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金融(銀行・保険・証券) (銀行公的資金注入, 中小企業融資)

2008年10月31日 第170回 臨時国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【471】 - 質問

「金融機関の役割は地域発展に資すること」参考人が表明

 2008年10月31日午前、財務金融委員会は、新金融機能強化法案に関する参考人質疑を行い、成城大学社会イノベーション学部の村本孜学部長、全国中小企業団体中央会の佐伯昭雄会長、第2地方銀行協会の横内龍三会長、農林中央金庫の上野博史代表理事理事長が意見陳述しました。
 29日の法案質疑に引き続き、佐々木憲昭議員が質問に立ちました。

 村本氏は中小企業の借り入れ難易度が「(貸し渋りが横行した)2002年の水準に近づいている」と指摘。佐伯昭雄氏も中小企業の苦境に触れて、「それに追い討ちをかけるように金融機関の貸し渋りがおきている」とのべました。
 横内氏は、地方金融機関は信用コストが増加しているが、「中小企業金融の円滑化に鋭意務めている」と強調しました。上野氏は今回の新金融機能強化法案について、「現時点で公的資金の注入を受けることは想定していない」としつつ、法の対象から農林中金をはずすという民主党の修正提案について「顧客や市場信任に影響が生じる」と反対を表明しました。
 佐々木議員は、村本氏に株式の暴落などと実体経済の関係を質問。村本氏は経済にとって家計が大事だとして「(不況だからと)企業が職員をどんどん非正規化してしまえば、めぐりめぐって消費が冷え込む」と述べました。
 また、佐々木議員は地方金融機関の役割について、短期の視点で経営不振の企業から資金を引き上げるのではなく、長期視点から“共存共栄”を目指すべきと指摘、横内氏の認識をただしました。横内氏は「まったく共感する。地域発展に資することが原則であり、原点」と答えました。

議事録

○田中委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案、保険業法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 本日は、両案審査のため、参考人として、成城大学社会イノベーション学部長村本孜君、全国中小企業団体中央会会長佐伯昭雄君、社団法人第二地方銀行協会会長横内龍三君及び農林中央金庫代表理事理事長上野博史君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。
 それでは、まず村本参考人にお願いいたします。
○村本参考人(成城大学社会イノベーション学部長) おはようございます。村本でございます。本日は、発言の機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。
 お手元に、ハンドアウトといいますか、印刷物がございます。これに従ってお話をさせていただきたいと存じます。
 私は、きょうは、金融機能強化法関連の発言をさせていただきたいと存じますけれども、金融機能強化法と申します法律は、ことしの3月でいわゆる申請期限が切れた法律でございますけれども、私はこれは、もう少しやっていてもいいんじゃないかなとちょっと思っていたくらいの法律でございます。
 と申しますのは、予防的に金融機関に資本注入をするという考え方のものでございまして、資本不足が発生してからこれを入れるという、いわゆるレギュラトリーキャピタルといいますか、そういうものではなくて、エコノミックキャピタルという学問的な用語を使いますけれども、あらかじめ入れておこうというものですから、いつでも整備しておくというのも重要なことではないかな、実はそんなふうに考えておったわけでございます。
 その後、どういうことが起きているかというのを幾つか図表で見ておきたいと思います。
 図の1、3ページ目でございますが、これは、景気の景況を調査するという幾つかの、日本銀行の短観でありますとか、あるいは中小企業庁、中小企業基盤整備機構で発表しているものとか、並べてみたのですけれども、動きを示している赤い四角のポツというのは、ここ数期で急に下がっております。実は、それ以前から、小規模の企業については、これはかなり下がってきておりまして、大分景気が悪いねというのは感じておったんですけれども、そういう意味で、地域に十分資金が回っているか、中小企業さんに資金が回っているか、特に小規模層に回っているか、これは大変に懸念されるところであったわけでございます。
 一つめくっていただきまして、図の二というのがございます、四ページ目ですが、ここでは借り入れ難易度という数字をピックアップしてございます。短期の資金あるいは長期の資金、かなり厳しくなっているなという感じがおわかりいただけるだろうと思います。かつて、2002年ぐらいに厳しい時期がございましたが、それにもう近づきつつある。この調査は例のリーマン・ショック以前のものでございますので、現況はかなり厳しくなっているのではないかな、こんなふうに考えておりまして、ここできちっとした手を打っておかなければいけないというのが現状だろうと思っております。
 あわせて、五ページ目を見ていただきますと、これはもうよく出てくるものでございますが、いわゆる企業の開業と廃業という問題でチェックいたしますと、廃業の率が非常に高まってきているということが言われまして、長期的には、日本の経済というのは、企業数が毎年数万社ずつ、10万ぐらい減っているという社会になりました。人口も減っているわけですが、企業数も減っている。企業減少社会に突入をしておりまして、経済の足元が非常に心配な状況になってきているわけでございます。そういうことで、それをどういう形でバックアップしていくかというのが非常に重要なことではないか、産業のすそ野をきちっと育てていきたいねということでございます。
