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金融(銀行・保険・証券) (金融機関の破綻)

2004年01月14日 第158回 特別国会 財務金融委員会≪閉会中審査・参考人質疑≫ 【217】 - 質問

足利銀行破たん問題で参考人質疑 金融庁検査の厳格化で巨額の追加引当

 2004年1月14日、財務金融委員会で閉会中審査が行われ、2003年12月4日に引き続いて、足利銀行破たん問題で質疑が行われ、この日は参考人質疑が行われました。参考人の日向野善明足利銀行元頭取、上野紘志中央青山監査法人理事長にたいし、佐々木憲昭議員が質問しました。
 佐々木議員の質問で、金融庁の厳しい検査の結果、足銀の03年3月期決算が大幅な追加引当が必要となり債務超過に追い込まれたことが、足利銀行元頭取の証言により具体的な数字で明らかになりました。

 日向野元頭取の答弁によると、950億円の追加引当額のうち、債務者区分の劣化(要注意から要管理になるなど厳しい目で評価をされたもの)と担保評価の減額(担保の評価を収益還元法などという厳しい評価で見られたもの)があわせて446億円、債務者区分の変更による引当率の上昇が190億円、引当率の考え方を金融庁から否定されたものが314億円にのぼります。
 とくに従来は採用していなかった収益還元法を適用したことによる影響が116億円にのぼることが証言され、金融庁による「収益還元法を使った評価を採用したのはごくわずか」との説明が影響を過小に描いたものであることが明らかになりました。
 日向野元頭取は、従来にない手法を要求した金融庁の検査について、「画一的に計算上ですべてを見られると厳しい」と述べました。

