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金融(銀行・保険・証券) (金融機関の破綻, 郵政民営化)

2008年06月03日 第169回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【460】 - 質問

大銀行の「穴埋め」を なぜゆうちょ銀行が 預金保険機構理事長参考人質疑

 2008年6月3日、国会同意人事である預金保険機構理事長の永田俊一氏が再び候補となっていることに関し、財務金融委員会は永田氏への参考人質疑を行いました。日本共産党からは、佐々木憲昭議員が質問に立ちました。

 佐々木議員は、郵政民営化でゆうちょ銀行が預金保険機構への加入を義務付けられた問題を取り上げました。
 預金保険機構は金融機関の破綻に備え、政府・日銀・民間金融機関の出資で運営されています。
 永田氏はゆうちょ銀行が年間約5百数十億円もの保険料を新たに負担する試算を示しました。
 この間の金融破たんで、預金保険機構の責任準備金の残高は3月末で約1兆4千億円の赤字となっています。
 佐々木議員は、銀行への公的資金の投入などでできた赤字を、ゆうちょ銀行の保険料で穴埋めするのは筋が通らないとして、永田氏の見解を求めました。
 永田氏は、「そういう意見もあるが、民間金融機関は加入することになっている」と負担を当然視しました。
 佐々木議員は、「ゆうちょ銀行の保険料負担は、銀行の経営破たんに関係のない貯金している庶民の負担になる。大銀行の保険料負担をふやし、赤字を解消する仕組みをつくるべき」ともとめました。