 今回の法改正で中小企業に対する信用供与の円滑化ということが明記されましたことは、そういう意味では大変心強いことではないだろうかというふうに考えておりますものですから、そういう意味での評価は大いにしたいと思っておるところでございます。そういうことで、金融機能強化法がうまく機能すれば、現在の中小企業の問題に対してかなり力になるのではないかと思っているところでございます。
 そういう過程で、今さまざま議論されている問題は、一つは経営責任の問題があろうかと思いますし、あるいは数値目標のようなものがあろうかと思うんですが、これは一律に課すというのがなかなか難しい状況ではないかというのが私の判断でございます。一つは、数値目標を入れて、何%やりなさいということを言いますと、これは別な、例えばリレーションシップバンキングというところで議論したときに、数字づくりに終わってしまうということがありました。チェックリストに数字を入れておけばいいじゃないかということで、実効が上がらないことが出てまいります。
 したがいまして、こういうところをいかにモニタリングするか、フォローアップするかが私は重要なことではないかと思っております。この法律には審査会という機能がございまして、その審査会でさまざまフォローアップする、あるいは半期ごとにチェックするということができますので、そういう機能を十分生かしていけば、使いやすさあるいは実効性が上がるのではないだろうかというふうに考えておるところでございます。
 あわせて、そういう過程で、ちょっと話が飛んでしまうかもしれないんですが、七ページ、八ページの辺でございますけれども、例えば、現在、デット・デット・スワップというようなやり方ですが、借入金の一部を自己資本にカウントできるような考え方がだんだん定着して、金融検査マニュアルでも使えるようになってきております。こういったものを大いに活用しながらやっていただくというようなことが重要ではないか。
 あるいは、八ページ目は、実は現在我々が取り組んできた作業の一つなのですが、担保あるいは保証に過度に依存しない融資をしていただこうではないか。いわゆる地域密着型金融ですか、このときに、ソフト情報といいますが、ハード情報、いわゆる財務諸表に対して、目に見えない、経営者の資質ですね、非財務情報、あるいは定性情報をつかみ取るというのが重要なんですが、こういうときに、現在、知的資産という言葉を使ってあらわそうという問題がございます。
 こういうようなことにじっくり取り組む、あるいは、ABLという英語を使いますけれども、不動産ではないさまざまな担保を使う、こういったようなことによりましてこういう計画を立てていっていただく、そして地域に資金がきちっと回るような形をつくっていただく、これが重要なことなのではないだろうかというふうに考えておるところでございます。
 私は、六ページにちょっと説明を省いたところがございますけれども、廃業率が高まっていて開業が少ないというデータがよく使われるのですが、あえて一枚つけましたのは、実際に第三者を雇用している企業というカテゴリーで整理をしてみますと、実は、開業が直近では少し廃業を上回るという状況になってきております。かなり長い期間それをデータで見ますと、開業が多かったんですけれども、実際に雇用をつくれるような企業という元気な企業をやはり大いに育てていき、そしてそれを支えていくことが足元では重要なことでございますので、ぜひこういう形で進めていただければよろしいのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。(拍手)
○田中委員長 ありがとうございました。
 次に、佐伯参考人にお願いいたします。
○佐伯参考人(全国中小企業団体中央会会長) 中小企業団体中央会の佐伯と申します。
 私は、中小企業の経営者の立場から、現在の中小企業の現状並びに対策に関する要望等を述べさせていただきたいというふうに思います。
 なかなか中小企業団体中央会という名前を御存じでない方もいらっしゃるんじゃないかと思うので、ちょっとだけ説明させていただきますと、約3万2千組合、協同組合が全国にある。その傘下の中小企業が300万社と言われている。日本の中小企業は約400万社ですから、7割くらいが組合を結成して、協同組合の中で事業を継続しているというふうな現状でございます。
 そういう中で、我々中央会として全国の情勢を見ていますと、中小企業、9月に入ってからかなり厳しくなってきている。今、村本先生もおっしゃっているような、DI指数がずっと悪いという表がありましたけれども、さらに最近の我々中央会の調査におきましても、DI指数が、景気のよいから悪いを引いたのが物すごく大幅に、急激に悪化してきているというのが現状でございます。
 というのは、御承知のとおり、これは大企業を含めた、円高とかあるいは世界的な大不況の中で売り上げが伸びていない。大企業が伸びないということは中小企業の受注も減りますので、結局仕事量が非常に少ない。あるいは、原材料が値上がりしても価格になかなか転嫁できない。そういう中で、非常に苦労をしているというふうなことでございます。
 特に、私、宮城県の出身なんですけれども、中央会としまして、宮城県内の各企業を地区ごとに移動中央会と称して10月に回ったばかりなんです。仙台はまだまだいい方だと思うんですけれども、ちょっと30分くらい車で行けば、中核都市と言われる地方のシャッター通りが目立ちます。それから、沿岸部の魚のとれない漁業基地というのは今大変な不況に入っている。
 そういう中で、さらに追い打ちをかけるように金融機関の貸し渋りということが起きている。これは中小企業にとっては死活の問題であります。そういうような現況が、麻生総理は暴風雨だと言っていますけれども、本当に大変な暴風雨で、中小企業がその中で生きているというふうなことを御理解いただければと思う次第でございます。
