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その他 (関税・EPA(経済連携協定)・TPP, 農林漁業・食の安全)

2007年03月23日 第166回 通常国会 財務金融委員会 【383】 - 質問

関税法改定案 国内産業を守れと質問

 2007年3月23日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で、関税定率法の一部改正案について質問を行いました。
 もともと、日本の関税は、国内産業を守る国境措置として重要な役割を果たしています。この点については、財務大臣も認めました。
 農水省が、先月開かれた経済財政諮問会議に提出した「国境措置を撤廃した場合の国内農業への影響」という試算があります。
 それによると、安価な外国の農産物が大量に国内に流入し、国内農産物は市場を失って壊滅的な打撃を受けると書いています。
 その被害額は、約3兆6000億円にものぼります。これでも、その影響額は小さめに出ていることを、山本農水副大臣が認めました。
 今回、提案されている関税定率法改正案によると、後発開発途上国(LDC)への特恵関税制度の「改正」によって、農産物1000品目について新たに無税務枠措置を拡大するものとなっています。
 そのなかには、高関税で保護してきた農産品があります。典型的なのが、こんにゃく芋です。
 こんにゃく芋の国内価格は、1kgあたり1845円ですが、輸入価格は349円で、5倍の開きがあります。統計をさかのぼると、1983年には18倍の価格差がありました。そのため、1700%もの高関税率が必要でした。
 農水省の先の試算では、こんにゃく芋の国境措置を撤廃すると、生産が90%も減少することになり、加工業では100%減少することになります。これは、産業として、まさに完全に崩壊することです。
 しかも、財務大臣の地元である群馬県のこんにゃく芋は、全国の生産の9割が集中しています。その産地が、完全に崩壊してしまうのです。
 佐々木議員は、「こんなやり方は、絶対に認めるわけにいかない」と主張しました。
 質問後、佐々木議員は、反対討論を行いました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 我が国の関税は、国内産業を守る国境措置として重要な役割を果たしてきたと思います。財務大臣にお聞きしますが、関税の役割、これをどのように認識されているか。基本的なことですが、確認をしておきたいと思います。
○尾身財務大臣 関税は、WTO協定上認められました国境措置でございまして、現在では、国内産業保護の観点から、国境において内外価格差を調整するという機能を通じ、重要な役割を果たしているものと認識をしております。
 ただし、個別品目に係る関税率水準の策定などの関税政策の企画立案に当たりましては、消費者に与える影響や対外交渉等についても十分に考慮する必要がありまして、国内産業の保護に加え、これらを総合的に勘案することが重要であると考えております。
 今後とも、このような観点を踏まえつつ、適切な関税率、関税制度の設定に努めてまいりたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 国内産業を保護する、こういう基本的な認識が示されたと思います。
 山本農水副大臣、農業における国境措置について、日本の関税というのはどのような役割を果たしてきたのか、説明をしていただきたい。
○山本(拓)農林水産副大臣 御案内のとおり、農産品に係る関税は、内外価格差から国内農業を保護する役割を果たしてきていると考えております。
○佐々木(憲)委員 農水省が作成した資料によりますと、我が国の農業は、国土条件の制約があり、米国や豪州の農業との間には埋めることができない生産性格差が存在している。関税は、こうした生産性格差を調整するための国境措置としてWTOで認められた手法である。こういうことでよろしいですね。うなずいておられます。
 さてそこで、先月、農水省が、国境措置を撤廃した場合の国内農業への影響という試算を出しておられます。ここにそれがありますけれども、これによりますと、具体的な数字が出ていますが、これはどのような前提のもとで試算したものなのか、試算結果は日本の農産物、農産物加工業にそれぞれどのような影響が出るというふうに見ておられるか、説明をいただきたいと思います。
○山本(拓)農林水産副大臣 御指摘の試算は、昨年11月に経済財政諮問会議において、EPAの推進の是非についての議論に関連し、国境措置を撤廃した場合の国内農業への影響に関する試算を早急に公表すべきという要請に基づき、試算をいたしたところでございます。
 その撤廃をした場合の条件、いわゆる前提条件といたしましては、まず一つ目は、何らかの追加的な対策は行わない、二つ目が、国内の農産物需要量は増加しないなど一定の前提を置き、我が国の農産物や農産物加工品等の品質、価格、輸出国の事情等を詳細に分析し、品目別に影響の程度を積み上げる方法により試算を行ったところ、国内の農業生産が約3兆6000億円減少するほか、その影響が国内の幅広い産業に波及し、GDPが約9兆円減少する、これに伴い、約375万人分の就業機会を喪失する、カロリーベースの食料自給率は現在の40%から12%まで低下するなどの結果になっております。
