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金融(銀行・保険・証券) (銀行公的資金注入, 中小企業融資)

2008年10月29日 第170回 臨時国会 財務金融委員会 【470】 - 質問

「3大メガバンクは10年間法人税ゼロ」金融庁が認める

 2008年10月29日、財務金融委員会が開かれ、佐々木憲昭議員は、28日の本会議に引き続いて金融機関に公的資金を投入するための新金融機能強化法案について質問しました。
 中小企業への貸し渋り・貸しはがしで批判を受けている3メガバンク・グループ6銀行が、1998年度から2007年度までの10年間にわたって国に納める法人税をまったく支払っていない実態が、明らかになりました。佐々木議員の追及に、金融庁側が「おおむね10年間は納税していない」と認めたもの。佐々木議員は、国民、中小企業に犠牲を押し付けながら、大銀行を優遇する政治の転換を求めました。

 6銀行(みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三井住友銀行)は、これまでに多額の公的資金で支援を受けた結果、07年度の税引き前純利益は約1兆7000億円にのぼります。しかし、過去の損失を黒字と相殺して減税できる措置により法人税はゼロとなっています。
 佐々木議員は、「小泉内閣以来、国民には46項目、12兆7000億円の負担を押し付けながら、過去最高レベルの利益をあげている大銀行が10年間も法人税ゼロ。それでいながら、中小企業に対しては、貸し渋り・貸しはがしをおこなっている」と厳しく告発。愛知中小企業家同友会の調査でも、大手行では貸し出しストップもあると悲鳴があがっていることを示し、是正を求めました。
 中川昭一財務・金融大臣は、「(新金融機能強化)法案を一刻も早く成立させて、中小企業に融資する金融機関には資金を注入したい」と答弁。佐々木議員は、経営危機の銀行が出ても、全体として体力のある銀行業界が責任をとり、負担するのが筋だと批判しました。
 佐々木議員は、「政治のあり方が問われている。最終的に国民の税負担になるような公的資金の投入ではなく、大銀行の貸し出し姿勢こそ変えるべきだ」と強調しました。
 大手金融機関の貸し渋り、輸出大企業による人減らしや下請け単価切り下げなど、アメリカのサブプライムローン問題に端を発する世界的な金融危機が、日本経済にも深刻な影響を与えています。
 佐々木議員は今回の金融危機の背景に、アメリカの金融自由化・規制緩和があったと指摘しました。
 「骨太の方針」第1弾(2001年)以来、アメリカの金融自由化を手本に「貯蓄から投資へ」を促進してきた自民・公明政権。佐々木議員は、アメリカと日本の家計の金融資産構成を比較しました。
 家計の金融資産構成は、アメリカの家計が、投資信託や株式・出資金中心にたいし、日本の家計は、現金・預金が中心となっています。
 佐々木議員はこうした金融資産構成だからこそ、「金融ショックの打撃もアメリカほど大きくない」と強調。「政府が『貯蓄から投資へ』をいたずらにあおるべきではない」と求めました。
 さらに佐々木議員は、金融危機に拍車をかけた投機資金の増加の背景に、日銀の低金利政策とそれを容認した政府の姿勢があったことをただしました。
 谷本龍哉内閣府副大臣は、日本の低金利が円キャリー取引(低金利の円資金を借りて米ドルなどで運用し、利ざやを稼ぐこと)を生じさせやすい環境をつくったことを認めました。
 また、新金融機能強化法案は、最終的な損失が出たときは、国民が税金で負担する仕組みです。中川財務・金融大臣は「最終的には損する事もある」と認めました。
 佐々木議員は、金融機関の経営安定のために公的資金が必要ならば「最終的に、銀行業界全体の負担で返済すべきだ」と強調しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、この金融危機の原因と現状について、お聞きしたいと思います。
 アメリカ発の金融危機が今日本経済にも大変深刻な影響を与えております。この金融危機を引き起こした原因、一体何があったのか、今後の対策を考える上でも、冷静にきちっと分析する必要があると思っております。
 この10年来、私は、金融業界全体として、特にアメリカ中心に、非常に大きな変化があったと思います。ビッグバンの名のもとで、金融の自由化、規制緩和というのが非常に進みまして、そのもとで、銀行の貸出債権、サブプライムローンなどが売却される、それが証券化され、ほかの金融商品と組み合わせた金融派生商品などが次々とつくられて投機的に取引された、いわば金融バブルというものが非常に大きく発生をしたわけでございます。