 ぜひ先生方も、地方の製造業とか、あるいはシャッター通りじゃないですけれども、商店街の現場をごらんいただければ、いかに中小企業が大変であるか、特に20人以下あるいは五人以下の零細企業ですね。その辺もやはり生業、虚業じゃないんです、実業をやっているわけです。しかし、お金は貸してくれない。その日暮らしで、非常に大変な時代を迎えているということを御理解していただきたいと思います。
 では、貸し渋りというのは何で起こったんだろうか。これはいろいろな要因があると思います。銀行が貸さない要因というのはいろいろなことがあると思うんですけれども、一つは、私、銀行に金がないわけじゃないと思うんです、次に第二地銀の会長さんのお話もあるかと思いますけれども。金がないわけじゃないんですけれども、実は、福田総理が8月の31日に緊急経済対策を出された。これは我々にとっても非常にいいことなんです。4千億の真水で8兆から9兆の保証をするとか、中小企業にとっては非常にいいなと思ったんですけれども、発表した途端にやめられたものですから、政治空白が起きちゃった。
 本来なら9月に補正予算は通るべきはずが、10月のきょう実施になっているんですね。10月31日実施、きょうから実施なんです。この二カ月間というタイムラグは中小企業にとっては大変な重荷でございます。その間、銀行は、そういう保証がつくんだからそれまで待ちなさいということで、貸し渋りに入っちゃっている。それが大きな原因だと私は思うんです。
 政策としては非常に評価していい政策なんです、4千億円を出す。ただし、それが実行できなかったために、いい政策の反動で逆に悪くなってきたというのが現実じゃないかなというふうに思っております。きのうのテレビを見ていますと、麻生総理大臣もスピードが大切だと言っているので、もっともなことだと。本当に、現実にそのスピードの遅いおかげで中小企業がどのくらい苦しんだかということを申し上げたいと思います。
 さらに、これからが中小企業のまた正念場、年末を迎えて資金繰りが大変になってくるときに、ぜひスピードを持って次の対策、金融対策をやっていただけないかなというふうに思っているんです。ですから、今までの緊急経済対策もそうですし、今後の金融の強化法、いろいろな対策、これは私は非常に評価したいと思います、それなりに中小企業にとっては。ただ、うまく運用して、早く実施をしていただきたいというふうなことがあります。
 ただ、先ほどの中小企業、零細企業の中では、保証の枠が8兆円です。今度21兆ですか、何かきのうの新聞情報ですから。そのくらいを出そうと言っていても、実際は保証協会が保証しないところもあるんです。そうしたら、銀行も金を貸さないです。そのくらい大変なんです。特に十人以下とか、それが中小企業の大半なんですね。日本の企業の大半を占めているそういう中小零細企業についての配慮といいますか、そこら辺を十分に考慮をしていただきたい。そっちに行き渡らない、一番欲しいところに金が行かないというのが問題であるというふうに思います。
 それともう一つは、きのうも我々、全国の、特別委員会といいまして、各県の中央会の会長が全部集まりまして、いろいろな会議をやったんです。その中でもいろいろな意見が出まして、新しく保証枠をつくって借りる枠をつくった、これも非常にいいんですけれども、現在借りているお金を返済する、それの条件変更をして返済の猶予をすることが、やはり資金繰りを非常に楽にする一つの方法じゃないか。
 ただ、銀行は、条件変更というのは非常に嫌がると思います。しかし、資金繰りというのは、金を借りるだけじゃなくて、今借りているのを返す方を、全然返さないわけじゃなくて、例えば毎月30万円ずつ返していたのを15万に変更して期間を延ばしてもらう、そういうふうなことをすることによって、中小企業あるいは零細企業が資金繰りが楽になる。資金繰りが命ですから、それをぜひ御理解をしていただければなというふうに思っております。
 いろいろなことがありますけれども、もう一つ、新聞等の情報で、とにかく今に日本、世界が全部だめになるような大恐慌で、大変だ大変だ、中小企業も大変だと私も今言っていますけれども、それを言っているだけでは解決にならないので、我々中小企業、経営者というのはそれなりに、しぶといという言葉じゃなくて、非常に頑張って経営を続けていこうという努力の中で、もっと前向きな投資も必要じゃないか。
 先ほど言ったように、緊急な貸し渋りとか何かというのはもってのほかなんですけれども、我々の今本当に大変な資金繰りを、融資していただく、緊急的に出血をとめる、これは必要ですね。と同時に、いつまでも出血をとめているだけじゃなくて、食べ物で栄養をとって体に体力をつけたい、そういうふうに思うわけです。
 その一つは、もちろん受注拡大とか何かありますけれども、こういうちょうど不況のときというのは、中小企業は仕事がないものですから、時間はあるんです。それから、中小企業にはすごい技術を持っているところがいっぱいあります。そういう技術を活用した技術開発、こういうのに私は投資すべきだと思うんです。それが日本の技術立国の、あと何年後か、例えばの話ですけれども、500億円の開発投資をしたら5年か10年後では何十兆になるかもしれない。それから、世界の競争に勝つには、中小企業の技術力をアップする、そういう絶好のチャンスだと逆に思うんです。
 ですから、そういうふうな前向きな施策もぜひ先生方に考えていただきながら、我々日本の中小企業を含めた発展、あるいは維持するということだけでも大変なんですけれども、そういうことをしていただきたいというふうなことを思っておりますので、よろしくお願いを申し上げて、私の発表といたしたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
○田中委員長 ありがとうございました。
 次に、横内参考人にお願いいたします。
○横内参考人(社団法人第二地方銀行協会会長) 第二地方銀行協会の会長を務めております、北洋銀行頭取の横内でございます。
 日ごろ先生方には、当業界に対しまして大変いろいろ御指導を賜っておりまして、厚く御礼申し上げます。また、本日は、この席で意見を申し述べる機会を与えていただき、まことにありがとうございます。
