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税制(庶民増税・徴税), 景気回復 (法人税, 定率減税の廃止)

2004年11月09日 第161回 臨時国会 財務金融委員会 【261】 - 質問

「所得税の定率減税縮小・廃止は中止し、法人税こそ引上げよ」佐々木議員が追及

 2004年11月9日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、政府が検討している所得税の定率減税縮小・廃止について質問しました。

 定率減税は1999年に実施され、減税額は3兆5000億円(当時)です。法人税率の引き下げ(2兆7000億円)や所得税の最高税率の引き下げ(5000億円)も同時におこなわれました。
 当時の減税の目的は「経済の回復のため」でしたが、大企業の経常利益は1998年から2003年まで約9兆円増え収益が回復。その一方、同時期の家計収入は大幅に減少しています。
 佐々木議員は、政府が法人税率の引き上げの検討すらせず、サラリーマン層に打撃を与える定率減税の縮小・廃止だけを計画していると批判。「なぜ、(サラリーマン層に対して)増税をするのか。やり方が逆だ」と指摘しました。
 谷垣禎一財務大臣は、「リストラが一服するなかで、(企業の利益増が)家計に及んでくる環境が整ってきた」と強弁。定率減税の縮小・廃止をすすめる考えを示しました。
 佐々木議員は、「定率減税の廃止によって、国民負担を3.3兆円も負わせるのは、景気対策に逆行している。やるべきは、担税能力の上がってきた法人税率の引き上げだ」と強調しました。
 また、佐々木議員は、「(所得税の)最高税率の引き上げ、法人税率の引き上げについて、どこでどのような議論をしているのか」と質問しました。これに対して、谷垣財務大臣は、「政府税調等の議論を注意深くごらんになっていただければ、随所でそういう議論がおこなわれている」と答弁。
 佐々木議員が調べた限りでは、そのような議論がなかったため、その「証拠を資料として提出をしていただきたい」と求めました。

 これに対して、11月16日の財務金融委員会理事会に、「政府税調議事録」が「証拠」として提出されました。
 この議事録は、まだ公表されていないものでしたが、確かにそれらしき部分があります。しかし、大臣答弁の裏付けになるものではありませんでした。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 私は、定率減税について質問をさせていただきます。
 平成11年度、1999年度から実施されております所得税の定率減税を縮小、廃止ということが議論になっているわけであります。もともと、所得税の定率減税というのはどのような目的で実施されたのか。平成11年2月4日の衆議院本会議で、当時の宮澤喜一大蔵大臣が、現下の著しく停滞した経済活動の回復に資するという目的で行うのだというふうに答弁をされていたと思いますが、それは間違いありませんか。
○谷垣財務大臣 間違いございません。
○佐々木(憲)委員 要するに、当時は97年に実施されました消費税の税率アップあるいは医療費負担で、国民にかなり重い負担が負わされました。9兆円負担増ということで、消費が非常に停滞をする。それから、そういう中で景気が落ち込み、経済情勢が非常に深刻化する。この深刻化した経済活動の回復に資するというのが最大の目的でこの減税が行われたわけです。
 このときに行われていましたのは、所得税については、定率減税だけではなくて最高税率の引き下げ、さらに法人税の基本税率の引き下げなども行われたわけであります。当時の総額で約7兆円の減税ということで、これは全体として経済活動の回復のために実施された。つまり、当時の所得税と法人税の減税というものが全体として景気回復のためという目的であった、これは間違いありませんね。
○谷垣財務大臣 今おっしゃいました、当時の所得減税で何を入れたかということは、正確に意図するところはそれぞれ若干違いますが、大きく言えば、やはり景気を回復させようというねらいがあったことは間違いございません。その中で、特別に今のような意味合いが重かったのが定率減税であろうと思います。
○佐々木(憲)委員 それで、これらの所得税、法人税の全体としての減税措置というものが恒久的減税ということで、的というふうについているということ、これがみそでありまして、その期間というのは一体どの程度かといいますと、停滞した経済活動が回復する、要するに景気回復、さらに個人及び法人の所得課税のあり方について将来抜本的な見直しを行うまでの間、この二つが恒久的減税を見直すという場合の前提になる、こういうふうに政府の説明があったわけであります。
 財務大臣にお聞きしますけれども、税制の抜本的見直しを行うまでの間というわけですから、抜本的見直しが行われるまでは手をつけないというのが基本的な考え方じゃなかったんでしょうか。
