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税制(庶民増税・徴税), 雇用・労働 (サービス残業, 関税・EPA(経済連携協定)・TPP)

2008年03月19日 第169回 通常国会 財務金融委員会 【443】 - 質問

関税定率法等改定案 法令遵守しない企業の効率化後押しは問題

 2008年3月19日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で関税定率法等改定案について質問しました。
 佐々木議員は、この改定案に盛り込まれた「日本版AEO」制度(注)の対象拡大が、労働法制などの法令順守に問題がある大企業による効率化最優先の動きを助長し、それを後押しすることになると指摘しました。
 「日本版AEO」制度には、「特例輸入者」「特定輸出者」に対して輸出入時の通関手続きを簡素化する特例措置が設けられています。「特例輸入者」「特定輸出者」の条件として「貨物のセキュリティ(安全性)管理とコンプライアンス(法令順守)の体制が整備された事業者」などがあげられています。
 関税定率法等改定案には、特例措置の対象となる事業者を通関業者に拡大することが盛り込まれていました。
 佐々木議員は質疑で、キヤノンや豊田、リコーなど、大企業が名を連ねる「特定輸出業者」80社(3月6日現在)のリストを示しました。
 その上で、キヤノンの偽装請負やトヨタ自動車での過労死事件を取り上げ、企業のコンプライアンスのあり方についてただしました。
 厚生労働省の石井淳子労災補償部長は、トヨタの過労死裁判が、QC(品質管理)サークル活動を労働時間と認めたことについて「他の企業も含めルールが徹底されることが大切」と答弁しました。
 これをうけて佐々木議員は、判決が出てもQCサークル活動を労働時間と認めない会社が法令を遵守していると言えるのかと指摘しました。
 その上で、今回の改定案が「広い意味でコンプライアンスに問題がある企業が、効率化を最優先させ、それを後押しする法改正だ。根本的に疑問がある」と強調しました。
 この改定案は、この日、採決され、自民、公明、民主の各党の賛成多数で可決しました。採決に先立ち、佐々木憲昭議員は討論に立ち、反対を表明しました。



