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金融(銀行・保険・証券), 金権・腐敗政治 (保険会社の不払い)

2007年12月12日 第168回 臨時国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【424】 - 質問

保険金不払いで損保協会長を参考人招致

 2007年12月12日、財務金融委員会では、保険業界による保険金不払い問題について、生命保険協会の岡本圀衞会長(日本生命保険社長)と日本損害保険協会の江頭敏明会長(三井住友海上火災保険社長)を参考人として招致し、意見聴取し質疑をおこないました。

 江頭会長は、損保の自動車保険特約などの保険金不払いが6月末で、26社で381億円(49万件)、医療保険など第三分野の不払いは、21社で16億円(5760件)、火災保険料の取りすぎは、約220億円となることを明らかにし、「経営管理体制が不十分だった」とのべました。

 佐々木憲昭議員は、業界全体が不払い問題を起こしていることから、業界に共通する問題があると指摘し、90年代に行われた保険の自由化・規制緩和による競争の激化が不払い問題の背景にあるのではないかと問いました。
 江頭会長は、「基本的に同じ認識」と述べ、自由化の影響を認めました。

 また佐々木議員は、両業界に政治献金の状況をただしたのに対し、江頭会長は三井住友海上火災保険として、今年、自民党に630万円を献金したことを明らかにしました。
 佐々木議員は、「契約者に支払わないで、政治献金を出すというのはおかしい」と、厳しく指摘し、引責辞任した三井住友海上火災保険の前会長が、今年7月に顧問に復帰したことも「示しがつかない」と批判しました。

 さらに佐々木議員は、12月22日からの保険商品の銀行窓口販売の全面解禁で、不払いが再発する恐れがあることを指摘しました。

議事録

【参考人の意見陳述と佐々木憲昭議員の質問部分】
○原田委員長 ただいま参考人として社団法人日本損害保険協会会長江頭敏明君に御出席をいただいております。
 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人におかれましては、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、江頭参考人から5分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 それでは、江頭参考人、お願いいたします。
○江頭参考人(社団法人日本損害保険協会会長) 日本損害保険協会会長の江頭でございます。
 本日は、損害保険業界の取り組みについて御説明申し上げる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 まずは、一昨年来、付随的な保険金の支払い漏れ、あるいは保険金の不適切な不払い、さらには火災保険等の保険料誤りなどの問題により多大な御迷惑をおかけしたことにつきまして、損害保険業界を代表して改めて深くおわび申し上げます。
 これらの問題のうち、付随的保険金の支払い漏れにつきましては、本年6月末までに調査を終了し、その結果、損害保険会社全社合計で約49万件、約381億円の支払い漏れが判明しております。各社とも迅速なお支払いに努めておりまして、現在までにおおむねお支払いを完了しております。
 現在、損害保険協会及び会員各社は、こうした事態を厳粛に受けとめ、1日も早く信頼を回復すべく、全力で取り組んでいるところでございます。
 本日は、これらの問題の原因及び再発防止の取り組みにつきまして御説明申し上げたいと存じます。
 最初に、これらの問題の原因について御説明申し上げます。大きく三つの原因があったというふうに考えております。
 一点目は、保険金支払い体制でございます。
 自由化以降、新しい商品の開発を積極的に行い、お客様ニーズにこたえてまいりましたが、保険金をお支払いする際の体制、支払い漏れを防止するシステムなどの整備について、商品の高度化、多様化と比べて相対的に立ちおくれていた面があったのではないかというふうに考えております。