 永田氏をふくむ国会同意人事は、6日の衆参本会議で採決がおこなわれ、議院運営委員会で、佐々木議員が意見表明をおこないました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは、預保の理事長に、預金保険機構の保険料の問題から質問させていただきたいと思います。
 預金保険機構は、ことしの3月21日に運営委員会を開きまして、預金保険料率を変更いたしました。まず、その理由をお聞かせいただきたいと思います。
○永田参考人(預金保険機構理事長) お答え申し上げます。
 平成20年度から適用します預金保険料率につきましては、定額保護の一般預金等とそれから全額保護の決済用預金につきまして、保険金の支払い、資金援助その他機構の業務に要する費用の予想額に照らしまして、長期的に機構の財政が均衡するように定めると預金保険法の原則がございます。その他の預金法の規定あるいは金融審議会の答申等を踏まえまして、従来から次の基本的考え方を持っておりますが、それを今回は継続したということでございます。
 一つは、当機構の財政、すなわち一般勘定は、引き続き多額の欠損状況にございます。平成19年度欠損見込みが約1.4兆円でございますが、一方、金融機関の預金保険料負担も引き続き高い水準にございますので、全体の実効料率は0.084%の水準を維持するということでございます。
 それから、全額保護の決済用預金と定額保護の一般預金等との間での割り振りでございますけれども、これは、付保預金一円当たりの保険料が均一となるよう保険料率を算定するということでございます。
 一方、平成20年度の預金保険料の算出基礎となります平成19年度の対象預金の動向を見ますと、決済用預金、特に無利息普通預金でございますが、そこから一般預金等へのシフトの動きがあったほか、1000万円以下の一般預金等のウエートが増加するといったことなど、預金構成が幾分変化しております。
 したがいまして、保険料率もこうした対象預金の動向を踏まえまして、決済用預金が0.108%、前年度対比で見ますと三角0.002%ですが、一般預金等につきましては0.081%ということで、プラス0.001%ということに変更させていただきました。
○佐々木(憲)委員 かなり細かな数字を報告いただきましたが、決済用預金から一般預金等へのシフトがあった。その一番の要因は、民営化されたゆうちょ銀行が加入をしたということでよろしいですか。
○永田参考人 お答え申し上げます。
 今おっしゃられたのも一因であります。
○佐々木(憲)委員 それで、ゆうちょ銀行は預金保険料を年間幾ら払うのか、それは今年度の預金保険料全体の中で何割ぐらいに当たるか、示していただきたいと思います。
○永田参考人 お答え申し上げます。
 ゆうちょ銀行は、平成20年度以降、他の金融機関と同様に、預金保険法に基づきまして、前事業年度、平成19年度につきましては平成19年10月から20年3月までの6カ月間でございますけれども、これの対象預金の平残に預金保険料率を乗じた1年分の預金保険料を納付していただくことになっております。また、その納付期限は6月末となっております。
 もっとも、個別の金融機関の預金保険料は、実は守秘義務の対象となっております。したがいまして、ゆうちょ銀行につきましても、預金保険料の額等お尋ねの点についての回答は、差し控えさせていただけるとありがたいと思います。
○佐々木(憲)委員 これは、私が昨年の11月に当委員会で質問をしまして、初年度の預金保険料は約400億円と見込んでいる、こういう答弁がありました。大体そんなところでよろしいですか。
○永田参考人 お答え申し上げます。
 発足に当たりましての予測ということでそういう数字が出たことは承知しておりますし、私どもも、そのことは推測として申し上げたことがございます。
 しかしながら、そのときと今度は、年度の、何といいましょうか、全体の具体的な数字に基づいてでございますので、若干状況が変わっている可能性がございます。
 ちなみに、そのもの直接ということですとなかなか難しいのでございますけれども、仮に推測的なことということでいきますと、ゆうちょ銀行の貯金残高がこの20年3月末で72兆円ほどございます。末残と平残とはちょっと違うわけでございますが、これに、金融機関の被保険預金ですね、この総預金に対する比率が大体8割9分ぐらいになりますので、そういうことを勘案して、先ほど申し上げましたような保険料の実効料率、0.084%でございますので、これを掛け合わせるということでラフな試算をいたしますと、これが5百数十億になるという感じではないかと思います。
 全体としての預金保険料の金額が5000億から5千数百億でございますので、大体そのぐらいのウエートでお考えいただけると思います。
○佐々木(憲)委員 5百数十億という数字ですけれども、銀行に対して公的資金を投入して、預金保険機構の責任準備金等の残高というのが一時は4兆円の赤字に膨れ上がっておりましたが、現在、多少減っていると思いますが、今、3月末の数字というのは幾らになっていますでしょうか。
○永田参考人 お答え申し上げます。
 20年3月末のお尋ねの責任準備金の残高でございますが、現時点で平成19年度決算作業中でございます、確たることは申しわけございませんが申し上げられないのでございますが、19年度におきまして、金融機関からの保険料収入が5666億円でございます。一方、新たな金融機関の破綻処理に伴う資金援助等は発生いたしませんでしたので、20年3月末の欠損金は、19年3月末の1兆9326億円から5000億円程度減少することが見込まれるのではないかというふうに思っております。
 仮に、今後とも現状の保険料収入がありまして、新たに金融機関の破綻処理が発生しないとすればという仮定でございますけれども。
○佐々木(憲)委員 3月末で、概算で1兆4000億程度の赤字だということになると思うんですね。これを解消するには何年ぐらいかかるのか、それから、ゆうちょ銀行が払う保険料は解消までに幾らぐらいになるか、示していただきたいと思います。
○永田参考人 お答え申し上げます。
 ですから、これも現状のままいけばということでございまして、さっき申し上げましたような、現状の保険料収入があり、新たに金融機関の破綻処理が発生しないとすれば、3年後の22年度末には欠損金が解消されるということになると思いますし、ゆうちょ銀行は、さっきの5百数十億の3年分ということになろうかと思いますが。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、ここで少し総括的にお聞きしますけれども、ゆうちょ銀行に貯金をしている国民というのは、この責任準備金の赤字をなぜ負担しなければならないのかという基本的な、原理的な問題が出てくるわけです。
 責任準備金というのは、大手銀行救済のために生じた赤字ですよね、簡単に言いますと。郵政が民営化されたというその結果、民間金融機関に変わったという理由で保険料を払うということなんですけれども、しかし、考えてみますと、ゆうちょ銀行に負担をさせるというのは筋が違うのではないか。
