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金融(銀行・保険・証券) (郵政民営化)

2007年11月02日 第168回 臨時国会 財務金融委員会 【415】 - 質問

ゆうちょ銀行が新たな預金保険料負担を利用者に転嫁

 2007年11月2日開かれた財務金融委員会で、佐々木憲昭議員が質問しました。
 この質問で、郵政事業の分割・民営化によって、ゆうちょ銀行に巨額の預金保険料の負担がのしかかり、それが利用者に転嫁されている実態が明らかになりました。
 ゆうちょ銀行は、民営化にともなって、民間の銀行と同じように預金保険機構に入り、保険料を納めることになります。
 しかし、この機構は、10年ほど前の相次ぐ金融機関の破綻に多額の資金援助をおこなったため、準備金が現在でも2兆円規模の欠損金となっています。それを借金で穴埋めしてきました。
 佐々木議員は、民営化にともなって、ゆうちょ銀行が預金保険機構に支払うことになる保険料が10年で1兆円規模になるという「民営化準備室」の国会計算試算を紹介しました。この問題は、2005年2月28日財務金融委員会でも取り上げています。
 この負担を、ゆうちょ銀行はさまざまな手数料の引き上げで利用者に転嫁しています。
 佐々木議員は「銀行の経営破綻に何の責任もない郵便局の利用者に負担を押しつけるのは、理屈に合わない」と批判しました。
 渡辺金融担当大臣は、「ゆうちょ銀行は利用者の声に耳を傾け、料金改定の場合は、丁寧な説明をすることが大事」と答弁しました。
 佐々木議員は、「利用者の望みは、説明ではなく負担の軽減だ」と厳しく批判し、負担軽減のため制度を見直すようにあたらめて求めました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 現在の金融情勢は、10年前のように金融機関が相次いで倒産するというようなことはないわけでありまして、先ほどの大臣の概要説明でも、破綻金融機関への資金援助や資産買い取りは報告対象期間にはなかった、こういうことが言われているわけです。しかし、過去、大規模な税金投入が行われたわけであり、その返済もまだ完全に完了していない、あるいは返済されないことが確定する、こういう事態もございます。それから、大手金融機関は法人税は1円も払っていないというような状況もあるわけです。
 与謝野元大臣は、この状況を見まして、銀行はまだ半人前だというようなこともおっしゃっていましたけれども、渡辺大臣は今の状況をどのように見ておられるか、お聞きをしたいと思います。
○渡辺金融担当大臣 確かに、銀行の健全性が回復してきた、収益が向上してきたといっても、言ってみれば、まだ病み上がりのような状態にあるのではなかろうかと思います。逆に、こういう状態があるがゆえに、リスクがとれずに、過度の、サブプライムローンのような商品に手を出さなかったという、けがの功名もあったかもしれません。
 いずれにいたしましても、銀行が健全性を回復し、金融仲介機能をきちんと果たしていただくということが大事なことでございます。
 日本の場合には、土地担保金融という、右肩上がりの時代には非常に有効であった金融のやり方が、デフレ時代に突入して非常に困難に直面をしてきた苦い経験があるわけでございますから、この歴史の教訓を踏まえた新たな金融仲介機能の展開をしていくことが大事であろうかと存じます。
○佐々木(憲)委員 仕組みとして、金融機関が破綻した場合には資金援助が行われるというようなことになっておりますが、その業務に必要な費用、これは預金保険機構が金融機関から預金保険料を徴収して賄っている、こういうことですね。
 今の保険料の実効料率、これは平成8年に決められたものでありまして、それまで0.012%だったのが0.084%と、7倍に引き上げられたわけであります。
 当時の引き上げの理由、これはどういうものだったんでしょうか。
○西原政府参考人(金融庁監督局長) お答え申し上げます。
 平成8年に料率を引き上げてございます。そのときの考え方でございますが、平成7年12月の金融制度調査会の答申で触れられておりまして、それによりますと、預金保険が発動されるようになったこの4年間、当時ですので平成4年から7年のことを言っておりますが、この4年間と同程度の破綻が生じた場合にも対処し得るよう、この間の破綻処理コスト合計額である2兆円から2.5兆円を今後5年間で引き直して、それをカバーし得るようということで料率が算定されたというふうに承知いたしております。
