2004年11月17日 第161回 臨時国会 財務金融委員会 【266】 - 質問
不当な先物勧誘、禁止へ 佐々木議員が「実効性高めよ」と要求
2004年11月17日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、被害が急増している「外国為替証拠金取引」の規制を盛り込んだ金融先物取引法改正案ついて質問しました。
外国為替証拠金取引は、顧客が業者に高額の委託証拠金を預け、それを元本に業者が外貨売買を行い、為替相場の変動を利用して差益を得ようとする取引です。取引額は、委託証拠金の十倍にもなり、相場変動が予想に反した場合、顧客は元本の全損やそれを超える損失を被る非常に危険性の高い取引です。国民生活センターは、専門知識のない一般消費者は手を出さないよう助言しています。
佐々木議員は、国民生活センターに寄せられた相談件数が1998年に5件だったものが、2002年には高齢者を中心に724件に急増していると指摘。「業者を取り締まる規制法も監督官庁もなく、放置してきた政府の責任は重大だ」と批判しました。
外国為替証拠金取引が可能となった1998年の外為法改定の際に、日本共産党が危険性を指摘したにもかかわらず、政府は「特定業務に着目した監督は全面的に放棄する」(旧大蔵省)などと監督責任を投げ捨てていた事実を指摘。責任を認めようとしない伊藤達也金融相に対し、「認識の甘さなどをふりかえって検証しないとまた同じことが起こる」と批判しました。
今回の改正案では、金融庁を監督官庁とすること、専門知識に乏しい消費者への不当な勧誘や勧誘を求めていない一般消費者への勧誘を禁止することなどを盛り込んでいます。
その上で、「改正法の実効性を高めるための措置をとることが大事だ」と要求。伊藤金融相は「検査・監督を行い、実効性の確保をはかっていきたい」とのべました。
この日、金融先物取引法改正案は全会一致で可決しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
外国為替証拠金取引というのは、1998年4月の外為法改正によって可能になったというものであります。具体的な被害の実例は、既にこの委員会の質疑の中で各委員も触れられております。私は、余り具体的な事例を紹介する時間がありません。
そこで、資料を見ていただきたいのですが、これは相談件数ですけれども、国民生活センターに寄せられた被害の統計でございます。98年度、これは5件でありました。2000年度になりますと28件、2002年度には724件、大変被害の拡大が見られるわけですが、さらに、2003年、これは半年だけでも381件でありまして、前の年の同じ時期と比べましても2倍にふえているわけであります。これは大変なふえ方で、しかも契約当事者は高齢者が大変多い、その下の方のグラフを見ていただいても、60代、70代、80代、90代まで、かなりの数に上っているわけでございます。
そこで、伊藤大臣にお伺いしますけれども、先ほどの答弁でも、金融商品販売法の政令などでこういう商品も規制の対象に織り込んだんだというようなお話がありましたが、それでもなお、これだけ最近急増しているというところに非常に重大な問題があると思うんです。その理由をどのようにお感じになっているか、お答えをいただきたいと思います。
○伊藤金融担当大臣 お答えをさせていただきます。
金融審議会の第一部会の報告書においても、外国為替証拠金取引をめぐるトラブル、被害の増加の主な原因として、業者の執拗な勧誘、そして断定的判断の提供、説明不足、無断売買等の不公正な取引、そして決済後の資金遅延等が指摘をされているところでございまして、また、委員御指摘のとおり、被害者の中では高齢者の占める割合が高いというふうに承知をいたしております。
こうしたことが起きている原因でありますけれども、やはりこうしたものをしっかり取り締まっていく、規制をしていくものがなかったということと、そしてそれを担当する官庁がなかったということも大きな原因の一つではないかというふうに思っております。
そうした問題意識の中で、私どもとして、投資家保護の観点から、外国為替証拠金取引業者について登録制というものを導入して、そして顧客を保護するための必要な規制の整備を行うことを目的として本法律案を提出させていただいて、今御議論をいただいているところでございます。