 佐々木議員は、金融庁の厳しい検査が足利銀の「債務超過」の原因になったのではないかと質問。日向野氏は「そのとおりだと思う」と答え、金融庁検査に基づく償却・引当金の追加が巨額に上ったことなどを証言しました。
 佐々木議員は、2003年3月期決算に対する金融庁の検査で償却・引当金が950億円追加させられたことを指摘。これに対し日向野氏は、前年度まで使われなかった「収益還元法」(不動産担保価値を低く見積もる評価方法)による影響が116億円、「引当率の上昇」で190億円、「引当率の考え方の違い等」によるものが314億円もあったと説明しました。
 一方、上野氏は、検査の期間中、「(金融庁と監査法人の)やりとりの中で債務超過になる可能性が高いと感じた」と述べ、その影響を受けたことを認めました。
 日向野氏は他の議員との質疑の中で「地元を活性化させ、企業の良い面を少しでも評価したいとやってきたが、金融庁のやり方はバランスシート(貸借対照表)優先の画一的な感じがする」と金融庁を批判しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。質問時間が10分しかありませんので、端的にお答えをいただきたいと思います。
 まず、日向野参考人、金融庁の検査で3月期決算の償却、引き当て額が950億円増額したわけですね。これが債務超過の原因になったわけですけれども、非常に厳格な、厳しい検査だったと思うんですが、償却、引当金の追加額950億円の内訳をお聞きしたいんです。その構成要素はどういうもので、金額としてはどういう金額になるのか。金融庁の説明によりますと、収益還元法という方式が初めて採用されたということなんですけれども、それはどの程度の比重を占めているかということも含めまして、数字をお答えいただきたいと思います。
○日向野参考人(足利銀行元取締役頭取) 実際に、不良債権の追加引き当ては935億になります。あとの15億は有価証券の償却でございます。
 それで、935億の内訳は、債務者区分が劣化をした。これは、要注意から要管理になるとか、そういう形で、厳しい目で評価をされたということ。これと、あとは担保評価でございます。担保の評価を、先ほど申しましたとおり、収益還元法などという厳しい評価で見られました。鑑定士の法定鑑定などは認められないような状況でございました。こういうような債務者区分の変更で446億。それから、これに伴って債務者区分が変わりましたから、引き当て率が変わってきます。この引き当て率の変化が190億円。
 そのほかに、意見の相違となりました引き当て率の考え方など。これは、例えば、こういう事象はもう二度と起こらない事象なんだけれどもという形で、異常値を控除するような考え方は金融マニュアルにもあるわけでございますが、こういう形は一切認めずに、数字は数字だ、こういう形で考え方を否定されたものが314億円あります。それで935億円です。
○佐々木(憲)委員 その中で、収益還元法による担保評価の減額というのは幾らですか。
○日向野参考人 収益還元法による直接の引き当て額の増加は、116億円でございます。
○佐々木(憲)委員 116億というのはかなり大きな金額であります。これは、担保評価が減額されただけではなくて、それに伴って引き当て率が上昇していくというように連動していくわけですね。ですから、これにとどまらない。
 結局、収益還元法ですとか、あるいは引き当て率の考え方などの意見相違というものが、従来にない金融庁のいわば要請があって、従来は採用されていなかったけれども今回初めて採用されて、それが大変大きな債務超過の要因となった、こういうことでよろしいですか。
○日向野参考人 私は、そのとおりだと思っています。収益還元法などは、プロジェクトファイナンスですと十分考えられる考え方ですが、我々はコーポレートファイナンスをやっているわけでございます。その建物の収益から上がる部分だけを見ているわけではございませんので、地元のステータスとかその商品性とか、例えば旅館ですと、しにせの度合いとか集客力とか、いろいろな点から企業を見て、いい面を評価して、それで応援できるところは応援しよう、こういう考え方にのっとっておりますので、画一的に計算上ですべてを見られると厳しいものになります。
○佐々木(憲)委員 要するに、従来採用されていなかった厳しい査定が行われた、その方法、手法についてもそういうものがあって、債務超過にいわば追い込まれたというふうに我々は見ております。
 次に、上野参考人にお聞きしますが、栃木県の福田知事から出された質問書、12月2日で出されていると思いますが、それに対して中央青山監査法人として出された回答、8日に出されていますね。ここでは、平成15年9月期中間決算においては、金融庁検査の結果を受けて作成された中間決算案を検討した結果、多額の損失計上等による状況の変化を勘案し、繰り延べ税金資産の計上に関する当監査法人の見解を銀行にお伝えしたと。要するに、全面否認をした。
 奥山日本公認会計士協会会長は、12月2日の新聞のインタビューでこう言っているんです。3月期決算について、債務超過という検査結果が出た以上、9月期中間決算で繰り延べ税金資産全額を今までと同じように認めたら、そんな甘い決算をだれが認めたんだと批判を受けるというふうに言っていまして、つまり、債務超過という結果が出ているので、それを踏まえて繰り延べ税金資産の否認を決断したということをおっしゃっているわけであります。
 その金融庁の検査結果で3月期が債務超過だったということが、上野参考人、お知りになったのは、いつの時点で、どういう形でこれは知らされましたか。
○上野参考人 私ども、検査の結果が最終的に固まったのは、11月の21日に検査の結果を聞いております、3月の検査結果は。それ以前の段階では、金融庁とやりとりがありまして、15年3月期の自己資本が食いつぶされるような償却、引き当てになるのかどうかということは、検査の期間中、なるのかどうかということについて検討、金融庁との間でやりとりがあったということで、先生おっしゃられるように、いつ債務超過だというようなことについては、最終的に決まったのは検査結果が全部出た段階だというふうに解釈したいと思います。
○佐々木(憲)委員 要するに、やりとりがあった、その中で債務超過に陥る可能性が非常に高いという認識を得られたということですよね。今うなずいておられますから、そうだと思うんです。
 そうしますと、審査会でそれを踏まえた上で、26日の夜の審査会ですけれども、結論を出して、繰り延べ税金資産を全部認めません、全額否認と。それまで金融庁とやりとりがあって情報は得ていたけれども、銀行に対してはそのことについては伝えていない。
 その辺は、日向野さんにお伺いしますが、どういう形で伝えられたんでしょうか。前の、26日までの段階で何らかの情報というのはあったんでしょうか。それとも27日の朝初めて言われたんでしょうか。
○日向野参考人 繰り延べ税金資産につきましては、検査結果につきましては意見申し立て制度がありまして、11月11日に意見申し立て制度で出て、その結果が出たのが21日でございます。21日のうちに監査法人の方にもこの検査結果を伝え、この検査結果ですと債務超過にはならない、そういう確認はもう21日過ぎからできておりました。ただ、それにもかかわらず、26日の審査会で突然全額否認、こういうような形になったわけでございます。
○佐々木(憲)委員 もう時間が参りましたので終わりますけれども、この金融庁の検査というものが、今までになかった方式を採用して、非常に高い引当金、引き当てを積むようにという要請をした。それに基づいて、この3月期決算が債務超過に陥った。その情報を、中央青山監査法人は事前に何らかの形で情報は得ていた。それを踏まえて繰り延べ税金資産は全額否認をした。
 こういう経過を見ますと、私は、金融庁の検査というものが今回の事態の一番の根源にある、そこがこういうことをやらなければこういう結果を招かなかった、したがって、金融庁が足銀を破綻に追い込んだという認識を、この質疑を通じていよいよ確信しましたので、以上で終わりたいと思います。

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