税制(庶民増税・徴税), 財政(予算・公共事業) (道路特定財源)
2008年02月27日 第169回 通常国会 財務金融委員会 【436】 - 質問
政府はガソリン税暫定税率10年延長の根拠示せず
2008年2月27日、財務金融委員会が開かれ、26日の参考人質疑に引き続いて、佐々木憲昭議員は、道路特定財源を一般財源化すること、ガソリン税の暫定税率を廃止すること求め、質問しました。
佐々木議員は、主要諸外国の自動車・石油関係諸税の現状をまとめた政府税調の資料をしめし、「税目を増やしたり、税率をどんどん引き上げている国はない。むしろ、各国とも一般財源化を進めてきた」と指摘しました。
財務省の加藤治彦主税局長は、その事実を認めました。
政府は、総額59兆円にのぼる「道路中期計画」に対応して、ガソリン税の暫定税率を10年延長しようとしています。
佐々木議員は「なぜ5カ年ではなく、10年なのか」とただしたのに対し、国土交通省の原田保夫道路局次長は、「道路をつくるのに、おおむね10年程度かかる」ことを理由の一つにあげました。
しかし佐々木議員は「これまでも道路は、10年程度かかっていたのに5カ年計画だった。答弁になっていない。5年ごとに国会にかけるのを避けるためではないか」と指摘しました。
額賀財務大臣は、まともに答えられませんでした。
そのうえで、佐々木議員は、昨年11月に10年で65兆円かかるとした「計画が12月の政府・与党合意で59兆円に減らされたのに、提案された暫定税率が同じというのは筋が通らない。出し直すべきだ」と主張しました。
額賀大臣は「余れば一般財源化する」と答えたのに対し、佐々木議員は「それはごまかしだ。全体を一般財源化してこそ意味がある。政府のやり方は、金額が全体のわずか6%とほんの一部にすぎず、その使途も道路・自動車関係として制約されている」と反論しました。
佐々木議員は、2002年11月8日に、国交省が経済財政諮問会議に示した資料のなかで、長期計画を「予算獲得の手段になっている」「分野別配分の硬直性をまねく」などと批判していることを示しました。
額賀大臣は、この批判を「的を射た考え方だ」とのべました。
佐々木議員は「それなら、これまでのやり方を改めるべきだ」と主張しました。
政府が道路特定財源に固執する背景に、道路特定財源があります。
ガソリン税などの税収を、福祉や医療などにも活用できるよう道路特定財源を一般財源化することを求めました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。道路特定財源について、引き続き質疑を行いたいと思います。
これまで、12次に上ります道路整備中期計画、これは、一つの計画は約5年、それも途中3年ぐらいで更新をする、こういうやり方をしてきたわけでありますが、今回提案されているのは10年であります。今まで5年でやってきたのを何で10年にしたのか、その説明をしていただきたい。
○原田政府参考人(国土交通省道路局次長) お答え申し上げます。
中期計画の計画期間につきましては、事業が完成するまでに長期間を要することを踏まえまして、国民の皆様から見てできるだけわかりやすく、目に見える形でこれからの具体的な道路整備の姿、成果を提示できるようにということで、計画期間を10年間ということにしたところでございます。
○佐々木(憲)委員 長期にわたるから10年だと。道路をつくるのに大体10年ということですか。
○原田政府参考人 お答え申し上げます。
道路はいろいろ種類がございますので、期間についてはさまざまだとは思いますけれども、10年以上かかるものもございます。そういった長期にわたるものもあるということも踏まえまして、先ほど申し上げましたとおり、計画期間を10年間ということにしたところでございます。
○佐々木(憲)委員 10年程度かかるから10年にしたと。では、今までは、5カ年計画の期間は道路は5年でできていたんですか。
○原田政府参考人 お答え申し上げます。
もちろん、事業に要する期間というのは、別に今回とその前と変わるわけではございませんで、これまでは事業量を5年間で決めてきたということでございます。今回は、長期間にわたるということも踏まえて、事業量を定める期間を10年としたということでございます。
○佐々木(憲)委員 これまで10年で道路をつくってきた、これからも10年でつくると。これまでは5年だったけれども何で10年になったかという説明になっていないでしょう。ちゃんと説明してください。
○原田政府参考人 お答え申し上げます。
今回の中期計画では、16の政策課題を設定して、それぞれごとに具体的な目標を掲げて事業に重点的に取り組むということにしておりまして、先ほど申し上げましたように、具体的な目標、こういったものを国民の皆様方にできるだけわかりやすく成果として御提示できるようにということで、今回については10年間にしたということでございます。