 私ども第二地方銀行と申しますのは、沿革的には、相互銀行をルーツにいたしまして、平成に入りまして普通銀行に転換した銀行でございます。したがいまして、私どものお取引の主体は、法人の取引ではまさに中小企業の取引がほとんど主体でございますので、まず、中小企業金融の現状から報告させていただきたいと思います。
 我が国経済が原油や原材料価格の高騰、個人消費の低迷といったような中で後退色を強めてきております中で、地方の経済も、これは一口に申しますと、極めて厳しい状況にございます。
 中小企業の状況について、佐伯会長のお話にもございましたけれども、若干、各地の状況を会員行から集めて整理いたしますと、各地域におきまして、総じて、製造業におきましては必要な設備投資を見合わせる、見送るような動きが出てきておりまして、投資態度は一段と慎重化してきております。
 住宅投資を見ますと、例えば分譲マンションみたいな分野におきましても、建築費に影響する鋼材価格の高騰等から、販売業者とそれから建設会社との間でなかなか請負の金額が折り合わない、こうした形で着工に至らないケースというようなものが出てきております。
 この間、輸出関連の下請の企業におきましては、米国向けを中心といたしまして、こうした受注額が大幅に減少してきております。減産が本格化してきております。
 また、百貨店の売り上げを見ましても、値段の高い商品や食品の落ち込みというようなことが目立ってきておりまして、消費の分野でも弱い動きが目立ってまいりました。
 こうした状況下、取引先の中小企業の皆様方の業績がここもと急速に悪化してきておりまして、企業倒産も増加の傾向にございます。つれまして、私ども金融機関自体の引き当てですとか償却の増加、貸し出しに対してこうしたものが非常にふえる、すなわち、信用コストも非常にこのところ目立って増加傾向にあります。
 こうした厳しい地方経済のもとで私ども第二地方銀行協会の加盟行は、総じて中小企業金融の円滑化に鋭意努めておりまして、地域を支える中小企業には私どもも最大限の応援を行うというようなことで、厳しい中でその対応に追われているというのが実情でございます。
 こうした状況のもとで、最近の異常な金融・証券市場におけます相場の下落によりまして、私ども金融機関の保有いたします有価証券の分野で評価損が発生しております。つれて、自己資本比率が低下傾向をたどってきております。
 この結果、金融機関のリスクテーク能力に影響が出始めておりまして、ひいては、中小企業金融の円滑化にも響きかねない、こういう懸念を深めてきております。特に、9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻以降、この様相は一変したというのが私どもの受けとめ方でございます。
 こうした状況に応じまして、金融機関といたしましては、必要に応じて、低下しつつある自己資本比率対策として、資本市場において自分の努力で自主的に資本を調達する、こういう努力をしていく、これが基本であるということはもちろんでございます。
 しかしながら、一方、現下の資本市場のこの混乱のもとでは、私どもが市場で資本調達を行うことはなかなか困難な状況になってきております。
 そこで、私どもといたしましては、時価会計ルールの見直しですとか、例えば15年変動利付国債の新規発行を見送るようなこととか、満期保有への区分変更を認めていただきたいとか、外部要因による自己資本比率の最近の毀損を軽減する措置を各方面にお願いしてまいりました。
 これらについては、必要な措置や検討が現在進められているというふうに承っております。
 私どもといたしましては、ただいま申し上げましたような、こうした時価会計の見直し等により、現下の異常な情勢におきましても、自己資本比率低下を防止し、中小企業金融の円滑化を進める環境は少しずつ整備されつつあるというふうに認識しておりますが、しかしながら、昨今の国内外の金融情勢を見ますと、自主的な資本調達が難しい環境下、必要な場合には国による資本の注入が不測の事態に備えるという意味でも、大変有意義であるというふうに考えております。
 すなわち、今回の措置は、金融機関のリスクテーク能力を強化し、これが中小企業金融の一層の円滑化に資するものである、まことに時宜を得た対応であるというふうに考えております。また、こうした措置は、混乱をきわめておる市場の安定化にも資するというふうに考えます。
 もっとも、各金融機関が置かれている状況はそれぞれさまざまでございまして、中小企業金融の円滑化を目的とする資本の増強等は、あくまで各金融機関個別の自主的な、主体的な経営判断に基づき決定される事柄でございます。今回議論されております金融機能強化法においても、そのような各金融機関の立場が尊重され反映されるような、そういう形になるよう期待いたしております。
 各地域におきまして中小企業と運命をともにする私ども地域金融機関は、中小企業金融の円滑化に今後も積極的に取り組むこと、また、そのことにこそ私どもの存在の意義があるというふうに考えております。
 こうした考えのもと、個々の金融機関が、中小企業を初めとするお客様ニーズにこたえ、地域全体を活性化していくということが非常に重要になってきております。こうした方向に向けまして、お取引先と協力し、引き続き努力してまいる所存でございます。
 本委員会の先生方におかれましても、今後とも当業界に対しまして御指導を賜りますようお願い申し上げまして、私の発言を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
○田中委員長 ありがとうございました。
 次に、上野参考人にお願いいたします。
○上野参考人(農林中央金庫代表理事理事長) 農林中央金庫の上野でございます。
 先生方には、日ごろ大変お世話になっておりまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。