○佐々木(憲)委員 これだけ被害がふえた理由として、この商品を規制の対象にしていなかったということ、それから監督官庁が明確じゃなかったということでありますが、しかし、外為法の改正の際に、こういう事件というものが発生し得るということは、実は我々も委員会で指摘をしてまいりました。
7年前でありますけれども、大蔵委員会で私は、これは平成九年4月9日であります、取引の実態を把握しその適法性をチェックするというこれまでの有効な手段を失うのではないか、あるいは、予想をはるかに超えた非常に大きな変動になって、つまり投機的な市場に一変する、このことが実体経済に極めて大きな被害を与える場合が生まれるのではないか、こういうふうにお聞きしました。
それに対して、当時の大蔵省国際金融局長がどう答えたかというと、「外国為替という特定の業務に着目した監督というものについては、今回、全面的に放棄するということでございます。」と。つまり、監督はもうやらないんですというのが当時の答弁だったわけであります。
また、同年の4月15日の大蔵委員会で、当時の我が党の佐々木陸海議員が「外貨建ての金融商品や、それと先物を組み合わせた複雑な金融商品などが出回り、その取引をめぐるトラブルの発生や不正取引による個人の投資家の被害も予想される」ということを指摘しまして、この問題について、はっきりと規制をかけないでいいのかという質問をしたわけです。
これに対する答弁はどうだったかというと、「外為業務のみに着目して投資家保護を行うということは今後しない」、それから、既存の法制で対応できる、「法整備がされていないということにはならない」というような答弁が行われたわけであります。
当時のこういう答弁あるいは政府の姿勢が、その後、監督官庁も不明確にし、かつ対象となるさまざまな商品に対する規制がおざなりになるといいますか十分行われなかったという原因になっていたのではないか。ですから、当時のそういう、政府のこの問題についての姿勢というものが非常に大きな原因となっていたのではないかと思いますけれども、当時のこの答弁についての大臣の現在の認識といいますか、御見解をお伺いしたいと思います。
○伊藤金融担当大臣 平成10年の外為法の改正については、先ほど来委員会でも答弁をさせていただきましたように、国際化、グローバル化の流れの中で、金融ビッグバンというものを見据えてこうした改正をしていくということは非常に大切なことではなかったかなというふうに思っております。
そして、平成10年、委員の示された資料を見ても、この当時は現在のようなトラブルは生じておりませんでした。ここ2年、こうしたトラブルが増加をしてきたわけであります。
私どもとしても、外国為替証拠金取引、こうした取引の実態に合わせて、まず、これまでも、金融商品の販売等に関する法律の対象となるよう、施行令を、本年の2月4日に公布、4月1日に施行させていただきましたけれども、改正するなど、外国為替証拠金取引を行う顧客の保護を図るための措置というものを行ってきたところでございますし、また、近年のこうしたトラブルの実態に即した形で今回の法律を金融審議会の議論を経て取りまとめさせていただいて、国会に御審議をお願いしているところでございます。
○佐々木(憲)委員 どうも、当時の政府の姿勢について、反省といいますかそういうものが見られないんです。今御答弁があった、新しい措置をとったというのはことしの話でしょう。ことし金融商品販売法の中の施行令ですか、これで規制と。これは遅いわけです。
つまり、監督はしません、新商品についての規制は特に行う必要はありません、従来の法体系で十分ですと言っていた政府のそういう姿勢がこれだけ被害をふやしてきた。
ですから、そこのところの反省といいますか、これはおくれてちょっとまずかったなという考えは全くないんでしょうか。すべて正しかった、こういう考えなんでしょうか。
○伊藤金融担当大臣 やはり非常に大切なことは、金融取引の実態というものに即した適切なルールというものを整備していくということが大変重要なことだというふうに考えております。
先ほど来答弁をさせていただいておりますように、平成十年のときには今のようなトラブルが起きてはおりませんでしたし、また、こうしたトラブルが起きることは想定がされていなかったんではないかというふうに思います。
