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税制(庶民増税・徴税), 財政(予算・公共事業) (道路特定財源)

2008年02月26日 第169回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【435】 - 質問

4人の参考人に道路財源問題について質問

 2008年2月26日、22日に引き続いて財務金融委員会が開かれ、ガソリン税などの暫定税率の10年延長などを盛り込んだ租税特別措置法改定案などについて、参考人から意見を聴取し、佐々木憲昭議員が質問しました。
 参考人として、中里実・東京大学教授、中林美恵子・跡見学園女子大学準教授、高木勝・明治大学教授、安藤実・静岡大学名誉教授の各氏が意見陳述をおこないました。

 安藤氏は、道路特定財源について「税金は、ほんらい一般財源としての性質をもっており、使途を特定したものは例外だ」と指摘しました。
 そのうえで「もはや道路整備費を特別扱いする必要はない」とし、道路特定財源をやめるべきと主張しました。
 高木氏は、暫定税率と道路特定財源が温存されることによって「道路整備が最優先され、社会保障や教育、環境対策に資金を有効に振り分けることができなくなる」と強調し、「暫定税率を廃止し、一般財源化すべきだ」とのべました。
 佐々木議員は、「いま緊急性と言えば、道路よりも社会保障ではないか」、また「高速道路や高規格道路に重点がおかれている道路整備計画を根本から見直す必要がある」と指摘し、参考人の意見を求めました。
 これにたいして、参考人の4人全員が、道路整備よりも社会保障の方が重要であると明言しました。
 安藤氏は「(政府は)必要な社会保障の自然増を削り、その一方で新規の道路建設のための予算を増やそうとしている。これはあべこべだ」と批判しました。

議事録

【参考人の意見陳述と佐々木憲昭議員の質問部分】
○中里参考人(東京大学法学部教授) 御紹介いただきました中里でございます。きょうは、このような場にお招きいただきまして、ありがとうございます。
 平成20年度税制改革案に関する意見の陳述を行わせていただきます。簡単な配付資料を用意いたしました。
 それで、その配付資料に入る前に、簡単な前置きでございますけれども、財政改革とか税制改革、この種のものに魔法というのはないということでございます。これをすればみんなが満足で何もかもうまくいくというようなものは多分ないのではないかというふうに思っています。財政赤字が非常に厳しい状態でございますけれども、ある種の方策をとれば一挙に何もかもすべてがうまくいくというような対応策というのは考えられない、細い道を通っていって、何らかの可能なものをその都度その都度常識的に考えていくという以外に方法はないのだろうと思っています。
 そこで、財政赤字に対応する方法というのは、増税をするか、歳出をカットするか、あるいは、経済を刺激してGDP等をふやしてそこから結果的に税収を上げるかという、三つの方策があるわけですが、この中のたった一つで物事がすべてうまくいくというわけではございません。要はバランスの問題で、三つをうまく組み合わせながらやっていくということでございます。総体的に見ていきませんと問題が解決つかないものですから、部分的に一つの局面にだけフォーカスして、それだけに集中して、それで物事がすべてうまくいくかのように考えるということは、政治的にはわかりませんが、論理的には誤りなのではないかというふうに思います。
 改正案全体に対する所見でございますけれども、その配付資料にございますとおり、日本は、少子高齢化の進行やグローバル化の進展、それから経済社会の大きな構造変化、こういうものに直面しているわけでございまして、私どものこの国の税制を考える際にも、そうした変化の実態を現実的に踏まえながら適切な対応を図っていく必要がございます。
 その際には、経済社会の活力の向上を図るとともに、日本の財政が、先進国の中で、恐らくではなくて確実に最悪の水準にあるということをよく念頭に置いて、将来に向けた持続可能性を考えていかなければならないというふうに思います。
 今回、この委員会において審議が行われておりますところの平成20年度の税制改革案の中では、研究開発税制の拡充、それからエンジェル税制における寄附金控除制度の適用など、限られた財政資源を有効かつ効率的に活用して、財政事情に配慮しながら経済社会の活性化を目指す、そういう方向のさまざまな案が盛り込まれております。
 さらに、公益法人制度改革に対応するための税制改革や、かなり専門的にはなりますが、非常に重要な意味を持つものとして、国際課税についての所要の措置等もついておりまして、経済社会の実態の変化に適切に対応するための必要な措置が多く盛り込まれておるということです。
 この中で、公益法人改革への対応と国際課税に関する対応について意見を述べさせていただきます。
 まず、公益法人改革への税制上の対応でございますけれども、これは、この改革の目的が民間による公益活動の促進にあることを考えれば、その税制につきましても、公益活動を支援するものとなっているということが必要でございます。
 この観点から、この20年度税制改革案の中の公益法人改革に関する部分を考えますと、公益目的事業から生ずる所得については非課税としている、それから、第三者委員会、公益認定等委員会等ですが、の関与のもとで、公益認定を受けた法人であればすべて特定公益増進法人ということで寄附金の優遇を受けられるようになっている等、公益法人制度改革の趣旨に沿った税制の改正となっているというふうに評価できるのではないかと思っております。もちろん今後の執行にもよりますが、法律そのものとしては適正な方向を目指しているというふうに考えます。
 それから、かなり専門的にはなりますが、国際課税に関する改正が実は非常に重要な意味を持っているというふうに考えております。
 御承知のとおり、経済のグローバル化を背景にクロスボーダーの経済取引が活発化、多様化している中で、円滑な経済活動を支えるインフラとして、また国際的な租税回避行為の防止策として、この国際租税制度の重要性は高まっているということでございます。
 経済的なインフラとしての国際課税としては、いわゆる東京オフショア市場や、海外の金融機関と行ういわゆるレポ取引、現先取引ですけれども、レポ取引という国際的に定着した金融市場、金融取引の円滑な運営を支える税制が挙げられます。
 関連する海外への利払いに対する非課税措置の適用期限を撤廃し、安定的な取引環境を整備すること、これは、日本の金融市場にとっては望ましい対応であると考えます。日切れにならないように対応が必要だということです。
