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税制(庶民増税・徴税), 景気回復 (定率減税の廃止)

2004年11月16日 第161回 臨時国会 財務金融委員会 【265】 - 質問

「定率減税の廃止・縮小は景気をいっそう危機に陥れる」佐々木議員追及

 2004年11月16日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、景気問題と所得税の増税について質問しました。
 佐々木議員は、日銀が9月に実施した「生活意識に関するアンケート調査」では「1年前と比べて支出を減らしている」人が42.3%にたいして、「支出を増やした」人はわずか6%にすぎないことを紹介。その原因が、国民への負担増のおしつけであり、小泉内閣になって税・社会保障の負担は、昨年度と今年度であわせて7兆円であること、そのうえ、定率減税の縮小・廃止をおこなえば、あわせて10兆円以上もの負担増を強いることを指摘しました。
 佐々木議員は、定率減税の廃止が消費にとってマイナスになると追及。谷垣財務大臣は「景気動向に十分注意をして、議論を進めていかなければならない」と答弁せざるをえませんでした。
 また、佐々木議員は、先に発表された7−9月期のGDP(国内総生産)で、輸出が鈍化し設備投資も減少していることにもふれ、「GDPの5割以上を占めている個人消費が落ち込んだらGDP全体が陥没してしまう。そんな危険な引き金(定率減税廃止)を引いてはいけない」と強調しました。
 11月9日の財務金融委員会で、佐々木議員は、「(所得税の)最高税率の引き上げ、法人税率の引き上げについて、どこでどのような議論をしているのか」と質問しました。これに対して、谷垣財務大臣は、「政府税調等の議論を注意深くごらんになっていただければ、随所でそういう議論がおこなわれている」と答弁。佐々木議員が調べた限りでは、そのような議論がなかったため、その「証拠を資料として提出をしていただきたい」と求めました。
 これに対して、この日の財務金融委員会理事会に、「政府税調議事録」が「証拠」として提出されました。
 この議事録は、まだ公表されていないものです。確かにそれらしき部分がありましたが、大臣答弁の裏付けになるものではありませんでした。
 たとえば、所得税最高税率引き上げについて、軽くふれている発言が2カ所ありますが、まともな議論というものではありません。
 あるのは、“そういう議論をやるとしたら、一挙でないとできない”“所得税を全体として強化する”という発言です。
 これらは、話のついでに出てきた程度のもので、3つの恒久的減税(3点セット)を戻すかどうかという議論は、いっさいおこなわれていませんでした。
 また、法人税の引き上げについては、“表を見ると日本は低い”“だから引き上げろということではなく”と否定しています。これは、引き上げの議論をしていたのではなく、逆の議論です。
 このような議論だけで、3点セットのうち、所得税の「定率減税廃止」(所得税増税)のみが実施に移されようとしているということが明らかになりました。
 しかも、谷垣大臣の答弁は、政府税調の議事録を見た上での発言ではなく、「随所でそういう議論がおこなわれている」など、事実を踏まえない答弁だったことも明らかとなりました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 景気問題についてお聞きをしたいと思うんですが、7―9月期のGDP速報値が発表されまして、ことしの初め、1―3月期のGDPなどと比べますと、そのときは年率6%という話でありましたが、今回は、実質で前期比0.1%増、年率換算でもわずか0.3%増ということでありまして、全体として景気減速というのが鮮明になったというふうに思いますが、谷垣大臣、このGDP統計をどのようにごらんになっておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
○谷垣財務大臣 今、佐々木委員がおっしゃいましたように、7―9のGDP、前期比0.1%ということでありますけれども、これは外需とか設備投資の寄与度がマイナスとなっておりまして、上り坂が続く中での微調整というふうに見ることができるんじゃないか。それから、消費は堅調に推移しているんですが、そういったことがありまして、国内民間需要の増加を中心に景気は回復を続けているということかな、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 上り坂を続けている中での微調整という御発言ですけれども、果たして今後上り坂になるのかどうかというのがいろいろ懸念されているわけであります。
