財政(予算・公共事業), 景気回復, 平和・憲法 (郵政民営化, 予算案)
2004年02月26日 第159回 通常国会 予算委員会≪公聴会≫ 【223】 - 質問
自衛隊派兵とイラクの現状、景気回復と財政の役割について公述人に質問
2004年2月26日、衆議院予算委員会で、04年度政府予算案に関する公聴会が開かれ、佐々木憲昭議員が質問しました。
佐々木議員は、午前中開かれた公聴会では、アジア経済研究所の酒井啓子参事に自衛隊派兵とイラクの現状について、慶應義塾大学経済学部金子勝教授に景気回復と財政の役割について、質問しました。
佐々木議員は、長引く不況下で予算が果たす役割としては暮らしが厳しい国民をどう支援するかが大事だと質問。
アジア経済研究所の酒井啓子参事は「サマワを含め多くの市評議会は必ずしも住民の全幅の信頼を得ていない。いくらお金をつぎこんでも受け皿がないのが現状だ」として、国民の直接選挙によらない暫定政権のような形ではイラク国民から評価されない援助になるとのべました。
慶応大の金子勝教授は、小泉「改革」の目玉とされている郵貯民営化について「極めて奇妙な気がする。経営形態だけを変えても隠された不良債権は確定できない」とのべました。
午後に開かれた公聴会では、全国労働組合総連合(全労連)の坂内三夫事務局長、日本労働組合総連合会(連合)の草野忠義事務局長に雇用問題などについて質問しました。
議事録
≪佐々木議員質問部分≫
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
きょうは、大変貴重な御意見を公述人の皆さんからお聞かせをいただきまして、本当にありがとうございます。
まず、イラク支援に関連いたしまして、酒井公述人にお尋ねをいたします。
私どもは、イラクに対する自衛隊派兵には反対という立場をとっておりますが、今度政府の予算案の中に、イラク復興支援ということで、補正予算と合わせますとかなり巨額の予算が組まれているわけであります。昨年の10月に開催されました復興支援国会合で、当面15億ドル、さらに中期的な支援として35億ドル、合わせて50億ドル、これがまずは今年度補正予算で1188億円と、大変大規模な予算を計上しているわけです。その約半分が直接的な支援。
この受け皿でありますけれども、先ほどのお話ですと、イラクの現状というのは大変流動的で、しかも極めて深刻化しつつある、こういう状況であります。私どもは、国会の議論の中でも、一体、その受け皿となるものはどういうものであるのか、この点について、私は財務金融委員会でも質問いたしましたし、また予算委員会でも議論が行われました。しかし、なかなか政府の回答が、こういうところにこのように幾ら幾らの金額を支援するんだ、その受け皿の組織というものがどういうものか、これがはっきりしないわけでございます。例えば、サマワ市評議会というものが一体存在するのかしないのかということでさえ、明確ではない。
そういう現状について、酒井公述人はイラクの現状を大変詳しく御存じでありますので、これだけ多額の金額の支援が行われるということでありますが、一体その受け皿となり得るものがどのような形でイラクに存在をするのか、その現状についてぜひお聞かせをいただきたいと思います。
○酒井公述人 御質問、これは日本を含め各国共通かと思いますけれども、こうした復興支援が一体イラク国内でどういった受け皿に向けられているのかという御質問だと思います。
御指摘のありましたように、現在、主に受け皿になっておりますのは市評議会、各地で存在しているような市評議会が中心になっておりますけれども、これはなぜかといいますと、ひとえに現在イラクに正統な主権のある政権が存在しないということに尽きております。ですから、やむなく無償援助というような形で、地方のNGO団体であるとか市評議会といったような草の根レベルの相手を対象にして援助が行われているものというふうに私は理解しております。