 このような重要な国際的取引を支える税制とあわせて、国際的な租税回避行為への対応というのも非常に重要な意味を持っております。これは、背景となる経済情勢の変化や取引の多様化に応じて、継続的に、不断に見直しをしていくことが必要な分野でございまして、毎年の税制改革においてそれぞれその都度の対応が必要で、それがまた現実になされてきております。
 この法案においても、現行国内法上の規定と租税条約上の規定の違いを利用した非常に複雑な租税回避のスキームについて、日本の課税や条約や国際原則、そういうのを考えた上で租税回避の機会をなくす改正の方向が示されており、これは非常にすぐれた方向ではないかというふうに評価しております。
 それから、揮発油税等の暫定税率についてほんのちょっと申し上げますが、ガソリンに対する課税、これは、暫定税率を含めて考えても、主要先進国の間ではむしろ低い。これは事実でございます。主要先進国では地球温暖化対策のための税率引き上げが行われているわけでございまして、燃料課税以外の自動車関係諸税についても、税率水準を引き下げれば地球温暖化対策に逆行しかねないというふうに考えております。
 それから、今は原油高の状況でございますけれども、この問題に対しては、真に支援を必要とする世帯に税制の外等で必要な支援を行うということが適切な対応なのではないかということが言えます。揮発油税等を一般的に引き上げることで対応することは、必ずしも妥当なのではないというふうに考えております。
 税制改正の法案の年度内成立の必要性についてちょっと触れておきます。
 税制改正の法案は、歳出予算とあわせて年度内に法律として成立し施行されなければならないわけでございまして、先ほど申しました東京オフショア市場におけるレポの利子の非課税等、期限到来が我が国の金融市場全体の信頼性を損ないかねないおそれがあるなど、各種の特別措置について適用期限が自動的に到来することによって生じる混乱、これはぜひとも回避しなければならないというふうに思っております。政治的に難しい状況ではあるとは思いますけれども、国際的な金融制度の秩序を破壊するというようなことはないようにすべきではないかというふうに思います。
 それから、道路特定財源ですけれども、本来は、暫定税率上乗せ分だけで2.6兆円もの財源の調達にかかわるものであり、予算との一体性を有する歳入法案の性格を踏まえれば、歳入法案の根幹と言うべきものでございますので、これを年度内に成立させて、予算の円滑な執行を図るということが不可欠なのではないかというふうに思っております。
 以上で終わりにさせていただきます。(拍手)
○原田委員長 ありがとうございました。
 ここで、ただいま静岡大学名誉教授安藤實君が御出席されましたので、御紹介をさせていただきます。安藤先生、どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、中林参考人、お願いいたします。
○中林参考人(跡見学園女子大学マネジメント学部准教授) 本日はこのような場にお招きいただきまして、大変光栄に存じます。ありがとうございます。
 ここにいらっしゃる皆様、先生方は、日本国家にとって非常に大事な、そしてまた将来世代にとっても重要な決断をなさる先生方でいらっしゃいます。その上で、恐らく、さまざまな立場から違った経験を持った人間の意見などを多く収集なさって、その御判断の材料になさろうとしていらっしゃるというふうに私は理解しております。
 その中で、私の場合は、やはり日々若い女性に触れている、そして、エリートを目指す人たちではないかもしれませんが、ごく平均的な日本の家庭で妻になり母になり、そして、有権者として、また社会人として働いていく人たちに日々接しているといったところから、この20年度の税制改正について、そういった環境にいる私がどう感じるのか。
 そしてさらには、個人的には、アメリカの大学院を卒業後、私は、10年ほど、上院の予算委員会というところで財政規律についての仕事を実務面から行ってまいりました。
 ですから、日本の外から見た財政規律、日本はどう見えるのか、そして常識感覚、これも含めたバランスについての方向性からお話ができるのではないかというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 さて、平成20年度予算編成の厳しい状況から触れていきたいと思います。
 財政規律といった面をやはり私の場合重視させていただきたいと思うんですが、予算編成の基本というのは、どの国でも、歳出と歳入の両面で財政規律をどうやって保っていくかということが基本になるものだというふうに考えています。
 そして、20年度の予算では、19年度予算よりも税収の伸びが小さいといった現実があります。その中で新規国債発行額を減少させるというふうな方向性をとっており、財政健全化という努力の中ではかなり評価ができるのではないか、方向性としては最大限の努力をしているというふうに感じられます。
 ただし、中央政府とそして地方政府の両方の債務残高の対GDP比といったものを見ますと、20年度末で148%というとんでもない数字が予想されております。依然として、先進国の中では突出して高い水準です。
 それから、欧米諸国を振り返ってみますと、大体60%から70%くらいのGDP比における債務残高ということになるわけですけれども、こういった世界的なレベルから日本を考えてみても、今後の経済とか財政の運営上で、日本は大変大きなリスクを抱えたままであるということには変わりがないということを指摘しておかなければいけないと思います。
 それから財政です。政策税制における経済活性化の視点とそれから財政規律についてのことなんですが、20年度の財政そして税制、この改革案では、特にこちらで審議されている税制の改革案なんですけれども、経済活性化といった観点からは、法人税、その関係の諸措置がいろいろとられておるところです。
 今後の日本経済にとっての成長のエンジンとなるように、企業の研究開発活動に関する税制を拡充しているというところが特徴として見ることができるというふうに思います。
 そして、教育訓練費にかかわる税額控除制度などについても目が配られているところです。同時に、大企業向けの措置を廃止していく一方で、中小企業にいろいろな教育訓練などに関して利用しやすい仕組みにしていこうではないかということも改組されるというふうに私は理解しております。