 輸出が鈍化した。設備投資が減少した。そうなりますと、今後の経済成長のかぎになりますのは、GDPの5割強を占めております個人消費、これがどうなっていくかというのが非常に重要だと思いますけれども、そういう認識はおありでしょうか。
○谷垣財務大臣 今委員がおっしゃいましたように、輸出と設備投資が鈍化している。私は、個人消費とおっしゃいましたけれども、外需や設備投資が押し下げているけれども、個人消費が全体の成長率を押し上げているというような状況かなと思っております。
 それで、もうちょっと足元をどう見ているかということを申しますと、輸出は7―9月期においても前期比プラスで推移しておりますし、先行きも、米国を初めとする世界経済が着実に回復しておりますので、輸出は緩やかに増加していくということが見込まれるんじゃないか。それから、企業部門の動向も、企業収益は大幅に改善して企業の業況感も引き続き改善している。それから、日銀短観の9月調査などでも、収益や業況感の回復があることで、企業の設備投資は引き続き前年比で増加する見通しとなっているというようなことがございます。
 したがって、委員が御指摘のように、確かに個人消費は重要なポイントであろうと私も思っておりますけれども、御指摘の点が今後の経済成長が個人消費頼みであるという趣旨とすれば、やや行き過ぎで当たらないのではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 私は、今の大臣の認識というのは相当楽観的だなという感じがいたします。
 今までの、ことし前半のGDPの伸びの大きかった理由としては、やはり輸出が非常に大きかった、それから、それに関連する設備投資が非常に伸びたということが支えだったわけですね。
 消費について申しますと、この前のこの委員会で議論をさせていただきましたが、所得、労働者の所得はむしろマイナスでございまして、消費は総体としては横ばいというのが現状だと思うんです。一時的に、オリンピックですとか非常に夏が暑かったとか、そういう要因で多少変動はありますけれども、しかし、全体としては、消費そのものの傾向というのはかなり停滞ぎみであるというのが私の認識であります。
 個人消費頼みとおっしゃいましたが、やはり個人消費が伸びないと景気が着実に回復していくというふうにはならないという意味で大変重要だ、そういう認識をぜひ持っていただきたいというふうに私は思うんです。
 そこで、日銀に統計をお聞きしたいんですが、これから消費が堅調に推移するかどうかという点でありますけれども、9月に実施した「生活意識に関するアンケート調査」というのがあると思うんですが、その中で、1年前と比べて支出はどうしているのかの回答はどうなっているか、それから、支出を減らしている人の理由ですね、その主な理由四点挙げていただきたいと思います。
○前原参考人(日本銀行企画局審議役) お答えいたします。
 第一の御質問でございます、「生活意識に関するアンケート調査」につきましてですが、「1年前と比べて、あなた(またはご家族)の支出をどのようにしていますか。」との問いに対しまして、「増やしている」との回答が全体の6%、「減らしている」との回答が全体の42.3%、「変わらない」との回答が全体の51.6%でございました。
 二番目の御質問でございますが、「1年前と比べて、あなた(またはご家族)の支出をどのようにしていますか。」という今の問いに対しまして「減らしている」と回答されました方につきましてその理由を尋ねましたところ、回答の多い順に御紹介いたしますと、まず「今後は年金や社会保険の給付が少なくなるのではないかとの不安から」との回答が最も多く、次いで「将来の仕事や収入に不安があるから」、さらに「将来、増税や社会保障負担の引き上げが行われるのではないかとの不安から」とか、「不景気やリストラなどのために収入が頭打ちになったり、減ったりしているから」との回答が続いております。
○佐々木(憲)委員 今御紹介いただきましたように、日銀のアンケート調査によりましても、支出を減らしているという方が大変多いわけでありまして、支出をふやしたというのは6%しかないんです。減らしたという方が42.3%ですから、これは非常に厳しい生活を消費の面でされているということがわかると思うんです。
 そうしますと、なぜ支出を減らしているか、これはいろんな不安があるわけですが、私は、大きく言って今のアンケート調査から二つ挙げられると思うんですね。
 一つは、企業利益は確かにふえておりますが、それが労働者に還元されていない、それが一つのかぎになると思うんです。それからもう一つは、今度は将来の見通しですけれども、税、社会保障負担、これがどうなるかという不安がある。この二つ、つまり、企業側の要因と政府の政策の要因と、二つの問題があるのではないかと思いますが、今後の個人消費の動向を左右するものとしてこの二つの要因というものが重要だと思うんですけれども、大臣の認識をお聞きしたいと思います。