○佐々木(憲)委員 16の政策課題があってわかりやすくしたと言うけれども、今までは政策課題はなかったのかといえばあったわけでしょう。今までもわかりやすくというようなことを言ってきたわけでしょう。何で5年が10年になるんですか。道路の期間、今まで大体10年かかった、これからも10年かかりますと。では、今まで10年じゃなくて5年だったんじゃないんですか。5年を10年にした理由になっていない。大臣、どこに根拠があるんですか。
○額賀財務大臣 道路の中期計画をつくる10年間ということについては、今原田次長が説明したように、道路をつくる場合は、橋をかけたりトンネルを掘ったり、やはりいろいろ時間がかかる。20年近くかかる仕事もあるというふうに聞いたりしております。
しかもなおかつ、今までは5年間の計画でやってきたわけだけれども、当然それは見直しをしたりする中で5年間の事業展開をしてきたと思いますが、我々は、今度の10年間の中期計画においても、5年で見直しをしようということも考えておりますし、そして、中長期的に、10年タームできちっと本当に必要な道路は何なんだということを考えていくときに、今回も16の政策課題について一定の方向づけをし、そしてお金も、予算も59兆円を上限として整備をしていくということの考え方に我々は理解というか賛同をして、この10カ年計画について法案を出させていただいたということでございます。
○佐々木(憲)委員 説明になっていないですよ。橋をかけたりトンネルを掘ったりと。今までもやっているじゃないですか。何もこれからやるのと今までと変わらないでしょう。20年かかるのもあると。それは前もありましたよ、20年かかるのは。これからもあるでしょう。何で5年計画が10年計画になったのかという説明になっていないですよ。何で10年なんですかと聞いているわけです。
○額賀財務大臣 だから、現下もいろいろな、これまでも説明してきたように、学童の安全だとか渋滞だとか、それから地域から要求されている切実な主要幹線道路の整備だとか、そういった問題についてきちっと責任を持って計画的にこの構想を示して、しかもなおかつ財源も確保して、必要最小限の真に必要な道路の計画を立てさせていただくという形で10年というふうにさせていただいたわけでございます。
○佐々木(憲)委員 全然説明になっていない。
きょうの朝日新聞の塩崎元官房長官のインタビューを見ますと、「5年でもいいけれど、終わらないようならば7年か15年という説もあった。結局は10年という結論に落ち着いた」、こういうふうに言っているわけです。
要するに、5年で区切るのは、一々暫定税率を国会にかけるのはもう大変だ、10年にしちゃえば10年に1回やればいいや、そういうことじゃないんですか。そんなでたらめな根拠で、説明にも何もなっていないですよ、今。全然なっていないよ。国交省も財務大臣の説明も、全然なっていないですよ。10年にした理由、何にもないじゃないですか。
大体、昨年12月の政府・与党合意では、「中期計画は、今後の社会経済情勢の変化や財政事情等を勘案しつつ、5年後を目処として、必要に応じ、所要の見直しを行う。」と書かれているじゃないですか。政府・与党合意で5年後に見直すと書いてある。だから、5年計画で十分なんですよ。10年という必要は全く出てこない。それは、要するに10年間固定させよう、道路特定財源をともかく確保しよう、そういう意図がありありと出ていると言わざるを得ないんですよ。
では、この暫定税率は10年で最後なんですか、その先も10年やるんですか、大臣。
○額賀財務大臣 今申し上げましたように、真に必要な道路計画を10年間で目標を立てまして整備させていただく、しかもなおかつ、それは59兆円が上限であるというふうにさせていただいております。その背景には、道路を整備するということ、環境にも配慮するということ、厳しい財政事情についても考慮するということ、そういうことから、この10カ年計画、あるいはまた暫定税率を安定した財源として確保しておくために10年間延長させていただくということになっているわけでございます。
この10年が終わった後ということでありますけれども、もちろん道路というのはずっと、私はこれで道路建設が終了ということではないんだと思います。だからといって、では特定財源がずっと続いていくかどうかということも、これは今の段階で確実に言えることではない。しかし、はっきり言えば、これからは道路の維持、修繕、修理とか、そういうことにすごくお金がかかってくるわけでございますから、そういうときの財源をどうしていくかというようなこと等については、その時点になって考えていかなければならないということであります。
ただ、はっきりしていることは、我々が今度の法律で道路整備を上回る予算については一般財源化をするということで従来とは違った形にしているということは、将来を考える上に一定の考え方を示させていただいているものと思っております。
○佐々木(憲)委員 20日の衆議院の国土交通委員会、ここで冬柴大臣はこう答えているんです。10年計画、これができれば、また暫定税率という話もありましたが、その思想は私にはありません。またやるという考えはないんだと。これは先ほどの財務大臣の考えと違うんじゃないんですか。財務大臣はそのときまた考えると。考えはないということは、やらないと言っているんですよ。これは大臣と考えが違うんじゃないですか。どうですか。