 きのうの毎日新聞によりますと、日本商工会議所の会頭、岡村さんがこのように言っております。「これまで金融商品、デリバティブに対する国際的な監視体制、規制が野放しになってきた。このことに対する猛烈な反省が起こるだろう。」こういうふうに言っているわけです。
 まず、中川大臣の認識をお聞きしたいと思いますが、金融危機を引き起こした背景として、アメリカにおける金融バブルの異常な膨張、それに対して、アメリカの金融当局の対応、ここに問題があったのではないかというふうに思いますが、そういう認識はございませんか。
○中川財務・金融担当大臣 現在、アメリカ発のサブプライムローンがこの問題を起こしたということは、ブッシュ大統領も私におっしゃっておられましたけれども、この問題はまだ現在進行形でございますので、私自身は、何が原因だとか、アメリカのどこが悪かったと、思うところはございますけれども、まだ現在進行形なだけに、断定して、こういう立場で言うことはちょっと控えたいと思います。
○佐々木(憲)委員 経済学者のポール・サミュエルソンという、有名な教授ですけれども、こういうふうに言っております。
 今回の危機は大恐慌以来最悪の危機であることは間違いないが、これは避けられた危機だ、グリーンスパン議長が95年ごろから株式市場のバブルに対策を講じなかったことも惨状を招いた一つだ、こういうふうに指摘をしております。
 10月23日の米議会公聴会で、FRB議長を務めましたグリーンスパン氏、議長は18年間務めておられたわけですが、このグリーンスパン氏が証言をしておりまして、金融派生商品の規制に消極的ではなかったのか、こういうふうに指摘をされて、次のように答えております。金融市場の規制緩和の支持で最も影響力があった、あなたは間違っていたのか、こういう質問に対してグリーンスパン氏は、金融機関が自己利益を追求すれば株主を最大限に守ると考えていた、私は過ちを犯したというふうに答えているわけです。
 これはなかなかシビアなやりとりなわけですけれども、このやりとりをお聞きになって、中川大臣、どのように受けとめておられますか。
○中川財務・金融担当大臣 私は今、ガルブレイス教授の「大暴落1929」という本を読んでおります。まだ読み終わっておりませんけれども、あれを読んでいると本当に、80年前、似たようなことをやっていたんだなと思いながら、しかし、ぞっとしながら読んでいるわけでございます。
 ですから、逆に言うと、だれだれが悪かったとか間違っていたとか、後から言うことはある意味では簡単なことでありまして、ある瞬間、世界じゅうで何とか主義革命が一斉に起こって、何十年後かに、それは間違っていたからやはり自由主義がいいやと思って、一斉にもとに戻ったなんということもあったわけでございます。でも、その御当人であったグリーンスパンさん自身が、こうやって反省をしているとおっしゃっているということはやはり非常に意味深いことであって、私もそれについてはもっと知りたいなというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 1930年代の恐慌から何を学ぶかというのは従来いろいろ議論されてきたことでありまして、その点からいっても、その後つくられた例えばグラス・スティーガル法の役割ですとか、そういう原則が80年代以後どんどん、我々からいえば後退していったと思っておりまして、教訓を学んでいなかったのではないかと言わざるを得ないと思っております。
 そういう点で、今回のこの事態というのはやはり、繰り返されていると今おっしゃいましたけれども、二度とこのようなことが起こらないようにするには何を教訓として学ぶべきかということはよく検討していく必要があると思っております。
 特に日本の場合は、アメリカの金融自由化というものをいわばお手本にして、貯蓄から投資へ、こういうスローガンをずっと掲げて、金融自由化を進めることをやってきたわけであります。そういう点で、我々は、そういう方向が正しかったのかどうかということも今の時点からやはり振り返る必要もあると思うんですね。
 まず、事実を確認したいんですけれども、アメリカと日本の家計の金融資産の構成というのは非常に違っているということでありますが、どのような特徴があるか、説明してください。
○内藤政府参考人(金融庁総務企画局長) お答えいたします。
 我が国の家計金融資産の構成比を米国と比較いたしますと、現金、預金の構成割合は52.2%になっておりまして、米国の13.6%に比べますと相当程度高いものとなっております。
 一方、株式及び投資信託の合計の割合でございますが、これは9.9%でございますので、米国の25.1%に比べますと低いものになっているということでございます。
