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その他 (農林漁業・食の安全)

2004年03月31日 第159回 通常国会 農林水産委員会 【237】 - 質問

鳥インフルエンザ被害 業者への補償を政府がおこなえ

 2004年3月31日の農林水産委員会で、佐々木憲昭議員は、鳥インフルエンザ問題をテーマに質問しました。
 質問に先立つ26日には、日本共産党愛知県委員会が、「高病原性鳥インフルエンザ対策についての申し入れ」を、農水省と厚生労働省にたいしておこなっています。

 この日の質問で佐々木議員は、小規模な養鶏業者や制限区域外の業者などの実態にあわせた十分な被害補償の実施を求めました。
 移動・搬出制限をうけた30km圏内の採卵養鶏業者にたいする補償基準について、中川坦農水省消費・安全局長は「主要な市場の卸売価格にもとづく」と答え、一律の基準値を用いる考えを明らかにしました。
 佐々木議員は、生産シェア58%を占める10万羽以上飼育の大規模業者は補償されるが、手間をかけ良質で高単価の卵を生産する小規模業者には十分な補償にならないと指摘。「一律の補償基準によると被害額の半分しか補償されない。実態にあわせたきめ細かい対応が必要だ」と迫りました。
 亀井善之農水相は「適正な対応をする」と答えるにとどまり、佐々木議員は「一律のデータで割り切るのでは、救われない業者が生まれる」とのべました。
 佐々木議員は、融資のみとなっている移動制限区域外の養鶏業者や中小企業にたいし「被害補償などの支援も検討すべきではないか」とのべ、十分な補償の体制をつくることを求めました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 日本で鳥インフルエンザが発生したことは、極めて重大なことでございます。この鳥インフルエンザのウイルスが人に感染をし、その過程で、鳥インフルエンザウイルスが突然変異によって人から人へ感染能力を獲得する、そうなった場合には、人類的な被害をもたらすことになるということでありまして、大変危険な要素をはらんだ問題であります。
 亀井農水大臣にお聞きしますけれども、政府としても、最悪の事態を想定した危機管理というものが当然必要だと思うわけですが、そういう認識に立った対応をしているのかどうか、その基本姿勢、まずはここについてお答えをいただきたいと思います。
○亀井農林水産大臣 この鳥インフルエンザの問題、これは、私も現地に行ってまいりまして、その対応をこの目で見てまいりまして、もう大変な状況、こういうことで、総合対策を関係府省で充実する。さらに、現実的な問題としては、厚生労働省と十分連携をしなければなりませんし、私ども、防疫マニュアル、そしてさらに、各都道府県の関係者も招集いたしまして、そして、各都道府県一致して情報の一元化、あるいはまた、私ども農水省におきましても、いわゆる関係者、専門家をリストアップいたしまして、その発生、そういう中での対応ができるような体制というものを確立しておるわけでありまして、万全な体制をしいてまいりたい、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 その万全な体制という場合、単に通報を待つという姿勢ではなくて、やはり攻勢的で積極的な対応というものが必要だと思うわけです。
 その意味で、このウイルスを封じ込めるためには国民的な協力が要る、その協力を得るということがやはり大事だと思うんですね。そのことによって、協力することによって生じる、例えば養鶏業者などの損害についての補償、これはきちっとやらなければならないと思うんです。つまり、そういう体制ができて初めてしっかりした通報が行われ、かつ国がそれに対して的確に対応できる。したがいまして、この損害への補償というのが危機管理を有効に機能させる前提となる、私はそのように思うわけです。
 そこで、聞きたいわけですが、鳥インフルエンザが発生した際に、移動搬出制限に伴う30キロ圏内の採卵養鶏業者に対する補償、これが行われるということになったわけですが、その補償基準、これはどのようになっているのか、だれがどのように決めているのか、これをお答えいただきたい。
