金融(銀行・保険・証券), 金権・腐敗政治 (金融消費者保護, 日本経団連の「政策買収」)
2004年03月17日 第159回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【234】 - 質問
「公的資金注入銀行の献金は税金の還流」と佐々木議員が指摘/「銀行は話し合い解決を」変額保険被害について佐々木議員が三木頭取の対応をただす
2004年3月17日、東京三菱、みずほ、UFJ、三井住友4大銀行の頭取・社長を参考人に招いた財務金融委員会で、佐々木憲昭議員が質問にたちました。
佐々木議員は、日本経団連が前年末に三木全銀協会長に対し、銀行業界の献金の取りまとめを要請したと伝えられていることについて、事実関係をただしました。
三木会長は、「全銀協としては受けていない。とりまとめを行うつもりもない」と述べ、個別行が判断する問題だとの認識を示しました。
そのうえで三木会長は、東京三菱銀行の対応について、「まだ決めていない。今後の状況を見極めて考えたい」と答弁しました。
佐々木議員は、「国民の税金である公的資金を受けている銀行業界が政党に献金すれば、税金の還流になる」と指摘し、献金再開はすべきでないと強調しました。
次に、佐々木議員は、東京三菱銀行から自宅などの競売を迫られている融資一体型変額保険の被害者の「このままでは身ぐるみ剥がされることになり、家族ともども死を意味します……」という訴えを、三木繁光東京三菱銀行頭取に突きつけました。
「相続税対策」としてバブル期に大手銀行が生命保険会社と連携して販売した融資一体型保険は、保険の運用益を上回って銀行融資の利払いが雪だるま式に膨らみ、数千万円から数億円単位の被害を多発させている商品です。
佐々木議員は、東京三菱銀行が昨年秋以来、被害者に対する一方的な競売申立に拍車をかけていることを指摘して、4億5000万の負債を負わされて自宅に競売をかけられている杉山利一さん(東大阪市)など4人の訴えを紹介。「まともな話し合いなど行わず、自宅を競売にかける。問答無用のやり方だ」と銀行の対応をただしました。
三木頭取は、「個別の事情と実態に即した対応をしている」と強弁しつつ、強権的やり方を取り下げて話し合いで解決するよう求める佐々木議員に対し「当然そういう解決をしたい。話し合いをさせていただきたい」と述べました。
佐々木議員は、三木頭取自身が、過剰融資被害を生んている提案型融資を担当取締役として推進してきたことを示し、その責任を棚上げにして、債務者の身ぐるみを剥ぐ進行のやり方を批判し、是正するよう求めました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。時間が短いので、きょうは全銀協会長の三木参考人にお聞きをしたいと思います。
まず、政府提出の金融機能強化特措法案ですか、金融審議会の作業部会の議論では、金融機能強化勘定を締めた場合欠損金が出る、仮に出た場合、銀行が一定の負担をするという案も検討されたそうでありますが、これに対して全銀協の三木会長が猛反発をしたと報道されております。三木さんは、銀行に負担を求めるような法案が出たら大反対だ、こう言ったそうですが、それは事実でしょうか。
○三木参考人(全国銀行協会会長・東京三菱銀行頭取) お答え申し上げます。
確かに全銀協の記者会見の場で、私は、損失負担の問題につきましてそのようなことを申しました。
これは、特定の金融機関が公的資金を導入いたしまして、そしてそれがうまくいかないということで損失が出た場合、ほかの金融機関にその損失を求めるということになりますと、これでは日本全体の金融機関が弱体化される、共倒れになりかねないということを私は懸念いたしまして、そのように発言いたしております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 国民には負担はさせるが銀行は負担をしないよというのでは、これは通用しないということを私は申し上げておきたいと思います。
次に、経団連がことしから企業献金のあっせんの再開を目指しているわけでありますが、我々は、これは経団連が政党政策を丸ごと買収するものだというふうに思います。こういうものはよくないと思います。
昨年末、全銀協会長の三木会長に対しまして、銀行業界の献金をまとめるようにという協力要請があったと言われていますが、これは事実ですか。
○三木参考人 お答え申し上げます。