○佐々木(憲)委員 この構成からいえば、同じようなショックが起きたときに、日本の家計に対する打撃というのはアメリカほど大きくはない、株、債券等の下落に対して比較的強い構成になっているというふうに私は思うわけです。
 そういう意味で、この貯蓄から投資へというのが、果たしてこういう危機に対して対応できる、そういうものなのかどうか。日本がアメリカのように進んでいないということが逆に日本の金融資産の強みでもあった、こういうことが逆に言えるんじゃないかと思うんですけれども、この点で、余り貯蓄から投資へということを過度にあおるようなやり方は必要はないのではないか。私は余りそんなことはやる必要はないと思いますけれども、これは国民の選択の自由でありまして、この点で大臣はどういうお考えをお持ちでしょうか。
○中川財務・金融担当大臣 まさに佐々木委員がおっしゃるように、自分の持っているお金を自分でどう運用しようが勝手だろうと言われればそれまでですけれども、やはり一つの金融商品に余りにも偏るということも、まあ安心といえば安心ですし、逆に危険といえば危険。
 今、アメリカは投資が高いから個人もとんでもないことになっているということをおっしゃいましたけれども、実はアメリカにおいても、地方銀行の破綻についてはペイオフが行われて、10万ドル以上の預金は全部保護されない、戻ってこないという状況が続いております。25万ドルにしましたけれども、地方銀行についてはこれはもう破綻という状況になっていて、預金だって、これは銀行がおかしくなってきて、やられているわけでございます。
 いずれにしても、日本は金融システムそのものははるかに健全でございますから、やはり個人の大切な資産あるいはまた金融資産というものを安全、安心に、まずシステムとして守っていくということが国の責任であり、その中でどう選択するかはお一人お一人の御自由だというふうに思いますけれども、余りにも一つのものに偏るというものもいかがなものかなという感じはいたします。
○佐々木(憲)委員 何かアメリカ的な金融資産の構成が進んでいて、日本の構成がおくれている、そういうものではないと私は思うんです。
 それから次に、日本の資金が投機資金として流出している、その問題についてであります。
 この投機資金が国際的に非常に増加した背景に、日銀のゼロ金利政策があったのではないか、長期にわたる日米間の金利差というものが円キャリートレードを活発化させて大量の投機資金を生み出した、この円キャリー取引というのはヘッジファンドにとって最も身近な資金源だ、こう言われております。
 日経の7月3日付では、超低金利政策で過去4年、日本の海外への資金供給というのは66兆円になった、欧米の中央銀行がこの間供給した通貨合計に匹敵する、こう書いているんですけれども、実態はどのような状況か、わかったら示していただきたい。
○谷本金融担当副大臣 佐々木委員の御質問にお答えさせていただきます。
 いわゆる円キャリートレードと呼ばれるものについては、必ずしもまだ一義的に定義が決まっておりませんで、どういう種類のものまで入れるか、その枠がまだはっきりはしておりませんけれども、一般的には、低金利の円で資金を調達して高金利通貨で運用する取引、これを指すというふうに理解をしております。
 確かに、我が国の金利は諸外国に比べて長年低水準で推移しておりましたので、他の通貨との関係で円キャリー取引が生じやすい環境にあったということは事実であるというふうに思います。
 ただ、初めに言いましたとおり、まだはっきり、どこまでの範囲がというところが、言われたように、ヘッジファンド等の短期の取引もありますし、あるいは日本の個人投資家の外債投資や、いろいろな種類のものをどこまで入れるかということによって数字は変わってまいりますので、また為替市場ではいろいろなプレーヤーがそういう取引を行っておりますので、はっきりとした数字で把握しているものではありません。
○佐々木(憲)委員 かなりの規模だということはわかるわけです。例えば、みずほコーポレート銀行欧州資金室の柳原さんという方が、発信源は日本だ、こう指摘しておりまして、かなり大量な資金が供給されていたということでございます。
 もう一点、今回の危機に関連をして、4月のG7で、国際展開する大手金融機関に対して各国当局の協力による共同監視というのが強調されました。この共同監視を国際的な大手金融機関に対して行うということを決めた理由、この理由はどういうところにあったんでしょうか。