 二点目は、商品開発体制でございます。
 新商品の開発におきまして、商品部門と保険金支払い部門の連携が不十分なままで開発を進めることがあったのは否めないというふうに考えております。
 三点目は、募集体制でございます。
 社員や代理店に対して実務教育が十分に行われておらず、そのため、募集時の確認が適切に行われていない場合もあったのではないかと考えております。
 以上、三つの体制に問題があったことが原因であると考えておりますが、全体としては経営管理体制が十分ではなかったと猛省をしているところでございます。
 続きまして、再発防止に向けた取り組みについて御説明申し上げます。
 現在、会員各社におきましては、このような問題の再発を防止することを経営上の最優先課題に位置づけ、発生原因に基づいた対策を進めております。
 まず、保険金支払いに関する取り組みでございますが、システムや体制の整備などを行っております。
 具体的には、事故受け付けの時点でお支払いの可能性がある保険金を自動的に登録するなど、事務的なミスを防止するシステムを整備するとともに、要員の拡充など体制を強化しております。また、事故受け付けの時点でお客様に対象となる保険金を御案内したり、請求書類などをわかりやすくする取り組みを行っております。さらに、御相談や苦情を受け付ける専門部署や、外部の意見を確認できる不服申し立て窓口を設置しております。
 次に、商品に関する取り組みでございます。
 お客様にわかりやすい商品を提供するために、商品数の削減や特約の廃止、あるいはわかりやすい説明資料の作成などを行うとともに、商品開発に当たりましては、商品開発部門と保険金支払い部門が密接に連携する体制を整備いたしております。
 また、契約の引き受けに当たり、お客様のニーズに合った商品を適正な保険料で引き受けるために、お客様から確認書面をいただいております。この確認書面については、動画や音声を使い、わかりやすく御説明するナビゲーションシステムや、印鑑レス、ペーパーレスで手続を行うシステムなどを導入し、お客様利便の向上に努めております。
 最後に、募集についてでございますが、社員や代理店の教育プログラムの見直しなどを行い、レベルアップに取り組んでおります。
 他方、損害保険協会といたしましては、会員各社の取り組みをバックアップするための取り組みを行っております。
 まず、保険金支払いについては、保険金支払いに関するガイドラインに加えて、第三分野商品専用のガイドラインを作成しております。また、商品開発については、わかりやすい保険約款のためのガイドラインの策定に取り組んでおります。
 また、募集については、損害保険募集人の資質を向上させるために、資格試験のレベルアップを図るとともに、資格の更新制度を導入いたしました。さらに、商品に関する専門試験制度についても検討しております。
 なお、お客様の御意見を真摯にお聞きするために「消費者の声」諮問会議を設置しており、取り組みに当たっては、この会議で御意見をちょうだいしつつ進めております。さらに、今般、全国の消費生活相談員の方からの御意見を業務改善に生かす取り組みを強化しております。
 そのほかに、お客様からの御相談や苦情への対応体制の強化や、お客様の損害保険についての御理解を促進する取り組みなどにも力を入れております。
 以上、御説明申し上げましたとおり、損害保険業界を挙げて、信頼の回復に向けて懸命に取り組んでいるところでございます。
 私ども損害保険業界といたしましては、1日も早く信頼を回復し、安心と安全の提供を通じて国民生活の安定や社会経済の活性化に貢献するという社会的使命を果たしてまいりたいというふうに考えております。
 議員各位の皆様におかれましては、引き続き御指導賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。ありがとうございました。
○原田委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。