○額賀財務大臣 いや、そのとき考えると言ったのは、いずれにしても10年後における暫定税率のあり方については、道路整備に対する国民世論とか経済の状況だとかあるいはまた環境の問題だとか、そういうことから今度の暫定税率の維持と道路の中期計画というのを出させていただいたということと一般財源化の考え方を示させていただいたわけでありますから、そういう中で暫定税率についてもその時点で総合的に勘案をしていくべきであるということであって、暫定税率を維持するとも言っておりません。そのときになって全体的な中で考えていくべきである。
しかもなおかつ、言っているのは、道路特定財源について道路整備を上回るものは一般財源化をするということは、もう既に思想の転換が図られている、路線の転換が図られている。その延長線上でその時点で考えていくことになる、しかも総合的に考えていくことになる。推して知るべしであろうというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 路線転換が図られていると言うなら、暫定税率は10年後はもう要らない、一般財源にして、あるいは暫定税率をやめて、必要な道路は一般財源の中から確保していく、これで十分なんじゃないんですか、冬柴大臣は暫定税率を続けるという思想はありませんと言っているわけですから。
だから、これは同じ考えなんですか、違うんですかと聞いているんですよ。
○額賀財務大臣 ですから、我々は、道路の中期計画をつくる際に、道路整備はもとよりでありますけれども、財政事情だとか環境の問題だとか、そういう視点に立って考えていこうということをお示ししたわけでございます。
そういう中で、道路については、10年たったときにどういうことになるのか、道路予算はどうすべきかということについては、新しい道路をこれまでのようにどんどんつくっていく時代ではないだろう、しかし道路の維持費というのは相当かかる、しかし、財政事情だとか環境の問題だとか、さまざまなことを考えていく必要もある、そういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 全く歯切れが悪くてさっぱりわからないですね。冬柴大臣の言っているのと財務大臣が言っているのはかなり違うと思いますよ。
では、もう少し具体的にお聞きしますが、中期計画と暫定税率との関係であります。暫定税率を10年間維持した場合、国税、地方税、それぞれ道路特定財源の税収予測、これはどうなりますか。
○加藤政府参考人(財務省主税局長) お答え申し上げます。
国土交通省の方で中期計画を策定する際に、試算として、国税の特定財源の10年分の税収見積もりを30兆円から33兆円と試算されております。
○佐々木(憲)委員 それは国税分ですよね。地方税はどうなるんですか。
○香川政府参考人(財務省主計局次長) 最近の道路特定財源は、国税が3.3兆、それから地方税が2.1兆です。先ほど、足元、下がりぎみだということも含めて、10年で30から33というのを国税で見込んでおります。同じような傾向を考えれば、21兆よりは低い、ある程度幅を持った数字になるとは思いますけれども、我々、そこの推計はしていませんけれども、国税について今足元3.3のものを30から33と見込んでいますので、例えば19から21とか、そんなような数字ではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 それでは、次にお聞きしますけれども、10年間でそれだけの予想がされている。合わせて50兆から54兆ぐらいになると思うんですが、あとは借入金でやる、こういう計算になりますね。
昨年の11月時点で、つまり道路の中期計画素案が出されたときです、事業量は65兆円でしたね。資料を見ていただきたいんですけれども、1枚目の一番下ですが、この財政審の建議では、「暫定税率の期限が平成19年度末となっており、厳しい財政事情、環境面への影響等を踏まえると、現行の税率水準の維持が不可欠であり、年度末までに「具体策」に沿った改革を確実に実現すべきである。」こう書いてあるわけですね。
つまり、65兆円の事業総量を達成するために現在の暫定税率の維持が不可欠だった、こういう意味ですね、これは。
○香川政府参考人 道路の方の中期計画はまだ出ておりませんが、一般論として、厳しい財政事情でありますとか環境面への影響ということを考えれば、それから一方で道路整備の必要性というものを考えれば、現行の税率水準の維持が不可欠であろうという趣旨の建議をいただいたんだと思います。
○佐々木(憲)委員 65兆をやるために、65兆の事業を進めるためには暫定税率の維持が不可欠である、そういうことですね。昨年の11月ですから、ちょうど道路中期計画の出たときです。そのときに、65兆がそのためには不可欠である、こう言っていたわけですね。65兆のために暫定税率を維持しなければならぬ。
しかしその後、大臣、12月に政府・与党合意で59兆円になったわけです、59兆円に。6兆円下げられた。65兆円の事業のために10年間暫定税率を延長すると言っておりましたけれども、59兆円になったわけですから、それに見合った暫定税率の引き下げというのは当然やるべきだ、6兆減ったわけだから。