○中川財務・金融担当大臣 御指摘のように、4月のG7で共同監視ということが強調されたわけでございますけれども、4月といえば、本当にサブプライムローン問題が一挙に噴き出して、たしかモノラインとかいうものが破綻をしていったり、一番激しさをぐぐっと感じた時期だったろうというふうに思います。ですから、そういう時期ですから、G7、政府だけではなくてあらゆる、中央銀行も含めてお互いによく連絡をとっていこうということを確認した、これは極めて大事なことでございまして、私も先日のG7でもこのことは改めて確認をしたところでございます。
 こういう時期になりますと、自分の国だけプラスになるようなことを仮にやっても、逆にほかの多くのところからは責められる、逆効果になるというようなことすら起こるような状態になっておりますので、とにかく緊密に連絡をとり合いながら、歩調を一にしてこの解決に向かっていこうということであったというふうに認識をしております。
○佐々木(憲)委員 国際的な共同という話は一般的には今説明があったような認識なんでしょうが、私が聞いているのは、大手金融機関に対して共同監視を行う、なぜこの決定をしたんですかと聞いているわけです。
○中川財務・金融担当大臣 大手金融機関に対しては、やはり、先ほどの証券化商品、いろいろいっぱいありますけれども、こういったものが本当にわからないうちに世界じゅうに手をかえ品をかえした形で広がっていっちゃって、それが上がっているうちはいいわけですけれども、一歩間違えたら逆回転で逆スパイラルになってしまうということで、この証券化商品とか、あるいはまたその裏づけとなる資産というものをきちっと把握しようではないかとか、あるいはまた、先ほどのモノラインのときに申し上げましたけれども、格付機関ですね。ある日トリプルAだったものがいきなり破綻格付になってしまったみたいな、こんなような余りにも激しい動きになってしまうことに対して、G7各国は、そういったある意味では世界の金融のメーンプレーヤーたちをみんなでよく見ていこうという意味でございます。
○佐々木(憲)委員 国際展開する大手金融機関に対する共同監視、この国際展開する大手金融機関の役割というものが非常に今大きくなっている、つまり、金融取引の上で従来の金融機関とはまた性質が違ってきているというところ、そこに対象を絞った理由があるんだろうと思うんです。
 大きな金融機関といえば、シティとかバンカメとかメリルリンチとかいろいろありますけれども、銀行、証券の壁を取り払い、全体として巨大複合金融機関に変質していると言っていいと思うんです。それが、今まではお金を、預金を預かって、貸し出して、そしてその金利収入を得る、これが基本でした。しかし、今はそれだけじゃなくて、トレーディング収入とか手数料の収入、こういうところに非常に重点が移っている。もう一つは、ヘッジファンドがこの巨大金融機関から資金を得るようになった。それからもう一つは、サブプライムローンの関連ではこの巨大金融機関が非常に深くかかわるようになった。
 したがって、そういう要素があって、これらの複合金融機関と言われる巨大金融機関が、やはり共同の監視のもとに置かないと、これは暴走を始めたら大変なことになるということだったと私は思うんですけれども、そういう意味で、非常に金融危機にとって影響が大きいという意味だというふうに私は思うわけです。そういう認識は、共通しているかどうかわかりませんけれども、いかがですか。
○中川財務・金融担当大臣 基本的には私も同じような認識を持っています。
○佐々木(憲)委員 それでは、提案された法案について少し入っていきたいと思います。
 資本注入の資金というものは預金保険機構が政府保証によって調達をして、最終的な損失が出た場合、その場合は国民が税金で負担する、財政負担になる、こういう仕組みというふうに理解してよろしいですね。
○中川財務・金融担当大臣 最終的には損することもあるし、利益が出ることもあり得るということです。
○佐々木(憲)委員 損失が出た場合は国民の税金で負担をするということになっておりまして、ここに私は大きな問題があると思うんです。
 きのう、本会議で、金融機関の経営安定のために公的資金が必要だというのであれば、それは最終的に銀行業界全体の負担によって幾ら長期的に時間がかかろうと返済をしていく、こういうものであるべきだと私は思うんです。それに対して麻生総理は、金融機関のリスクテーク能力が低下しているから、こういう仕組みが必要なんだとお答えになったんです。
 これは私の問いに正確に答えていないと思うんですけれども、現在、日本の銀行業界、金融機関というのは、体力としては全体としてはほかの国と比べてあると私は思うんです、まあ個別の銀行としてはいろいろな状況が違うと思いますけれども。