 特に、この中で、スクラップ・アンド・ビルドと言われますが、2年間でゼロベースにして、もう1回見直してその内容を組み立てていくといった考え方がとられているという意味では、これはもう日本だけに限らず、アメリカでもいろいろそういった考えは財政規律に大変貢献するというふうに見られております。
 そういった意味でも、財政規律の観点から見ますと、評価できる点が含まれているというふうに考えます。
 それから、金融・証券税制の方向性ですけれども、今般の税制の改正案では、上場株式等の配当や譲渡益について、平成15年度に当時の経済や市場情勢を踏まえた暫定的対策として導入されておりました軽減税率を廃止するということが含まれております。
 これは、金融商品に対する課税をできる限り中立的なものにするという意味で、金融所得課税の一体化ということに方向性として大きな貢献を示すものであろうというふうに思いますし、それから、時限的な措置、とにかく時限的なものを持ち込むことによって常に見直しをしていこう、そういった基本姿勢は財政規律にとっても非常に重要であると言えるのではないかというふうに思います。
 また、軽減税率の廃止に際しては、2年間の経過措置というものがありまして、突然いきなりこれがぱったりなくなるということではありませんので、個人の投資家ですとか市場への影響ということにつきましても、経済活性化のバランスにも配慮がされているというふうに指摘できると思います。
 それから、道路特定財源なんですけれども、道路特定財源につきましては、現行の税率、この水準を維持するということにしている上で、道路の歳出を上回る部分は一般の財源として活用できる、ここは非常に画期的ではないかと思います。財政健全化という意味では、道路歳出を上回る部分というのをなるべくたくさんつくっていただいて、それをどんどん一般財源に回していただきたいというふうに思うわけですけれども、必ずしも道路を一遍になくすわけにはいきませんので、可能な限りでの一般の財源化、こういったことが重要であるというふうに考えられます。
 私もドライバーなんですけれども、自動車をいつも運転していて思うんです。私はまだ事故を起こしていませんけれども、事故を起こしたり渋滞があったり、あるいは環境面でCO2をたくさん出したり、世の中にたくさんの迷惑をかけているというふうに思います。ですから、こういった面でも、より大きな額を一般財源に回すというのは、非常に妥当ですし、国民の理解も得られることなのではないかというふうに思っております。
 少々時間がなくなってまいりましたので、この後のことは少し後の方に回させていただいて、今後の財政運営についてなんです。
 日本は非常に大きな課題を抱えていると思います。けさの新聞を見ますと、838兆円の中央政府の借金の額になるだろうというふうな数字が出ておりました。1人当たり656万円の借金ということになります。このあたりはしっかりと認識して、そして、財政の基本である歳入と歳出のバランスを考えてこそ国家の責任を果たすというものであるということを肝に銘じながらの歳出歳入の改革であってほしいというふうに思います。
 特に日本は、今後、人口の減少それから高齢化の進展というものが問われております。急速な勢いで、これは世界にまれに見られる急速な勢いです。ですから、よく英語で言われますペイ・アズ・ユー・ゴー、アメリカで最初にこのシステムを導入しましたけれども、ペイ・アズ・ユー・ゴー、つまり、たくさんの歳出をするならば、それに見合う財源を探してきて、そこで初めて新しい施策なり政策、こういったものを導入するべきだという考え方です。
 日本にとっては、これだけの財政赤字を抱えているわけですし、将来、たくさんの不安があるわけですしリスクもありますので、このペイ・アズ・ユー・ゴーは最低限の考え方であるというふうに思われます。
 そして、消費税を含む税体系の抜本的改革なども、実際に政府から方針が示されておりますけれども、これをもっともっと具体的な取り組みにしていく必要があろうかと思います。
 私はアメリカが長かったわけなんですけれども、予算編成をしておりまして、やはり政策議論の中で大事なのは、定量的、つまりどれにどれぐらいお金がかかってどうするべきなのかということをテーブルの上に出して、そして議論をしていくというプロセスが当然のように行われておりました。日本にも野党があり与党がありますけれども、やはり、こういった調整をする、話し合いをする中で定量的な数字を出して話し合うというそういった試みは、これから日本にとっても非常に重要になっていくのではないかというふうに考えております。
 プライマリーバランスの黒字化、こういったことも非常に重要ですし、そのためにも、政治と行政が国民の信頼を得るということが国民の理解を得るために最も必要なことだと思いますので、その点も踏まえて、具体的な目標のあり方を御議論いただきたいというふうに切に願う次第です。
 ちょっと時間が過ぎてしまいまして申しわけありませんでした。ありがとうございました。(拍手)
○原田委員長 ありがとうございました。
 続いて、高木参考人、お願いいたします。
○高木参考人(明治大学政治経済学部教授) ただいま御紹介いただきました明治大学の高木でございます。
 本日は、このような発言をさせていただく機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 本来ですと、平成20年度の税制改正ということで広範囲に申し上げたいところではございますが、10分間ということなので、今大問題になっております道路特定財源、暫定税率に話を絞って私の見方を陳述させていただければ、こう思っております。そもそもこの問題は与野党で議論が大分白熱してきておりますし、どうなるか、非常に私にも先行きがよく読めないんですが、私、個人的な見方を発表させていただきたい、こう思います。
 今回の道路特定財源、暫定税率の問題ですけれども、これを経済学的あるいは財政学的な視点から切っていきますと、まず結論から申し上げると、私個人は、もう道路特定財源の使命というのは終わったのではないか、結果的には暫定税率は廃止をし、一般財源化していくべきではないか、結論的には今の民主党さんのお考えにかなり近いのでございますが、そういうふうに考えております。
 まず租税特別措置の問題ですけれども、これは御案内のとおりですけれども、簡素、公平、中立といういわゆる租税原則から、絶えず見直しをしていくべきなんですね。永久に続くものではない。だからこそ、特別の措置なんですね。したがって、一定の政策目標が実現しているならば、思い切って、サンセットルールといいますか、やめていくというのも、これは当然の動きではないか、これが第一点の問題点であります。