○谷垣財務大臣 今、佐々木委員がおっしゃいましたように、この導入には二つの意味がありました。一つは、当時の低迷した景気を支える、何とか回復したいということと、もう一つは、どっちみち将来、所得税に関しては抜本的な見直しをやらなきゃいけないんだけれども、それはそれぞれの時期時期というものがあるから、それができるまではこれでいこうという二つの意味合いがありましたから、当然、そこをいじるにつきましても、今の二つの、導入のときのそういう理由が現在どうなっているのかということを吟味する必要があると思います。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、税制の抜本的見直しがまだ行われていないわけですから、それが行われるまでの間、定率減税その他は実行するということですから、行われていないんですから、見直しするというのは筋からいうとおかしいんじゃありませんか。
○谷垣財務大臣 全然おかしくございませんで、定率減税の見直しが議論になってきておりますことの一つの理由は、先ほども鈴木委員にもお答えいたしましたけれども、地方に税源を移譲するときに、所得税を中心にやろうということで今議論をしつつございますけれども、それだけやりますと、どうしても所得税体系全体をもう一回見直さなければならない、そういう改革をしなければならないということになってきております。
 したがいまして、それはしないで定率減税だけを議論しようという趣旨ではございませんで、所得税全体を見直していく中で定率減税をどうするかという議論になってきているということでございます。
○佐々木(憲)委員 ちょっと私はその説明が理解できないんですけれども。税制の抜本的な見直しが行われるまでの間ですから、見直しの議論が行われているだけであって、見直しされているわけじゃありませんから。したがって、その見直しが行われるのが完了していないのに定率減税の縮小とか廃止とかを行う、これは全然整合性がとれていないんじゃありませんか。
○谷垣国務大臣 いや、それは佐々木委員らしくない極めてトリビアルな議論をなさったと思いますね。
 要するに、定率減税を見直すということは、所得税全体を見直していく中でともに議論を進めていこうというふうに御解釈いただきたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 所得税の見直しというものは、所得税の体系というものはどうあるべきかを考えていくというのが見直しであって、今やろうとしているのは廃止、縮小なんですから。ですから、全然これは私はおかしいと思うんですね。
 それはさらに議論をするとして、もう一方の、では景気回復の面はどうかということで、数字をちょっと確認したいんですけれども。企業の景気回復、それからサラリーマンを中心とする個人所得の回復、これは一体どうなっているか。資本金10億円以上の全産業の経常利益、1998年から2003年までの間に幾らふえたかというのと、もう一つ、民間企業が支払った給与総額、これは家計収入の中心ですけれども、それはどうなっているか、お答えをいただきたいと思います。
○石井政府参考人(財務省大臣官房総括審議官) 私の方から、企業収益の点をまずお答え申し上げます。
 財務省が公表しております法人企業統計によりますと、これは金融、保険を除く全産業でございますが、資本金10億円以上の企業におきます経常利益、1998年度、平成10年度でございますが、12.4兆円でございました。また、2003年度、これは平成15年度でございますけれども、におきましては、21兆円でございました。したがいまして、これを単純に差し引きますと、8.6兆円の増加ということになろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 もう一つ、給与の方をお答えいただきたい。
○村上政府参考人(国税庁次長) お答えいたします。
 国税庁では民間給与実態統計調査という標本調査を行っておりますが、この統計調査によれば、民間企業が支払った給与総額、今先生がお出しいただいている資料は一年を通じて勤務した給与所得者に対する給与総額なんですが、それを見ますと、1998年、平成10年は211兆円でございましたが、2003年、平成15年は198兆円と、約13兆円の減少となっております。これは主として賞与の減少であろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 給与総額で13兆円のマイナス。その一方、大手企業を中心に経常利益は約九兆円の伸び。これが現実の景気回復の実態ですよ。そのときに、今議論されているのは、サラリーマンの給与を中心としたこの部分に、いわば増税という形で定率減税の縮小、廃止というものが押しつけられるわけであります。これは大変なことなんです。
