するサービス残業」と題するレポートであります。
私も似たような試算をしてみたわけであります。(パネルを示す)これがその結果でございますけれども、ここにありますように、皆さんのお手元にも同じ資料を配付しておりますが、この赤い棒グラフが事実上のサービス残業とみなせると思うんですが、次第にふえておる。90年代の末から2000年にかけて急増しまして、これは大問題になりまして国会でも取り上げられる、そういう状況が続きました。若干、通達などを出しまして、政府も取り組んだということになっておりますけれども、なかなかこれは減らないんですね。労働基準監督署の職員の努力もあって、不払い賃金を払わせるというようなことも一部ありましたけれども、全体として見ますと、このグラフのように、サービス残業というのは増加する傾向にある。私は、これは大変重大な問題だというふうに思います。
そこで、小泉総理にお聞きしますけれども、これは大変重大な事態で、一方で仕事がない仕事がないという状態がありながら、少数の従業員がこんな状態になっている。これは是正すべきだと私は思いますし、なぜこういう状況がなくならないのか、この辺についての見解をお聞かせいただきたい。
○小泉内閣総理大臣 このサービス残業をいかに減らしていくか、これは必要なことだと思っていますが、なぜ減らないのかという御質問でありますが、これは最近の経済情勢の厳しさも反映しているんだと思います。
と同時に、経営者側についてもこの趣旨の徹底、これは経営者、労働者、行政側、こういう問題について減らしていくような対策、措置を今後とも周知徹底していかなきゃいかぬなと思っております。
○佐々木(憲)委員 この理由の中で大変大きいのは、今、経済状況が厳しいというお話がありましたけれども、労働時間が急増しているその原因として、やはりリストラの影響というのが大変大きいんです。つまり、人減らしがどんどん行われていて、デフレ下で人件費のコスト削減ということがどんどん行われている。そのために従業員を削減した結果、企業に残った従業員は、その分、カバーするために過大な仕事量を抱えて残業せざるを得なくなっている。これは第一生命の経済研究所が報告している中にも指摘をされているわけであります。
では、業種別に見るとどういう状況かといいますと、(パネルを示す)こういう状態でありまして、産業別に見ますと、卸売、小売、飲食店関係が一番多いわけです。二番目に多いのが金融・保険業、こういう状態でございます。
流通関係の担当といいますと平沼経済産業担当大臣でありますが、企業犯罪がこういう分野で非常に多い。これは不払い労働ですから、払わせなければならぬわけであります。それで、言うことを聞かなければ、これは処罰の対象になるわけであります。そういう状態がこれだけ広がっているわけですから、何らかの、担当、所管大臣として対応をすべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○平沼経済産業大臣 本来支払われるべき賃金が支払われないというのがサービス残業、こういうふうに言われています。したがいまして、私どもというのは、そういう私の所管している卸売、小売、あるいはサービス、こういったところに多いということは承知をしておりまして、私どもとしては、こういう実態の中で、そういうことがあってはならないという形で、厚生労働省とも協力をしながら、それを減らしていくために努力をしていきたい、こういうふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 金融・保険業の担当の竹中大臣、どういうふうにされますか。
○竹中金融担当大臣 これは、言うまでもなく、刑事罰を伴う厳しい法的な対応を行わなければいけない問題であると思います。
これは、基本的には労働基準法、労働基準監督署においてそうした対応が厳密になされているというふうに思っておりますが、我々も、銀行法等に基づく監督権限を持っております。これは銀行法に基づくものでありますから、その監督の中身は、これは少し違うわけでありますが、当然、法令違反があるような場合は、これは厳正に、業務改善命令を含めて対応していかなければいけないと思っております。
○佐々木(憲)委員 今、それぞれの大臣の姿勢を聞きましたし、総理の見解も伺いましたが、これはだめだ、これを直さなければいけないという姿勢はわかったんですが、ところが、実際に今までもそういうことで政府はやってきたんだけれども、ふえているわけです、実際。どんどんふえているわけです。ですから、対応がそういう実態にきちっと合っていない、効果が上がっていないということの証明なんです。やはりこれは、政府も財界も挙げて全体として取り組む、こういうことが大変重要であります。
ところが、実際に例えば労基署が調査に入るという場合、どういうような対応がなされているか。これが問題なんです、直らないのは、一つの問題として。