 それから二番目には、道路特定財源、暫定税率を今後もずっと維持しますと、いわゆる経済学的に言う資源の最適配分を阻害するんじゃないかという大問題があると思います。
 1954年の道路特定財源のスタート、それから74年の暫定税率、当時を振り返りますと、確かに道路の建設というのは最優先課題だったと私も思います。当時のいろいろな統計を調べてみますと、1960年で見ますと、高速道路のいわゆる延長キロメートル、ほとんどゼロなんですね。それから、道路の舗装率もたかだか2.8%。いわゆる総延長の分についても、これは96万キロメートルなんですね。しかし、現実、今どうなっているかというふうに申し上げますと、道路の舗装率は約80%、それから、高速自動車国道といいますけれども、ほとんど0キロから現在は7383キロというようなことになっておりますし、道路の総延長も、1960年のときの96万キロメートルから現在は120万キロメートルになっている。いずれも大幅に拡充強化されてきている。
 したがって、私の個人的判断でいきますと、道路の整備というのは、どこが最終的なゴールかはよくわかりませんけれども、ほぼ8割はもう実現しているのではないか。もちろん100%ではないわけで、今後も必要な道路が20%はあるわけなので、これから道路の建設は一切不要、そんな暴論は申し上げるつもりはありませんが、8割はどうやら目標としている全体の中で達成されているのではないかと私は思っております。
 そういう中で、いつまでも道路特定財源あるいは暫定税率を維持するということは、資源の最適配分を損なうんですね。現時点では、道路建設というのはもう最優先課題ではない。
 一方で、財政再建が大変厳しい状況下においては、やるべきことはいっぱいあると思うんですね。社会保障関係、大変な資金不足に陥っている。それから教育再生、これも金のかかる話だと思います。環境の保全、こういった問題に対して資金を有効に振り向けていく時期に来ているのではないか。だからこそ、それが資源の最適配分になるわけで、いつまでも暫定税率を続けるというのは、そういった経済学上の資源最適配分の論理からずれてくるのではないかという感じがいたします。
 それから三番目には、似た話ではございますが、租税特別措置は財政構造を一段と硬直化させるんですね。例えばこの道路特定財源、それにべったり資金を張りつけるわけですから、財政支出、財政構造、この辺の硬直化を、これは今までもそうですけれども、今後も続けるとなれば、そういった状況がさらに出現してくるわけです。
 それからもう一点は、最近いろいろマスコミでも騒がれておりますけれども、こういった道路特定財源、暫定税率を維持しますと、とかく無駄な道路をつくりやすい。金がいっぱいあるわけですから、それで、それ以外に使わないということですから、無駄な道路の建設というのは起こり得るわけで、今、現にそういう代表事例がいっぱいあるわけですね。費用対効果という必要な分析も必ずしもなされていない。それから、目的外使用ですね。今もさんざん騒がれておりますが、これはもうこれ以上申し上げません。三番目にはコスト高。もっともっと安く効率的に建設できるところを、こういった抱え込みで、安易な形でコストの増大につながっているのではないか。
 というようなことで、やや経済学的な視点からこの問題を切りましたけれども、やはりもうそろそろ見直しをすべき時期に来ているのではないか、こう思います。
 そういう意味で、今、政府と自民党の方では暫定税率10年と言うんですけれども、私の今申し上げた点からいうと、こんなに長くこれからもというのが率直な感想ですし、それから民主党さんも、結論的には似ているんですけれども、ガソリン価格を引き下げたい、それが最初に来ちゃうと、やはり論理が間違うんじゃないか。本来あってはならない、最適配分を失っている以上はそれはやめるんだ、結果的にガソリン価格が1リットル当たり25円10銭下がるというのはいいんですけれども、先にガソリン隊というふうに来ちゃうと、論理は狂ってくるのではないか。
 それから、地方道路の整備というのも、相変わらず引き続き続けると言っているんですけれども、私の見方からすると、それも必ずしもどうかなというふうに思います。百歩譲って続けるとしても、やはり財源ですね。いろいろおっしゃっていますけれども、いま一つ国民には明示的に頭に入ってこない。やはりその辺がないと空理空論になる可能性もあるんじゃないか。
 というようなことで、私自身の見方は、与野党さんの見方ともちょっと違う考えを持っております。
 最後に、この問題は今大問題になっているんですけれども、どうか政争の具にしないでいただきたい。やはり、国民の目線に立って真に必要なことは何なのかということを今与野党を問わず考えるべきであって、党利党略の視点からこの議論をし、時間だけを空費するというのは、国民にとって、国民生活にとっては最大のロスではないかというようなことで、どうかこれから建設的な御意見をぜひ賜りたい、こう思っております。
 どうもありがとうございました。(拍手)
○田中(和)委員長代理 ありがとうございました。
 次に、安藤参考人、お願いいたします。
○安藤参考人(静岡大学名誉教授) 安藤です。私は、道路特定財源の問題について意見を申し述べたいと思います。
 御承知のとおり、税金は、本来どの経費にも使われる一般財源という性質を持っております。したがって、使い道を特定した税金というものは例外であって、特別の事情がなければならないと思います。
 揮発油税を今は例にとって話したいと思います。
 揮発油税は、1949年に国税として実施されました。この揮発油税も一般財源として制定されました。その揮発油税の税収を専ら道路整備に振り向ける、つまり道路特定財源にしてから、既に半世紀を超えております。この間、道路は格段に整備され、特別扱いする必要はなくなりました。一方、国の財政状況はますます悪化しており、特定財源を抱える余裕はないと思われます。それなのに、それが一般財源化しない、それはなぜであるか、それが私の問題意識であります。
 シャウプ勧告を見ますと、当時、この揮発油税からの税収を道路の改修に割り当てることを企てる幾つかのグループがあった、これは、予算上の制約から特定の歳入源を特定財源とすることは不可能であるという理由により退けられたというふうに書かれております。これは当時、いわゆるドッジ・ラインによる緊縮財政の時期であったということもあり、予算上の制約、つまり財政事情、これが一般的に特定財源を認めなかった理由になった、そういうことを示しております。つまり、一般的な財政事情、それが特定財源を拒否する理由になったということであります。今日の財政事情を考えますと、やはりこの予算上の制約というものが、道路特定財源を廃止し、一般財源化する大きな理由になると思われます。
