2007年12月07日 第168回 臨時国会 倫理選挙特別委員会 【421】 - 質問
電子投票を国政に広げるのは時期尚早と主張
2007年12月7日、佐々木憲昭議員は、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会で、電子投票制度を国政選挙にまで広げる電子投票特例法「改正」案について質問しました。
佐々木議員は、「電子投票制度は、現在もさまざまな問題があり、選挙の公正性、信頼性を担保する上でリスクが大きすぎる」と、現時点での国政選挙への導入はすべきでないと主張しました。
電子投票制度は、現在、特例として、条例を制定した地方自治体の地方選挙に限って実施されています。今回の「改正」案は、この電子投票制度を国政選挙にまで拡大するものです。
佐々木議員は、2004年市議補選で電子投票を実施した三重県四日市市の例をあげました。
投票所に足を運びながら、電子投票機の操作を途中でやめて帰ってしまった人が13000人超、投票者数の14%を占めていることを指摘し、これは「重大な問題だ」と述べました。
また、「パネルに指紋が残っていて誰に投票したかわかる」「腕の動きでもわかる」など投票の秘密という原則が守られるのかという声も紹介。システム・トラブルが多発しており、「電子投票を国政選挙に広げた場合、一部でトラブルが発生すれば全国的規模で影響が出て、選挙そのものの有効性が問われかねない」と迫りました。
法案提出者の原田義昭議員(自民)は「(トラブルが起こっても)一部であり、全体の選挙結果には影響しない」と答弁しました。
佐々木議員は、「たとえ一部でも、データが消えてしまうなどのトラブルが起こってしまったら(票の)集計はできず、選挙が終わったことにはならない」と厳しく批判しました。
「選挙は、民主主義の根幹であり、投票が公平・公正に行われなければ、その正当性が崩れかねない」と延べ、国政選挙への電子投票の導入に強く反対しました。
この法案は、質疑終局後、日本共産党が反対する中、可決しました。採決に先立ち、佐々木議員は、反対討論を行いました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
初めに事実を確認しておきたいと思います。
先ほどの答弁では、電子投票の条例を制定している自治体は8市町村ということでありました。そのうち、首長と補選のみで実施している自治体はどこでしょうか。
○久元政府参考人(総務省自治行政局選挙部長) 現在、電子投票を実施している市町村は、青森県六戸町、宮城県白石市、福島県大玉村、神奈川県海老名市、京都市、三重県四日市市、岡山県新見市の8団体であります。
このうち、四日市市にありましては、市長選挙及び市長選挙と同時に行われる市議会議員の再選挙または補欠選挙において電子投票を実施することとしております。また、京都市は、東山区に限ってでありますが、市長選挙においてのみ電子投票を実施しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 四日市と京都市の2つの自治体では、首長、補選では電子投票をやっている。ところが、議員選挙ではやっていないわけですね。その議員選挙でやっていないという理由を聞かせてください。
○久元政府参考人 どの選挙において電子投票を実施するかにつきましては、それぞれの自治体において、有権者の意識、議会における議論、団体の規模、選挙管理委員会の職員体制等を踏まえて決められたものと承知しておりますが、より具体的に聞き取ってみますと、市長選挙のみを実施している京都市にありましては、議会における議論等を踏まえまして環境整備を図りながら電子投票を拡大していきたい、また、四日市市にありましては、これは議会の議論でありますけれども、市議会議員の定数が36名ということで、画面構成を検討したところ、なかなかこの合意形成に至らなかった、そこで、国政選挙で実施されることとなった場合の画面構成などを参考にしながら市議会議員選挙への導入を検討したい、こういう御意向であると聞いているところでございます。
○佐々木(憲)委員 議員選挙でやっていない理由として、36名という定数、これは数が多いので一度に画面表示ができない、不公平が生ずる、こういう理由というふうに聞いているところであります。
もう一つ聞きたいんですが、5万人以上の自治体で電子投票を実施したことがあるのはどれだけあるか、そのうち現在も電子投票を行っているのはどこか、これを知らせていただきたい。
○久元政府参考人 5万人以上のこの単位を指定都市の場合には区でとらえてお答え申し上げますと、5万人以上の自治体で電子投票を実施したことがありますのは、広島市、これは安芸区のみでありますが、それから福井県鯖江市、岐阜県可児市、神奈川県海老名市、三重県四日市市の5団体であります。
