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金融(銀行・保険・証券) (銀行公的資金注入, 中小企業融資)

2008年10月31日 第170回 臨時国会 財務金融委員会 【472】 - 質問

新金融機能強化法案 米国との比較、新銀行東京への対応について質問

 2008年10月31日午後、佐々木憲昭議員は、午前の参考人質疑に引き続き、財務金融委員会で新金融機能強化法について質問に立ちました。

米国では損失を銀行業界が負担、異常な日本の金融救済策
 アメリカでは、公的資金投入の際の最終的な損失は銀行業界に負担させる仕組みになっています。佐々木議員は、この実態を突きつけました。金融機関救済のツケを最終的に国民に回す日本政府の姿勢が、金融危機の発端となったアメリカと比べても異常なことがうきぼりになりました。
 現在審議中の新金融機能強化法案は、公的資金に政府保証をつけ、最終的な損失は国民の税金で穴埋めする仕組みになっています。
 佐々木議員は、金融機関救済のために7000億ドルの公的資金枠をつくったアメリカでは法案(緊急経済安定化法)成立の際、公的資金の最終負担に関する条項(134条)がつけられたことを指摘し、政府の認識をただしました。
 金融庁の内藤純一総務企画局長は「(134条は)金融業界に欠損額を救償する法案を提出する規定」と答弁し、このことを認めました。佐々木議員は「アメリカでは、政府が公的資金を使って手にした不良債権や株式等を処分した後、5年後に純損失が生じている場合は、財政赤字の拡大につながらないよう銀行業界に負担をもとめるものになっている」「最終的損失を国民に回す日本とは根本的に違う仕組みだ」と強調しました。
 そのうえで、佐々木議員は「日本も、せめてアメリカ並に国民負担ゼロを目指すべきだ」と追及。中川昭一財務・金融担当大臣は「アメリカにはアメリカのやり方がある。日本は日本のやり方である」と開き直りました。
 佐々木議員は、「国民負担がない方法も考えられるの、日本ではそれを選択しなかった。根本的に容認できない」と政府の姿勢を厳しく批判しました。

新銀行東京への公的資金投入を政府否定せず
 また、佐々木議員は、すでに破綻状態にある新銀行東京の実態を告発し、金融機能強化法案の救済対象に同行を含むのかどうかただしました。中川昭一財務・金融大臣は「(投入先の)ルールを細かくつくって、ルール通りにやる」などと述べるだけで、新銀行東京への公的資金の投入を否定しませんでした。
 新銀行東京は、石原慎太郎都知事が設立を指示し、自民、公明、民主の3党が賛成して東京都がつくった銀行です。今年3月の決算では1000億円を超える累積欠損が発生し、自民、公明両党が新たに400億円の追加出資を決めています。
 佐々木議員は、石原都知事が新銀行東京発足当時の2003年6月に民放テレビで、魚屋や八百屋を例に挙げ、「そんなとこに貸さないよ。商店街はつぶれつつあるんだから」などと発言していたことを指摘しました。
 さらに、新銀行東京の再建計画では、融資対象を1万3000社から6000社に減らし、預金も4000億円から200億円に激減させ、資金調達の多くを有価証券の運用で充てようとしていることをあげ、「もはや事実上のノンバンクで投資組合化している」「初めから公的資金を投入する要件を欠いている」と追及しました。
 しかし、中川財務・金融大臣は「ルールに則って見ていく」と述べ、まともに答えませんでした。佐々木議員は、「こんなところに公的資金を投入しても、税金をドブに捨てるようなものだ」と厳しく批判しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、金融機能強化法の仕組みについて確認をしたいと思います。
 この法案では、資本注入の資金、これは預金保険機構が政府保証によって調達し、最終的な損失が出た場合は税金で負担する、そういう仕組みになっております。利益が出ればいいけれども、損失が出たら最終的にツケが国民に回る、そういう仕組みだというふうに理解をしておりますが、この点、もう一度確認したいと思います。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) お答えいたします。
 資本注入に係る資金は預金保険機構から調達をいたしておりまして、預金保険機構は政府保証に基づきまして資金調達をするということで運営をされておりますが、委員御指摘のとおり、損失が発生をいたしまして返済ができないということになりましたら、最終的には政府の負担ということになろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 そこで、アメリカの緊急経済安定化法、これはどういう仕組みになっているかということを確認したいんです。
