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金融(銀行・保険・証券), 金権・腐敗政治 (保険会社の不払い)

2007年12月12日 第168回 臨時国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【423】 - 質問

保険金不払いで生保協会長を参考人招致

 2007年12月12日、財務金融委員会では、保険業界による保険金不払い問題について、生命保険協会の岡本圀衞会長(日本生命保険社長)と日本損害保険協会の江頭敏明会長(三井住友海上火災保険社長)を参考人として招致し、意見聴取し質疑をおこないました。

 岡本会長は、生保業界38社の不払いが12月7日時点で、964億円(131万件)となったことを明らかにし、「客の視点に立った体制整備が不十分だった」と述べました。

 佐々木憲昭議員は、業界全体が不払い問題を起こしていることから、業界に共通する問題があると指摘し、90年代に行われた保険の自由化・規制緩和による競争の激化が不払い問題の背景にあるのではないかと問いました。
 また佐々木議員は、両業界に政治献金の状況をただしたのに対し、岡本会長は日本生命として「今年は献金していない。(自粛は)検討していないが、議論している」と述べました。
 佐々木議員は、「契約者に支払わないで、政治献金を出すというのはおかしい」と、厳しく指摘し批判しました。

 さらに佐々木議員は、12月22日からの保険商品の銀行窓口販売の全面解禁で、不払いが再発する恐れがあることを指摘しました。

議事録

【参考人の意見陳述と佐々木憲昭議員の質問部分】
○原田委員長 ただいま参考人として社団法人生命保険協会会長岡本圀衞君に御出席をいただいております。
 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人におかれましては、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、岡本参考人から5分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 それでは、岡本参考人、お願いいたします。
○岡本参考人(社団法人生命保険協会会長) 本日は、このような御説明の場を設けていただきまして、まことにありがとうございます。保険金等の支払い問題に関しましては、お客様や関係の皆様方に御迷惑、御心配をおかけいたしましたことを心よりおわび申し上げます。
 この支払い問題について、大きく三つのケースに分けて御説明させていただきます。
 一つ目は、保険会社による事実関係の調査、確認が不十分であったこと等を原因として、本来お支払いすべき保険金等が不払いとなったケースでございまして、不適切な不払いと呼んでおります。
 これについては、金融庁から報告徴求命令を受け、各社とも平成17年9月に金融庁に報告いたしました。
 二つ目は、お客様から御請求があり、保険金等をお支払いしているものの、一部支払い金額が不足しているケースであり、支払い漏れと呼んでおります。
 これは、例えば入院給付金の支払い日数を間違えたものなど、主に保険会社の事務ミスにより発生したものであります。これについては、生保協会での検討を踏まえ、各社は平成17年12月から自主調査に着手し、本年3月に完了する予定としておりました。
 三つ目は、お客様から御請求いただけなかったケースであり、請求案内漏れと呼んでおります。
 保険会社が、提出された診断書から別の特約等のお支払いの可能性に気づき、その旨をお客様に御連絡さしあげていればお支払いできた可能性があるものでございます。これは、例えば、入院給付金の御請求を受け、入院給付金そのものは正しくお支払いしたものの、通院給付金については御請求がなかったためお支払いできていなかったというものでございます。
 以上の三つのケースのほかに、失効返戻金、これは、解約手続がなされないまま保険会社に返戻金が留保されているというものでございますが、こうした、保険会社から請求の御案内はしているものの、その後のフォローが十分ではなかったと判断したもの等がございます。
 本年2月、金融庁から、過去5年間にお支払いした保険金等の支払い金について、追加でお支払いする必要があるものの件数並びに金額を調査し、速やかな顧客対応を行うようにとの報告徴求命令を受けました。これを踏まえ、それまで調査を進めていた支払い漏れや、自主点検の中で気づき、取り組みを始めていた請求案内漏れ等を報告の対象といたしました。
 この報告期限は4月13日でありましたが、残念ながらここで終えることができず、先週の12月7日までに全38社が調査を終え、金融庁に報告をするに至りました。
 全社の状況については、各社の公表によれば、追加支払いを要する件数並びに金額は、全38社で約131万件、約964億円でございます。
 適時適切なお支払いが保険会社の基本的な務めである中で、これだけ多くのお客様にお支払いができていなかった点、深く反省しております。
 支払い問題が発生した原因としましては、これまで私どもは、お客様からの保険金等の御請求に対して迅速かつ正確なお支払いを心がけておりましたが、残念ながら、事務体制の構築やお客様への情報提供が十分できておりませんでした。これは、業務の全般にわたり、お客様の視点に立った体制整備が不十分であったと認識してございます。二度と同じ御迷惑はおかけしないという決意のもとに再発防止策を立て、その徹底に取り組んでいるところでございます。
 生命保険協会としては、各社の取り組みを後押しする趣旨から、大きく四点の再発防止策を進めております。
 一点目は、教育の充実であり、募集人教育の充実に取り組むとともに、生命保険支払専門士試験制度を創設いたしました。
 二点目が、苦情対応、情報開示であります。
 苦情は経営改善に向けた重要なシグナルであるとの認識のもと、協会にて整理、分析して各社の経営層へ直接提供することにより、経営改善を促していく趣旨の取り組みでございます。また、保険金等のお支払い状況についても開示を進めております。
 三点目が、ガイドラインの見直しです。
 契約時、保険期間中、お支払い時のすべての期間をカバーする七つのガイドラインの策定並びに見直しを行うとともに、好取り組み事例の共有化を行っております。
 四点目が、診断書の電子化という生保各社の共通のインフラづくりでございます。
 支払い問題の原因を分析いたしましたところ、診断書が手書きであることに起因するものが、各社に共通して、相当数ありました。そこで、医師が簡単かつ正確に入力することができ、査定担当者の読み落としや読み間違いの防止につながる診断書の電子化ソフトを協会が公募、認定し、より多くの医療機関に御利用いただけるよう、この12月より、会員各社挙げての普及促進活動をスタートさせたところでございます。
 以上のような取り組みを通じ、一刻も早くお客様の信頼を回復できるよう専心努力してまいる所存でございますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。
○原田委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。