6兆分の暫定税率は何%になりますか。
○額賀財務大臣 数字は後でお話ししますけれども、これは基本的には、先生が提案された資料においても、いずれも、2005年の12月9日の政府・与党の会議においても財政事情だとか環境面とか書いてありますよね。それから、2006年の場合も、厳しい財政事情だとか環境面だとか、だから暫定税率を維持しなければならないんですよということを書いてありまして、その財政審のところにもそういうことが書いてありますけれども、それ以前からそういう考え方がなされているわけでございますから、ここへ来て突然、不可欠であるということが出されてきたわけではないわけでございます。
59兆円になった分がどれくらいの税率であるかについては、事務局にお答えさせます。
○香川政府参考人 10年間の6兆円分が税率でどれぐらいになるかという御趣旨の御質問だと思いますけれども、例えば揮発油税で申しますと、20年度2兆8000億税収がありますが、うち半分、1.4が上乗せ分になります。6兆円というと、1年にしますと6000億ですから、この揮発油税に乗せている分の半分以下ぐらいということになりますかね。今、1.4兆乗っています。そこが6000億という勘定になると思うんですけれども、そういう数字です。
○佐々木(憲)委員 要するに、総額が65兆から59兆円に下がると6兆円マイナスになるわけですよ。65兆のときには全額暫定税率が必要であると。59兆円になったら、例えばガソリン税、これは今暫定分が1.4兆、これが0.6兆下がる、こういうことになるわけですね。それは、ガソリンにすべて還元したらそうなる話なんです。あるいはほかの、石油ガス税その他ありますよね、どのように配分するかは別としまして。暫定税率がこのまま維持されるという必要はないわけですよ。暫定税率はそのまま維持というこれは、59兆に合わせて下げる、下げて出し直すというのが当然じゃないですか。
○額賀財務大臣 これは、考え方としては、税収が入った分をそのまま道路建設に使うということではないわけでございまして、必要な道路以外は一般財源化をするということが前提になっているわけでございますので、しかもなおかつ59兆円は上限である、毎年毎年できるだけコスト縮減を図ったりなんかをしていくことは当然のことだと思います。
○佐々木(憲)委員 それなら、最初から一般財源化する形にすればいいじゃないですか。何も今までの税率をそのまま維持しなくたっていいんですよ。59兆に下がるわけだから、その分当然税率を下げて、あるいは維持すると言うなら、それをどうするかということになりますけれどもね。
私は、これは当然下げるべきだと思いますよ。何も全部必要ないわけです。道路に必要だというのは、暫定税率全額じゃないでしょう。ですから、税率を下げて当たり前じゃないですか。何も、全部取ってその中でまた考えますよという話じゃないでしょう。当然下げて出すべきだ。
○額賀財務大臣 だから、基本的には、道路財源でございますから、ユーザー、道路を使っている方々にその負担をお願いしている特定財源でございますから、一般財源化をすると、そういう納税者の理解を得なければならないという前提が必要になってくるわけであります。しかもなおかつ、我々は、道路、環境、財政事情、そういうことを勘案しながら考えていくという基本的な姿勢を持っているわけでございます。その中で、我々は道路整備を上回るものは一般財源化をして、道路以外の分野に使わせていただいているということになっているわけでございますから、何も暫定税率を引き下げる必要はないということでございます。
○佐々木(憲)委員 これは全く説明になっていないと思います。一般財源化するとユーザーの理解が得られないので、その範囲内で、理解を得られる範囲でやる。つまり、道路関連あるいは自動車関連に使うと。これは一般財源化じゃないんですよ。いわば括弧つきのにせものの一般財源化ですね、最近はやりの。そういうものに使われる。
つまり、本当の一般財源化というのは、何にでも使えるものにしなきゃいけないんです。それを、極めて一部で、この前も私ここで議論しましたけれども、全体の数%を一般財源だと言うけれども、それは使い道は限定されているわけです。道路関連と自動車関連です。それ以外に使えないというのが今の政府のやり方じゃないですか。これはにせものの一般財源化なんですよ。
しかも、一般財源化と言うならば、本来全額を一般財源にすべきなんです。もともとこの性格は、導入のときから目的税ではない、そういう性格のものでしょう。だから、特定財源というものの法律はやめて、全額一般財源に目的税ではない形で入るから、一般税として入るから、それをベースにして、道路に関連するところには必要なところはつくる、それ以外には自由に使える、そういうものにすべきだというのが我々の考えですけれども、政府、大臣の考えは、何が何でもともかく暫定税率まで全部国民から取る、その上で、道路に関係のあるところには使う、それ以外には使わない。いわば、暫定税率死守路線といいますかしがみつき路線というか、そういう考え方ですよ。これは余りにも国民の考えとはかけ離れている、そういうふうに思います。