 また、国境措置を撤廃すれば、こうした直接的な影響だけじゃなく、国土、自然環境の保全など農業が有する多面的機能や、不測時にも、食料を生産し、国民に供給する食料供給力が低下するとともに、農業、食品産業が深刻な打撃を受ける結果、地域社会の崩壊にもつながるなど、農業だけにとどまらず、我が国の社会経済全体に影響が及ぶことが考えられるといたしております。
○佐々木(憲)委員 これは、非常に重大な影響が出るということを農水省が試算したものであります。もちろん、一定の前提のもとにですけれども。国境措置を撤廃した場合の国内農業生産の減少が3兆6000億円、GDPの減少が9兆円、失業者が新たに375万人、食料自給率が40%から12%と、これは本当に壊滅的な、深刻な事態だと思います。そうなってはならないわけであります。
 そこで、もうちょっと具体的に内容について聞きますけれども、この試算の対象としたのは農産物で何品目でしょうか。それから、農産物加工業、これは何業種を試算されましたでしょうか。
○山本(拓)農林水産副大臣 今回、試算の対象といたしましたのは、米、麦、大麦など20品目、そして農産物加工業などは、いわゆるそれに関連する15業種でございます。
○佐々木(憲)委員 わずか農産物20品目なんですね。これはもちろん、国境措置を撤廃すると影響が大きいものを選んだということでしょうけれども。それから、農産物加工業で15業種ですよ。当然、これ以外にも、農産物、影響を受けるものはあるわけであります。それから、加工業も影響を受ける業種があると思うんですね。
 したがって、これはどちらかといえば比較的少な目に出ていると私は思うんですけれども、そういう影響も全体として考えますと、影響はさらに大きなものになると思うんですが、いかがでしょうか。
○山本(拓)農林水産副大臣 確かに今回の想定金額は、最低これ以上ということでございまして、そのほかに、日本で余りつくっていないバナナとかパイナップルとか、一部沖縄でつくっておりますが、そこらに与える影響というのはなかなか、責任を持った数字というのがはっきりはじき出せませんでしたので、とりあえずは、最低、責任を持って出せる数字だけ出させていただいて、いわゆるそれ以上というふうに御理解いただければ結構だと思っております。
○佐々木(憲)委員 つまり、最低の影響でもこのぐらいの深刻な事態になるというわけでありまして、私は非常に大きな衝撃を持って受けとめたわけです。
 今回提案をされております関税定率法改正案によりますと、後発開発途上国、LDCへの特恵関税制度の改正で、農産物1000品目について新たに無税無枠措置を拡大するということになっております。その中には、高関税で保護してきた農産品が入っております。典型的なのがコンニャクイモであります。
 これは、これまで何%の関税だったでしょうか。
○青山政府参考人(財務省関税局長) お答え申し上げます。
 コンニャクイモでございますが、関税割り当て制度の対象となっておりまして、関税率でございますが、関税割り当てを受けて輸入されるものにつきましては40%、それ以外のものが、キログラム当たり2796円でございます。
○佐々木(憲)委員 関税率でいうと何%になるんですか。
○青山政府参考人 約1700%程度でございます。
○佐々木(憲)委員 つまり1700%であります。まあ、1706%と聞いておりますけれども。これは、国内の産地を守るために、コンニャクイモの国内精粉価格が国際価格と比べて比較的高い、したがって、その国境措置として措置をされているものであります。
 念のために、国内の価格と輸入価格、これはどうなっているでしょうか。平成17年の数字を示していただきたい。
○佐久間政府参考人(農林水産省大臣官房審議官) お答えいたします。
 平成17年度におきますコンニャクイモの精粉価格でございますが、全国蒟蒻原料協同組合連合会調べによりますと、1キログラム当たりにいたしまして1845円、輸入価格につきましては、貿易統計によりますと、1キログラム当たり349円となっているところでございます。
○佐々木(憲)委員 今お示しいただきましたように、国内価格は1845円、国際価格が349円であります。
 二枚目の資料を、皆さんのお手元にあると思いますが、見ていただければ、右側の方に輸入価格がございまして、その一列左側に精粉価格、この二つが並んでおりますけれども、ともかく、国際価格と国内価格を比べますと、これは高い関税で守らなければ、到底、国内のコンニャクイモの産地は崩壊してしまうというものであります。
 例えば1980年、83年、このあたりを見ますと、83年は18倍であります。その18倍の価格をベースに現在の高い関税が決められてきたわけです。1989年には23.2倍、こういう落差も生まれているわけでありますから、当然、国境措置というものは、国内を守るという意味で大変重要な役割を果たしたというふうに思います。