○原田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。(中略)次に、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 時間が短いので、端的にお答えいただきたいと思います。
 まず、生命保険の不払い及び支払い漏れは、38社、131万件、964億円という大変な規模でありますが、そのうち契約者に支払われたのはどのぐらいか、進捗状況をお聞きしたいと思います。
 それから、申請がない場合の会社側からの対応の仕方、どのように積極的に本人と連絡をとり、支払う努力をされているか。この点についてお聞きしたいと思います。
○岡本参考人 お答えいたします。
 全社の状況につきまして、支払い率でございますけれども、約84.3%という状況でございます。
 それから次に、申請があってというお話がありましたけれども、これにつきまして弊社の例で申し上げますと、今般の調査の結果、追加のお支払いを要するお客様に対しては、丁寧な御連絡並びに御案内に努めてまいりました。
 まず、支払い漏れの事案ですけれども、これにつきましては、弊社から支払い手続の説明文書を送付いたしまして、お客様に御指定いただいた銀行口座等に送金する、こういう取り扱いにしております。お客様から御連絡をいただけない場合には、文書にての御案内は2回、それから電話による御案内は8回ということで、複数回にわたり、それぞれ実施しております。
 次に、請求案内漏れでございますけれども、この事案については、お客様に御請求をいただき、支払い事由に該当するか否かを確認する必要があります。例えば入院日数が何日であったかとか、こういうことがわかりませんとお支払いの額も決まりませんので、そういう意味では、支払い事由に該当するか否かを確認する必要があるために、お客様に請求の御案内を行いました。
 こうした取り組みの結果、11月末時点の支払いの進捗状況、私どもでは、追加支払いを要する金額に対して、支払い済みは96.4%ということでございます。
 先ほどから、4600名の態勢とかもろもろ言いましたけれども、そういう中で少しでも早くということで、今こういう状況でございます。
○佐々木(憲)委員 今回の不払い問題が起こった原因ですけれども、特定の会社が不払いをしたというだけではなくて、今回は業界全体が不払い問題を起こしているわけですね。したがって、共通する問題があるのではないか。その原因をどのように把握されているか。
 私は、金融の自由化のもとで外資がどんどん入ってくる、そういう中で競争が激化し、商品が非常に複雑化する。そういうもとで説明不足が起こり、また、商品の理解不足というようなことがあって多発したのではないかというふうに思っておりますが、会長はどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
○岡本参考人 お答えいたします。
 業界共通の問題があったのではないかという御指摘でございますけれども、共通の前に、各社は販売チャネルも商品もシステムも事務体制もそれぞれ異なっているわけでございますので、一概に申し上げることは非常に難しいところがございます。
 ただ、先生御指摘のとおり、共通のところがあったのではないかということについては、まさに生命保険協会が取り組んでいく方向。これは一つには、業界全体での教育のレベルを上げていかなければならない。
 あるいは、生命保険支払専門士試験制度を入れてレベルもそろえていかなければならない、向上しなければならない、こういう分野。
 あるいは、苦情とか情報開示とか、これをもっともっとやっていかなければならない。
 あるいは、ガイドラインをきっちり守っていかなければならない。
 この中に、すべて、その共通にというところを受けた形で考えております。最後の、現在の診断書の電子化などはその最たるものでございまして、こういう意味で共通化を、共通化というか最低限のことは協会レベルとしてもやっていかないといかぬ。