次に、国際比較についてお聞きしたいと思います。
今まで、アメリカでも、イギリス、ドイツ、フランスでも、道路特定財源というのが過去導入されたことがありました。これは、現在どうなっていますか。
○香川政府参考人 諸外国におきましては、道路整備に要する費用の大きさや財政需要、それから各国さまざまな事情に応じまして、道路特定財源制度が維持されているケースや、必要に応じて一般財源化を含めた見直しが行われてきたケースがあります。
ガソリンに係る税の使途ということで見てまいりますと、現在、イギリスやフランスでは特段の定めがなくて一般財源として用いられている一方、アメリカやドイツでは税収の一部が道路のための特定財源として使われております。
○佐々木(憲)委員 今説明がありましたように、私の配付資料を見ていただいてもわかりますが、例えばイギリスの場合、これは少し古いんですけれども、1909年、特定財源として自動車関係諸税、石油関係諸税が創設された。石油関係課税収入を一般財源化したのが1920年代。1937年には自動車課税収入を一般財源化した。その理由は、道路基金の税収が道路歳出を大幅に上回り、道路基金の留保額が増大したためであると。
フランスの場合は、1951年、特定財源が導入されました。しかし、1981年には石油産品内国消費税を一般財源化した。したがって、現在はもうないわけであります。その理由は、歳出に応じて歳入を決められるという状況であったためと。つまり、歳出があるから歳入が必要だという考え方、逆転した考えになる。それから、道路予算が一般会計及び基金の両方から支出され、複雑になっている、特定財源は予算の総合性を乱す、そういう理由でこれはもう全部一般財源になったわけですね。今、イギリスにもフランスにもないわけです。
では、アメリカやドイツというのはどうなっているのかというと、アメリカは、1956年、特定財源が導入されました。しかし、90年に一部を一般財源に変えた。その理由は、財政赤字を解消する、そのためだと。
それから、ドイツの場合は、1955年に特定財源化が行われましたが、1963年、これは一部ですけれども、一般財源化が行われた。景気後退と軍事費及び社会保障費の増大により財政難に陥ったためである、だから一般財源化したんだ。こういう経過なんですね。
つまり、イギリスを除いてアメリカ、ドイツ、フランスの場合は、戦後、ちょうど日本が道路特定財源を導入したほぼ同じ時期に同じことをやったわけです。しかし、これらの国は、税目をどんどんふやすなんということはやっておりません。それから、税率をどんどん上げるというようなこともやっておりません。むしろ、一般財源化を進めてきた。そして、イギリス、フランスはすべて一般財源になった。これが経過であります。
ですから、税目をどんどんふやしたり一般財源化をしないというようなところは、一般財源化に制約をつけているような国は非常にまれなわけです。日本が極めて特異な状況だ。大臣、そういう認識はありませんか。
○額賀財務大臣 今、佐々木委員のお話を聞いていまして、それぞれの国で道路特定財源ということは経験なさっている。それがその後、いろいろな財政需要あるいは財政事情、さまざまな点でいろいろと変遷をしている。アメリカの場合は、最近はまた道路に使っているということも聞いております。
戦後の数十年の間に特定財源で道路整備が相当進んできたこと、これは佐々木先生もお認めになると思うんですね。これからも、通学路だとか渋滞だとか基幹道路だとか、そういう整備をしてほしいという切実な要望もあるわけでございます。そういうことにもこたえていくと同時に、特定財源というのは、先生もおっしゃるように、やはり柔軟性を欠く場合もある。そういうものについてはやはり考え直していかなければならない。そういうことから、今度、道路整備を上回る分野は一般財源化をするということで一定の改革をしたということになるわけであります。
しかもなおかつ、今度は道路整備も、本当に必要な道路は責任を持ってちゃんと計画を立てて、しっかりとユーザー、納税者の皆さん方にもわかってもらえるようにしようということで、十カ年計画を立てて、暫定税率もそれに合わせて10年間延長させていただくということになっているわけでございますから、日本の道路特定財源についても、考え方としては、今までは道路の特定財源の収入は道路だけに使っていたけれども、今度はそうではないんですね。道路はもちろん含まれるけれども、環境とか財政事情とか、そういうことを考えながら一般財源化を図ったということでございますから、今までの考え方とは非常に大きく変化をしているということを御理解いただけるのではないかというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 一般財源化したと言いますけれども、今までのやり方とそんなに変わらないんですよ、ほんの一部であり、またその内容が制約されているわけですから。
