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財政(予算・公共事業), 雇用・労働 (予算案)

2004年02月26日 第159回 通常国会 予算委員会≪公聴会≫ 【224】 - 質問

2004年度予算案 雇用問題について公述人に質問

 2004年2月26日、予算委員会で、04年度政府予算案に関する公聴会が開かれ、佐々木憲昭議員が質問しました。
 午後に開かれた公聴会では、全国労働組合総連合(全労連)の坂内三夫事務局長、日本労働組合総連合会(連合)の草野忠義事務局長に雇用問題などについて質問しました。

 全国労働組合総連合(全労連)の坂内三夫事務局長は「政府予算案は、財界の希望にはこたえているが、労働者、国民の暮らしには冷淡だ」「労働者と中小企業の犠牲の上に大企業一人勝ちという社会を是認するもの」とのべ、年金保険料引き上げと給付水準引き下げを中止するよう主張。イラク派兵を中止し、自衛隊の撤退と派兵経費全額の削除を求めました。
 日本労働組合総連合会(連合)の草野忠義事務局長は、「政府予算案は、国民の生活と雇用に対する将来不安を解消する抜本策がとられていない」とのべました。
 佐々木議員は、長引く不況下で予算が果たす役割としては暮らしが厳しい国民をどう支援するかが大事だと質問。坂内氏は、「予算の配分を思い切って社会保障にあてるべきだ」とのべました。