○佐々木(憲)委員 当時の大変な破綻が相次いだ状況を踏まえて、預金保険の支出が急増するということでこういう実効料率になったということでございますが、現在の預金保険機構の責任準備金、これは幾らになっているでしょうか。
○西原政府参考人(金融庁監督局長) お答え申し上げます。
 現在の責任準備金の額ということでございますが、預金保険機構は、一般勘定におきまして預金保険料を受け入れまして、破綻金融機関等の処理に必要な経費を賄っているところでございます。
 そこで、一般勘定の責任準備金ということになるわけですが、実際のところ、これまで実施されました資金援助等に係る費用を賄うために、既に、全額それを取り崩しておる状況にございます。したがいまして、現在は欠損金が生じているということで、その額でございますが、18年度末時点におきまして1兆9326億円、欠損が生じておる。これらにつきましては、今後、金融機関から徴収する預金保険料によってその解消が図られていく、こういうことになってございます。
○佐々木(憲)委員 今は、その当時の保険の支払いによって大変な欠損が生じており、また、それは借金で埋めているという状況だそうでございます。しかも、その規模は約2兆円ということであります。
 そうなりますと、年間の預金保険料の収入で毎年毎年埋めていくということになりますが、年間の保険料の収入は幾らでしょうか。
○西原政府参考人(金融庁監督局長) お答え申し上げます。
 預金保険料の収入でございますが、18年度で見てまいりますと5404億円となってございます。
○佐々木(憲)委員 民間銀行からの保険料収入が年間5400億円ということですが、4年間でこの欠損は、特に支出の方が大幅な、特別な事情がない限りは埋め合わせがついて、借り入れはなくなる、そういう計算になるわけですね。
 そういう状況でありますが、実は、この10月1日から郵政民営化が行われたわけですね。ゆうちょ銀行ができたわけであります。このゆうちょ銀行は、もともとは、民間銀行とは違いますので、預金保険機構にはもちろん入っていなかったわけであります。
 そうなると、今度は庶民の貯金です。これは、今までは政府保証だったけれども、今度は預金保険機構の保証に移る、そういう理解でよろしいでしょうか。
○西原政府参考人(金融庁監督局長) お答え申し上げます。
 民営化前の日本郵政公社に預けられましたものにつきましては、二つに区分されまして、定期性の郵便貯金等につきましては独立法人の郵便貯金・簡易生命保険管理機構に承継されまして、これにつきましては、引き続き政府保証がつくという形で保護されます。
 一方で、民営化以前に郵政公社に預けられました通常貯金、こういったたぐいにつきましては、ゆうちょ銀行に承継されまして、これは、民営化後に新たに預入される預金とともに、預金保険制度のもとで保護される、こういう形になります。
○佐々木(憲)委員 そうなると、郵政公社のときは預金保険料は払ってはいなかったんだけれども、ゆうちょ銀行になると保険料を払わなければならないという部分が出てきて、それは、例えば、定期性郵便貯金の新規のものと通常預金がそれに加わって、それがふえていけば保険料もふえていく、こういう仕掛けになるわけですね。
 そうなると、年間の負担額、今まではゼロだったんだけれども、新たに年間の預金保険料を払わなきゃならない。負担額はどのぐらいになるんでしょうか。
○西原政府参考人(金融庁監督局長) お答え申し上げます。
 ゆうちょが支払うべき保険料でございますが、これは郵政民営化法に規定がございまして、民営化後に負担する保険料につきましては、民営化後2カ月間の預金の平均残高に預金保険料率を乗じて算出するということになっておりまして、現在、民営化後まだ1カ月でございますので、保険料の算出は、現在では困難な状況にございます。
 しかしながら、かつて民営化法案の審議の際に郵政民営化準備室の方で一定の試算をしておりまして、その試算によりますと、初年度の預金保険料は約400億円というふうに見込んでおると承知しております。
○佐々木(憲)委員 400億円というのはかなりの金額ですよね。郵政民営化準備室の骨格経営試算ですか、これによりますと、10年の見通しを試算しておりますけれども、合わせて1兆円近い、大変な規模になるわけであります。
 ここで渡辺大臣にお伺いしますけれども、郵政民営化でゆうちょ銀行が新たにできて、今まで政府保証だったものが、今度は預金保険機構に保険料を払う形での新しい事態に入っていくわけです。年間400億円、こういう負担がふえていく。それは、非常に高く上げられた、10年ほど前に7倍に上げられた保険料、この水準を払うわけです。その高い保険料というのは何によって決まったかというと、当時の民間銀行の破綻の欠損金まで含めて埋め合わせをするための保険料であります。