 次に、本日は、本委員会に出席をさせていただきまして、私ども農林中央金庫、農協系統・漁協系統信用事業から見ました金融機能強化法についての意見陳述の機会を賜りましたことに対しまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。
 初めに、せっかくの機会でございますので、私どもJAバンクシステムの概要について御説明を申し上げたいと思います。
 お配りをいたしております資料をお開きいただきたいと思いますが、まず一ページをごらんいただきたいと思います。
 総合事業を営んでおります単位農協、都道府県段階、そして全国段階、この仕組みについて簡単に書いておるものでございます。
 ここで御理解をいただきたいのは、系統信用事業につきましては、単位農協、都道府県、全国というこの三段階の信用事業を実施する主体がそれぞれに独立した法人格を持ちながら、事業推進、セーフティーネットを一体的に運営いたしておりまして、全体をJAバンクシステム、こういうふうに称しているわけでございます。
 なお、信連は全国に36、JAは全国に761ございます。
 二ページをごらんいただきたいと思います。
 JAバンクは、個人貯金で11%のシェアを占めておりまして、我が国金融システムの大変重要な一翼を担っているというふうに考えております。また、貯金残高は毎年確実に増加していることも御確認をいただけるかと存じます。
 三ページをごらんいただきたいと思います。
 JAバンクの役割、機能の変遷について御説明を申し上げます。
 左側の図でございますけれども、当初は、農林中金は系統内の資金の過不足を調整する、こういう役割を担っておりまして、この資金供給機能を通じまして、地域における農業者を含む中小規模の事業者に対して貢献をしてまいったわけでございます。
 これに対しまして、JAバンクシステムが定着をいたしております現在の絵姿が右側になりますけれども、私どもに求められております役割は、かつての資金供給ということから、会員に対します安定した利益の還元、リテール分野におきます機能の分担、そして、JAバンク基本方針に基づく経営指導、こういう方向に変化を遂げておりまして、この三つの柱を通じて、農林中金、信連、JAが一体となって地域の皆様に貢献をいたしておるわけでございます。この左から右への変遷が、80年の歴史になるということでございます。
 次に、四ページをお開きいただきたいと思います。
 JAバンクは、特に農業分野への貢献を第一の目標といたしておりまして、下から二つ目に黄色い枠がございますけれども、この枠内にございます、地域の農業者でございますとか農業法人等のいわゆる中小規模の事業者に対しまして、さまざまな融資メニューで円滑な資金供給を図っているところでございます。
 皆様方も御承知のとおり、農業生産の規模そのものは落ち込んでおりますけれども、農業者の資金需要もそれほど大きくないわけでございますが、農業金融分野では、約7割を私どもJAバンクで対応いたしております。
 次に、五ページをお開きいただきたいと思います。
 JAバンクシステムでは、グループ独自のセーフティーネットも用意をいたしております。下段の、公的制度でございます貯金保険制度に加えまして、上段にある、自前の破綻未然防止システム、この二つのセーフティーネットで地域の皆様の大切な資産をお守りしているわけでございます。
 最後に、六ページをお開きいただきたいと存じます。
 農業者を初めといたします地域の皆様からお預かりをいたしました貯金は、都道府県段階の信連を通じまして農林中金に預けられ、農林中金からは信連、JAに対して利益還元を行い、この還元をされました利益を原資といたしまして、信連、JAは地域の皆様へさまざまな形で貢献をする、こういう流れになっております。資金運用とその利益の還元を通じまして、私ども農林中金も地域の皆様に貢献をさせていただいておるわけでございます。
 以上のように、農林中金、県信連、JAは全体として一つのJAバンクを構成いたしておりまして、おのおのの役割、機能、これを分担しながらも、全体として、組合員、利用者の利便性の向上に努めて、ひいては、地域の発展、活性化に貢献をしているものと考えているところでございます。
 以上で資料の方の説明を終わりたいと思います。
 次に、最近の金融市場についてでございますけれども、日本の株価の動向に象徴されますように、アメリカ発の金融危機は比較的傷が浅いと言われております日本にも影響が拡大をいたしておりまして、ここからさらに大規模な投げ売り相場が、二段、三段、こういうふうに展開をするということになりますれば、まさに未曾有の状況ということでございます。実体経済も混乱をするだろうと思いますけれども、日本全体が金融機能の維持に困難を来す、こういう可能性もなしとはしないのではないかと考える次第でございます。
 私はかねがね、こうした困難な事態に備えまして、G7で合意されました内容に沿った全面的な政策対応が必要だと考えておったわけでございますけれども、現在、総理のリーダーシップのもとに進めておられるさまざまな対策、例えば、日銀によります外貨や円貨の流動性供与でございますとか、株式の空売り規制強化等の対策、これらは、まさにG7の合意に即してスピード感を持ってお取り組みをいただいているものと受けとめているところでございます。
 また、昨日決定されました追加経済対策につきましても、市場の安定化対策が盛り込まれているなど、同じ流れの中で的確に御対応していただいているものと考えております。
 この委員会で審議をされます金融機能強化法につきましても、この趣旨にありますように、G7行動計画を具体化するための措置の一環、こういう位置づけをされました上で、金融機関の資本増強に関する特別の措置を講ずることによって、金融機能の健全かつ効率的な運営の確保でございますとか、あるいは地域における経済の活性化が図られる、こういうことになっているわけでございます。