 したがって、個別の金融機関が経営が不安定になった、資本注入が必要である、その場合、公的資金が必要だ、しかし、その公的資金の最終的な負担を国民に負わせるのか、銀行業界として責任をとってやっていくのか、やはりここが問題の分かれ目になるわけです。
 そういう意味で、我々は、やはり国民負担にしてはならない、当然、銀行業界、日銀も含めた全体の金融機関の役割というものがあるのではないかというふうに思うんです。その点でどうも総理の答弁がちょっとずれておりまして、中川財務・金融大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○中川財務・金融担当大臣 金融機関が仮に倒れたときに、それが地域の中小金融機関であっても、あるいはいわゆるメガバンクと言われるものであっても、この影響というのは非常に大きいと思うんですね。
 ですから、最終的には、片っ方は、これは税金、国民の負担だ、片っ方は、いや、銀行業界だけでやれといって、そう簡単に私は白黒つけられるものではないと思っております。一つの金融機関が倒れた、そうすると預金者にも迷惑がかかるかもしれませんし、債権者にも迷惑がかかるかもしれませんし、取引をしていた地域の中小企業等にも迷惑がかかってくることにもなりますから、これは一企業が倒れたという以上の、要するに血管の一つがばちっと切れて血液がもう先に行かなくなったような状態でありますから、一つの金融機関が倒れたときに、やれ国民だ、やれ業界だけでやれということではなくて、いかに倒れさせないようにしていくかということが一番大事なことだろうと思います。
○佐々木(憲)委員 倒れさせないようにするのは当然だと思うんです。
 そのやり方なんですが、システミックリスクが起こるような金融機関の突然の危機というものが起こった場合には、日銀特融という形で瞬時にしてそれを抑える、これは日銀、中央銀行としての役割なんですよ。これは10年前に国会でも私、議論しましたが、日銀総裁は、そのとおりである、何も税金は要らないんです、こういう答えでありました。
 問題は、経営そのものが非常に危機に陥る、債務超過とかそういう状況になったときに、例えば資本注入がその前段で必要である、その場合の原資を公的なところから仮に獲得してやったとしても、その後の最終的なツケ回しというものを税金でするというところに問題があるのであって、銀行業界としては体力があるんですから、預金保険機構もあるわけですから、預金保険という制度もあるんですから、これはやはりそういうものでカバーしていくというのが本来の筋であるというふうに我々は主張してまいりました。
 そこで、次に農林中金、信金中金の資産構成、先ほども少し議論がありましたが、株式と債券の比率、これが一体どの程度になっているのか、それからそれがどの程度毀損しているか、報告をしていただきたいと思います。
○三國谷政府参考人(金融庁監督局長) お答えいたします。
 まず、農林中央金庫が公表いたしました直近の計数を見ますと、平成20年3月末の総資産に占める株式の比率は1.3%、債券の比率は15.1%であり、評価損は5437億円と承知しております。
 次に、信金中央金庫が公表した直近の計数でございますが、平成20年6月末の総資産に占める株式の比率は0.6%、債券の比率は34.0%であり、評価損は3436億円と承知しております。
○佐々木(憲)委員 サブプライムローンの関連の6月末までの数字というのが今の話だと思うんですが、事態はそれ以後ですね、9月、10月と。これで一体どれだけ大きな毀損が生じているか、これが問題になるわけです。それはどうですか。
○三國谷政府参考人(金融庁監督局長) 両機関の足元の状況でございますが、現在、平成20年9月期の開示に向けた作業が行われている段階でございまして、現段階でお示しすることは困難であることを御理解願いたいと思います。
○佐々木(憲)委員 今、6月の時点の数字を、これはサブプライムローンの関連が大きいということで、調査の上出された数字だと思いますけれども、しかし、9月、10月というのは一段と、その当時とは違う事態に局面は変わっておりますので。
 そうしますと、先ほどの議論のように、これらの本来の目的、農業に貸し出すというのが非常に制約されている事態の中で、どんどん外国の債券を買う、そういう資金運用をしていく、それが大規模に毀損する、そうなると、そこに仮に公的資金の要請があり、入れるとなると、それを毀損したものの穴埋めに使われるんじゃないか、こういうふうにだれもが思うわけですね。ですから、やはり現在のこれらの経営の実態というものは、より正確に調査の上、報告をしていただきたいと私は思います。