例えばこういうことがあります。残業問題で労基署が入ったが改善されたのはその月だけだったというのが、これは連合のホームページに寄せられた労働者の声の中にあります。翌月からまた20時間のみになった、20時間を超えて残業しているんですけれども。労基署が入ったときは、実際に働いた賃金は支払われた。しかし、それが終わったら、一カ月改善されました、では次の月からはどうなるのかというと、もとに戻ってしまうわけです。だから、全然これは効果が上がらない。家族が労基署に相談したら、証拠を出せと言われたと。こういう状況。
あるいはこういうことがあります。先日労基署が調査に入りましたが、会社は残業はないと回答しました。事前に上司は私たちにも口裏を合わせるように言いました。しかし、実際は月に100時間ぐらい残業があって、自己申告制ですが、申告しても翌月の給料には全く反映されません。労基署が入っても、使用者がないと答えれば、何も改善されません。私は5年前から自分で労働時間を記録しています。こういう訴えがあります。
こういうふうに、実際にモグラたたきのような状況がある。あるいは、企業自身がこの犯罪を隠すという事態があるわけです。したがって、私は、これは本当に効果の上がるやり方をしなければならぬ、そうしないとこの犯罪はなくならないと思うわけです。
例えば、繰り返し勧告を受けたような悪質な会社の場合は、企業名を公表するということは当然やるべきだと思いますし、あるいはペナルティーを科す。労働者に割り増し賃金を払うわけですけれども、しかし、さらにもっと上積みして払わせる。そうすれば、このサービス残業をやっても、これはかえって企業にとってはマイナスになる、こういう自覚が広がるわけですね。例えばそういうようなことを具体的にやっていかないと、こういう犯罪というのはなくならないと思うんです。
そういう点で、具体的な対応策、これを坂口労働大臣に、今私が提案したようなことも含めて、どう対応されるのか、お聞きしたいと思います。
○坂口厚生労働大臣 最近、御承知だというふうに思いますけれども、賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針というのをつくりまして、そして、これは労使でしっかりと、それぞれの企業でその指針をつくってください、我々の方はこういったことのチェックをしていきますよというようなことをその中で示しているわけでございます。
先ほどいろいろ具体例を挙げられましたが、いわゆる指導をいたしましてすべてがうまくいっていないわけではなくて、うまくいっているケースもあるわけであります。ただ、中にはうまくいっていないところもあるということでありまして、一度入りましたところにつきましては、やはりフォローアップをちゃんとやっていかなきゃいけないということで今やっているところでございます。
また、重大、悪質な事案につきましては司法処分等の処置もあるわけでございますから、そうしたものも含めて、厳正にやっていきたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 指針をつくるのもいいですけれども、具体的にこういう実態が広がっていて、統計的にも、これは国民生活審議会の中でもふえているという統計が出ている。そういうときに、この程度のやり方でなぜ効果が上がると思うのか。これは、全く実際には効果は上がらない。
そこで、小泉総理にお聞きしますけれども、どうしてこれが、こんなに問題になっていながら効果が上がってこないのか。私は、小泉政権の経済政策そのものに大きな問題があるのではないか、つまり、構造改革ですとかあるいはリストラ、これはいいことだ、企業が利益を上げるのは当然だ、リストラはどんどんやるべきだ、こういうことを政府みずからがあおっているという結果がこういうところに出ているのではないか、そういう点を是正していかなければこの事態というのはなかなか根本的には直っていかないというふうに思いますけれども、総理はどのようにお考えですか。
○小泉内閣総理大臣 企業がみずからの経営基盤を強化するために努力することは必要であり、なおかつ、企業は、利益を上げるのは当然であります。利益を上げない企業というのは国民から信用されませんし、倒産したら元も子もない、社員も失業の危機に遭うということから、利益を上げるということが必ずしも悪いとは思っておりません。
そういう中で、それぞれの企業の経営者は、やはり従業員を大事にする、そして、従業員にとっていい労働環境をつくっていくという配慮も大変重要なことだと思っております。そういう点について、こういう時代の変化に対応して企業が業績を上げ得ることができるようによく考えなきゃならない。
当然、法を守らなきゃならないのは当然でありますし、そして、サービス残業を少なくしていかなきゃならないという今の御指摘を踏まえて、よく真剣に今後とも対応していただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 今、総理は二つのことをおっしゃいました。一つは、企業というのは経営を安定させなきゃならない、利益を上げる必要がある、もう一つは、雇用をしっかり守らなければならない、これは当然だと思うんです。