 道路特定財源の始まりは、道路整備費の財源等に関する臨時措置法、1953年なわけですが、この臨時措置法では揮発油税を目的税にすることはできなかった。揮発油税は一般税のままで、その税収相当額を道路財源にしたということであります。このときも大蔵省が、やはり予算上の制約ということを理由に揮発油税の目的税化に反対したということになっています。
 この臨時措置法の提案者の田中角栄議員は、5カ年と区切っておることにひとつ御留意願いたい、5カ年たって相当道路が整備でき、その費用は別に回すべきだというならば、この法案は自然消滅すればいい、それをなお目的税として縛らなければならぬということはない、そういうふうに弁明しております。つまり、提案者は、目的税に対する大蔵省などの反対を迂回する作戦に出て、5年間の臨時措置法という形で実をとったということであります。
 ここまでを見ますと、当時の大蔵省はそれなりの姿勢を示していた、田中角栄議員も道路整備の時間的な限度といいますか、そういうことを意識していたというふうに思えます。
 1958年に、道路整備緊急措置法のもとで、第2次道路整備5カ年計画が新しくつくられた道路整備特別会計により実施されるということになります。この第2次道路整備計画、それからこの道路整備緊急措置法、道路整備特別会計、そういうことによって道路事業優先の仕組みができ上がった、そういうふうに思います。これから後、1970年からの第六次まで、ほぼ3年ごとに倍増のテンポで進行しました。
 1971年に自動車重量税を導入したとき、当時の福田大蔵大臣は、今度の5カ年計画で国道はほとんど整備されるというふうに言明しましたが、結局その第六次で終わらず、それからさらに前の計画を上回る計画が次々とつくられ、13次まで及んだということになります。こういう臨時措置であるとか緊急措置というものが繰り返される、そしてその結果どこまでも続く、そういう長期計画と特定財源に守られて、道路事業というものはいわゆる政官財癒着の典型となり、強力な圧力団体をつくり出したと思います。
 繰り返しということになれば、暫定税率も同じようなことになっています。1974年に差し当たり2年間の措置ということで始められたものが、長期計画の更新と連動して延長され、今日に至っております。税率も引き上げられ、今や揮発油税が本則の2倍、自動車重量税が2.5倍などに引き上げられました。こういうふうに、臨時とか暫定というようなものがずるずると常態化する、そういうパターンが自民党政府のもとで財政運営上見られる。こういうようなことは、きょうは発言できませんが、公債についても同じようなパターンが見られると思っております。
 今、この道路特定財源について、日本の税制に責任を負っている機関である政府税制調査会の立場というものを歴史的に見てみたいと思います。
 1950年代は、道路整備の緊急性を理由に、道路特定財源たる揮発油税等の増徴を当然だということでありました。1961年の答申でも、第3次道路整備計画はぜひとも遂行されることが望ましい、負担は妥当なものだ、そういう見解であります。1964年の答申から、やや反省的な論調が出てまいります。目的税の比重が余り大きなものとなる場合には一般に財政の硬直性を招く傾向がある。それから、68年の答申にもこの懸念が引き継がれております。そこでも、こういう特定財源が財政硬直化を招くということであります。そういういわば反省的な論調はあるわけですが、具体的な提言は出てきておりません。こういうような特定財源の合理性について今後再検討していく、そういうような意見が出ているわけであります。
 それから、税制調査会の答申が道路特定財源の一般財源化に触れたのは、1986年の答申であります。そこでは、一般国道の改良率、舗装率がともに80%を超えていることを指摘し、「最近における道路整備の状況、厳しい財政事情等を考慮すれば、一般財源化の方向で検討すべきである」、そういうような意見があったというふうに書かれております。
 そして、その後2000年の政府税調答申では、やはり、こういう一般財源化について多数の意見があった、そういうようなことが出てまいります。しかし、政府税調として意見を統一できない。今後、一般財源化の方向で検討すべきであるという提言にとどまっております。
 どうして政府税調がそういう程度の提言にとどまっているのか、その背景を考えてみますと、もとの政府税制調査会長であった加藤寛氏の回顧談というものが参考になります。加藤氏は、道路族によって二度おどされたということを申しております。旧国鉄長期債務の返済にガソリン税と自動車重量税を充てようと主張したときは、自民党から都内のホテルに呼び出され、どなられ、あげくに灰皿まで飛ぶ様相だった。2000年4月に政府税調で見直し論を打ち上げたときも、自民党本部に一人呼び出され、道路族議員は撤回しろの大合唱だった、全国の自治体や業者からも反対の手紙が相次いだ、そういうようなことであります。加藤さんは非常に怖かったんだろう、そういうふうに思います。(拍手)
○田中(和)委員長代理 ありがとうございました。
 以上で四人の方々による参考人の意見の開陳は終わりました。



○田中(和)委員長代理 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
(中略)
○原田委員長 次に、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 4人の参考人の先生方、私が最後でございますので、本当にお疲れさまでございます。
 まず、道路特定財源問題でお聞きをしたいと思います。安藤先生と高木先生からお伺いしたいと思います。
 物事を歴史的に見るというのは非常に大切なことだと思いまして、先ほど、安藤先生の方から、戦後のガソリン税あるいは特定財源化の問題についてお話がありました。ガソリン税以後、特定財源として、地方道路税ですとか軽油引取税、石油ガス税、自動車取得税等々が追加されてきたわけです。当然、税収が非常にふえましたし、また、それぞれの税率が引き上げられるということでますます財源が豊かになったわけです。それに支えられて5カ年計画で道路整備が行われた。5カ年たたずに、3カ年ぐらいでどんどん次々と新しい計画が更新されてきた。
 こういうことを振り返りますと、税収が上がれば、当然すべて道路に注ぎ込まれるわけですから、道路が整備される、道路が整備されますと今度は自動車がふえていく、自動車がふえるとますます税収が上がる、こういういわばモータリゼーションというのが、高度成長過程だけではなくて、それ以後も非常に続いてきたというふうに思います。