 この法案は10月1日に上院で可決されまして、10月3日には下院を通過し、即日成立をしております。この緊急経済安定化法では、報道等によりますと、不良債権等の買い取りや資本注入などに利用できる資金として最大7000億ドルの権限を財務長官に与えております。すぐに使えるのは2500億ドルだけでありまして、その後、大統領が必要と判断した場合にはさらに1000億ドルの支出が可能となっています。しかし、それを超える3500億ドルについては議会の承認が必要だということで、議会に要請して15日以内に否認されたら執行できない、こういう仕組みだというふうに思われますが、こう理解してよろしいですね。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 米国の緊急経済安定化法でございますが、不良資産救済プログラムを通じまして最大7000億ドルの不良資産の買い取り権限が政府に与えられていると承知しております。
 その内訳といたしまして、法案成立時に2500億ドルの買い取り権限が財務長官に付与され、財務長官の権限行使に当たり追加資金が必要であると大統領が承認した場合には、この買い取り権限に千億ドルが追加され、その後、大統領が財務長官の買い取り計画に関する報告書を議会に提出し、15日以内に合同決議がなされた場合には、残りの3500億ドルの買い取り権限が財務長官に与えられるものと承知をしております。
 なお、現時点では、10月14日に大統領が1000億ドルの追加を承認しておりますことから、財務長官の買い取り権限は3500億ドルとなっているものと認識しております。
○佐々木(憲)委員 基本的には私が言ったとおりだと思うんです。
 そこで、次に問題は、買い取った不良資産を処分する、あるいは資本注入で手に入れた株式等を売却して5年後になお損失が出た場合、それはどうなるのか。損失は直ちに財政負担となる、そういう仕組みになっているんでしょうか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) お答えいたします。
 米国の緊急経済安定化法では、その施行から5年が経過した段階で、行政管理予算局長が議会予算局長と協議の上、同法に基づく不良資産救済プログラムを通じまして政府が保有することとなった金融資産の純資産額を議会に報告することとされております。
 なお、その際、万一欠損が生じていた場合には、大統領が金融業界に当該欠損額を求償する法案を提出する旨の規定が盛り込まれているものと承知しております。
○佐々木(憲)委員 今の説明では、最終的に欠損が生じた場合、損失が生じた場合は、5年後にこの金額について確定をして大統領が法案を提出する、その場合、財政負担にならないように銀行業界に負担を求める、こういうものになっているということでよろしいですね。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 金融業界に当該欠損額を求償する法案を提出する旨の規定が盛り込まれているということでございます。
○佐々木(憲)委員 このアメリカの法律は、日本が今金融機能強化法を提案しておりますが、最終的な損失の処理の仕方が根本的に違うんです。
 アメリカでは、あれだけ大変な金融危機が発生をして、それに対して対応しなきゃならぬ、一定の財政負担を当面はする、しかし、5年後にこの損失が残っていた場合には、最終的には銀行業界にその負担を求める、こういう仕組みになっているわけです。大統領がそういう法律を提出できる、こうなっているわけです。
 この点では日本は、最初に確認しましたけれども、損失が出たら、これは全部丸々、即、いわば財政負担、国民負担というふうになる。これはやはりアメリカと日本の違いだと思いますけれども、財務大臣、この違いというのはお認めになりますか。
○中川財務・金融担当大臣 アメリカにはアメリカのやり方、日本には日本のやり方でやります。
○佐々木(憲)委員 したがって、日本はアメリカとは随分違って、国民負担が簡単に発生する、そういう法案を提案されているということが確認されました。これ自体、私は非常に重大な問題だと思いますよ。やはり国民負担がない方法だって考えられるわけでありまして、それを選択しなかったというのは、私は根本的にこれは容認できないシステムであると思っております。