(注)日本版AEO制度とは
 AEOは、Authorized Economic Operatorの略 貨物のセキュリティ(安全性)管理とコンプライアンス(法令順守)の体制の整備など一定の条件を満たした事業者に対する特例措置。貨物の到着前の輸入申告や、納税申告前の貨物引取りなどができる簡易申告制度や、貨物がどこにあっても輸出申告ができ輸出許可を受けられる特定輸出申告制度などが含まれます。
 日本共産党は、この制度が、財界、多国籍企業の要望に沿ったものであり、輸入品に対する検査体制を骨抜きにするものだと指摘しています。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 AEOという制度が導入されたのが7年前の2001年3月であります。特例輸入者に対して簡易申告制度が導入され、貨物の到着前に申告許可が可能となり、納税申告前に貨物の引き取りなどができるようになった。続いて2006年3月、特定輸出者に対して、貨物がどこにあっても輸出申告を行い、輸出許可を受けることができる特定輸出申告制度というのがつくられた。
 それで、今回の改正、これは特典を受ける対象となる事業者を通関業者や運送業者にも拡大し、AEO通関業者あるいはAEO運送者、こういうものをつくるということだと思うんですが、このように理解してよろしいかどうか、まず大臣にお伺いします。
○額賀財務大臣 そのとおりです。
○佐々木(憲)委員 それでは、これまで認められた特例輸入者、特定輸出者、これは何社ありますか。また、新たな対象となる通関業者は何社あるか。それと、特例を認められるための基準、これはどういうものか説明をしていただきたい。
○青山政府参考人(財務省関税局長) お答え申し上げます。
 特定輸出者でございますが、昨日現在で83社でございます。それから特例輸入者でございますが、54社というふうになってございます。さらに通関業者でございますが、現在877社ございます。
 それから、要件の話でございますが、通関業者の話で申し上げますと、通関業者が認定通関業者として税関長の認定を受けるためには、過去3年間、関税法等の法令違反がないこと、それから二番目でございますが、電子システムを使用して通関手続を行うこと、あと輸出輸入に関する業務について法令遵守規則を定めていること、それから通関業者として3年間の業務実績があること等を要件としているわけでございます。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 要するに、コンプライアンスの体制が整備されている、これが絶対条件ですね。
○青山政府参考人(財務省関税局長) そのとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 配付資料を見ていただきたいんですが、これは特定輸出者の一覧表です。この中に名立たる巨大企業が入っておりまして、例えば、日本経団連の会長を出しているキヤノン、あるいはトヨタ自動車、こういうのが入っています。これらの企業が法令を遵守するのは当然だと思うんですが、果たしてどうか。
 通関業務から少し離れますけれども、例えばキヤノンは、これまでにも何件もの偽装請負が発覚しておりますし、正社員を逆に派遣社員に置きかえるなど、問題となっております。また、キヤノンの大分進出をめぐる裏金疑惑というのも報道されているわけです。
 トヨタはどうか。
 厚生労働省にお聞きします。トヨタ自動車で内野健一さんという若い労働者が2002年2月に過労死した事件について、昨年11月名古屋地裁は、QCサークル活動を労働時間と認める判決を下しました。この判決に基づいて、労働基準監督署は、QCサークル活動なども業務である、こう認定して遺族補償年金などを支給する決定をした。これは事実ですね。
○石井政府参考人(厚生労働省労働基準局労災補償部長) お答え申し上げます。
 本件判決におきまして、被災者の労働時間を管理、認定する権限を有する上司の業務命令のもとで行われるQCサークル活動、そのほかに創意工夫提案とかそういった活動もございましたが、そういった活動につきまして労働時間と認定されたものでございます。
 厚生労働省としましては、その判決の考え、判断を受け入れ、控訴は行わなかったものでございます。
○佐々木(憲)委員 その判決の趣旨に沿って遺族補償年金を支給する、その計算の根拠の中に、QCサークルの活動も労働時間として計算の根拠にしているということでよろしいですね。
○石井政府参考人(厚生労働省労働基準局労災補償部長) お答え申し上げます。
 御指摘のようなQCサークル活動、本件事案につきましては、個別具体的に判断した結果そのように判示されたものというふうに承知いたしておるところでございます。
 労働基準監督機関として基準というものがあるわけでございまして、その基準に照らしまして明確に言えない場合は労働時間と認定することは困難な場合もあったわけでございますけれども、本件判決に関する限りは、被災者が直属の上司と同じ詰所で勤務をし、その在社時間が上司の在社時間と重なっていたといったようなこともございまして、この被災者についての特別の事情のもとで、QCサークル活動などの小集団活動について労働時間として認定されたものでございます。
○佐々木(憲)委員 それに基づいて厚労省も遺族補償年金を支給する決定をしたわけですね。トヨタ自動車はこれをしっかり支給するというのは当然だと思いますが、いかがですか。
○石井政府参考人(厚生労働省労働基準局労災補償部長) 個別の事案についてお答えを控えさせていただきたいと思いますが、ただ、今後とも、労働時間に該当するか否かについて、今回の判決で示された要素も踏まえまして、この基準に照らして総合的に、適切に判断して対応してまいりたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 いや、適切は当然ですけれども、私が言っているのは、労基署の決定に従って当然会社側が遺族補償年金を支給するというのは当たり前のことだと思いますが、いかがかと聞いたんです。
○石井政府参考人(厚生労働省労働基準局労災補償部長) 失礼いたしました。
 遺族年金等を支払いますのは国側でございまして、トヨタではございませんので、違う形で答弁させていただきました。
○佐々木(憲)委員 トヨタの側が今こういう文書を1月に出していまして、ここには、「従来の国のルールが変更されるかどうかは現時点では不明。そのため、当社自主活動の活動時間の取り扱いを変更する必要があるかどうかは、現時点では不明。」こういうふうに書いていまして、この判決とそれから国側の対応に対して、従来どおりなんだ、これからどうするか、どうなるかは不明である、こういうことを書いているわけですね。
 しかし、実際には、QC活動を労働時間と認めたわけです。判決も国の側もそのように確認をしたわけですね。したがって、この確認に基づいて、みずからがこれまでやってきたQC活動について、今までと同じだというのではなくて、当然見直して、その判決に当たる部分については当然労働時間と認めて、例えばサービス残業の部分に当たるのであれば是正する、こういうことをするのが当然だと思うんですけれども、いかがですか。
○石井政府参考人(厚生労働省労働基準局労災補償部長) 重ねてのお尋ねでございます。
 やはり個別事案でございますので、個別の事案のお答えは、まことに恐縮でございますが、差し控えさせていただきたいと存じます。
 ただ、しかしながら判決で示された労働時間の考え方それから判断、これは当然それに従うべきものというふうに考えておりまして、私ども監督機関としては、この労働時間の考え方については、こうした今回示された要素も踏まえて、総合的に判断をして適切に対応していきたいというふうに考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 これは、個別の問題であると同時に、すべての日本の企業がその基準を守らなければならない、つまり、裁判で示された基準、そしてそれを厚労省も、当然である、このように認めたわけですから、それは、トヨタはもちろんですけれども、日本のすべての会社はそういう基準で労働時間を考えなければならない、こういうことだと思うんですが、そのとおりですね。
○石井政府参考人(厚生労働省労働基準局労災補償部長) お答えいたします。
 とにかく、労働時間の考え方が今回明らかな、具体的なものとして示されたというのはそのとおりなわけでございまして、その考え方がしっかりほかの企業も含めましてるる徹底されることが大切かというふうに考えております。
 したがいまして、今後も、労働時間の該当、これにつきまして、今回判決で示された要素を踏まえて、通達で示されたさまざまな過去の基準もございます、それも含めまして総合的に判断をして、この徹底が図られるように努めてまいりたい、かように考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 過労死をさせるほどの働かせ方というのは非常に問題があると私は思いますし、特に大手企業は、コスト削減ですとかあるいはスピードアップと効率化、こういうことを最優先させていくようなやり方を根本的に見直していくということが今求められていると思います。例えば、効率化ばかり追い求めていきますと、製品の上でリコールなどというものも多発する、これで果たして社会的に信用されるコンプライアンスを整備した会社と言えるかどうかという問題も問われるわけです。
 例えば、今回の法案との関連でいいますと、日経新聞ですけれども、こういうことを書いているわけですね。「部品は名古屋港でも税関の審査や検査はない。船積みされるまで事実上のフリーパスだ。」「この制度は出荷する工場からでも申告でき、製品は保税地域を素通りできる。」広い意味でコンプライアンスに問題がある、そういう企業が効率化を最優先させて、それを後押しするというようなことではよろしくないと私は思います。
 今回の法案も、効率化ということを企業側が要請している、それにこたえて進めるというようなことになっておりまして、やはり、そこで働く労働者あるいは製品の管理、コンプライアンスのしっかりした確立、こういうものが今後必要だと思いますが、最後に大臣の見解をお伺いしておきたいと思います。
○額賀財務大臣 おっしゃるとおり、今回の問題は、セキュリティーの確保、それから日本の、我が国のグローバル化した中での国際競争力をいかに強めていくか。これは、機械化、電子化していくことによって人間の労働も非常に余裕ができるような形になっていくことが望ましいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。

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