 これによりまして、信用秩序の維持と国民経済の健全な発展の実現を目指して、借り手である中小規模の事業者への金融の円滑化、これのみならず、貸し手としての金融機関のセーフティーネット機能をも考えた、時宜を得た、重要な、意義のある法案だと認識をしているところでございます。また、この機能強化法のアナウンスメント効果が、実体経済さらには金融市場に寄与することも期待をいたしているところでございます。
 その中で、私ども農漁協系統金融機関につきましても、他の協同組織金融機関同様の措置をいただいているところでございまして、日本の金融機関全体のセーフティーネットの枠組み整備の中に位置づけていただいておりますことは、まことに適切なことだと考えているところでございます。
 このことに関しまして私どもが強く懸念をいたしますことは、民主党のホームページにございますような、ひとり農漁協系統金融機関のみが他業態とは異なる取り扱いを受ける、こういう修正提案でございます。
 先ほども申し上げましたとおり、私どもは自助努力としての独自のセーフティーネットの仕組みを備えておりますし、また、農林中金単体といたしましても経営に心配はないと考えておりますので、現時点で公的資金注入の要請を行うことは想定をいたしておりませんが、例えば、本法の一般的な取り扱いと異なる取り扱いということが措置をされますと、JAバンクの顧客でございますとかあるいは市場からの信認に影響が生ずるという懸念を払拭できません。この場合には、JAバンク、JFマリンバンク、この窓口に不測の事態が生ずるおそれでございますとか、あるいはこれによって、JAバンク、JFマリンバンクが地域で果たしております金融機能に大きな支障が生じるおそれがございます。
 ぜひ、この件につきましては、大局的な観点からの御審議をお願い申し上げたいと思います。
 最後になりますが、私自身、地域金融とともに国際金融市場と向き合っております中で、市場の動きは大変に速く、また、疑心暗鬼が非常に大きな振幅となって市場変動に即座に結びつくという現実を実感いたしております。日本の金融機関に対する信頼を下支えする今回の法案がスピード感を持って成立をいたしますよう、先生方に格段の御配慮をお願い申し上げます。
 以上、御清聴いただきましてまことにありがとうございました。(拍手)
○田中委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
【佐々木議員質問部分】
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 最近の銀行の貸し出しの姿勢というのは、急に大変厳しくなったという声がたくさん聞かれてまいります。まず佐伯参考人にお伺いしますけれども、銀行の側の貸し出し姿勢というのは、この9月以降どのように変化していると感じておられるか。私が聞きますと、ともかく大変厳しくなりまして、貸しどめというようなことがあちこちで起こっているとか、それから金利をもっと上げてくれとか、本当に大変厳しい要請が銀行の側から来ているということをお聞きしますけれども、佐伯さんがお聞きし、また体験されているところでどのような実態になっているか、まずはこの点からお聞きしたいと思います。
○佐伯参考人(全国中小企業団体中央会会長) 今先生がおっしゃったように、中小企業、貸し渋りがあると私は認識しております。
 ただ、それは9月以降急に発生したんじゃないか、先ほどもお話し申し上げましたように、福田総理が経済対策を発表して、それでやめられてちょっと空白があったという中で、ではその保証を出るまで待とうじゃないかというような感じでの貸し渋りもあったんじゃないかなというふうな感じもします。また、銀行自体も、円高あるいは株価で、業績が全世界的におかしくなるというので、かなり安全策をとっている。その矛先はやはり中小企業に一番来ているというような感じはいたします。
 しかしながら、きょう、31日から例の緊急経済対策が実行されますので、少し様子が変わるんじゃないかなというふうに期待はしているんですけれども、きょうのきょうですから、ちょっとこれからの様子を見たいというふうに思っております。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 少しさかのぼりますけれども、信用保証協会の保証の範囲が全額保証から8割というふうになって、そのことをきっかけにして銀行の側が負担がふえるということで貸さなくなったという話もよく聞かれますけれども、この点で、要請としては、中小業者の側からは、100%、全額保証やってもらいたいという声もあるわけです。この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○佐伯参考人(全国中小企業団体中央会会長) 確かに、去年の10月から、8割保証で2割は銀行の共有責任制度ということになっております。
 ただ、それのために物すごく貸し渋りができたとは私は思っていないんです。最近の緊急経済対策とか、あるいは零細企業に対する1250万までの保証というのは100%保証協会が保証するというふうになっておりますので、現時点においては緊急対策として100%の保証が得られるということなので、責任共有制度があるから貸さないとか云々ではないんじゃないかなというふうに私は思っているところでございます。
○佐々木(憲)委員 私どもは、これは保証協会の制度そのものももっと改善した方がいいというふうに考えております。
 さて、それでは次に村本参考人にお伺いいたしますけれども、最近の経済情勢はアメリカ発の金融危機ということで非常に深刻化しております。ただ、株式の乱高下が今大変激しく進んでおりますけれども、株価というものは何によって決まるかというのは、長期的に言いますと、やはり実体経済、これの成長の可能性がどうなのか、そういう個々の企業の将来性といいますか、そういうものによって決まってくるんだというふうに思うんですね。
 この点で、今経済危機が非常に深刻になってきますと、大手企業の場合は、真っ先に非正規雇用といいますか派遣労働者などをどんどん減らしていく、そういうところに対応がいきますよね。それから、下請に対しては、単価をどんどん下げるようにという要請が強まってまいります。中小企業がそういう点では大変な事態になる。