 次に、金融機能強化法案の資本注入の対象でありますが、地域金融機関の範囲についてであります。これは、ノンバンクというのは適用の対象外というふうに考えてよろしいですね。
○谷本金融担当副大臣 金融機能強化法は銀行等の預金等取扱金融機関を対象としておりますので、ノンバンクは対象とはなっておりません。
○佐々木(憲)委員 金融機能強化法の中心的な目的は、中小企業金融の円滑化を図るということであります。これは、簡単に言いますと、大臣、貸し出しをふやすということ、あるいは貸し出しを少なくとも減らさない、そういう目標を持って当たるということだと思いますが、そう理解してよろしいですね。
○中川財務・金融担当大臣 その金融機関の取引先のニーズにできるだけこたえるということだと思います。
○佐々木(憲)委員 ニーズにこたえるということは、中小企業に対して親切に対応し、融資を拡大する、あるいはそう簡単に引き揚げるというようなことはしない、こういうふうに理解してよろしいかと思います。
 さて、そこで、この中小企業向け貸し出しでありますが、例えば、毎年、大幅に貸し出し計画を減らす、そういう計画を持っている、こういう銀行の場合は、当然そんなのは注入の対象にならないと思いますけれども、いかがでしょうか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 金融庁といたしましては、国の資本参加後においては、当該金融機関の中小企業向け貸し出しの円滑な方策等の実施状況について、定期的にフォローアップを行うこととなっております。仮に計画の履行に改善が見られない場合には、報告徴求によりまして原因を精査いたしまして、さらに改善の努力が認められないという場合には、必要に応じて計画を履行するための監督上の措置を講ずるということにしております。
 なお、具体的な方策につきましては、今後の政府令等の作業の中で検討していくこととなっておりますけれども、その際には、現行の実務におきまして、中小企業向け貸し出しの総資産に占める割合が計画の始期を下回る場合には、業務改善命令の発動をも検討するということを考えておりまして、今後、中小企業向け貸し出しの水準が適切に確保されるような制度、運用となるよう検討を進めてまいりたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 中小企業向け貸し出しの金額全体が毎年毎年減るような、そういう計画を持っている銀行、あるいは貸し出しの比率がどんどん低下するような、そういう銀行というのは、これは当然最初から注入の対象にならないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 今回の金融機能強化法案の提出の大きな理由といたしましては、やはり世界の経済、金融が激変をいたしまして、それに基づく大きなダメージを受けたということに対して、放置しておりますとさまざまな悪影響が生じる、これを改善し、さらによくしていこう、中小企業金融の円滑化を図っていこうというのが趣旨でございます。
 そういう観点から、先ほど申し上げましたように、金融機関の状況について常に密接にフォローアップをしまして、問題があればこれを是正していく、そういう対応をとっていきたいということでございます。
○佐々木(憲)委員 質問に答えていないんですけれども。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) もう少し申し上げますと、現行の監督指針における監督上の措置におきましても、経営強化計画に盛り込まれた指標が、これは中小企業向け信用供与の総資産に占める割合でございますけれども、これが経営強化計画の始期を下回った場合に、まず一期目の場合には報告徴求ということで、必要に応じて業務改善命令の発動を検討する。二期目につきましては……
○佐々木(憲)委員 そういう意味ではなくて、それは注入後の、要するに、経営計画を出させた後の対応でしょう。それを聞いているんじゃないんです。本来この金融機能強化法の対象となるべき金融機関というのは、中小企業に対する貸し出しをどんどん減らすような銀行、最初からそんな計画を持っている銀行というのはまれだと思いますけれども、そんなところは対象にならぬということだということはどうなんですか。