 次に、資本注入が貸し渋り対策になるのかならないのかという問題でありますが、これも当委員会で若干議論がありました。従来の法律では、提出する経営強化計画の中に中小企業貸し出し目標を盛り込んで、未達の場合には経営者の責任、これを明確にするということで、これが要件になっていたわけですね。今回の改正案では、この経営責任というものが、必要がないということで外された。
 こうなりますと、中小企業向け貸し出しの保証というか担保というものが非常に後退したのではないかという印象が出てくるわけであります。この点は、いや、そうではないという答弁もありますが、しかし、法律上は明確にそこのところが抜けているわけですね、経営責任の追及というのは問わないということでありますので。これは一体どのように考えたらいいか。
 私は、これは逆に、今までの法律でさえ、手を挙げた二つの銀行が実際には貸し出しが目標どおりいっていなかった、経営責任を問うような状況でさえ、十分に注入しても中小企業に回っていないわけですから、今これが抜けてしまうと、中小企業への貸し出しということについての義務というのか担保というものがなくなってしまうんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○中川財務・金融担当大臣 まず、問わないと決めつけないでいただきたいと思います。一律には問わないと。ここがある意味では非常に先ほども議論になったところで、ファジーであるという御指摘もいただいております。そうかもしれませんし、しかし、一律に問うというと、これはまた逆の話になってまいりますので、先ほど申し上げましたように、より細かい規定の中で、そういう趣旨の中で具体化できるものは具体化していきたいというふうに思っております。
 いずれにしましても、前の法律のときに2件例があった、2件しかなかったかもしれませんが、やはりこれはそれぞれ、金融方もあるいは企業方も、生きている経済の中での資金の需要あるいは供給、需給という感じですから、用意しました、でも貸し出し計画が未達になりましたとか、あるいは、もっと実はふえてしまいました、平時においてもいろいろあるんだろうと思います。
 しかも、今はこういう世界の情勢で、きょうも、高い水準ではありますけれども株も結構動いておりますから、非常にデリケートな状況の中で計画を出して認められて、そして注入されて、そして実際に資金を用意してみたら余っちゃったとか、足りなくなっちゃったとかいうことは十分考えられますので、それを一々一律に経営責任をとるということになると、やはりこれは経営者にとっても、また金融機関にとっても、あるいは借りる方にとっても、柔軟性を拘束するということで、私はいいことではないと思ってこういう書き方にさせていただいたわけでございます。
○佐々木(憲)委員 公的資金を入れて、今まで、例えば12兆円入れたけれども貸し出しが84兆減ったとか、現実にはそういう事態が発生しているわけです。
 例えば3大メガバンクについていいますと、公的資金が入っただけではなくて、税金の負担も軽減する措置がとられているわけですよ。過去の損失を今現在出ている黒字と相殺して税金を軽減するという措置であります。前回、この委員会で私、聞きましたが、税引き前当期利益というのは1兆7215億円で、税負担が313億円、こういう答弁でございました。平成19年度ですね。負担率というのはわずか1.8%。
 そのときに内訳は聞きませんでしたが、法人税の負担についていいますと、法人税の負担はゼロということでよろしいですね。
○三國谷政府参考人(金融庁監督局長) 3メガグループ6銀行につきましては、過年度における不良債権処理等により税務上の繰越欠損金残高が積み上がっておりますことから、平成20年3月期に法人税の納税額は発生しておりません。したがいまして、御指摘のとおり、利益に対する法人税のみの負担の割合という面ではゼロ%になるということでございます。
 ただ、この制度は、銀行に限らず全般的な税務の制度に乗っかったものでございます。
○佐々木(憲)委員 3大メガバンクが利益を1兆7000億上げていながら法人税はゼロである。これは、いつごろから3大メガバンクの場合はゼロが続いているんでしょうか。赤字のときもあったと思いますが、それも含めてゼロという期間はどのぐらいありますか。
○三國谷政府参考人(金融庁監督局長) 一般的に、税務上の繰越欠損金が積み上がって以来ということでございます。
 いつから法人税を納税していないかということにつきましては、各行の状況により異なりますし、また個別行の話でございますので、金融庁から直接お示しするということではございませんけれども、ここしばらくの間は納税していないものと認識しております。