○谷垣財務大臣 消費活動の水準はいろんな要素が総合して決まるんだろうと思うんです。雇用情勢、それから所得環境、そういったところが大事な要素であることは今御指摘のとおりだと思いますけれども、それだけじゃなくて、マインド面やライフサイクルの変化といったようないろんなものも大事な要因になってきておりますので、断定的にお答えするのは難しいんですが。
 今委員がおっしゃった、雇用の方で、要するに雇用面で所得が還元されてきていないというお話がございました。これは前回もお答えしたと思いますが、企業の、何と言うんでしょうか、人が、余剰感といいますか、そういうものもようやく底打ちをした感じがいたしますし、それから、いわゆる失業率や何かも改善してきておりますので、今おっしゃった企業収益がだんだん個人消費の方に及んできている情勢にあるのじゃないかというふうに思います。
 それからもう一つ、今お挙げになったのは、将来不安のもう一つの要因として年金であるとか社会保障制度の先行きはどうなんだということがあろうかと思います。
 それで、多分これはずっとこの間からの委員のテーマでもあるわけですけれども、いろいろな税制やあるいは制度面の見直しがかえって消費を下げているんじゃないかという御指摘が今までもありましたけれども、私は、そこは総合的に見ていただくべきことで、例えば年金についてもマクロ経済スライドみたいなものが入って、ある意味で将来に対する制度的な安心感というようなものが出てくるとか、そういうようなことを全体として見ていただくべきではないかなと思っております。
○佐々木(憲)委員 二つの、企業の要因と政府の政策の要因というのは否定なさらなかったわけですが、その評価が違うわけであります。
 実際に、企業のリストラ収益といいますか、最近の利益の伸び方というのは、人件費を相当抑えて上げてきたというのが一般的な評価であります。その後も、労務費は固定費というふうになって、企業の側としては、それを抑制するというのが基本方針に大手の企業はなっておりますから、そうなると、賃金の横ばい、それから所得の低迷というものは今後も続く可能性がある。その点は我々は企業の側に行き過ぎたリストラというものをしてはならないということを要求していきたいと思っておりますが、問題は、政府の政策で国民の負担がどんどんどんどん重くなっていく傾向がこの間強まっておりまして、この面からくる不安感というものが消費マインドの低迷に相当影響を与えているというふうに思うんです。
 配付した資料を見ていただきたいんですが、小泉内閣になりまして、国民負担を相当これまでふやしてきました。そこに挙げた一覧表を見ましても、こんなにやったかと思うぐらい大変な規模でありまして、昨年までに実施したものだけでも約4兆円あるわけです。それから、今年度予算に盛り込まれたものを見ますと、約3兆円であります。これだけ負担がふえますと、合わせて約7兆円の負担増が昨年来実施されているということになるわけでありまして、そうなると、これは国民の将来にとってまた不安がふえるんじゃないか。先ほどの日銀のアンケート調査でも、その不安が大変大きかった、一番大きかったんですね。
 この負担増、これは、大体こういう実施をしてきたということは事実ですね。
○谷垣財務大臣 この実施したところは、確かにそうでございます。
 それで、実は先ほど委員の御質問をちょっと先取りして答えてしまったかなと思いますが、その見方はいろいろな見方があると思いまして、私どもは、むしろ制度の安定とかそういうものに資する面があった、それが安心感につながる面があるんじゃないか、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 制度の安定に資するというふうに思われてやっている例えば年金の負担増、それが、実は保険料の支払いの人数がどんどんどんどん減っている。つまり、負担をふやせば制度が安定するんじゃなくて、逆に制度が崩壊する危険性を持っているという点を認識していただかないと。これは、ただ取りやすいところからどんどん取ればそれでいいというふうには私はならないと思うので、その点を指摘しておきたいと思うんです。
 その上で、3.3兆円になる所得税の定率減税の廃止、この点について、これは実行いたしますと、昨年来7兆円の負担増なんですけれども、さらに3.3兆円になりますと10兆円を超える大変な負担増になる。この定率減税の廃止ということが消費にとってマイナスになる、マイナスの作用を及ぼすという認識はありますか。
○谷垣財務大臣 所得税構造なり租税構造をどうしていくかという全体の中で私は見ていただくべきことだと思いますが、ただ、定率減税を今度どうしていくかという、見るに当たりましては、景気動向や何かも十分注意をして議論を進めていかなければならないポイントだろうと思います。