 これはそろそろ限界、もう限界を超えていると思いますけれども、道路整備の状況からいってもかなりの目標はもう達成されている。したがって、これだけの税収を道路に特定していくという方式はもう限界に来ていると私は思うんですが、その点についての、最初に基本的な認識ですけれども、まずお二人の先生方にお伺いしたいと思います。
○安藤参考人 同じ理解です。
○高木参考人 冒頭に申し上げましたとおり、私自身は、くどいんですが、全体の8割はもうでき上がっている、むしろ、これからはやはり維持補修という問題に入ってくるんだろうと思うんです。アメリカなんかはもう典型的なそういう状況に今来ていると思うんですが、そういった点からいきますと、もうおっしゃるとおりの結論になるのではないか、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 それから、90年代に入りまして公共投資基本計画というものがつくられました。これは、日米構造協議でアメリカから内需拡大策ということで、最初は430兆だったんですが、その後630兆ということで、大変な公共投資を拡大する、こういう政策が90年代に実行されまして、大変な建設国債の増発ですとかさまざまな財源を投じてそれを行ったわけです。
 この道路財源との関連でいいますと、当時は16の長期計画というものがありまして、その一つは道路だったわけであります。しかし、現在はこの公共投資基本計画そのものはもう廃止されましたし、それから、その他の公共投資の長期計画、5カ年計画はどんどん統合される、あるいは廃止されるという形で、最終的に、最初に事業総額を決めて計画を推進するというやり方は道路だけに残ったわけです。
 この道路だけに残ってしまった理由、これを中里参考人それから安藤参考人、それぞれ理由をどうお考えになっているか、お聞かせいただきたい。
○中里参考人 私、そのことについては知識を持っておりません。さまざまな理由はあるんだろうと思いますが、推測以外に何もございませんので。
○安藤参考人 やはり、道路特定財源を持っているということが大きな理由ではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 それでは、国際的な比較で、この道路特定財源というものが、例えばアメリカにも一度導入されたことがある、イギリスあるいはドイツもそうだという話を聞きましたが、例えばアメリカの場合、中林参考人にお聞きしますけれども、一時導入された道路特定財源、これはいろいろな議論があったと思うんですが、今はどうなっているんでしょうか。それから、イギリスあるいはドイツ等ヨーロッパの場合、特定財源というそういうやり方というのはどうなっているか、お聞かせいただきたいと思います。
○中林参考人 これは残っております。議論は非常にありまして、特にアメリカの議会では、与党と野党の交代が激しいものですから、そのたびに、これをなくそうとか、いろいろな法案が出てまいります。しかしながら、やはり道路といったものはアメリカの議員さんたちにも非常に大事な有権者サービスになっておりまして、そういった特定財源を持つことによって、少なくとも最低限の道路費用を確保する、できればそれを自分の地元に持っていきたいというような意向はあるわけですけれども、こういったものというのは存続しております。
 ただ、これに対する議会内での反対の声、それから、市民からの無駄ではないかという反対の声というのも、同時に根強く存在しています。
○佐々木(憲)委員 それからもう一つ、最近の議論で、ユーザーの理解を得てという言葉が随分使われるわけです。つまり、自動車ユーザーのですね。このユーザーの理解という場合のそのユーザーとは何かというのが問われるわけであります。
 これは、小泉内閣、安倍内閣の時代にも与党の中で議論があったそうですが、一般財源化というのは、一時これらの内閣で提唱されたことがありました。そのときに、ユーザーというのはもう限定されるものではないんだ、すべての国民がユーザーではないのか、こういう議論がありました。
 今、一般財源化という問題を我々が提起しますと、いや、道路特定財源のうち一般財源化する部分もあるんだ、つくったんだ、しかしそれは、ユーザーの理解を得て、道路に関連するあるいは自動車に関連するところに使うんです、こういう説明になっているわけです。
 この場合のユーザーというものを一体どのように考えるか。これは、今後の政策を展開していく上で大変重要なポイントになるものでございますので、それぞれの先生方の、ユーザーとは何かという考え方をお聞きしたいと思います。
○中里参考人 佐々木先生の理論的な御質問は、いつもレベルが高水準なものですから答えに窮するわけですけれども、個別的に直接目に見える範囲でこうだというふうに定義することもできると思いますし、さらにその波及効果、第1段階、第2段階というふうに広げていくこともできると思うんです。
 そのユーザーの定義をどのようにするかというところからもう政策判断が始まってしまうわけで、その認識の差によって意見が分かれてしまうものですから、一義的にこれだけしかないというようなことには多分ならないんじゃないかというふうに思います。
○中林参考人 大変難しい御質問ですけれども、やはり今の時代は、本当にいろいろな人が車に乗りますし、自家用車を持っていなくてもタクシーに乗ったりしますので、車のユーザーという意味では広い範囲を考えられると思いますが、ただし、ヘビーユーザーという分け方もあるかもしれません。それにはやはりさまざまな、車を使わなければ仕事にならない方でしたりですとか、濃淡があるというふうに感じます。
 その濃淡をどこまでをユーザーと呼ぶかということに関しましては、まだその線引きというのを私もじっくり考えたことはございませんので、これから考えていきたいと思いますが、非常に難しい問題ではないかというふうに思います。
○高木参考人 私の理解では、ユーザーというのは、やはり特別の、特定の利益を受ける層が私はユーザーだろうというふうに思うんですね。その場合には、特別の利益を受けるわけですから、当然負担もしなきゃいけない。受益と負担、こういう概念だろうと思います。