○中川政府参考人(農林水産省消費・安全局長) 京都を例にとりまして御説明を申し上げたいというふうに思いますけれども、京都の場合ですと、これは養鶏農家の方が移動制限の期間中に自分のところで卵を保管するということになります。そして、いざ移動制限が解けますと、それを販売する。その際に、当然、鶏卵の価値の減少分というのがございます。その部分と、それから、移動制限の期間中に保管をしていた保管の経費、あるいは別の場所に貯蔵していたとしますと、その間の輸送経費といったもの、こういったさまざまなかかり増しの経費。最初の製品であります鶏卵の価値の減少分、それと、今申し上げたようなかかり増しの経費を対象といたしまして、これを都道府県が助成をする際にその2分の1を国が負担をする、今、そういう基本的な仕組みでございます。
○佐々木(憲)委員 その鶏卵の価値の減少分の補てんということでありますが、この補償がきめ細かなものになっているのかどうかというのがやはり大事でありまして、例えば、損害額の算定基準というものは主要な市場の卸売価格に基づいているというふうに聞きましたけれども、これは事実ですか。
○中川政府参考人(農林水産省消費・安全局長) 指標としてとりましたのは全農の卸売価格、これは東京ですとか大阪ですとかというようにブロックごとに出ておりますけれども、この卸売価格をとってございます。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、その卸売価格というのは、卵の質とか種類とか、そういうもので幾つかの複数の基準があるのか、それとも一定の平均的な価格によるのか、それはどのようになっていますか。
○中川政府参考人(農林水産省消費・安全局長) お答え申し上げます。
 代表的なものとしまして、全農の規格のMというものをとってございます。
○佐々木(憲)委員 その全農の規格のMというものは一つの基準にはなると思いますが、今、養鶏業者といいましても、さまざまな業者がございます。最近は二極分化が進んでいるというふうに言われておりまして、全国で10万羽以上の養鶏業者は360戸、大変数が少ないわけです。しかし、これが卵の生産のシェアの58%、約六割を占めているわけであります。ここでは、低コスト、大量生産というのが特徴であります。今おっしゃった現在の基準では、確かにこの大規模養鶏業者は補償されるかもしれません。
 しかし、実際には、平飼いなどで手間暇かけて大変質が高い卵、したがって単価の高い卵を生産している業者、この数は業者の数としては決して少なくはないわけであります。これらの業者の場合は、こういう一律の基準でやりますと補償が十分ではない、場合によっては半分しか補償されない、こういう状況になるわけであります。やはり、補償という場合は、実態に合わせるということが大事でありまして、そういう実態に合わせたきめ細かな配慮というものが必要だと思うんですね。
 亀井大臣にお聞きしますけれども、やはり、それぞれの農家の、あるいは養鶏業者のこういう実情に対応するきめ細かな対応、配慮というものが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。
○中川政府参考人(農林水産省消費・安全局長) 事実関係を私の方からまず御説明をさせていただきます。
 先ほど申し上げましたように、指標としてとっておりますのは全農の価格であります。これは何かといいますと、いわばデータとして一番公知のものであり、また代表性があるものとしてこの価格をとっているわけであります。
 他方、今先生がおっしゃいましたように、確かに養鶏の形態というのはさまざまでありまして、高付加価値の卵をつくっておられる方もいらっしゃいます。ただ、この卵についての評価というのはさまざまでありまして、多くは取引が市場を経由しておりません、相対取引で行われております。
 したがいまして、幾らでそれが取引されたかというふうなことが必ずしも十分正確につかめませんし、また、そのデータについて、信憑性という言葉はちょっと不適切かもしれません、きちっとしたものであるかどうかといったものについてなかなかデータがとりにくい、適正な価格かどうかという判定が難しいというところがございます。
 税金を使って支援をするというものでありますので、やはりその算定の根拠になるデータは客観的なもの、できるだけ代表性のあるものというところで私どもは算定をさせていただいているということでございます。