 そのコンニャクイモの関税が今回はゼロになるわけですね。いきなり1700%からゼロ、こういうふうになってしまうわけで、これは衝撃が極めて大きいと思うんです。
 そこで、農水副大臣に聞きますが、国境措置を撤廃した場合の国内産業、国内農業への影響では、コンニャクの国境措置がなくなったとき、どのような影響が出ると試算をしているか、紹介していただきたいと思います。
○山本(拓)農林水産副大臣 御案内のとおり、最後は日本の消費者の判断でございまして、確かに内外価格差は、コンニャクで、スーパーに国内産が600円だったら外国産が100円ですから、みんな国産を買うという人がふえれば影響がないわけでありますが、通常、品質が変わらなければ安い方を選ぶということであれば、仮にコンニャクイモについては、生芋を原料としている品質面等で優位な一部の国産製品を除き、生産量の9割が外国産品と置きかわり、コンニャク精粉加工品については、精粉の内外価格差が大きく、かつ品質格差がないことから、生産量の全量が外国産品と置きかわり、精粉加工業者のほぼすべてが撤退をすると予想されております。
 この場合の生産減少額については、コンニャクイモについては国内生産額の9割に当たる100億円、コンニャク精粉加工業については国内生産額の全額に当たる136億円との試算結果となっております。
○佐々木(憲)委員 これは極めて衝撃的な数字であります。
 お配りした資料の3枚目を見ていただきたいんですが、中段から下のところに、品目、コンニャクイモというのがありますね。国境措置が撤廃された場合、国内生産額111億円が、100億円が消えてしまうわけですから、90%生産が減少するわけであります。
 次のページをあけていただきますと、これは加工業ですが、ちょうど真ん中のところにコンニャク精粉加工業、136億円の生産額ですけれども、減少額が136億円。つまり、100%これがなくなってしまう、ゼロになるということで、これは非常に大きな衝撃度であります。
 もちろん、これは数字上の、机上の計算だと言えばそれまでかもしれませんが、しかし、全部国境措置を撤廃して、現在の国際価格が国内に入ってきた場合にはこのような影響が出るということですから、非常に私は深刻だと思うんです。
 そこで、コンニャクイモの生産農家の数、コンニャク精粉加工業者の数、これを示していただきたい。
○佐久間政府参考人 お答えいたします。
 群馬県におきますコンニャクイモの生産農家数でございますが、農林業センサスによりますと、平成17年2月1日時点におきまして、2272戸となってございます。
○佐々木(憲)委員 精粉加工業者の数は。
○佐久間政府参考人 申し上げますが、精粉業者につきましては、業者をカウントする悉皆調査といいますか、調査がちょっとございませんので、わかりません。申しわけございません。
○佐々木(憲)委員 これは大変大きな影響が出ると思います。先ほどの数字を見ましても、精粉加工業者の方が数字が大きいわけでありますから、農家よりももっと大きな影響が出る可能性がある。
 農家で2272戸でありますが、家族を入れますとこれはもっと当然大きくなるわけでありまして、何千人という方々が生業を失ってしまうというわけであります。加工業者も入れますと万の単位であります。
 尾身大臣にお聞きしますけれども、日本のコンニャクイモの産地が一番多いのはどこだと思いますか。
○尾身財務大臣 我が群馬県でありまして、しかも、私の選挙区が一番多いと思っています。
○佐々木(憲)委員 大臣の地元じゃないですか。地元でこんなに大きな影響が出るわけであります。
 農水省の資料によりますと、全国の生産量の9割が群馬県です。そのほとんどが大臣の地元なんですよ。
 群馬県には66の市町村が現在ございます。その中で、コンニャクイモの産出額が農業産出額の1位から3位を占めている市町村、これは幾つあるでしょうか。
○佐久間政府参考人 平成16年の農業所得統計によりますと、当時の群馬県下におきます全市町村数、66ございますけれども、このうち、コンニャクイモの産出額が農業産出額の1位を占めておりますのが10市町村、2位を占めておりますのが5市町村、3位を占めておりますのが7町村でございまして、都合22市町村におきまして1位から3位のいずれかを占めている、こういうことになってございます。
○佐々木(憲)委員 66の自治体のうち、22の自治体がコンニャクイモの生産が1位から3位です。つまり、それによって成り立っていると言ってもいいほどの非常に大きな産地であります。
 それが非常に大きな打撃を受けるわけで、国内最大の産地であります群馬県で、ミャンマーからの輸入自由化に危機感を持って、これは困るという反対運動を展開されております。輸入が増加すれば、価格が低下し、生産農家や加工業者に深刻な打撃がある、こういうふうに見ているわけです。