 大臣にお聞きしますけれども、法人の方は利益が戻って回復している、あのとき実施したのは所得税と法人税の減税なんです、ところが、法人税はもとに戻さない、しかし所得税の方はもとに戻す、これはちょっとバランスがおかしいんじゃないかと思いますが、これは逆じゃないんでしょうか。法人税の方をもとに戻す、所得税はまだ回復していないから増税というのはちょっとやめておこう、こういうのが普通じゃないでしょうか。どうしてこれが逆になっているのでしょうか。
○谷垣財務大臣 恒久的減税と言われたものの中では、定率減税のほかに、今委員がおっしゃいましたような、所得税の最高税率であるとかあるいは法人税の税率の引き下げが規定されたわけです。これは、先ほど景気対策ということを主眼に置いて言われましたけれども、景気対策という、大きな意味では景気をどうやって持続的なものにしていくかということでございますけれども、国際化の進展といったような我が国経済社会の構造変化にどう対応していくかという、その税制の抜本的改革の一部先取りとしてなされたという面があるというふうに申し上げなきゃならないと思います。
 ですから、定率減税は、先ほど申し上げたような景気対策の観点から、それから個人所得課税の抜本見直しまでのつなぎ、こういう二つの面があったわけですが、それとはちょっと違う面があるということをまず申し上げなきゃいけないと思います。
 それで、所得税の最高税率、それから法人税の税率の取り扱いについては、今のような違いも踏まえながら、今後、所得税や法人税のあり方を議論する中で考えていかなきゃならない、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 当時は景気回復ということが非常に緊急課題ということで、所得税の減税、法人税の減税というのが行われたわけですね。性格が違うと言いますけれども、当時の議論は、それぞれ違う性格のものだがという議論はないのです。景気回復を図るというのが一つの柱、もう一つは、抜本的な税制改革が実現するまでの間やるんだと、こういう二つが決められたわけですから。
 それで、景気回復という点で言うと、法人の方は景気回復が着実に進んでいる、利益が上がっている。しかし、庶民の、サラリーマンを中心とした所得はずっとマイナスが続いているわけで、私がお配りした資料を見ていただければわかりますように、11年以後毎年毎年前年比マイナスなんですよ。総額でマイナスだけじゃない、平均でも大体この間174,000円のマイナスになっているわけです。これは本当に大きなマイナスですから、当然、消費全体が冷え込む要因となっている。GDP全体の中でも5割、6割を占めるわけです。
 したがって、何でそこを税率をもとに戻して増税にするのかということが非常に疑問なわけですね。
 先ほど、法人税あるいは最高税率の問題についても検討するとおっしゃいました。今、議論されているんでしょうか、どこでどのような議論がされていますか、具体的に示していただきたい。
○谷垣財務大臣 委員は先ほど、所得税全体の体系を見直していくということも視野に置いて、定率減税だけを着目して議論されているんですけれども、やはり全体の経済構造の変化に伴って、所得税体系のみならず、いろいろな税の体系は不断に見直していかなきゃならない、そういう議論を続けております。それは余りにも一般論ですからちょっと省きますと、結局、先ほどからの委員の御議論は、今回の景気回復局面において、家計をめぐる状況の変化をどうとらえるかという視点から議論しておられるんだと思いますね。
 それで、それを考えてみますと、企業側の雇用に対する過剰感というのがかつては非常にあったと思うんですね。それがようやく解消に向かってきて、有効求人倍率が上がってきている。それで完全失業率も下がってきている。こういう雇用環境の改善がある程度反映して、消費者マインドはよくなってきているという面が一つあると思います。
 それから、所得の面を見ましても、いろいろ資料をお示しになりましたけれども、雇用者所得というのは下げどまってきていると思います。また、勤労収入だけではなく、財産収入とか移転所得も含めた家計の実収入というのはこのところ増加傾向にあるのではないかと思っております。要するに、リストラが一服する中で、企業のキャッシュフローが家計に還流してくる、家計に及んでくるという環境が整ってきたのではないかなと思っております。
 それに加えて、先ほど申し上げたので多くは申しませんけれども、いわゆる不良債権問題、過剰債務問題というのがようやく解消に向かってきて、景気回復が底がたいものになってきている。こういうような状況を踏まえて、定率減税についても所得税全体の見直しの中で議論できる環境になっていると考えているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 環境が整ったと言いますけれども、実際に議論をしているのは定率減税の縮小、廃止だけじゃありませんか。では、最高税率の引き上げ、法人税率の引き上げ、一体どこでどのような議論をしているか、具体的に言ってください。