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 申請時におきましては、私ども現在検討しておりますのは、例えば4%の基準の未達行におきまして、従来であれば一律に経営責任を求めるというような取り扱いでございましたけれども、今回は、例えば内生的な要因でそういった状況に陥ったのか、あるいは外生的な要因で陥ったのかというようなことを分析いたしまして、仮に内生的な問題で陥ったという場合には、やはり経営体制というものが責任ある形で確立しているかどうかということを精査いたしまして、それがそうであるならば申請に乗ってくるというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 大体、質問にまともに答えないのはけしからぬよ。そんな話を聞いているんじゃないでしょう、私は。私は、なぜこんな質問をしたかというと、新銀行東京を念頭に置いているからなんです。
 地方自治体が支配株主となっている金融機関というのは全国に何行ありますか。これは初歩的なことですから答えてください。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) 一行だけでございます。
○佐々木(憲)委員 極めて特殊な銀行でありまして、この新銀行東京は、石原都知事が2003年の知事選挙で設立を公約し、東京都が1000億円を出資して2005年4月に開業したものです。当時、自民、公明、民主がこの設立に賛成しております。しかし、赤字決算が続いて、ことし3月決算では累積欠損が1000億円を超えております。この春に多くの反対を押し切って、自民、公明が賛成して400億円もの追加出資を決めた。極めて異常な事態であります。
 経営陣に知事側近の副知事が送り込まれており、知事がつくらせたマスタープランによって高利の預金と無謀な融資拡大を行ってきた。その結果、欠損がどんどん累積したということであります。1年で92億円、2年目757億円、3年目167億円。開業3年目で累積欠損が資本金の85%、1016億円に達しているわけです。
 有価証券などの資金運用による損失も巨額なものであります。400億円の追加出資のほとんどは、リスクの高いファンド事業、それのために使われた、そういうふうに言われておる。
 この新銀行東京というものは、もはや銀行としての体をなしていないと私は思いますけれども、大臣、どのように思いますか。
○中川財務・金融担当大臣 金融監督行政のルールにのっとって見てまいりたいと思います。
○佐々木(憲)委員 この金融監督行政のルールだけれども、検査はこの前やったそうですが、中身はまだ公表されておりません。
 10月27日になりますと、融資を行う際業者の決算書類を改ざんし、5000万円を不正にだまし取ったということで、元行員と不正融資を受けた業者が詐欺容疑で逮捕されております。銀行の内部調査で不正が疑われる融資が30件以上も見つかった。政治家や議員秘書らの口ききも取りざたされております。
 再建計画が出ておりますが、この計画自体が大問題で、融資対象は、この3月1万3000社、これをどんどん減らしていく、6000社に減らす、2分の1以下に削る計画になっておりまして、新規の融資拡大はほとんどありません。
 石原知事は、発足当時、こういうことを言っていたんです。何でもかんでも困っている中小企業にお金を貸すわけにはいかない。この間インタビューなどで、お魚屋さんだか八百屋さんだか、うちには貸してくれないと言うが、それはそんなところには貸せないよ、商店街つぶれつつあるんだからと。まあ驚くべき発言でありますが、こんなことを言って、何のための銀行なんでしょうね。
 しかも、預金が、最初高利で4000億円集めた。計画では、その預金はどんどん減らしていく、200億円に減らす、20分の1に減らすというんですよ。資金の調達先は、有価証券の運用、こういうところに偏っている。事実上、これはノンバンクであります。投資組合化しているとも言われておりまして、店舗が六店舗あったのが一店舗になる。初めからこんな銀行は公的資金の対象になるわけがない。
 大臣、こういう要件を欠いているようなところは最初から対象にすべきじゃないんじゃありませんか。
○中川財務・金融担当大臣 この法律ができ上がった後のいろいろなルールもさらに細かくつくって、そのルールどおりにやっていきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 大体、こんなところに公的資金を投入するのは私は間違いだと思うんですよ。税金をどぶに捨てるようなものだとも言われているんです。
 したがって、金融庁は厳しくこういうものに対応すべきだということを最後に申し上げまして、終わります。

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