 むしろ、大手銀行というのは今、若干サブプライム問題はありますけれども、巨額の利益が上がっております。したがって、大手銀行を中心にしっかりと負担をしてもらうというのが筋であって、郵便局に貯金をした国民に負担を負わせるというのは、全く違うところに負担を負わせることになるのではないかというふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。
○永田参考人 お答え申し上げます。
 ただいまのような御指摘といいますか、これも一つの考え方かもしれませんが、私ども預金保険の制度といいますのは、まさに、金融機関を網羅いたしましてその預金者のために保険料を支弁していただいて、そして、いざという場合の保険事故に備えるということでございますので、基本的には、お入りになってこられた時点から保険料を負担していただくということで、預金保険機構が今のような欠損を抱えておるということは、ここのところそうなんですけれども、各国もそうですけれども、波がございまして、プラスになったりマイナスになったりしておるわけです。
 そういう中でお入りになられた方々については、その時点からやっていただくという原則でやってきておりますし、ですから、途中からお入りになられる金融機関も幾つもございますので、そういうことで、ゆうちょ銀行さんにもそのようにお願いをしたいということであります。
○佐々木(憲)委員 民営化されたから保険料も払うんだということなんですけれども、しかし、郵便局に貯金している国民は、大銀行を救済するために生まれた赤字をなぜ埋めなきゃならぬのかという、それはもう本当に普通に考えるとおかしいなということになるわけで、やはり、国民的な目線でよく考えていただきたいと私は思っております。
 さて次に、新生銀行の優先株転換問題についてお聞きします。
 ことしの3月に、預金保険機構が保有する第二回甲種優先株7452万8000株が360円で普通株に転換された。整理回収機構が保有する株式を合わせて政府が保有する議決権比率、これは何%になりますか。
○永田参考人 政府が保有する普通株の議決権の割合は、23.89%でございます。
○佐々木(憲)委員 これは非常に高い比率でありまして、米系買収ファンドJCフラワーズというのが第1位の株主でありますが、政府は第2位の株主になっているわけですね。
 議決権をそれだけ保有しているということなんですが、なぜ新生銀行は優先株を買い戻さなかったのか、なぜ政府は議決権のある大株主になってしまったのか、その理由を説明していただきたい。
○永田参考人 お答え申し上げます。
 優先株式等の処分につきましては、平成17年10月に公表いたしました「資本増強のために引受け等を行った優先株式等の処分に係る当面の対応」に基づきまして対応しておるところでございます。
 具体的には、公的資金増強行からの申し出による処分を基本としておりまして、新生銀行に関しましても、平成18年8月に、同行からの申し出により優先株式の一部について同行の買い受けによる処分を行ったところでございますが、以降、株価等の状況なども踏まえつつ、同行からの処分の申し出が行われてきていなかったということでございます。
 当機構といたしましては、当初の商品性に基づきまして、優先株式にかえて普通株式をそういう意味で取得するに至ったということでございますけれども、引き続き、当初の資本増強の趣旨あるいは目的などを踏まえながら、適切に対処してまいりたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 株価の動向を踏まえて申し出がなかった、それはどういうことですか。
○永田参考人 お答え申し上げます。
 当機構が保有しておりました優先株式につきまして、長銀譲渡に係る最終契約書で、預金保険機構保有の新生長銀株式の時価総額が5000億円を超えている場合には、新生長銀は預金保険機構に対して、その保有する新生長銀株式の一定数量を売却するよう要請できるということになっておりまして、また、預金保険機構は、この要請に対して不合理に拒否はしないということに定められております。
 この条項の趣旨は、当機構が保有する公的資金株式の処分、回収に際しまして5000億円を目安として確保するものでございまして、処分に当たってこういうことを考慮するということになりますと、先ほどのような株価を前提にいたしますと、おっしゃったようなことは実現できなかったということだと思います。
○佐々木(憲)委員 株価が下がったので、買い戻すということが行われなかったと。
 そうしますと、議決権のある普通株をずっと保有しているということになるんでしょうか。これはどういう対応をされるわけでしょうか。政府が今処分したら株が下がってしまう、一層下がる。そうすると、いつまでもこれを保有するということになるのか、それでどういう対応を考えておられるのか、お聞きをしたいと思います。
○永田参考人 お答え申し上げます。
 どうするのかということでございますが、先ほど申し上げましたような三つの要件といいますか、当面の対応に基づきまして考えていくのが基本だというふうに思っておりますが、いずれにせよ、今後の株価の動向にもよりますし、金融庁等関係当局ともよく相談しながらこの点については検討をしていきたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 私が非常に危惧を持っておりますのは、第1位になっている株主、これは米系買収ファンドでありますが、これは必ずしも、経営を支配して、いい銀行にしようというふうに思っているかどうか、私は疑問だと思っております。株価が上がりますと、当然これを売ってもうけるということに走るでしょうし、そうなりますと、政府の保有株、これも上がったから売る。売ると今度は株の暴落という話も当然出てくるということで、対応が非常に難しいのではないか。
 私は、国民負担にならないような対応というのはそういう状況でどういうことがあり得るのか、最後にお考えをお聞かせいただきまして、終わりたいと思います。
○永田参考人 お答え申し上げます。
 ただいまのような危惧といいますか、そういう可能性も考えながら、まさに執行機関としての私ども預金保険機構としましては、先ほどのような三つの、市場に与える影響だとか、金融機関がきちんと健全化されたかとか、それからさっきの5000億円の問題とか、そういうものを見ながら対応していきたいと思いますが、この銀行につきましては、まさに中期の健全計画というようなものをベースに監督ということも受けておりますので、そういう、当局ともよく相談しながらやっていくのが必要なことだろうというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 余り歯切れのよくない答弁でしたけれども、国民から見ますと、税金を投入していろいろな大手銀行については支えをやった、本来なら、銀行業界全体として保険料率を上げて、そして、その中で業界としての相互の支援体制というものをつくるというのが基本であると私は思っております。それをとらずに、国民の側の負担を求めた。その結果、さまざまな問題点が発生をして、今のような、株の売却についても非常に困難な状況になってきているということがあると思いますので、この点については、今後さまざまな形で質疑を行ってまいりたいと思っております。
 どうもありがとうございました。

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