ただ、問題は、今実態的に何が起こっているかというと、二つのうちの一つだけが先行しておりまして、利益を上げる、リストラをやるというところがどんどん進んでいるわけです。
しかし、実際に労働者はどんな結果になっているかといえば、職場からどんどん離れて、失業者がふえる、職場がない、働く場所がない、そういう方々がずうっとふえている。一方で企業は、職場の中は大変な長時間労働、夜中まで働かされる。夜中の一時に帰ってくる、一時に帰ってきて残業する、3時まで仕事をしているなんという投書が、つい最近も4月27日に出されている、新聞に。これは余りにも異常なんです。ですから、これを是正するという方向に大きく切りかえていく。つまり、企業のやり方が一方に偏っているんです。
例えば経団連の会長、総理は何度もお会いになると思いますけれども、そういう会合でこの問題についてきちっと申し入れるというようなことは少なくともはっきり主張すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 この点につきましては、政労使といいますか、政治の側、そして労働者の側、さらに使用者の側、この三者が集まって、先日も、あるべき関係についてよく話し合っていただきたいということを経団連の会長にも、また連合の笹森会長にも、官邸においでいただきまして、よく協調できるように、また新しい時代に企業もうまく業績を上げることができるように、また労働者の皆さんもよき環境のもとで意欲を持って働くことができるように、そういう中で政府がどういう支援、施策を講ずればいいかということをよく話し合おうということで、坂口厚生労働大臣も入りまして、今検討しているところであります。
また、サービス残業につきましても、経団連の会長とも会う機会がありますので、今の御指摘も踏まえて、よく私からも、そのようなことを減らすように今後もよく配慮していただきたいということを私は申し伝えたいと思います。
○佐々木(憲)委員 この問題は、ことしのエビアン・サミットで、企業の社会的責任というのがG8宣言、この中でも指摘をされておりまして、単に働いている方々の問題だけではなくて、経済全体にとって大変重要な問題だ、企業が雇用をきちっと安定させていくという責任がある、あるいは環境を守る責任がある、この点が国際的な大きな流れになっているわけであります。
先ほど紹介した第一生命経済研究所のレポートを見ましても、サービス残業をなくすことによって、新規雇用に仮にそれを全部振りかえたといたしますと、雇用創出効果というのは全産業で161万6千人になる。大変大きな雇用効果があるわけです。つまり、今までは本来法律違反のことをやっているわけですから、その法律違反をやめるということは当然のことなんだけれども、そのことが同時に雇用の拡大につながっていく。しかも、その数字がいろいろ推計をなされておりまして、完全失業率は今の水準から2・4ポイント低下するというんです。現在の失業率が5・4%ですから、これが3%の水準に低下する。しかも個人消費の回復につながる。実質雇用者報酬が3・8%増加する。全体として実質個人消費は5・1ポイント上昇する。つまり消費拡大につながるということなんですね。企業全体として見ますと、労働者に払う部分がそれだけふえますから、例えば設備投資はその分若干圧迫を受けるということがあるかもしれないんだけれども、しかし、それを差し引いても、ネットで見ると2・5%の実質GDPの押し上げ効果が期待できる。
ですから、これは、つまり、企業の犯罪を根絶し、雇用を拡大し、所得をふやし、消費をふやし、日本経済全体を成長の軌道に乗せることができる、大変重要なポイントなんです。こういう点をしっかりと、私は政府の基本政策として取り組んでいくということが必要だと思うんです。
今の企業のやり方を見ますと、それぞれの企業は当面の利益を追いかけていますけれども、しかし、社会全体として考えてみますと、その企業自身が売り上げの先がどんどん先細っていくような感じで、逆に言いますと、日本経済をどんどん掘り崩していく方向に行っているわけです。そういう意味で、このサービス残業の根絶ということが大変重要だという点を私は強調したいと思いますが、最後に総理の決意をお聞かせいただきたい。
○小泉内閣総理大臣 経営者も社会的責任を十分認識して、企業の業績を上げると同時に、労働者の待遇改善に努めていただきたい、政府としてもそういう配慮を企業側にもよく今後とも求めていきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 終わります。
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