そのうち、現在電子投票条例を制定しております団体は、岐阜県可児市、神奈川県海老名市、三重県四日市市の3団体であります。
なお、条例を制定している3団体のうち、岐阜県可児市につきましては当面条例を凍結しておりまして、海老名市につきましては平成19年執行の市議会議員の選挙及び市長の選挙には適用しないというふうにしております。
○佐々木(憲)委員 有権者が多い自治体では候補者が多いわけであります。今お聞きをすると、そういうところの議員選挙でこれが使われた経験がほとんどない、そういう状況ですね。
提案者にお聞きしますけれども、国政選挙で電子投票を行った場合、特定の市町村でトラブルが発生した、そういう場合、その自治体にとどまらず、これは全国的な集計に影響しますね。そういう影響が出るということは事実ですね。
○原田(義)議員 まず、そういうトラブルが起こらないように全力を尽くさなきゃいけないわけでありますけれども、トラブルは起こり得るわけであります。その際に、起こった瞬間に、例えば予備機でもって対応する。どうしてもそれが間に合わないときには、自書式の用紙を別途準備しております。そういうことのないように、カバーをするような体制ができておるわけでございます。
その上で、このようなケースにおいて選挙無効訴訟が提起されて、最終的にその選挙がおかしいではないかということになったときに、理屈の上ではその選挙区の再選挙というようなことはあり得ると思いますが、しかし、それは今度の国政選挙における自治体での選挙におきましては全体のうちの一部だというようなことに結果的にはなるわけでございますので、私どもからすれば、ここは全体の結果には影響しないであろう、こういうような前提で考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 全体に影響しないということはないでしょう、1自治体でそれだけのことが起きて。例えばデータが消えてしまった、データが消えてしまったら集計はできないじゃないですか。選挙が終わったことにならないでしょう。全国的にそういうことになると、例えば参議院の比例代表選挙、そういう影響が出るでしょうと聞いているんですよ。
○原田(義)議員 事故というのは当然起こり得るわけでございますので、そういう意味では、それを極小化するというのと、そのような仮のケースにおきましては、その投票区を含む開票区のみであるということから、選挙が全部無効ということは通常想定できないというふうに私どもは考えておるところであります。
○佐々木(憲)委員 そんな答弁は成り立ちませんよ。全国の集計が終わらないじゃないですか、それができない限りは。比例代表の場合、そうでしょう。
では、具体的に聞きましょう。
三重県四日市市の選挙管理委員会がつくった、電子投票に関する報告書というのが手元にありますが、投票所に行って、電子投票で投票せずに帰ってしまったという人がいると書かれております。総務省にお聞きしますが、投票しなかった人、途中でやめてしまった人、これはどのぐらいありますか。
○久元政府参考人 平成16年11月28日に執行されました四日市市長選挙におきまして、まずは、電子投票機の操作をせずに退出した者の数は10人でありまして、電子投票機の操作を途中で終了した者の数は855人でありました。
この日は同日に市議会議員補欠選挙が執行されておりますが、この補欠選挙におきましては、電子投票機の操作をせずに退出した者の数は10人であり、電子投票機の操作を途中で終了した者の数は1万3092人でございました。
○佐々木(憲)委員 この1万3000人を超えているというのは、極めて数が多いんですよ。これは白票を投じたという人も中にはいるかもしれませんけれども、電子投票だったから投票できなかったということではないかもしれませんけれども、しかし、市議補選の場合は投票所に行っても投票せずに帰ってしまったのが1万3000人というのは、これは驚くべき数字で、投票者数のうち14%を占めているんです。ゆゆしき問題だというふうに私は思います。
国政選挙の比例代表選挙の場合は、候補者数がこれまで電子投票が行われた地方選挙とは比べ物にならない数です。
先ほど、四日市の場合は、36人でも、これはもう無理だということでやめたわけですけれども、特に参議院の比例代表の場合、非拘束名簿式の候補者名投票と政党名の投票、これは認められているわけですが、投票そのものというのが非常に複雑なわけですね。候補者名の投票を選んだ場合、先ほど、150人以上、そういう候補者数がいるわけですが、どのようにこれを表示するかというのが問題になるわけです。