それぞれの国の状況というのは違うということもおっしゃいましたが、例えば財政赤字、それはほかの国だって財政赤字がありますし、そのためにということで一般財源化しているわけですね。日本も、ほかの国に比べて財政赤字の規模は非常に大きいわけでしょう。
それから、道路整備が進んできたと。これは、ほかの国だって道路整備が一定水準まで来たからやめたわけです。あるいは一部一般財源化したわけですね。日本は、ほかの国よりももっと進んでいる面もあるわけです、整備の上では。したがって、これはもう続けていく前提が崩れている。
あるいは、道路整備を上回る分は一般財源化すると言うんだけれども、道路整備そのものが必要か必要でないか、これだけは必要だというものを毎年査定してやっていくとおっしゃいましたよね。それならば、何も目的税は、目的税的な道路財源というものは必要ないんです、一般財源の中から道路に必要なものを充てればいいわけですから。
ですから、説明を聞いていても、特定財源がどうしてもなければならないということにはならないんですよ。今の説明では逆に、これはもうそろそろ一般財源にすべき時期だな、大臣の答弁を聞いているとますますそういうふうに思わざるを得ませんね。
では次に、公共投資の全体の計画との関係でお聞きしたいと思います。
1990年代につくられた公共投資基本計画というのがありました。これは事実上アメリカから押しつけられたものでありまして、日米構造協議のもとでつくられました。当初は430兆円という規模でしたが、その後、1995年から10年間で、630兆円だというように大規模な膨れ上がり方をしたわけです。結局、この公共投資基本計画、これはどうなったんでしょうか。
○香川政府参考人 公共投資基本計画につきましては、資源配分を硬直的なものとし、経済動向や財政事情を迅速に事業へ反映することを困難にしているというような批判がございまして、それを踏まえまして、平成14年の「構造改革と経済財政の中期展望」におきまして、経済財政全体の姿と整合性をとった形で社会資本整備の基本的な考え方が記述されることとなったため、平成14年に廃止されております。
○佐々木(憲)委員 現在は、これはもう廃止されていると。
この公共投資基本計画には、いわば全体の総額が書き込まれておりましたが、総論的な位置づけと言ってもいいと思うんですね。それで、各論は何かといいますと、公共事業五カ年計画ということで、道路、港湾、空港など個別分野ごとに公共事業の長期計画がつくられる、そういう形で進められたわけですね。各分野の5カ年計画、それは何種類計画があって、今どうなっていますか。
○香川政府参考人 公共事業関係の長期計画は、当時16ございました。そのうち国土交通省関係の9つの長期計画につきましては社会資本整備重点計画ということに1つに統合されまして、あと残り7つの長期計画につきましては5つに整理統合されております。
○佐々木(憲)委員 資料の3枚目を見ていただきたいんですが、当時16の長期計画があったわけですね。この全体が整理統合されたわけであります。
資料の4を見ていただきますと、当時の国土交通省は、これは経済財政諮問会議、2002年11月8日に扇国土交通大臣が提出した資料であります。「新たな長期計画の見直しの基本的な考え方」、これで先ほど説明のありました9つが1つに統合されるということが行われたわけです。
この中に、「新たな長期計画の見直しの基本的な考え方」という見出しで、左の下の方に白抜きで書かれている部分があります。これを見ますと、長期計画批判、つまり、5カ年計画という形で事業を総額を決めて推進する、そういうやり方を批判するということなんですね。これは予算獲得の手段になっているとか、分野別配分が硬直化する、それから計画の縦割りがある、緊急措置法は廃止も含め見直すべきである、こういうことで、長期計画そのものに対してこういう批判的見地を表明したわけです。
それから、下の方を見ますと、公共事業批判ということで、必要性の低い事業が行われがちである。つまり、総額を決めてやる、税収があるからやるというふうなやり方は必要性の低い事業が行われがちである、とめる仕組みがない、事業の重点化、効率化がなされていない、地方自治体や国民の声を十分聞いていない、こういう大変適切な批判が行われた。これは国土交通省の内部からこういう指摘があったわけであります。
国土交通省としては、今でもこの見地は変わりませんか。
○原田政府参考人 お答え申し上げます。
ここに書かれている考え方、基本的に変わっておりません。
○佐々木(憲)委員 額賀大臣も同じ考えですか。
○額賀財務大臣 的を得た考え方だと思います。
○佐々木(憲)委員 では、いまだに事業費総額を明示した形で長期計画を続けているのはどの分野ですか。
○香川政府参考人 もともと、長期計画を見直したときに一番重要なのは、計画策定の重点を従来の事業量からむしろ達成される成果、アウトカム目標に変更したということであります。道路に関しても、もちろんこういうアウトカム目標を持っておりますが、道路整備については、この欄の中でただ一つ、事業量も別に書いております。
○佐々木(憲)委員 道路だけが事業費総額を決めてやっているわけです。ほかはそういうやり方をしているのはないわけですね。何で道路だけなんですか。道路だけなぜ残ったんですか。