全銀協として具体的な寄附の要請というのは受けておりません。また、全銀協として寄附の取りまとめを行うというつもりもございません。日本経団連の政治寄附に関しましては、御承知かと思いますけれども、企業の自主判断ということが前提でございまして、個々の企業が、したがって個々の銀行が判断することでございます。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、東京三菱銀行としては、自主判断として、献金に応ずるということなのか、それともそれはしないということなのか、そこをお聞かせください。
○三木参考人 お答え申し上げます。
私どもとしましては、現時点でまだ決めておりません。
金融業界全体といたしましてはまだ集中処理期間の厳しい状況にありますので、また公的資金の入っている銀行については、これは非常に厳しい状況にあろうかと思います。
私ども自体につきましては、今後の情勢等をよく見きわめまして考えたいと思っております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 私は、こういうものはやるべきではないと思うんです。銀行業界全体としては税金の注入を受けているところがたくさんあるわけであります。それが政党に献金をすれば、国民の税金の一部を政党に還流させるという性格のものになるわけで、これは絶対やるべきではないということを申し上げておきたいと思います。
次に、銀行は、バブル時代に、相続税対策などと言いまして、さまざまな提案型融資を行ってまいりました。その中には、お年寄りなどの返済能力を超える融資、過剰融資があった。この点については銀行に大きな責任があると私は思います。
以前の参考人質疑の中で、銀行側としても、行き過ぎがあったとお認めになっているわけでございます。
三木参考人は、東京三菱銀行の頭取として、以前、財務金融委員会で、債権の回収についてこう答弁されていました。2002年4月24日でございます。長期総合ローンについて聞かれまして、「これにつきましては、本当に個別の債務者ごとに御事情がございますので、私どもとしましては、機械的に対応することなく、よく御事情を伺いながら、お話し合いを進めながら解決したいということで、解決の道を探っているところでございます。」こういうふうに答弁されました。
また、2002年の11月15日に、私の質問に対しても、「私どもといたしましては、競売のみで解決するということをもちろん考えておるわけではございませんで、」「可能であれば、双方の納得ができるような、そういった解決を私どもは望んでいるところでございます。」こう答弁をされましたね。
この考えに今でも変わりはありませんか。
○三木参考人 お答え申し上げます。
今先生がおっしゃいました考え方に変わりはございません。
○佐々木(憲)委員 しかし、私は、実際にやっておられることが違うのではないか。ここでお話をされたことと随分実態が違う。昨年の秋ぐらいから、東京三菱銀行は、まともな話し合いなしに一方的に次々と競売にかけていくということをやっております。
幾つか事例を挙げたいと思います。これは本人も了解の上ででありますが、名前を出させていただきます。
例えば、東大阪市の杉山利一さん。この方は、相続税対策になると勧められまして、銀行と生保がセットになった変額保険に入りました。借入金と税金は死亡時の保険金で全額払えるという話でありました。ところが、父親が、平成14年5月20日、86歳で死亡したけれども、保険金3億円。これでは到底、元利合わせて4億5千万円というのを払えない。東京三菱銀行は、まともな話し合いもなく、賃貸マンション、自宅、変額保険を差し押さえるというやり方をした。本人は、このままでは身ぐるみはがされることになり、家族ともども死を意味します、こういうふうにおっしゃっているわけです。
あるいは、国立市の白井文男さん。平成十五年九月に保険を差し押さえられた。10月から12月にかけて、アパート、貸し家の強制競売を申し立てられた。駐車場は信用保証会社によって2回目の競売申し立てとなった。このとき、心労のために母親が倒れて歩行困難になった。
市川市の94歳の鈴木あいさん。この方は、変額保険の契約まで一度も銀行員とも保険外交員とも会っていない。しかし契約をしてしまった。本人はその後、保険契約を解約しました。ところが、連帯保証人の家族に対して不動産物件の競売をかけてきた。この人は、このままでは住むところもなくなり、生きていけなくなります、こう訴えています。
次に、八潮市の立川邦広さん。必要もないのに三菱銀行は相続税対策という名目の提案をし、加入させられた。2回にわたって借り入れをし、計11口の変額保険に加入した。ところが、今になって変額保険全部に信用保証会社の差し押さえを受けている。このままいくと、不動産や自宅にまで競売をかけられてくるおそれがある、こういう不安を訴えているわけであります。