○原田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。(中略)次に、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 損保の不払い、支払い漏れの調査結果は、26社で49万件、381億円と大変巨額であります。
 事実を確認したいんですが、第三分野、付随的保険、火災保険、それぞれの分野ごとに、件数、金額、それから支払い進捗状況、報告をいただきたいと思います。
○江頭参考人 お答え申し上げます。
 まず、第三分野商品の保険金不払いは、21社合計で5760件、約16億円でございます。付随的な保険金の支払い漏れにつきまして、26社計で約49万件、約381億円でございます。また、火災保険料の取り過ぎにつきましては、先般発表されました中間決算の発表時点で、大手各社が公表した今年度通期見通しの合計値が約220億円でございますが、現時点では損保協会として中間結果を集約できるには至っておりません。
 4月以降点検を始めたわけですが、当初は、初めてのケースでもありまして、お客様の御協力もなかなか得にくい部分もありまして困難も伴っておりましたけれども、各社とも現在、確認、点検が軌道に乗っておりまして、不備是正も加速をしております。したがいまして、来年春以降の完了予定時期に向けまして各社追い込みに入っているところでございます。
 損保協会としましては、各社が調査を終える来春以降に結果を集約して御報告をしたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 不払い問題や取り過ぎ問題というのが起こった原因ですけれども、先ほど会長の御説明では、商品の高度化、複雑化というものを挙げられまして、支払い体制がそれに伴っていなかったという御説明がありました。やはり業界全体に共通する問題点というものがあったと私は思います。
 金融の自由化問題、そのもとでの競争の激化、外資との競争も含めて背景にあったと思いますが、どのような認識でしょうか。
○江頭参考人 お答えいたします。
 損保業界の自由化は、1996年に保険業法が改正をされまして、1998年にいわゆる算定会の改革といったものが行われまして、それ以降、本格的な自由化が始まったわけでございますけれども、先生御指摘のとおり、新商品の開発競争を初めとして、外資も含めた競争が激化したことは確かでございます。
 ただ、一方で、ビジネスチャンスといいましょうか、ビジネス機会、ビジネスの領域がふえて、海外とも対等に戦える体制が整ってきたことも事実であります。その間、再三申し上げておりますが、商品開発の競争が最優先をされまして、やはりお客様の視点をついおろそかにしてしまっていたということは否めません。
 したがいまして、突き詰めると、今回の事実もその辺のことが、会社によってレベルの差はありますけれども、ほぼ共通の認識だというふうに私は考えております。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 12月22日からの銀行窓口の保険販売の全面解禁、これは大変大きな影響があると私は思います。ここでもやはり競争の激化というのは当然起こるわけでありまして、商品の説明不足ですとか、あるいは商品内容の理解が伴わないような、そういう事態というものが起こり得るわけです。
 再び不払いとかさまざまな問題点が発生するのではないかというふうに思っておりますが、これはどういう認識をされているか、またどう対応されるか、お聞かせいただきたいと思います。
○江頭参考人 お答え申し上げます。
 銀行における保険販売はこれまで段階的に門戸が広がっておりまして、現在までに第三次解禁まで段階的に行われてまいりました。その間、私ども損害保険協会といたしましては、特にモニタリング結果におきましても重大な事実はございませんし、これまでの第三次解禁までに得た経験を生かしつつ、新たに解禁をされる商品に係る適切な販売体制の構築に努めるべきというふうに考えております。
 先ほどお話を申し上げました、現在取り組んでおります火災保険料等の点検につきましても、第三次解禁までに銀行も火災保険を取り扱っているわけでございますので、ほかの代理店と何ら変わることなく、現在、契約の確認作業をやってもらっているわけでございますけれども、今のところ、全く問題は発生をしていないというふうに認識をしております。
 したがいまして、今後も、お客様保護を第一とした販売体制、これを保険会社としても教育、支援してまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 これは、競争が激化すれば、いろいろな問題が激しくなりまして、競争のもとで不十分な事態も発生し得るわけですから、今起こっていなくてもこれから起こる可能性もありますので、しっかりと対応していくということが大事だと思っております。
 それから、社内処分の問題ですが、三井住友海上火災の場合、昨年6月に金融庁から不払い問題で業務停止命令を受けて、7月に業務改善計画書というものを出しました。そのときに社内処分が発表されて、一般社員も含めますと総勢600人を超える大量処分ということをお聞きしております。
 6月の株主総会で、昨年、この会長と社長は退任し、会社から離れるということだったようでありますが、何かことしの7月になると、責任をとってやめたはずの前会長と前社長が常任顧問として復活をした。有給で社内に専用の顧問室を持っているというふうにお聞きしましたが、これは事実ですか。
○江頭参考人 ただいま御指摘の前会長、前社長の2人を、7月21日付だったと思いますが、常任顧問に委嘱したことは事実でございます。
 ただ、顧問のいわゆる仕事の中身ですが、当社としてのいわゆる慶弔対応、あるいは経済団体等の職務について、業務といいましょうか、そういう仕事をしてもらうことを検討した上で、人事委員会というものを設置しておりまして、これは社外役員を過半数とする当社の内部委員会でございますけれども、人事委員会の決議を経て、7月の取締役会で決定をいたしました。当社の経営には一切タッチはいたしませんし、今後、復帰することも全くないと御理解いただきたいというふうに思います。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 責任をとったような形をしておりますが、ほとぼりが冷めていないのにまた戻ったような感じがするんですね。これは示しがつかないと思いますよ。
 次にお聞きしたいのは政治献金の問題ですが、先ほどもお話がありましたように、保険料の取り過ぎ問題、まだこれは道半ばなんですね、解決には。にもかかわらず、政治献金の方はずっと続けている。ことしは、政治献金はもう既に行われているのかどうか。私は、根本的な解決までは自粛すべきだと思います。いかがですか。
○江頭参考人 お答え申し上げます。
 政治資金規正法に従いまして各社が個別に決定をしておりまして、損保協会として政治献金をしているということはございません。各社がどのように対応しているかについても、協会としては把握はしておりません。
 なお、三井住友海上、当社の場合は、政治献金の実施につきましては、過去の実績あるいは他業態の動向でありますとか、政党からの要請等を総合的に勘案をして、あくまでも当社の独自の判断に基づいて対応しております。2007年度の献金金額は、自民党の政治資金団体に対して630万円実施をしております。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 契約者に払っていないのに献金だけはするというのは、私は、社会的には、国民感情からいうと、これはいかがなものかというふうに思われると思いますので、その点についてはぜひ再検討していただきたい、来年度については。このことを申し上げまして、終わります。

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