 ところが、今回のこの自動車関連の問題について言うと、まさに国民全体なんですね。乗用車を持っている方も非常にふえているし、それから同時に、持っていないという方もタクシーに乗る。そのタクシー料金の中に結局は揮発油税も入っているという理解なんです。あるいは高速道路代も入っているという理解で、高速道路は別途払うわけですけれども、バスもそうですね。となると、全国民がいわゆる生活をしていく上で必要なものになってきているので、そのときにはもう特別の利益ではないので、もうこれはユーザーとは言えないんじゃないかと私は理解しております。
○安藤参考人 私は、やはりユーザーは受益者という概念が当てはまるのだろうと思います。ただ、これだけ全国民的にドライバーがふえていますので、そこにユーザー論を持ち込むというのは、何かためにする議論かなというふうに疑いを持っております。
 ただ、私もJAFの会員なんですが、JAFは、小泉内閣が一般財源化を提唱したときにユーザーの意見という形でキャンペーンを張って、一般財源化反対というようなことを機関誌に発表しておりました。ところが、このJAF、最近見ていますと、一般財源化すべきだというような議論がJAFに登場したので、何かやはり時代というか、風潮が変わってきたのかな、そういう感想を持っています。
○佐々木(憲)委員 それで、一般財源化という議論が政府の側から出されたのが小泉内閣の時代でありました。その小泉内閣のときに、もう道路に特定して使うという時代ではないということで、一般財源化という提唱をしたわけであります。
 ところが、この一般財源化の議論がどうも途中で挫折をしたのではないか。つまり、ごく一部は確かに一般財源的な利用の仕方をしたようでありますけれども、しかし、本来の一般財源化とは全く私は違うと思っておりまして、一般財源化というのは、特定の目的に使うという道路整備のための法律というのがありますが、これがなくなれば全部一般財源になるわけですけれども、それがまだ依然として続いている、こういう状況なんですね。
 そこで、小泉内閣もそうでしたが、安倍内閣の一番最初のときにも、一般財源化をするんだと、小泉総理よりも安倍総理の方がより歯切れよく最初提唱したわけです。ところが、その後、全くこれが通らずに、所期の目的は達成できなかった。したがって、ごく一部の、法定された部分の一部、余ったらこれを道路以外に使えますよとか、あるいは、自動車重量税の一部を自動車関係のところに使えますよとか、そういう、形は一般財源化のようではありますが、実質的には非常に制約のある、一般財源ではない形をとってしまった。こういう結果にしかならなかったわけですね。
 その理由ですけれども、これはさまざまな問題があると思いますが、4人の先生方はこの理由についてどのように考えておられるか、あるいはどう感じておられるか、その点をお聞かせいただきたい。
○中里参考人 歳入の問題と歳出の問題を切り分けて、他方は租税制度として、他方は予算の問題として切り分けて議論をして、両者の間の直接の連絡はできるだけつけないようにするというのが、憲法及び財政法の建前なのではないかというふうに思います。したがって、一般財源というのが本来あるべき姿であるということ、これはもう多くの方がそう思っていらっしゃるんだろうと思いますね。
 ただ、この分担については、さまざまな方のさまざまな生活がかかっておりますので、いろいろ一緒くたに変えることができるような問題でもない。その問題に一般財源化という標語を掲げて内閣がやってきて、税調でもそういう話が出たと思いますけれども、その最初のステップとして、余った部分について道路以外の方にも使うというような方向に来ているわけですよね。これは小さなことのように見えますけれども、実は大変大きなことではないか。
 どういう査定をするかによりますが、必要なだけの道路はそれとしてつくって、余った部分がもし出たとしたらそちらにという、ここからスタートしていくということではないかというふうに思っております。
○中林参考人 一般財源化ということで理想を掲げたけれども、実際にそれを突然行うということになると、やはり大変な混乱と負担が生じる、国民の方にもいろいろなふぐあいが生じるということが現実上露呈してしまったからではないかと私は想像いたします。
 もちろん、政権の方々の議論とかということには全く親しみがない限りですけれども、想像として、理論でこれがよかろうと思うことと、そして、実生活をできるだけ傷つけることなくスムーズにトランスファーしていく、移行していくということを考えた場合に、やはり、きのうときょうから急に変えてしまうということの現実の壁にぶつかったのではないでしょうか。
○高木参考人 御質問に対するお答えは、まさに昔の自民党に戻っちゃったんじゃないか、先祖返りをした、それにほかならない、こう思っております。
○安藤参考人 私は、もとの政府税調会長の加藤寛さんの回顧談というのを紹介しましたけれども、あれと似たようなことが小泉首相や安倍首相にも生じたのだろうと。これは新聞報道なので、別に私が確かめたわけじゃありませんが、小泉さんの場合は、特にトヨタの奥田碩さんの意向が影響を及ぼしたんだ、そういう記事を見たことがあります。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。
 それでは次に、緊急性とかあるいは当面の暫定措置とか、こういう議論がこの間続いておりますが、一体、いつまでが緊急で、いつまでが暫定なのかという議論があります。
 そこで、自動車あるいは道路に関連のあるところの緊急という話はずっとやってきました。しかし問題は、例えば社会保障、あるいは医療、介護、年金、福祉、こういう分野ですね。これは、それぞれのやはり緊急性というものがとりわけ最近強まっているのではないか。そうなりますと、道路の緊急性というのは、もう50年、30年といろいろなことをやってきて、大体いいじゃないか、問題は、社会保障の方が緊急性が今問われているのではないか、そういう議論になっている、あるいはなりつつあると思っているわけです。
 そこで、4人の先生方に最後にお伺いしたいのは、社会保障と道路と、今現時点でどちらに緊急性があると思われるか。
 それからもう一つ、道路の場合も、今のテンポで、つまり10年間で59兆円というテンポでやっていく必要があるのか、あるいはそうではなくて、例えば、テンポを落として年間当たりの事業費を抑えるというやり方もあると思いますし、それから、内容的に言いますと、高規格高速道路をどんどんつくるというところに重点を置くのか、それとも身の回りの生活道路に重点を置くのか、こういう問題もあると思うんです。
 いずれにしましても、そういうこれまでの道路のあり方を根本的に見直すということ、その中身を見直すということが今また問われているというふうに思いますので、この二点について、つまり、緊急性の問題と、それから道路そのものの内容の見直し、これをどういうふうに考えたらいいか、それぞれの先生方の御意見を伺いたいと思います。