 この問題は、個社が個社のお客様に対応するのは最も重要ですけれども、生保協会としても、生命保険事業ということについての御了解を社会からいただくためにこういう取り組みをやっていかなければならない、このように考えております。
○佐々木(憲)委員 私は、もう少し共通の根源的な究明というものが必要ではないかというふうに思っております。
 もう一点お伺いしますが、本年12月22日から銀行窓口の保険販売の全面解禁というのがあります。その影響をどのように見ているかという点。特に、競争が激化すると、またコスト競争というのがあおられまして、結果として保険商品の説明義務の水準が低下するとか、そういうことにつながらないかどうか。また不払い問題というものも起こる可能性もあるのではないかと私は危惧しておりますけれども、この点について見解をお伺いしたいと思います。
○岡本参考人 お答えいたします。
 今回の全面解禁では、まさに支払い問題の中心となった医療保障、死亡保障、そういった保険商品が対象になります。既に年金等についてはスタートしているわけですけれども、今回、このようなまさに保険の本丸というような商品が対象となっております。したがいまして、販売時のみならず、そのアフターサービスが大変重要であることは、まさに先生の御指摘のとおりであるというふうに思います。
 したがいまして、全面解禁に際しましては、私も協会長としてその点は強く主張してきたわけでございますけれども、そうしたことも受けまして、金融庁の監督指針において、保険会社と銀行等が行うべきアフターフォロー業務の明確化、あるいは銀行等のコンプライアンス体制強化等の改正が措置されることになりました。これはまさに、ベースとして銀行か保険会社かとか、こういうふうな綱引きというよりも、むしろお客様保護の視点から措置されたものでございまして、そういうふうな中では、生保、銀行の間で引き続きしっかりと取り組んでいく、目線をそこに合わせた取り組みが必要であるというふうに思います。
 また、先生の御指摘のような保険商品の説明義務は、保険を販売する者がまずもって果たすべきでありまして、当然、コスト競争の激化があったとしても、それによって水準低下とかアフターサービスの低下、こういうものがあってはならないわけでございます。その点については、銀行業界とともに生保業界もきっちりやっていきたいな、そして、充実したサービスの提供を図っていかなければならない、このように考えてございます。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 大手の銀行の場合、法人税は今ゼロでありまして、払われておりません。それにもかかわらず政治献金をやるなどということはあってはならないと私は主張いたしました。安倍総理は、自粛をするという発言もされております。
 今回、こういう不払い問題を起こしている以上、やはりそういう問題についても自粛をすべきだと私は思いますが、協会としての献金をどのようにお考えか。それから、日本生命は、国民政治協会に対して、ことしの政治献金、幾らなされているか、わかりましたら教えていただきたい。
○岡本参考人 お答えいたします。
 生命保険協会におきましては、政治資金の寄附については行っておりません。
 また、日本生命におきまして、2007年度につきまして、本日までのところ、政治献金は実施しておりません。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 昨年までのところを見ますと、日本生命は、2006年、1395万円ですか、献金を行っておりますが、ことしは取りやめるというおつもりはありますか。
○岡本参考人 現在のところ、検討しておりません。
 検討しておりませんというのは、取りやめるということではございませんが、これについて今議論をしているところでございます。
○佐々木(憲)委員 契約者にきちっと払わないような状況を続けていながら献金だけはやるというのは、私はおかしいと思いますよ。その点を考慮して検討していただきたいと最後に申し上げまして、終わります。

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