 午前に開かれた公聴会では、アジア経済研究所の酒井啓子参事に自衛隊派兵とイラクの現状について、慶應義塾大学経済学部金子勝教授に景気回復と財政の役割について、質問しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。4人の公述人の皆さんにいろいろ質問が出ておりますが、坂内公述人にはまだ質問が出ておりませんので、きょうはぜひ集中的に私から質問させていただきたいと思います。
 私は、今の経済状況というのは、二極分化というものが大変進んでいるのではないかというふうに思っております。大企業は大変なV字形回復で利益を急増させておりますが、なかなか中小企業は大変な状況にある。この大企業の利益の拡大の理由として、リストラ効果ということがいろいろ言われております。同時にまた輸出依存型でありまして、アメリカと中国に対して輸出が伸びている、その関連で設備投資も一定の拡大をしている、こういう状況だと思うんです。
 したがいまして、ここで大事なことは、この予算がどういう役割を果たしていくかということだろうと思うわけでございます。いわば、利益を上げている大企業にさらに利益を保証するような予算を組むのか、それとも、大変な家計の、火の車の状況の国民に対してどういう支援をしていくのか、この角度から問題を考えなければならないのではないかと思うわけであります。
 残念ながら、昨年あるいはことしの予算の内容を見ますと、税金の面でも負担の面でも、大企業向けの減税は結構やっているんですけれども、どうも、国民向けには負担増と増税というのがかなり連続的にふえているのではないかという印象を持っているわけでございます。
 そこで、坂内公述人にお伺いをいたしますけれども、今のような財政の構造といいますか、この点についてどのようにお考えか。特に、国民負担、先ほどお話をいただきましたけれども、大変ふえているわけですが、例えば、橋本内閣で9兆円負担増というのがありましたね。このときは大変なショックがありました。しかし、小泉内閣になっても結構負担がふえておりまして、橋本内閣のときには4兆円の特別減税がありましたから、若干緩和された面があるんです。しかし、小泉内閣になりましてから、緩和の措置がほとんど国民に対してないままに、負担増の方が相当連続的にふえていくという感じがあります。
 こういう点で、どのような認識、お考えをお持ちか、坂内公述人の見解をお聞きしたいと思います。
○坂内公述人 簡潔にお答えしたいと思うんですが、私どもの調べでは、日本では、国民が納めた税金がどれくらい社会保障の公費負担として戻ってくるか。諸外国でいいますと、例えば、ドイツでは44%、イギリスでは43%も公費負担として戻ってまいりますけれども、日本では30%足らず、わずか29%というふうに承知をしております。イギリスなどの3分の2でしかないわけで、私は、予算の配分を思い切って社会保障に焦点を当てた予算に組み替えるべきだという考え方を持っております。
○佐々木(憲)委員 社会保障を中心に予算を組み替えるということを、今御指摘いただいたわけであります。
 例えば、年金の問題につきましても、財政的にいろいろな議論があります、財政上のですね。しかし同時に、これは、支え手といいますか年金を支える雇用がやはり安定していなければ、財政上の措置だけで根本的に改善することにはなかなかなりにくい。したがって、雇用の面での支え手の確保というのが私は非常に重要な柱ではないかと考えるわけでございます。
 そういう点で、私ども、先日、2月23日に、政府予算案の抜本的な組み替えを求める予算の組み替え案を提案しておりまして、その中で、雇用の安定ということで、とりわけ正規雇用の拡大ということを強調させていただいたわけでございます。
 その中で、サービス残業の根絶、これは非常に大事だと思います。あるいは長時間労働の是正、このことによって雇用の大幅な拡大というものがつくられるというふうに私たちは考えております。
 それから、公的分野、先ほど坂内公述人も触れられましたけれども、福祉ですとか医療ですとか防災、教育、これは現実には人手不足でありまして、こういう分野でやはり国や自治体がしっかりと雇用を拡大するということが大変重要ではないかというふうに思います。
 それから、若者に雇用という点でいいますと、やはり政府と、それから大企業のリストラ規制というのは非常に大事だと思っておりますが、この辺の雇用の拡大策、坂内公述人としては政府に対してどのような施策を望んでおられるのか、もう一度この点での見解をお伺いしたいと思います。
○坂内公述人 年金を初めとする社会保障制度を持続可能な制度として確立するというためにも、その土台が雇用あるいは雇用と賃金であるという御指摘は全く同感であります。
 先ほど来、国民の年金不信にかかわって、国民年金保険料の納入者が全体では62.8%に上る、草野公述人からもお話がありました。厚生労働省が発表した2002年の国民年金保険料の納入率の調査によりますと、全体では62.8%でありますが、20歳代の若者の納入率は50%を割り込んでいるという実態にございます。
 国民年金に加入している人たちと申しますのは、一部にはもちろん自営業者の方々もおられますけれども、やはりその多くはフリーターと言われるような人たちが国民年金に加入をしているわけです。本来であれば厚生年金に加入しているべき労働者であるけれども、その厚生年金からは、言葉は適切かどうかわかりませんが、追い出される形になっている人たち、しかも、パートやアルバイトで働く若者、34歳以下の青年たちの約六割は年収が100万円以下、こういう実態にございます。
 したがいまして、国民年金の納入率が非常に低いという問題の背景には、先ほど私が申し述べましたようなこの間のたび重なる年金制度の改悪という問題もございますが、もう一方では、実際に働いている労働者の雇用や生活の悪化というものがあることも見ておかなければならないと思うんです。