○中里参考人 地域によって、またその方々のお立場によって、緊急性については随分と考え方が違うんじゃないか、場合によってはつかみ合いになるくらい立場が違うんじゃないかというふうに思います。それについて理論的にどうこうという答えができるかといったら、これは相当難しいんじゃないかというふうに思います。あともう一つは何でしたか。(佐々木(憲)委員「社会保障と道路」と呼ぶ)
 それは社会保障の方が重要じゃないかというふうに、これは、私の個人的な、母の介護の関係でそう思っているということでございます。
○中林参考人 どうしてもどちらかを明確に選ぶということであれば、当然、社会保障の方が緊急性、重要性というものは高くなりつつあるという時代に私たちは生きているというふうに思います。
 ただ、道路関係がそれでは全くゼロで、必要ないかというと、そうではなくて、つい先日もアメリカで大きな橋が落ちてしまいました。ああいったいろいろな、設計ミスという話もあるかもしれませんけれども、日本におきましてもさまざまなインフラがそろそろ古くなりつつある時代を迎えております。これは、安全だと思っていた橋が急に落ちるということですから、とてつもない大問題だと思います。
 ですから、そういったものをなるべく事前に防ぐということも一つのパブリックサービスだと思いますので、必ずしも全くゼロでよいとはまるで思いません。
 ただ、医療費あるいは社会保障といったものの重要さというのは、これから確かに大きな割合で増していくというふうに考えます。
○高木参考人 第一の質問の、緊急性というのは最優先課題かどうかという話だろうと思うんですが、現時点におきましては、冒頭申しましたように、もはや道路建設ではなくて、やはり、年金、医療、介護を中心とした社会保障、そして教育再生、あるいは環境対策、この辺にあるんではないかという感じがいたします。
 それから、政府の中期10カ年のこの道路計画の話ですけれども、59兆円と先に総額が来ているという感じがしてしようがないんです。まだ公表されていない面もあるんですけれども、中身がよくわからない。全体の予算を抑制した上でのこれからの道路行政のあり方というのは、高規格道路とか高速道路を中心に相変わらずつくっていくという時代から、生活関連道路その他、それからあと維持補修、それからもう一つは、やはり耐震性の問題があると思うんです。
 これがやはり福田首相がおっしゃる安心、安全につながるので、どんどん量、規模を拡大していくという前に、今までの分のもう1回見直しというのも必要なわけで、やはり生活道路というようなこともポイントになるので、従来のように高速道路中心にという時代は、そろそろ、まだ全部とは言いませんが、大体でき上がってきたんではないか、こう思っております。
○安藤参考人 緊急性という点では、特定財源制度をやめるというのが緊急の政治的な課題だと思います。
 それから、社会保障と道路との関係ですが、社会保障の場合に自然増のカットというのが行われています。自然増というのは、現在の生活が必要としているということをあらわしています。それをカットするということは、非常に不自然だというふうに思います。
 それに対して道路の場合は、主たる対象は、新しい道路、つまり現在ない道路に向けているわけですから、これはカットする余裕がある。つまり、余裕のない社会保障を削って余裕のあるものを生かしていくというのは、やはりあべこべではないか、そういうふうに思います。
○佐々木(憲)委員 あと4分ありますので、最後に高木先生と安藤先生に。
 暫定税率がなくなったら地方が大変だ大変だというお話が聞こえてくるわけです。地方財政が大変悪化したその理由というのは一体どこにあるのか、それをまず一つお伺いしたいのと、それから、暫定税率がなくなった場合の対応策です。これは我々が別な案を持ってはおりますが、なくなった場合の対応策としてどういうことを考えておられるか。
 私どもは、税という点からいいますと、担税力のあるところ、例えば大手企業は、今史上空前の利益が上がってきているわけです。しかし法人税は、とうとう税負担が逆に下がっているわけです。そういうところに応分の負担というものが必要ではないのかというふうに思っておりますが、お二人の先生方に最後にその点をお伺いしたいと思います。
○高木参考人 地方の税収が大変厳しい状況に来ているというのは、もう事実だろうと思います。そもそも景気自体がデフレ経済にあるということで、国自体もそうですけれども、地方も当然その影響を受けているわけで、税収が思ったほど伸びなかったというのがまずあると思いますが、同時に、国と地方との配分の問題、三位一体改革によって、結果的には地方にそういったしわ寄せが起きているということもあるというふうに思います。
 それからもう一点は、そういう中で、地方としてはやはり地方分権ということを盛んに強調してくるわけですから、いわゆる独自財源ということも、それは住民の理解を得ながらということがもう大前提ですけれども、考えていかないと、地方財政は回らないんじゃないかという感じがいたします。
 それから、暫定税率をなくすと地方は大変なことになる、こういうことですが、その辺は、そういう見方もよく理解できるんですけれども、地方の道路計画その他ももう1回地方の段階で見直していくというようなことを考えていけば、それほど大きな問題にならないんじゃないか、私はこう考えております。
○安藤参考人 地方財政の悪化については、高木先生と同じ理解です。
 それから、道路特定財源の問題は、先ほども申しましたが、地方にとっては配分は不利である、したがって、特定財源制度を維持していくのは必ずしも地方にとって有利とは言えないというふうに思っています。
 それから税制の問題ですが、この間の税制の流れというのを見ますと、所得税の場合に、人的控除の縮小、廃止、特に高齢者に対して非常な縮小、廃止が進んでおります。私は、所得税の人的控除の縮小、廃止ということは、これは課税最低限の切り下げであるというふうに思います。日本の所得税の歴史を見ても、所得税の課税最低限が切り下げられたのは、かつて戦時中、つまり1936年から45年の間、それがあっただけです。戦後、平和な日本でなぜこういう所得税の課税最低限引き下げみたいなことが横行しているのか、そういうことについて非常に不安と疑問を持っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。

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