○亀井農林水産大臣 やはり補助金等の問題でありますから、適正な価格を参酌しなければならないわけでありまして、市場価格、先ほども局長から答弁いたしましたとおり、全農のMの規格でございますか、そういう面が、これは全国的な中での価格になっておるわけでありますから、やはりそういうものを参酌して適正な補助ということの対応をすることが必要なことじゃなかろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 適正な対応になっていないと言っているわけですよ。要するに、全農のMというものは、一定の、一番代表的な、大量に出回っている、そういう基準なわけでありまして、それは大量に生産された一般的な卵の価格であります。しかし、実際には、それ以上のコストをかけ、手間暇かけて、それで高い価格の卵を生産して出荷している業者というのはたくさんいるわけですよ。数からいえばそういう業者の方が多いわけです。ですから、そういう業者が救われない状況になっているわけです。それをどう救うのかというのが問われているわけですね。
 きめ細かな対応、適切な対応と言うのであれば、そういう方々の損害を補償するというのが、これは当然なわけであります。それは、データの問題はいろいろ研究すればいいわけであります。例えば過去の取引のデータをきちっと掌握する、客観性を持たせるようにどういう担保が必要かとか、あるいはほかの方法もあるでしょう。卸売市場でのさまざまな取引のデータもあるでしょう。そういう問題も含めて、やはり農家の、業者の実態に合った補償というものが必要だと。
 そういう必要性ということについては、やはりこれはお認めになると思うんですが、いかがですか、大臣の見解。
○亀井農林水産大臣 いや、それは、必要な面があろうかと思いますが、やはり適正な基準というものを設定するには、いろいろの取引の形態等々あると思うんです。そういう面で、適正な補助、こういう面で、先ほど局長から申し上げましたような価値というような対応をしておるわけであります。
○佐々木(憲)委員 いや、だから、その対応が画一的で実態に合っていないということでありまして、これは、こういう点については当然研究する、検討するというぐらいは、業者の皆さんは不安を持っているわけですから、今はまだやれていないけれども、検討ぐらいはするということを言っていただけますか。
○亀井農林水産大臣 なかなか難しい問題、数量の問題ですとかいろいろ難しい問題があるわけでありますから、やはり、先ほど申し上げましたとおり、全国レベルで、またMというような基準、それでないと、なかなか個別の問題、いろいろ、これは把握をするというのは非常に難しい問題ではなかろうかと。やはりこれは、適正と申しますか、そういう基準で算定をすることが必要なことだ、私はこう思います。
○佐々木(憲)委員 つまり、補償されない方々が生まれてもしようがないというのが大臣の基本的見解だというふうに理解してよろしいですね。
○亀井農林水産大臣 それは、補償はしておるわけでありますから。いわゆる全農のM基準、こういう形で基準を持って、それでその価値の減少分、こういうことを補償しておるわけでありますし、さらには経営のためのいわゆる支援資金等々の、融資等々のこともいたしておるわけでありますから、いろいろな対応はしておるわけであります。
○佐々木(憲)委員 いや、だから、補償されないわけですよ、そういう姿勢では。この基本的な一律のデータだけで、それで割り切るということでは、救われない業者がたくさん生まれるということです。
 そういう状況ですと、いろいろな疑いのある、鳥インフルエンザの可能性があるという場合の通報もどうしてもおくれてしまう。この間の経緯を見てもそういう事例があるわけですから。ですから、そういう不安がないようにするというのが、通報して直ちに対応するということがないと被害が広がるわけでありますから、そういう姿勢では具体的な対応にならぬでしょう。
 もう少し親身になった、不安を解消する、万全の体制をとると言っているわけですから、当然そういう方向を検討するのは当たり前じゃないでしょうか。大臣、これを研究するというぐらいはどうですか、念頭に置いて研究してみると。
○中川政府参考人(農林水産省消費・安全局長) もう一度申し上げますけれども、税金を使って、つまり公的なお金を使って支援をするということでございまして、その根拠としましては、やはりきちっとしたデータに基づきませんと、不祥事その他にもつながりかねないという点を私どもは懸念をしているわけでございます。きちっとした説明のできるデータに基づいて助成をしていくということが、やはりこういった公的な支援をする場合の基本ではないかと思います。
 その際に、多少いろいろな価格面でのきめ細かいところまで見られない部分はあるかと思いますが、それは、何よりも公的な支援をする際の算定根拠として使うデータがどうであるか、それがとれるかとれないかということがやはり一番の判断の材料になるかというふうに私どもは考えて、こういった助成措置の基準を決めたということでございます。