 年収が百万円未満というような中で、1カ月1万3300円、この保険料負担というのは非常に重いものになると思います。大体、いつ失業するかもわからない生活を送っている青年たちが、最低でも25年間保険料を払い続けないともらえない年金のために、この1万3300円の保険料を毎月納付する、そういう気分になるだろうかという実態面からの見直しも必要かというふうに考えております。
 御質問の趣旨とは必ずしも一致しませんけれども、そういう側面から、国民年金の滞納問題も見ていかなければいけないというふうに私は考えております。
○佐々木(憲)委員 雇用というものが非常に大事だということで、雇用拡大政策というのは、やはり政府とそれから大手の企業の責任というのは非常に大きいというふうに私どもは考えております。
 草野公述人にも一言お伺いします。やはり、今の大企業の利益の急増の反面で、先ほどもお話がございましたが、雇用の面ではかなり深刻な事態が生まれております。少ない労働者の中でサービス残業も非常に蔓延しておりまして、大変な状況にあると思うので、その点の、サービス残業規制といいますか、これは大変大事だと思うんですが、どのような考え方、あるいは政府に何を求めるか、一言お話をいただきたいと思います。
○草野公述人 今、先生御指摘のように、私どもはサービス残業という呼び方はしておりませんで、不払い残業というふうに言っております。どうも日本人はサービスはただだと思っている、これはけしからぬ話だということで、不払い残業というふうに呼ばせていただいておりますが、連合としては、一昨年の秋からこの問題についてのキャンペーンを張ってまいりました。各政党にもお願いを申し上げましたし、また、担当官庁であります厚生労働省の方にも足しげく向かいまして、さまざまなお話し合いをさせていただきました。当然のことながら、これは労働基準法違反でありますから、まずは使用者側にということで、日本経団連、商工会議所、それから経済同友会ともこのような話をさせていただきました。
 経営側とは、基本的には全く一致しております。経営側も、これはまさに法律違反で、あってはならないことだというところまでは明確に言っていただいてはいるんですが、結果としては、残念ながら、今、ふえているというかかなり高い水準にあると言った方が正確ではないかというふうに思います。
 少し効果が出てきたかなと思いますのは、マスコミの皆さん方にもかなりそういう特集記事を書いていただくようになりましたし、厚生労働省の方の指摘で、たしか半年間で70億から80億ぐらいの是正命令、支払い命令が出ているというふうにも聞いております。ただ、いかんせん、やっぱり労働組合みずからがそこをきちっとチェックしなきゃならないのが本来の筋だというふうに思いますので、私どもとしては、今春季生活闘争の中でもしっかりとしたその対応をしてまいりたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。
 坂内公述人にもう一度お伺いします。このサービス残業是正については、やはり法的な規制も必要ではないかと私は思うんですが、その点でのお考え方。それから、先ほど、緊急地域雇用創出制度の延長、拡充ということもおっしゃいました。この制度の特徴といいますか利点といいますか、それをどのように把握されておられるのか、最後にこの点について、二点お伺いしたいと思います。
○坂内公述人 先生御指摘のように、ルールなき資本主義と我々は呼びますが、異常な日本の社会を象徴する一つが、やはりこのサービス残業、不払い残業問題と過労死の問題だろうというふうに思います。
 今、週40時間労働制と言われますけれども、実際には男性労働者の5人に1人は週60時間ぐらい働いているという統計もございます。国会の努力もありますし、我々の運動もありましたが、この2年半ぐらいの間に総額で250億円を超える不払い残業代が、労働基準監督署などの立入調査もありまして改善をされましたけれども、まだまだ本当に氷山の一角だと思います。このサービス残業がもしきちんと規制をされれば、それだけで160万人の新しい雇用が生まれるという試算もございます。
 したがいまして、サービス残業、不払い残業そのものが違法であるということはもちろんでありますけれども、不払い残業が横行している社会の現状にかんがみて、それに適切に対応する立法措置が必要だというふうに全労連としても考えております。
 緊急地域雇用創出特別交付金のことでございますが、これまで厚生労働省がさまざまな雇用対策を打ち出してきた中では、これはかなり効果のあった対策だというふうに厚労省自身が評価をしております。この最大すぐれている点は、私は、国が予算をちゃんと確立して、地方自治体にその予算を配分して、それぞれの地方自治体ごとに、地域の雇用状況の実情に合った雇用創出事業を創出できるということに大変大きな特徴があるだろうと思います。したがいまして、国であれこれ全部決めてやるということではなしに、それぞれの地方に、失業でもいろいろな特徴がございますから、それに合って、そこの地域の労働者あるいはNGOの方々ともよく話し合って、これが実行できるところに大変特徴があると思うんです。
 しかし、残念ながら、予算の規模全体が少ないということと、その運用をめぐって言えば、雇用期間が半年間に限定をされるというようなさまざまな問題がございますので、ぜひこの予算の増額と運用制度の改善によって、今の失業状況の克服に役立てていければというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 どうもありがとうございました。

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