○佐々木(憲)委員 慎重にというような答弁でありましたが、私はこれはやるべきじゃないと思うんですよ。これをやったら、今でもこれだけGDPが大変な状況になりつつある、5割以上を占めている個人消費がどんと落ち込んだら、あと輸出も落ち込み、設備投資も落ち込み、消費も落ち込んだら、GDP全体が大変な陥没状態になってしまう。したがって、そういう危険な引き金は引いてはならないというふうに私は思います。
 前回ここで議論をさせていただきました法人税の税率の引き下げ、それから所得税の最高税率の引き下げ、さらに定率減税、これが3点セットで実は数年前に実行された。ところが、議論が、もとに戻すというのは庶民に打撃を与えるような定率減税の廃止ということだけが突出しておりまして、法人税の引き上げの議論や所得税の最高税率の引き上げの議論というものが行われていないんじゃないかというふうに私はここで指摘しました。
 きょう理事会に、それについての税調の議事録というものが出されました。ここに議論が行われている証拠があるんだという御説明でしたが、どうも内容をよく見ますと、それは根拠が明確ではないと思います。
 例えば所得税の最高税率の引き上げ問題は、2カ所ぐらい軽く触れられてはおります。しかし、まともな議論はやっていないんです。そういう議論をやるとしたら一挙でないとできませんねとか、所得税を全体として強化するという中に含まれる程度の話として出されている程度で、それがいいか悪いかの議論は、私はこの議事録を見ても一切行われていないと思いますし、ましてや三つの恒久的減税を戻すという議論の中で行われているわけでもないわけであります。
 それから、法人税について見ますと、国際比較の表を配付して、その中で日本は低いと。法人税は、国際的に見て、日本は欧米諸国と比べて大変低いと。そこまで下げ過ぎたと私は思うんですけれども。しかし、だから引き上げろということではありませんという議論なんですよ、発言をしている方は。したがって、法人税について今後引き上げるという議論をやっているわけではないんです。
 したがって、大臣が前回ここで、議事録を見れば、随所でそういう議論が行われているというふうにおっしゃいましたが、これは事実と違うわけでありまして、所得税の定率減税を廃止するということだけに結論を持っていって、それだけを実行するというのは余りにもバランスに欠けるのではないかというふうに思います。したがって、この点は慎重に取り扱うべきだというふうに思いますが、私は、所得税を事実上中堅サラリーマンに増税するということは今やるべきじゃないと思いますが、最後に大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○谷垣財務大臣 政府税調の中の所得税の最高税率をどうするかとか、あるいは法人税率をどうするかという議論についてお触れになりました。これは触れていると長くなりますので、きょうはそこは省かせていただきますが、定率減税については、これはこの前もお答えしたことでありますけれども、やはり二つ考えなきゃならない要素が私はあると思っております。
 一つは、あの小渕内閣、平成11年当時の危機的な景気状況、これを何とか挽回しなきゃならないというための施策であったということは間違いありませんから、その状況を乗り越えられているかどうかというのは、やはり一つ大事なポイントでございます。
 それからもう一つは、所得税をもう一回抜本的に見直していく必要がある、その中でともに定率減税の問題は議論していこうと。前回は全体の見直しまでのつなぎということでございましたから、全体の見直しをやらなきゃならない環境にも来ていると思うんです。それは、前回も申し上げたことの繰り返しで恐縮でございますが、基礎年金をどうするかという問題、それから三位一体の財源をどうするかという問題の中で所得税体系は考え直していかなきゃいかぬというのが一つあります。
 それから、景気に関しては、あの当時の状況から随分変わってきて、当時足を引っ張っていた構造的な要因である不良債権処理はようやく乗り越えつつあると思いますので、私は十分議論できる環境になってきていると思います。この辺は佐々木委員とは見解を異にすると思っております。
○佐々木(憲)委員 危機的な景気状況を挽回するということで3点セットの恒久的減税というのが行われて、しかし、それを見直すというふうになりますと、むしろ法人税の方は担税能力がふえているわけですから、そちらの議論をすべきであって、庶民に負担を負わせるというやり方は正しくないということを、もう時間がありませんので、最後に指摘をさせていただいて、質問を終わらせていただきます。

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