しかしながら、御指摘がありましたように、この市評議会自体も、それではどれだけ正統性を持つものなのかということを問いますと、これも全く正統性がないという部分がかなりございます。といいますのは、この市評議会の多くは、アメリカがイラクに入りまして進攻していく過程で、その土地その土地の有力者、あるいはアメリカがこれまで協力関係にあったような人々を集めてつくった、そういう評議会でございます。これは先ほどちょっと陳述の方でも申し上げましたけれども、場所によっては、国民の間で、いや、そんな押しつけの評議会ではよくないということで、途中、繰り返し繰り返し、自分の手で評議会員を選んでいこうというような草の根民主主義に基づいてできた評議会なども実際にあります。しかしながら、今、サマワを含めて多くの市評議会は、地元の住民からどの程度信頼を得ているかというのは、必ずしも全幅の信頼を得られるようなものではないというところが多うございます。
そうした、現在、制度的に、何といっても正統な政権がないということでイラクの政府にお金をおろすことができないという以上、このように地元の地方自治体に持っていくしかないという制度的な難点がございますから、その意味で、幾らお金をつぎ込もうとしたところで受け皿がないというのが現状でございますから、先ほど申しましたように、とりもなおさず戦後の政権、主権のある政権をどのようにつくっていくかということに対しても、日本は必ずしも全く無関心ではいられないはずである、こういったものを早急につくる方向で日本も努力していく必要があるというのが一点でございます。
と同時に、暫定政権ができればいいというものではございません。先ほど申しましたように、国民の間では、直接選挙でみずから選びたいという機運が非常に強く出ておりますので、急ぐが余り、同じように上から任命するだけの暫定政権というような形では、そうしたところにお金をつぎ込んでも、逆に国民の反発を受けて、全く国民から評価されない援助になってしまうというような難点もあるかと存じます。
以上であります。
○佐々木(憲)委員 それともう一点、現地の状況というものは非常に失業者が多い、したがって、日本に対して雇用の面での期待が非常に高いということをよく報道でもされているわけであります。自衛隊というものは自己完結的な組織であるというふうに言われていまして、現地では、自衛隊が来るということは余りよく理解がされていないのではないか。雇用の面で過大な期待があって、自衛隊が行くことによって必ずしもその期待が実現するというふうには限らないというふうに私どもは思うわけであります。
したがって、本来であれば、私どもの見解を申し上げましたら、国連を中心とした枠組みをつくり、イラクの直接的な選挙などによってイラク人の意思の反映した政府がつくられ、その上、もちろん自衛隊や米軍は撤退をして、そういう中で、日本は非軍事的な面での人道復興支援をきちっと行うというのが筋だと私は思っておりますけれども、しかし、現実はそういうふうになっておりません。
自衛隊が今行く形で支援という形を政府はとっているわけでありますが、このことが、現地の基本的なニーズであります失業の解決ですとか、あるいは経済そのものの復興ということとかなり矛盾が出てくるのではないかというふうに思うわけであります。その点は一体どのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
○酒井公述人 今の点でございますけれども、おっしゃるとおり、サマワで日本が歓迎されているということは、自衛隊が何をやるかということをしっかり了解した上で歓迎しているかどうかというのは大変疑問でございます。逆に、地元では大変期待が高まっておりますけれども、実際、その期待といいますのは、経済の全体的な底上げということに尽きるかと思います。
こうした期待が高まっている背景には、日本の自衛隊や政府ではなくて、むしろ民間企業、70年代から80年代にイラクの重立ったインフラ設備をほとんど日本企業がつくってきたという経験に基づいて、イラク国民は、そういった日本企業の同じようなイラク経済の底支えというようなものが再来するのではないかという期待を持っているわけです。
ですから、その意味では、現在サマワで高まっている期待に決して自衛隊がこたえられるような状況にはない。むしろ、高まってしまった以上は、それにこたえるためには、自衛隊ではない、本来それにこたえられるような体制を新たに別の形で整えていく必要が出てくる。それは、ある意味では、日本企業を出す出さないは別にいたしましても、具体的には、バスラなどを中心としたイラクの産業施設が集中しているコンビナート、石油製油所や発電所といったようなものを、これは日本を含め国際的に早急に改善していく必要があるわけです。