 例えば、JA群馬中央会の奥木会長はこういうふうに言っております。安い農産物が入ってくると、生産コストの高い国産品は太刀打ちできない。条件格差解消のため国際的に認められているのが関税措置であり、その大幅な引き下げは生産者に壊滅的な打撃を与えかねない。こういうふうにおっしゃって危機感を表明しているわけです。また、群馬県知事も、あるいは群馬県議会も、危機感を持って、要望書あるいは決議文を出しております。
 大臣はこのことを御存じですか。
○尾身財務大臣 存じております。
○佐々木(憲)委員 知っていながらこれだけの重大な打撃を与える政策を実行するというのは、極めて私は重大だと思いますね。
 農水省はこれに対してどのような措置をとろうとしているのか、具体的に説明していただきたい。
○山本(拓)農林水産副大臣 今のミャンマーは、いわゆる先生のおっしゃるLDCの関係でお話をされておられるんでしょうか。(佐々木(憲)委員「そうです」と呼ぶ)LDCということであるならば、御案内のとおり、日本で輸入しておりますコンニャクイモのミャンマーの比率は、全体の1.5%未満でございます。
 そういう中で、今回のLDCの無関税枠の範疇で仮に拡大になった場合、特にミャンマーについては、自生の芋でございますので、大体生産量は決まっております。だから、仮にそれが拡大されていくようになったときには、セーフガードではございませんが、エスケープクローズというものが発動が認められておりますので、農水省としてその発動申請をいたすことといたしております。
○佐々木(憲)委員 ミャンマーのコンニャクイモの実態、確かに自然に自生している芋の採取がほとんどでありますし、加工技術が貧弱であるということですから、急には拡大はしないでしょうが、しかし、これは拡大の可能性が非常に高まってくるわけです、ゼロになりますから。
 現地でも、生産をふやしたい、コンニャクイモの出荷をふやしたいという意欲を示しているという情報もありますし、あるいは日本の企業がミャンマーに進出して開発輸入をするということも十分考えられるわけであります。ですから、いや、まだ大丈夫だ大丈夫だと言っても、これはそう簡単に大丈夫論でだまされないと思いますよ、現地の人は。コンニャクイモは、確かに3年周期だと聞いていますけれども、影響はじわじわと、徐々に出てくるわけであります。
 それから、エスケープクローズのお話もありましたが、今までこれを発動されたことは一度もないんじゃないですか。一度かありますか。
○山本(拓)農林水産副大臣 基本的には、今までございません。
 そして、先ほど先生おっしゃったように、それは日本の企業が資本投下して生産拡大するじゃないかという話でありますが、このエスケープクローズは、WTOのどうのこうのというよりも、国内で、いわゆる財務大臣が最終決定権者でございます。権限は国内に与えられておりますので、今回のLDCの枠を前内閣で決定されたのは、言い方にちょっと誤解があると悪いですが、いわゆるかなり低開発の国に対して少しいろいろな意味で援助しようという政策で決定されたわけでありまして、その意味では、その決定の根拠となりましたのは、数字的に影響を及ぼさない。
 しかし、御案内のとおり、そこに目をつけて、ほかの資本がそこに工場をつくったりということになれば国内問題としてストップをかけられるという仕組みになっておりますので、そういう御懸念はないと考えております。
○佐々木(憲)委員 これは全く甘いですね。エスケープクローズというのは一度も発動されたことがないわけですし、セーフガードだって発動されたことがないわけであります。
 だから、そういう意味で絵にかいたもちでありまして、しかも、数字によって、幾らふえたら自動的に発動するというものではないでしょう。今まで、アメリカなどは数字で具体的に決まっていますけれども、非常にあいまいなんですよ。
 ですから、外国から輸入されても、じわじわとふえてくるものに対してはまともに対応できない。みずから農水省は試算をして、国内がもう壊滅的な打撃になると言いながらこれをあけていくということは、私は、全く、実際に説明していることとやっていることが逆だと思うんですね。
 今度こういうことを決めた場合、その影響は大変私は深刻であるというふうに思います。
 それからもう一つ、先ほども議論がありましたが、EPAにおける関税包括規定の問題。これは、今の制度は、署名から発効までの間に、EPAを実施するための関税率の軽減、廃止の規定が置かれている関税暫定措置法を協定の国ごとに国会で審議する、こういう仕組みになっていますが、先ほどの答弁では、これはもう包括的に、一度決めたら一つ一つはやらないんだと。こうなりますと、これは、国会の審査機能が弱体化してしまうわけであります。
 私は、以上の点を考えますと、確かに、今回一定の、沖縄への関税優遇措置の延長など賛成できる部分もありますけれども、全体としていいますと、今回の関税暫定措置法の改正案についてはマイナス面が非常に多いということで、私どもは反対の態度もここで表明をさせていただきたいというふうに思います。
 以上で質問を終わらせていただきます。

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