これらの事情を考えますと、共通しているのは、このほかにもたくさんあるんですけれども、まともな話し合いは行われていないんです。相手の事情も考慮もしない、保険の差し押さえや不動産の売買、そして自宅の競売、こういうことを次々とやってくる、まさに問答無用のやり方をしているわけでありまして、国会では、機械的な対応はしない、話し合いをする、こういうふうに言っていますけれども、どうも実際に答弁していることとやっていることが全然違うんじゃありませんか。
○三木参考人 お答え申し上げます。
私ども、個別の事情と実態に即した対応をしているつもりでございます。短兵急かつ機械的な対応をしているわけではございません。変額保険につきましても、非常に数多くの裁判上の和解をいたしております。それから、判決が確定した場合におきましても、その後、十分な話し合いで決着するというケースも相当数ございます。お話出ましたように競売のみが解決策ということは全く考えておりません。
御指摘の、幾つかのケースが出ましたけれども、それらは実は、裁判になる前も裁判中も和解の解決を図るべくお話し合いをしたいということであったんですけれども、合意に至りませんで、最終的に裁判所の判断をいただいたということのケースだと思います。その後も、話し合いには、現時点ではまだ残念ながら応じていただけないということでございまして、ぜひ話し合いに応じていただきたいということでございます。
最終的に返済不可能と判断される場合に、やはり預金を預かる銀行といたしましては、十分話し合いの上ですけれども、債権回収に努めざるを得ないケースというのもございますが、できる限り話し合いで解決したいということは、以前もそうでございますし、現在も変わっておりません。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 話し合いに応じてもらえないと言いますけれども、あなた方がやっているのは、話し合いをする前に次々と競売にかける、保険は差し押さえる、そういうやり方をしているわけですよ。裁判と言いますが、あなた方が回収のためにそれをやらせているわけであります。
ですから、もう一度確認しますけれども、それでは、こういう方々が、ぜひ話し合いに応じてほしい、こういう要請をする、その場合には、そういう強権的なやり方は取り下げて、ともかく話し合いで解決をしていく、そういう姿勢に立つのかどうか、ここを確認したいと思います。
○三木参考人 お答え申し上げます。
私どもは、はなからそういう恐喝的なといいますか、強権的な行動に出ていることはございません。話し合いを本当に求めております。その上で、これがつかない場合に、やむを得ず第三者、これは裁判ということが多いわけでございますけれども、そこの意見を聞く、こういうことになっているわけでございます。
今、先生おっしゃいましたように、裁判後であっても話し合いに応ずるという意向があれば話し合いに応ずるかということでございますけれども、それは私どもは話し合いをさせていただきたい、むしろこちらもそのように願っております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 あなたが答弁をされたとおり、話し合いを進めて、お互いに双方が納得できるような解決をしたいというふうにここでおっしゃったわけですから、以前の答弁でですね。本当に双方が納得するようにやっていくのかどうか、そういう姿勢があるのかどうか、もう一回確認します。
○三木参考人 お答え申し上げます。
当然そういう姿勢はございます。話し合いで解決したいと思っております。しかし、話し合いがどうしても平行線で、どうにもならないようなケースもございまして、そういう場合はやはり第三者の意見を聞かなければならないと思っておりますが、そういうものが決着した後でも、私どもは、また話し合いにはぜひ応じたいといいますか、話し合いで解決を優先したいと思っております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 強権的なやり方をやって、それが終わった後で話し合いというんじゃ、話にならないわけですから。そうでしょう。