○香川政府参考人 道路整備事業につきましては、道路特定財源として自動車ユーザーに負担をお願いしているということでありまして、今後、どのような対象に幾ら税金が充当されるのか国民に説明していく必要があるということで、道路整備費の財源等の特例に関する法律に基づきまして事業量を決定しております。
○佐々木(憲)委員 今の説明を聞いてもわかりますように、大体、公共事業計画、5カ年計画というやり方は、予算獲得の手段に成り下がっている、分野別配分の硬直性を招く、計画が縦割りである、緊急措置法は廃止も含めて見直すべきだ。公共事業の点でいっても、必要性の低い事業が行われがちだ、とめる仕組みがない、事業の重点化、効率化がなされていない、地方自治体や国民の声を十分聞いていない。こういうことを国土交通省も、今財務大臣も、まことに的を射た指摘である、そういうふうに言っていながら、道路だけ何でこれは続けるんですか。特定財源があるからそうなっている、こういう話ですね、今。
ですから、道路がこういう形で必要のないところも使われる、必要性の低いところにも使われるとか、重点化、効率化がなされていないとか、こういう批判を招いても続けているわけですよ、総額明示方式を直さないで。ですから、道路特定財源というものがあるからこそそれが、批判があっても、批判何するものぞと続けられているわけです。これはやはり仕掛けとしてはおかしい。
財務大臣がおっしゃったように、これが適切な批判であるというなら、当然道路も含めてそういう見地で見直す、これが必要なんじゃないですか、どうですか。
○額賀財務大臣 ですから、我々は、今までは道路の財源、収入はそのままストレートに道路整備に使ってきたけれども、今回はちゃんと中期計画をつくって、真に必要な道路整備だけに向ける。しかもなおかつ、それも59兆円という上限を設けます。そして一方で、道路特定財源を、道路整備を上回るものは一般財源化をして他の分野に使わせていただくというように、我々も柔軟性を持たせて、今考え方を転換させてもらったということでございます。
○佐々木(憲)委員 いや、それが転換になっていないということなんですよ。転換すると言うなら、全部一般財源化したらいいじゃないですか。どうしていつまでも固執して、一般財源化というのは本当に数%の微々たるもので、しかもそれを、道路関連だとか自動車関連とか、そんなことばかり言って制約を加えて、総額全体を確保しようという意図だけが見え見えで、だから、入ってきたら全部使う、90数%道路整備に使うという、その仕組みが続いていることが問題なんですよ。
だから、今までのそういうやり方というのはもうこの辺で根本的に見直す、こういう姿勢がないと新しい方向には向かわないと私は思うんです。大臣、そこを踏み込むという決意は一切ないということですか。
○額賀財務大臣 もう既に踏み込んでいまして、だから一般財源化を図らせていただいているわけで、しかもなおかつ59兆円を上限化していくわけであります。こういうことを経過しながら、永遠にこれが続いていくものとも思いません。既にもう改革の端緒を開いたわけでございますから、そこは佐々木先生もきっと心の中では御理解をいただいているのではないか、こう思います。
○佐々木(憲)委員 いや、私は心の中でも理解しておりません、このやり方は。全然理解できませんね。全面的な一般財源化を行う、そして無理に引き上げている暫定税率は下げる、これが当たり前のやり方だと思っておりますから。いつまでも特定財源にしがみつくような、自民党の中には、道路族だとか何とか族だとかといろいろ言われていますけれども、そういう関係の、建設関係の業界から献金をもらい、そして選挙運動をやって票集めをやって、そういう体質があるから、これはいつまでも直らないんじゃないですか。その点は、また別の機会にじっくりやるというふうにしたいと思います。
では次に、小泉内閣でやろうとした一般財源化というのは一体何だったんだろう。
小泉内閣が発足した直後、2001年5月に小泉総理はこう述べたんです。党内に賛否両論があるのも承知しているが、道路特定財源の使途を抜本的に見直したい、こう言明したんです。また、塩川財務大臣も、産業基盤としての道路整備はおおよそ完成した、こういうふうに述べて歩調を合わせたわけですね。
ちょうど2002年度が、道路整備計画の終了年度に当たっておりました。ちょうどいいタイミングでそういう問題提起が行われたと私は思います。ところが、当時、道路特定財源は自民党道路調査会の聖域と言われ、総務会の反発も大変なものだったというふうに報道された。結局、これはどうなったんですか。
○森山財務副大臣 佐々木委員がおっしゃいますとおり、小泉政権下では、一般財源化を図ることを前提として、納税者の理解を得つつ、具体案を得るという基本方針が決まりました。その後、安倍政権のもとで、この基本方針のもとで、税収の全額を道路整備に充てることを義務づけております現在の仕組みを改めて、毎年の予算において、道路歳出を上回る税収は一般財源化するということが決められました。いわゆる新しい仕組みができたのだというふうに理解をしております。