 そういう意味で、実体経済ということを考えますと、株の乱高下によって、大企業の行動が利益の確保を優先するために、国民の所得あるいは下請の経営、こういうところにどんどんしわ寄せがいく形になって、全体としては内需を一層冷え込ませるという方向に作用しているというふうに私は思うんです。
 そこで、問題は、政策的な対応として株価対策というのは多少それは意味があるのかもしれませんけれども、私は、むしろ大事なことは、国民の家計、これがGDPの55%でありますから、そういう面にもっと重点を置いた大きな経済政策の転換というものが必要ではないかと。これは短期でももちろんそうですけれども、日本経済全体の長期的な発展ということを考えれば、やはりそこに軸足を置くことが肝要だと思っておりますが、先生の御見解をお伺いしたいと思います。
○村本参考人(成城大学社会イノベーション学部長) 経済の仕組みをどういうふうに考えていくかという基本的な問題、根本的な問題だと思います。
 アメリカの場合は、家計といいますか、消費が7割ということで、ここのところに大きなインパクトが出ているためにアメリカ経済が非常に今混乱している。その根本的な原因は住宅価格の下落ということになるわけですが、それが回り回って雇用にまた反作用し、そしてまたそれが家計にダイレクトに影響する、こういうようなメカニズムになってきております。
 ですから、そういうことで、家計だけにいくかというとなかなかそうもいかないなというのがございます。私はもともと家計を非常に重要視しなければいけないという立場を持っておりますけれども、どうやって企業のそういう行動とバランスをさせるか。企業も、消費を活性化させるためには、自分のところの職員をどんどんそういう形である意味では非正規化してしまうようなことをすれば、これは消費にまた回って、ぐるぐる回ってくれば自分のところの売り上げが上がらないというメカニズムになります。
 したがいまして、いかにうまいバランスをつくって経済を運営していくかというところに一番ポイントがあるんだろうというように考えておりますので、消費とそして企業行動をうまくバランスさせるような仕組みを構築する、これをある意味で日本型にシステムとしてつくっていく、これがポイントなのではないかというふうに聞いておりました。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 第二地銀の横内会長にお伺いしますけれども、今銀行業界としては大変な危機の中で不安を抱えていると思うんですけれども、資本注入がなければ貸し出しがうまくいかないというものなのかどうかですね。
 貸し出しというのは、やはり相手側の中小企業にとって、資金繰りとかあるいは長期的な資金とか、そういう点が確保できて初めて生き延びることができる、生き延びてこそ将来の金利収入というのも銀行に入ってくるわけであります。
 したがって、短期的な視点で相手の中小企業の経営が赤字が続いているからといって資金を引き揚げてしまいますと、将来的な利益のもとがこれは断たれてしまうわけでありまして、そういう意味では、やはり共存共栄といいますか、お互いの利益ということを考えますと、一方の銀行の利益だけを追求するというやり方はやはりよろしくないと私は思うんです。相手側の経営をどう安定させるかということを、まさにそれがリスクをとるということだと思うんですけれども、そういう立場の経営というものが非常に大事だというふうに思っております。
 そういう点で、今の危機の中で果たす銀行の役割、その点を踏まえて、どのようにお考えなのかお聞きしたいと思います。
○横内参考人(社団法人第二地方銀行協会会長) 先生が今御指摘された点は、私も非常に共感を覚えるところがございます。地域金融機関というのは、地域の発展や地域の中小企業の発展がなくて私どもの発展もない、これが地域金融機関の経営の原則論だというふうに考えます。
 したがって、銀行がもうければいいというような考え方では地域金融機関の経営というのはもう全くやっていけない、お客様から見放されるだろう。私どもはむしろお客様に選んでいただけるようでなければいけない、これは原点として、先生のお考えと共通するものがあります。
 企業の将来性を見たりとか、それからいろいろ、ただの財務諸表だけでない企業の見方とか、これも、金融機関の貸し出しの姿勢としては、地域密着を旨とする中小企業金融機関は一番心がけてやらなければいけない。それで、経営者の中小企業の皆様方と日常のコンタクトのある我々こそそれができるんだ、こういう自負と実力を備えていきたい、こんなふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 銀行の資産構成といいますか、第二地銀の場合、有価証券に対する依存度はどのくらいあるのか、それからそのうち外国の証券というのはどのくらいの比率があるのか。簡単でいいですけれども、お答えいただきたいと思います。
○横内参考人(社団法人第二地方銀行協会会長) 銀行が有価証券で運用している資産に対する比率は、私ども第二地方銀行の平均で23.4%ということになっております。その有価証券の中で要するに海外の有価証券をどのくらい持っているかというのは、実は銀行によって多分さまざまで、一概に比率を言うことはできない状況だと思います。銀行によってその投資の考え方が違う。
 私の経験でいうと、いろいろリスクを分散させる投資が地方の金融機関の場合には重要でございまして、一カ所で大きなけがをつくらない、そういう観点から、こういう金融のグローバル化のもとで、これはちょっと直観になりますが、海外で運用する部分も、分散という観点からじりじりと少しずつふえてきていたかなと。ですが、サブプライムローン問題のこの大混乱を経験してみますと、そういう分散の考え方もまた新たな目で見直していかなければいけない、こんなふうに思います。