○谷垣財務大臣 それは、政府税調等の議論を注意深くごらんになっていただければ、随所でそういう議論が行われていることを御理解いただけると思います。
 先ほど定率減税だけが議論になっているというふうにおっしゃいましたけれども、所得税体系全体の中で、やはり基幹税としての国の財政を担っていく機能をどう回復させていくか、それから所得再分配機能というのが所得税の持っている大きな機能でございますけれども、そういったものをやはりもう一回着目する必要があるのではないか、そのようなことが現在でも議論されているわけであります。
○佐々木(憲)委員 税調の中での議論で、法人税を上げる議論、それから最高税率の引き上げの議論は、私が見る限り、調査した限り、一切行われておりません。大臣がそれも含めて議論されていると言いますけれども、そんなことないですよ。議論が行われているのは、定率減税の見直しは景気対策としてやったのに、今やることが果たしていいのかどうかという議論はありますよ、もちろん。しかし、やられていないですよ。
 では、どこでやられているんですか。具体的に示してください。では、その資料を出してください。
○谷垣財務大臣 いやいや、法人税や何かを見直していくという議論は常に行われていますよ。(佐々木(憲)委員「いや、見直しじゃなくて引き上げですよ、もとに戻すというのは」と呼ぶ)いやいや、そういう中で、税率がどうあるべきかとか、そういう議論はあると思います。
 それからまた、いやいや、そこは委員は……(佐々木(憲)委員「じゃ、具体的に出してください」と呼ぶ)具体的にと言って話をそらしてしまわれるけれども、それは違いますよ。(佐々木(憲)委員「そらしているんじゃなくて、それに答えてないから聞いているんですよ」と呼ぶ)それはよくごらんになっていただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 では、具体的に資料を請求します。では、財務省に資料を請求します。委員長、取り計らっていただきたいんですが、法人税のもとに戻すあるいは引き上げの議論、それから、最高税率の引き上げの議論、これが具体的になされているという証拠を資料として、委員長、提出をしていただきたい。
○谷垣財務大臣 佐々木委員の御議論は非常に戦略的に組み立てられておりまして、法人税の議論も、私は、佐々木委員がおっしゃったように、最高税率をどうするとかそういうようなことは直接申し上げたつもりではなくて、法人税全体のあり方は常に見直していかなきゃならない、そういう議論が行われているということを申し上げているのでありまして、それで、佐々木さんの議論は佐々木さんの御関心のところだけにスポットライトを当てておられるように私には感じられます。
○佐々木(憲)委員 問題のすりかえをやられたら困るんですよ。私が聞いているのは、前回の三点セットで行われた減税措置は先ほど言ったような意義があって、今その見直しはそのうちの一つしかやられていない。あとの二つの議論はどうなっているんですか、やっているんですか、やっていないんですかと聞いているんですよ。やっているとおっしゃるんなら具体的な証拠を出してくださいと言っているわけですよ。極めて明確な質問なので、当たり前のことを言っているだけなんですよ。その証拠があるというふうにおっしゃるんだったら出してくださいと言っているんです。極めて単純明快で、しかも正面からの議論なわけでありまして、何もすりかえた議論をやっているわけじゃありませんよ。大臣がすりかえているのでありまして、私が聞いていることに答えないのはおかしいですよ。
 では、資料を出していただけますか。委員長、では、理事会で諮ってください。
○金田委員長 では、理事会で協議させていただきます。
○佐々木(憲)委員 もう質問時間がなくなっちゃったな。
 要するに、私は、今の定率減税の縮小、廃止によって景気にどのような影響が出るか、この試算も実はやっているのかどうかというのを聞きたかったんです。やっていないですね。一般的にいろいろな研究所ですとかシンクタンクが試算をやっておりますけれども、それによると、今そんなことをやったら景気が大変なことになるという議論は行われております。
 ですから、私は、今定率減税の廃止によって国民負担をいきな3.3兆円もやるなんというのは、これはもう全然景気対策からいうと逆行している。むしろやるべきは、担税能力の上がってきた法人税率の引き上げの方が本来やるべきことではないのかということを最後に主張して、時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。

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