候補者数が多い場合、当然、表示される文字が小さ過ぎて見えない、したがって複数のページにまたがらざるを得ない。そうすると、最初に出てくる名前の方が有利になって、後に出てくる名前は不利になる、得票に差が出る。候補者数が多い場合どう表示するのか、これが非常に重要な問題になるわけですが、提案者はどう考えているんですか。
○原田(義)議員 この件は、先ほどから議論されておる、参議院の比例代表についてはいろいろ技術的に検討を進めなければいけないところであります。法律上は、政党名と個人名を書くかどうか、これを第1面に表示する、そこから先は政令で検討するということになっておるところであります。
いろいろな御意見をいただきながら、最終的にはこの政令に落とすわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、一案として、例えば、個人名があるときには、50音表示式の画面をつくって、国会太郎であれば、コという字を押した後にコの字が出てくるというようなこともありますし、また、政党を支持したときには、政党の方々の名前が出てくるということもあると思います。
さまざま議論されますけれども、しかし、人数が多いために大変小さな字になるという意味では、今の参議院選挙、比例制でも同じような問題もございまして、この多くの数をどう処理するかというのはいろいろとこれから工夫が必要である、こういうふうに思っております。
いずれにしましても、選挙の要諦というのは、公平公正、そして正確な運営管理ができるということを旨として管理をしなければならない、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 今の答弁ですと、候補者名の投票であっても、50音順だ。そういう方法もあると。名前を覚えていない人はどうするんですか。
政党を選び、その政党の中から選ぶという方法もあるとおっしゃいましたが、それだと、まず政党を選ぶことから始めるわけでしょう。今の投票方法と違うことになるわけですね。
ですから、国政選挙で電子投票を導入した自治体というのは、自書式でなくなるだけではなくて、投票方法というものに差が出てくる、違いが出てくるわけです。同一選挙というのが原則ですけれども、同一選挙にならないのではないか。私は、これは非常に大きな問題点を含んでいるというふうに思います。
我々は、電子投票の制度は、科学技術の進歩ということがありますから、近い将来、投票方法の一形態として否定すべきではないと考えております。しかし、四日市の例でいいますと、例えば、投票機の画面に指紋が残っているというんですよ。たくさん押された人は、その名前が、あ、この人はたくさん押されているなというのがわかる、あるいは、腕の動き方でだれに投票しているのかがわかるとか。あるいは可児市の場合は、投票機の四隅をタッチして暗証番号を7、7、7、7、7と押すと投票データを操作できる画面が表示される、こういうことがあるというんですよ。投票の秘密がこれで果たして守られるのかという疑惑が残っております。
先ほどからもいろいろな技術的な質問もありました。技術者にしか投票機の中はわからない状況であって、ありとあらゆる事態を想定しての技術基準の内容策定、事前確認が可能であるのかどうか、あるいは、起動などの動作確認のみの技術的基準では実質的な安全性の確認はされないことになるんじゃないかとか、一人一票主義、秘密投票主義、こういう選挙の基本原則というのは、これはゆがめてはならない、確保しなければならない。
そういうことを考えますと、現在の時点で、今質問をさせていただいたことだけを考えましても、技術的な問題というのは非常にある、信頼性に問題がある、あるいはコストが高い。こういうことを考えると、デメリットの方が非常に多いんじゃないか。先ほども民主党の方々が御質問されていましたけれども、あれだけ疑問が多いわけですから、これをこのまま通すというのは私は問題だというふうに思いますよ。
しかも、電子投票普及協業組合の理事長がメーカーと結びついていて推進しているとか、あるいは電子投票の請負業者は特定の4社しかない、そういうようなことをいろいろ考えてみますと、その裏にはさまざまな利権がある、こういうことも言われているわけです。
私は、もう時間がありませんのでこれ以上述べませんけれども、投票というものは民主主義の根幹ですので、この公正公平が確実に担保されなければ、やはり正当性が問われると思うんです。現時点での国政選挙への導入というのは、やはり時期尚早と言わざるを得ない。こういう意味で、今国会で拙速に成立させることには我々は反対であります。このことを最後に申し上げまして、終わります。