問題は、あなた方が実際には過剰な融資をやってきたわけです。例えば、あなたは、三菱銀行の取締役のときに提案型経営を先頭に立って推進してきた、そういう実績のある方ですよね。ここに1989年7月の金融ビジネスという雑誌のコピーがございますが、ここにもちゃんと写真が載っておりますけれども、三木さんは、「富裕層に対しては、個々のニーズに合致した提案型営業が重要になる。このため、当行には約40人の個人財務相談員も置いている。」こういうふうに言って、この方針のもとで、ともかく、必要がないお年寄りに、相続税対策ですからということで、高齢者などに過大な融資を押しつける提案型融資を行った。変額保険を初めとする商品をいわば売りまくったわけであります。
この変額保険というのは、保険料だけではなくて金利までも一括して融資をする、大型フリーローン、そういう形で融資をして、満期になるまで元金は据え置くんですよ、元金は減らないんです、融資残高は減らない。金利は複利で年々ふえていく、土地建物は担保にとる。こういうやり方をするわけですから、バブルが崩壊したら借金が残って、これはもうともかく土地建物を押さえるんだと。
今までこういう形で過大な融資をしてきた責任というものについて、やはり感じてもらわなきゃいけないと私は思います。その責任を棚上げして、融資を受けた側が借りたんだから、全部ともかく身ぐるみはぐまで取り上げる、それは余りにも一方的なんです。やはり、ここはお互いに話し合いをして、銀行はあのバブル時代の過剰融資の責任もあるわけですから、お互いに納得のいく形で解決をする、そういう姿勢に立たなきゃいけないと思うんです。
どうですか、その辺の、みずからの責任も踏まえてお答えをいただきたいと思います。
○三木参考人 お答え申し上げます。
まず、提案型営業のことをお話しになりましたけれども、お客様のニーズにこたえまして、銀行がそれにふさわしい商品、ふさわしいサービスを提供していくという提案型の営業というのは、これは力を入れていかなければならない一般的な営業手法だと、当時も言っておりましたし、現在でも思っております。
そして、そういうインタビューの記事がありましたから、そのころ言ったんだと思いますけれども、その点は変わっておりませんが、それは変額保険について直結して言及したものではないということではございます。
しかし、変額保険につきまして、これは、私どもはいろいろ御説明をし、最終的な意思決定、御判断はお客様にしていただく、そういうきちっとした手続をしてやったものだということではございますが、その後の経済情勢の変化等で大変厳しい状況に置かれておられますお客様があることも十分承知しております。したがって、私どもとしては、お話し合いによりまして、ケース・バイ・ケースで、十分よくお客様の立場も理解しつつ、しかしながら、私どもとしても最大限の回収努力はしなきゃなりませんので、接点を求めていきたいと思っております。
重ねて申し上げますが、お話し合いで解決したいという気持ちは全く変わりませんし、ここでまた申し上げます。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 実態を聞いてみますと、この提案型融資というのは、いわばバブル時代に、ここに駐車場をつくったらいいですよとか、マンションを建てたら有利ですよということをどんどん提案してやってきた。しかも、それは、相手は大部分がお年寄りですよ、財産のある。そういう方々にそういう提案をして押しつけておきながら、バブルが崩壊してうまくいかなかった、それはもう借りた方の責任だ、銀行は取るだけ取るんだと。これでは余りにも一方的だということを私は言っているわけです。
しかも、その変額保険の融資の先頭に、いわば三木さん自身は変額保険を推進する立場に立ってやってきたわけじゃないですか、三菱銀行の中で。ですから、その責任もあるわけです。
三菱銀行は、あの短期間の間に、3年間で、大変個人融資をふやしまして、融資残高では業界トップにのし上がるんですよ。こういうやり方をして三菱銀行というのは一番大きな銀行にのし上がっていったわけです。しかし、そのあおりで、まともな説明を受けずに融資を受けた、相続税対策になるのかなと思ったら相続税対策にもならない、そういう状態がずうっと広がったわけです。ですから、その点を十分に踏まえて反省していただかなければならない。
これは何も東京三菱銀行だけではなくて、ほかの銀行にも共通した面だと私は思います。
そういう点で、私は、被害者とお話し合いをするということを今言われましたので、きちっと話し合いに応じていただいて、ともかく、競売で路頭に迷わせるというようなことをどんどんやるというやり方だけは直ちに中止していただくということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。