 つまり、郵便貯金の、庶民の責任は一切ないわけですね、過去の民間銀行の倒産については。それなのに、その当時の破綻を含めた高い保険料でゆうちょ銀行が負担をしなければならない。つまり、庶民にそういう負担を負わせていいのかという問題が生じると思うんです。これが非常に問題だと私は思うんです。別枠で考えるべきではないのか。なぜ、責任のない、民間の銀行の破綻処理の負担まで、公社が民間になったからといって、負わなければならぬのか、そういう感じがするわけです。
 その点、お聞きをしたい。つまり、責任がないにもかかわらず、負担するというのはおかしいのではないかということなんです。
○渡辺金融担当大臣 先ほど西原局長から答弁申し上げましたように、民営化以前から預けられております定期性の郵便貯金、例えば定額貯金などは、これは政府保証つきでございます。一方、民営化後に預けられたものは預金保険の対象になるということであります。
 民営化に伴って、民間金融機関として相応の預金保険料を御負担いただくというのは、合理性はあろうかと思います。他の民間金融機関と競争をやっていくわけでありまして、その切磋琢磨の中で、経営の合理化を進めながら利用者の利便性向上につながることを目指すわけですね。
 したがって、利用者側からいたしますと、サービスが向上するということにならないとなかなかお客さんがついてこない、こういうことにもなるわけでございます。
 したがって、預金保険料のコストをどういうぐあいに吸収するかというのは、まさしくこれは自主的な経営判断の世界でございまして、これを全部お客様に転嫁するなどということをやってしまったら、切磋琢磨の競争の中では勝ち残っていけないのではないでしょうか。
 まさしく、そういう点で、民間の競争の中での経営努力によってこのコストは吸収されるものと考えます。
○佐々木(憲)委員 定期性の部分については、過去の点については政府保証だ、それはそのとおりでありますが、しかし、通常貯金です。これは過去の分も含めて預金保険料の計算の基礎になるわけです。ですから、過去の部分も含めて、なぜ民間銀行のものを負担しなければならないのか、そういう疑問は今の答弁では解消できないわけですね。
 それから、負担の問題ですけれども、民営化してから非常に負担が、サービスが悪くなったとか、あるいはさまざまな手数料が引き上げられて、非常に不満があるわけです。利用者から寄せられております。
 例えば、ゆうちょ銀行に対する振り込み、これは昨年の4月以前は70円だったんですね、1万円以下の場合は。これが昨年の4月以降は100円になって、今度、民営化したら120円になったわけです。それから電信現金払い、これは、1万円以下の場合は3.5倍。それから普通為替の場合は4.2倍。通常の現金払いは6.7倍、これは60円から400円になっている。それから定額小為替、これは1枚10円だったのが1枚100円、10倍になっている。
 ですから、余りにも手数料の引き上げが大き過ぎるのではないかということで、民営化された後の窓口で、何だこれは、これなら民営化する必要はなかったじゃないか、前の方がよかった、そういう発言があるわけですね。だから我々は民営化は反対だったわけですけれども。
 しかし、こういう状況は、吸収というよりも、いわば利用者への転嫁ですよね。この辺の料金の引き上げは余りにも過激なやり方で、やるべきじゃないと思いますが、大臣、最後に見解をお伺いしたいと思います。
○渡辺金融担当大臣 民営化に当たって今御指摘のような料金の引き上げが行われたことについて、利用者から御指摘のような声が出ていますことは私もわかっております。ぜひ、ゆうちょ銀行におかれては、利用者の声に十分耳を傾けて、特に料金改定の場合には丁寧な説明を行っていくことが大事だと思います。
 金融庁としては、各金融機関が利用者に対してどういうサービスを提供し、その際、利用者に対してどういう説明体制をとっているかということについて、引き続きウオッチをしてまいります。
○佐々木(憲)委員 これは説明すればいいというものじゃなくて、負担を軽くしてもらいたいということなんですよ。
 どんどん高くしておいて、説明はいたします、これじゃだめなんで、現実に庶民の負担の軽減を念頭に置いてやっていただきたいということを最後に申し上げまして、終わります。

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