今後とも、この新たな仕組みのもとで、歳出改革の徹底を図りながら、納税者の理解を得つつ、可能な限り一般財源の確保に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 先ほどから、これは一般財源にしたしたと盛んに言いますけれども、それがいかに虚構のものであるかということは、この議論を通じて明らかになったと思うんですよ、やったやったと言ったって数%なんですから。やるなら、半分ぐらいやったら、やったというふうになるでしょうけれどもね。
ともかく、6%やって、もう全部やったみたいな、100%やったかのような宣伝は、これはいかがなものかと思います。針小棒大というのはそういうことなんですよ。しかも、その使い道が非常に限定されている。暫定税率は依然として維持する、全額確保して道路がほとんどだ、こういう話ですから、これではだれも納得しないと思います。
小泉内閣時代に、2002年度予算で、特定財源のうち道路整備に回されて余った財源、自動車重量税の一部、2247億円を道路整備以外に回した、これが最初だったわけですね。このとき、扇大臣は、異例の措置だが02年度限りのこととしてやむを得ない、こういうことで受け入れたんです。しかし、当時の2002年度予算、補正予算を組まれましたね。その補正予算で道路整備はどうなったんですか。記憶、ありますか。
○香川政府参考人 今、数字を調べておりますので、お待ちください。
○原田委員長 速記をちょっととめて。
〔速記中止〕
○原田委員長 速記を再開して。
香川主計局次長。
○香川政府参考人 2002年度補正予算で、道路整備として4000億の追加をしています。
○佐々木(憲)委員 突然の数字の要求で申しわけなかったんですが、補正予算で4000億計上されたんですね、道路整備のために。結局、道路整備から一般財源に回したというのは2247億円なんですよ。しかし、補正予算で道路整備が4000億組まれたわけですね。これでは、道路整備が、予算としては逆に本予算よりふえてしまったわけですよ。これが一番のごまかしなんですね。何か一般財源化したというふうに言うけれども、実際上、道路整備の予算が、減るどころかふえてしまった。本予算でほんの少し一般財源化したけれども、補正予算で帳消しにして、道路予算はもっとふえた。
2003年度予算ではどうなったか。これは数字を聞くと時間がかかりますから紹介しますと、本四公団の債務処理を自動車重量税から充当することを決めた、これは、06年度までの4年間で、合計1兆4645億円なんです。
2004年度予算では、ETCやまちづくり、都市再生事業、こういうことに使途を拡大した。これは、道路以外だけれども、しかし道路関連ですね。その後、2004年、529億円、それがそういうふうになった。
その後、2005年度には942億円。2006年度、1568億円。2007年度、1806億円。2008年度、1927億円。全体の中でいいますと〇・何%とか、本当に数%の範囲なんです。しかも、それが道路関連、自動車関連、こういうところに限定された使い方になっているわけです。これは、道路関連事業、道路関連経費ということで、その枠の中での拡大であって、全然一般財源化とは違うものであります。
お聞きしますけれども、この広げてきた広げてきたという中から、福祉予算ですとか医療とか社会保障、そこに使ったものというのは何かありますか。
○香川政府参考人 ないと思います。
○佐々木(憲)委員 ですから、これはもう本当に、一般財源というのは、大臣は盛んにおっしゃいますけれども、本来の、真の一般財源とは全くほど遠いものなんです。だから、この際、福祉にも医療にも使えるような一般財源の方向を検討する、そういう考えはありませんか。はっきりここで言ってください。
○額賀国務大臣 今までいわゆる道路以外の使途拡大予算というのは道路関連という形になっておりますけれども、この8年度の1927億円というのは形の上では全くひもつきではありません。結果的に、環境とか、信号機をつくったりした予算額の、一般会計から出されている予算額の範囲の中に入っているとは言えますけれども、ひもつきで、きちっとこういうところに使いなさいという形で一般財源化されているわけではない。
○佐々木(憲)委員 ひもつきという形じゃないけれども、枠がかかっているんですよ。それで、先ほど御答弁がありましたように、社会保障に使ったためしは一度もないんです。使ったら使ったと言っていただければいいわけです。
そういう意味で、今回のこの一般財源化と言われているものの中身は、全く本来の一般財源とは違う。それから、一般財源と言うなら、全額一般財源にしてから言っていただきたい。真の一般財源という意味で言うべきだというふうに思います。
そういう意味で、私は、今のこの政府の提案、政府のやり方というのは、全く実態が、道路財源を確保し、道路のために使うという基本姿勢は変わっていない。そこを変えるべきだということを最後に申し上げまして、質問を終わります。
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