○佐々木(憲)委員 しばらくの間と。
 例えば私、財務諸表を調べますと、2001年、2002年というのは、これは赤字ですので当然払っていないわけですね。2003年、2004年、2005年、2006年、2007年のこの5年間、これは繰越欠損金があるために払っていない、こういう理解でよろしいですね。
○三國谷政府参考人(金融庁監督局長) 年度は別といたしまして、大体繰越欠損金が積み上がりましたおおむね過去10年間程度は法人税を納税していないケースが多いと思います。
○佐々木(憲)委員 過去10年間は法人税を納税していない。これは、1998年から2007年まで納税していない、こういうことですね。
○三國谷政府参考人(金融庁監督局長) 個別行によりばらつきがございますけれども、それぞれおおむねということで申し上げれば、この10年強にわたりまして法人税を納税していない銀行、こういったところがあるというぐあいに承知しております。
○佐々木(憲)委員 だから、3大メガバンクの場合はゼロという理解でよろしいですねと確認しているわけです。
○三國谷政府参考人(金融庁監督局長) 6行につきましてはゼロということでございます。
○佐々木(憲)委員 これは、私は非常にやり過ぎというのか、一般的に国民に対しては、小泉内閣以来、私、この前ここで2月に紹介しましたけれども、46項目にわたって12兆7000億円の負担ですよ。住民税、所得税の増税、この定率減税の廃止で3兆5000億円ですよ。そういうことを一方で国民に押しつけていながら、銀行は、まあ銀行以外もそうなんだけれども、3大メガバンクは特に10年間法人税ゼロだ。これは私は、余りにもやり過ぎじゃないかと。
 ですから、やはりそういう状況を改善しなきゃいけないですよ。銀行は過去最高と言えるレベルの利益が上がっているわけです。3大メガバンクと一言で言いますけれども、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行、それから三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三井住友銀行、この六行ですよね。それがこの10年間法人税ゼロ、それでいながら国民、中小企業に対しては貸し渋り、貸しはがしというのが非常に横行しているわけです。
 私は、愛知中小企業同友会の調査をここへお借りしてきましたけれども、銀行の態度は、今までの融資条件とは異なり、担保要求の追加、金利アップ等相当厳しい融資条件を押しつけてきた、追加融資及び借りかえができない、そういう状況にある。あるいは、融資の利息をもっと下げてほしいけれどもそうしてくれない、大手銀行では貸し出しストップの銀行もある、融資条件、審査の緩和をしてほしい。こういうことが次々と出されているわけです。要請としては、返済期間の延長ですとか金利などの優遇をやってほしい。非常にたくさんの、もちろん目安箱にも来ていると思うんですよ。こういう状況が一方でありながら、他方でこういう行き過ぎた減税が行われるというのは、私は、ちょっと政治のありようとして政策の方向がおかしいのではないかというふうに思うんです。
 中川財務・金融担当大臣としては、こういう状況をどのようにお考えか、そして、これを是正するという気持ちは少しでもおありなのか、お聞きしたいと思います。
○中川財務・金融担当大臣 私の目安箱にも全国から大勢の皆様方あるいはまた金融機関等々の方々からもいろいろなアドバイスも含めていただいております。やはりもう少し融資をしてほしいとか、あるいは融資条件が変わったとか断られたとか、そういうものが多いわけでございます。ですからこそ、この法案を一刻も早く成立して、きちっと中小企業に融資する金融機関には、必要な審査をした上で必要な資金を注入したいというふうに思っております。
 税の問題は税のルールの中で議論すべき問題である、そして、問題がなければ、それはそれで結構なことではないかというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので終わりますが、やはり今のこの政治のあり方というのが問われているというふうに私は思います。国民や中小企業にどんどん犠牲を押しつけながら、大企業に対しては減税を行う、大銀行は法人税ゼロ、これはやはり根本的に改めなければならぬ。国民の税負担に最終的になるような公的資金の投入ではなくて、大銀行の貸し出し姿勢、金融機関の貸し出し姿勢こそ変えるべきだということを最後に申し上げまして、質問を終わります。

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