そのために、御指摘のありましたような国連中心の復興支援体制ということでございますけれども、私は、必ずしも国連でなければならないというわけではないと思います。しかしながら、いずれにしても、今のようなアメリカを中心とした、あるいはアメリカ企業が復興事業を独占して、独占しているがゆえに非効率的な形に陥ってしまっているような体制そのものを見直して、より国際的な、世銀でも結構ですし、国連でも結構かと思いますけれども、国際的にいかに効率的であり、早く復興ができるような体制がとれるかということをオーバーホールする必要があるというふうに思っております。
そうしたオーバーホールの作業の中に日本も積極的に関与していく、そういう外交努力によって復興事業を進めていくことが真っ先に必要とされるかと存じます。
○佐々木(憲)委員 大変ありがとうございました。
金子公述人にお聞きをしたいんですが、今の景気の現状というのは、確かに一時的に年率換算で7%成長という非常に高い数字が出ているわけですけれども、しかし、その実態はどうなのかという点であります。やはり、輸出中心に、中国向けの貿易あるいはアメリカの好況というものに支えられた、そういう輸出関連企業の活況というのが中心でありまして、しかも、それに関連する設備投資が伸びている。その反面で、個人消費を中心として消費の低迷というものは依然として深刻だろうと思うんです。
そこで、こういう経済の現状の中で、財政の役割でありますが、先ほど、粉飾国家である、そういうお話がありました。その結果、むだなところに抜本的なメスを入れるよりも、むしろ国民負担の方にかなり重点が移動しているのではないか。年金その他、増税ですね。
昨年来、我々、この2年間だけをとりましても、政府の予算案で、平年度ベースでいいますと、合わせて7兆円を超える負担増になるというふうに考えておりますが、今の景気の現状と、それから予算の役割といいますか、これを私どもは個人消費にもっと支援をする形に変えるべきだと思いますけれども、金子先生の御意見を伺いたいと思います。
○金子公述人 私は、今の時点では、景気の現状の判断というのは、別に予想屋ではありませんですが、非常に恐れているのは、予算をどう組み直すかという当面の問題よりは、私が発想しているのは、今どういうリスクがあるか、それに耐えられるかどうか。
実は、輸出主導の景気回復が波及していないのはなぜかというのを考える。それからもう一つは、この輸出主導の景気ですので、外が悪くなったときにはたちまちつぶれてしまう。この二つのリスクがあります。
外側で見たときには、中国経済はやはりバブルぎみであります。これは判断は難しいですが、このバブルがうまく収束してくれるかはだれも予測できないわけですが、常にそういうリスクはある。それから、アメリカを、膨大な双子の赤字を出してもたせているという体制を、世界じゅうがうまく支え続けられるかどうか、とりわけ大統領選以降、そういう体制がうまく機能するかどうかというのに非常に疑問を持っています。
御指摘の点は、実は、内側に政策として、今までは輸出主導でいったのが中小企業や個人や地域に波及する政策経路があったということなんです。それは、先ほど申し上げたように、田中角栄さんがつくった仕組みは、実は地方へ波及する経路でありました。ところが、それが実は、個人は年金や雇用が不安、あるいは中小企業を支えるような、地方が地域を支えるような枠組みが崩れるということで、なかなか国内に波及していかなくなっている。
したがって、単に予算を組み替えるだけではなく、新しい個人や地域、中小企業に波及するようなメカニズムをどうつくるか、こういう観点が必要なので、予算の重点をそういうふうに置くかどうかではなく、仕組みそのものを変えなければ、もうもたないのではないかというのが私の意見なんですね。その点をちょっと御了解いただければと思います。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。