○佐々木(憲)委員 農林中金の上野参考人にお伺いしますが、今と同じ質問ですけれども、資産のうちの、先ほども少し質問がありましたけれども、有価証券の比率、それから海外の比率、わかりましたら教えていただきたいと思います。
○上野参考人(農林中央金庫代表理事理事長) 総資産残高約61兆の中で有価証券が36兆でございますので、大体半分強というような感じでございます。その中で、外国の有価証券というのが約25兆ぐらいあるというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 外国への依存度の高さ、それから有価証券の比率の高さというのは大変突出していると思うんですけれども、これは経営方針として、この15年ぐらいの間でしょうか、外国の、とりわけアメリカの債券に投資をするという比率が大変高まってきていると思うんです。
 それで、上野さんが、これは去年の9月6日の日経金融新聞にインタビューが載っておりまして、その中で、経常利益5000億円を目指すと。それで、この中で、前期の経常利益は3600億円程度だが、今や6割程度が外貨建て資産から出るようになった、要するに、外国の債券で運用する比率をどんどんふやして、その運用益が経常利益の6割を占めている、こういうことで大変豪語しておりまして、サブプライムの影響なんかないというようなことをおっしゃっているわけですが、これは経営の姿として、こういうやり方というのは、一応、上野さんの経営方針として、この8年間ずっとやってこられているわけですが、基本方針として掲げてやってこられた、こう理解してよろしいですね。
○上野参考人(農林中央金庫代表理事理事長) 先ほどの御質問にもお答えを申し上げましたように、農林中金の持っております能力あるいはJAバンク全体としてのシステムの中での農林中金の役割、こういうことから見まして、このグローバルな経済の中で海外投資のウエートが高まっているということでございます。
 この運用につきましては、金融機関としての、特にバンキングアカウントを持っている金融機関としてのレギュレーション、こういうものに当然従いながらその範囲内でやらなければいけませんし、なおかつ組織の中の体制としても、資本の安定性、資本と投資とのバランス、こういうものを十分に見ながら、かつ投資対象の安全についても格段の注意を払ってやる、こういうことで従来慎重に進めてまいっております。
 したがいまして、今回こういう事態が起こりまして、ダメージがないとは言いませんけれども、私は、状況がこれからどういうふうに変わるかということは見きわめる必要があろうかと思いますが、こういう考え方を現在のところは変えるつもりはございません。
○佐々木(憲)委員 慎重にと言うけれども、これはかなり急速に海外の資産運用というのがふえてきているのが実態でありまして、これを変えるつもりはないと言うんですから、私は、この辺でもうちょっとこの方針を変えた方がいいと思いますよ。しかも、理事長の役割というのは非常に大きいわけであります。
 そこで、理事長自身のことについても先ほど少し御質問がありましたけれども、今の仕事におつきになる前は農林事務次官という仕事をされて、その後、農林漁業信用基金の理事長に就任されているということなんですが、この理事長を退任されて今の仕事についておられるわけですけれども、退任されたときには退職金というのは受け取っておられるんでしょうか。どのぐらい受け取っておられたでしょうか。
○上野参考人(農林中央金庫代表理事理事長) いただいたと思いますけれども、金額はちょっと記憶にございません。
○佐々木(憲)委員 これは今、天下り問題というのがいろいろなことで言われておりまして、天下りと言うのか言わないのかというのは議論がありますけれども、事務次官を退職するときはもちろん退職金は受け取っておられると思うんですね。そしてまた別な、農林漁業信用基金というところの理事長、それを退任されたときも退職金を受け取っている。今度も、農林中金の理事長をされて、当然退職するときは退職金を受け取ると思うんですが、こう退職金を次から次へと受け取っていろいろな仕事をされるということは、一体どうなのかという疑問が一般的にはたくさん出ているわけですね。
 これは、自分がもらいたいと思ってもらっているんじゃない、制度だからしようがないんだ、こういう話でしょうけれども、これはやはり制度として、例えば、今のような農林中金の経営の実態からいいますと、大変な毀損が起きる可能性は大ですよ。外国の資産運用に傾斜した結果、その責任というのは非常に大きいわけでありまして、それを変えるつもりはないとおっしゃっていますけれども、しかし、そういう実態をつくって、仮に株価が大幅に下落して何兆円という毀損が生まれる、何兆円どころじゃないかもしれませんね、そういう場合に当然責任というのが問われるわけであります。
 退職金はやはり辞退すべきじゃないかと私は思いますが、いかがですか。
○上野参考人(農林中央金庫代表理事理事長) 基本的な運用の考え方といたしまして、こういう事態になっていろいろ御意見が出てまいっているわけでございますけれども、グローバルな経済、こういう環境になってきたときに、国内のマーケットでなかなか運用の機会がなければ当然広い世界を見るというのは、これはやはり私は大事なことじゃないかというふうな考え方でもあるわけでございます。
 それから、退職金の件につきましては、私は、それぞれの組織がどういう評価をするかということにかかわっておると思いますので、私から特段の発言をすることは差し控えたいと思います。
○佐々木(憲)委員 きょうは参考人質疑ですので参考にお伺いしておきますが、引き続き当委員会で法案審議がされるわけでありまして、今後きちっと実態に基づいて質疑をしていきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

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