○佐々木(憲)委員 どうも納得できないですね。これは、もう少し具体的な実情を調べていただいて、安心してこういう通報を行い、そして蔓延を防ぐ、そこに協力できる体制をぜひつくっていただきたいということを要請しておきたいと思います。
 それから、移動制限区域以外の地域における被害補償の問題でありますが、これは風評被害も含めましてかなり広範な影響があります。
 そこで、具体的な数字をお聞きしますけれども、卵の販売量の減少ですとか価格の低下、これがどうなっているか。昨年の同じ時期に比べまして、ことしの1月、2月、3月、その数字を示していただきたいと思います。
○白須政府参考人(農林水産省生産局長) お答えいたします。
 鶏卵の卸売価格でございますが、通常、季節変動のパターンがございまして、大体、年末年始の市場休み明けによりまして、流通在庫が、非常に卵が多くなっておりますので、だから、年明けの相場は一時的に供給増ということで最低水準になるわけでございます。その後、1月中旬から徐々に回復傾向を示すというのが毎年のパターンでございます。
 そこで、本年1月以降の鶏卵の卸売価格について見ますれば、1月の当初の相場、これは先ほどの全農の東京のMでございますが、1キログラム当たり85円で、その後、例年どおり1月中旬から価格は回復はいたしておりまして、3月30日現在で1キログラム当たり135円ということでございます。
 ただ、これらの価格は、昨年に比べますと2割ないし3割程度低くなっているというのは事実でございますが、これは需要が全体として減少基調にあるわけでございまして、そういう中で需要を上回る生産が続いているといった、そういう需給の乖離を反映して低水準になっておるのではないかというふうに考えているわけでございます。
 それから、消費についてもお話がございました。これは、実は統計上のデータといたしましては、本年1月までの家計の購入数量、全世帯でございますが、これが公表されてございまして、直近の本年1月では、対前年同月比95%ということで、5%減というふうになっているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 前年に比べまして価格の上で2、3割下がっていると。これは非常に大変な状況だと思うんです。もちろん、鳥インフルエンザの影響だけではないかもしれない、需給全体のバランスの変化というのがあるかもしれない。しかし、鳥インフルエンザ発生以後の状況を考えますと、大変大きな要素を占めているのではないか、その影響が大きかったのではないかと思うわけです。実際に販売量が95%という状況ですから、これは1月の時点ですけれども、今の状況は業者にとっては大変深刻な事態だというふうに認識せざるを得ません。
 そこで、大臣にお聞きしますけれども、これは今、融資その他さまざまな手を打たれていると思うんですが、しかし、この影響が極めて甚大であるということであれば、やはりそういう場合の被害補償ということも念頭に置いた対応というものが必要ではないかと思うわけですが、いかがでしょうか。
○亀井農林水産大臣 移動制限区域外の鶏卵農家に対しましては、いろいろの、いわゆる販売不振あるいは価格低下、この影響を受けておりますことを踏まえまして、低利の運転資金、いわゆる家畜疾病経営維持資金を拡充いたしまして、区域外の養鶏農家も利用可能な資金メニューとして経営維持資金を新たに追加したわけであります。
 そういう中で、鶏や鶏卵の移動制限は、区域外は鶏卵農家で行っていないわけでありますので、補償を行うということは、これは困難な状況であります。
○佐々木(憲)委員 先ほどの移動制限区域内の被害補償、損失補償の問題についてもまだきめ細かな状況にはなっていない。しかも、それ以外の地域については補償という発想が出ていない。
 私は、今後、鳥インフルエンザが制圧されて、これがなくなるということを望んでおりますけれども、仮にまた別な形で広がるなんということになりますと、そういう問題を、本当にきちっとした体制をつくらないと、これは不安が広がるばかりでありますので、政府の対応としてもその点をきちっとやっていただくということを要請したいと思います。
 ほかにもいろいろ質問しようと思ったんですが、時間が参りましたので、以上で終わります。

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