そして、私どもとしても、その取引実態に即した形で、先ほど来お話をさせていただいているような対応をしてきたところでございますけれども、今現在、こうしたトラブルが急増しているわけでありまして、そうしたことに対する問題意識の中で、今回こうした法律の御審議をお願いし、早期に成立をさせていただきたいということをお願いさせていただいているところでございます。
委員から厳しい御指摘がございましたように、やはり取引実態をしっかり見た適切な行政をしていくということは極めて重要なことだというふうに思っておりますので、そうした問題意識を持ってこれからもしっかりとした対応を行っていきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 当時から、こういう事態が生まれる可能性があるということで、我々は国会で問題にし、そういう問題についての規制がないとこれは大変なことになるよ、被害がふえる、トラブルがふえると言ってきたんですよ。7年前ですよ。当時は被害が少なかったと、もちろんそれは商品が少ないし業者も少ない。しかし、その可能性があるという指摘をしていたわけですよ。それを、そんなことはないんだ、従来の法整備で十分なんだ、監督はしないんだというのが大体自由化なんだということでやってきて、その結果、今になってこのような事態になってきたわけです。その辺の反省が全然見られないわけですね。多少は反省というような気持ちはあるんですか、多少はあるんですか。
○伊藤金融担当大臣 先ほど来答弁をさせていただいておりますように、やはり大切なことは、取引実態に対応した適切なルールというものをしっかりとつくり上げていくことだというふうに思っております。
当時については、やはりこれからマーケットがどういう形で行われていくのか、取引がどういう形で拡大をしていくのかということが十分予想されていた状況ではありませんでした。ただ、そうした当時においても、やはり投資家保護ということは非常に重要なことでありましたから、そうした中で、当時の状況の中で適切な対応がなされてきたというふうに思っております。
しかし、現在、ここ2年間、やはりトラブルが急増していることは事実でありますし、こうしたトラブルを解消していくための適切な措置をとっていかなければいけないということで、金融先物取引法の一部改正の御審議をお願いさせていただいているところでございます。
これからも、私どもとして、取引実態というものをしっかり見て、そしてそれに対する適切な対応というものをやっていかなければいけない、そういう問題意識を持って行政に臨んでいきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 適切な対応をしてきたら、こんなに被害がふえないでしょう。適切な対応をしていなかったからトラブルが急増しているんですよ。適切な対応して、それだったらこの法律を出す必要はないでしょう。今まで適切な対応をしていた、それでいいじゃないですか。なぜ法律を出したかと言えば、政府の今までの対応では足りないから出してきたんでしょう。なぜ足りなかったのか、そこを分析し、当時からどういう議論が行われていたか、自分たちの認識が甘かったのか、そういうことを振り返っていかないとまた同じことを繰り返しますよ、我々がやったのはすべて何でも正しかったと言うんじゃ。ですから私は、どうも伊藤大臣は開き直ることばかりで、何か書いたものを読むだけで、全然気持ちが伝わってきませんね。
もう一つお聞きしますけれども、この法律をつくって、これを実行していくということが大変重要でありますが、果たして法律がつくられても実効性が担保できるかどうか、これが大事なんですね。今回、不招請勧誘の禁止とか適合性原則の遵守というものが盛り込まれた、これは大変大事だと思います。果たして、それが効果が上がるように運用されるのか、実行されるのか、これが非常に重要だと思いますけれども、この点での決意を具体的な措置も含めてお聞かせいただきたい。
○伊藤金融担当大臣 委員御指摘のとおり、実効性を確保するということは大変重要なことだというふうに思っております。
法案が成立した後は、明確なルールに基づいた業界への指導を含む適切な検査監督を行って、そして規制の実効性というものを確保していきたいというふうに考えているところでございます。
このため、金融庁といたしましては、平成17年度機構・定員要求において、外国為替証拠金取引に係る顧客保護のための体制整備を図るとともに、検査対象の拡大へ対応するという観点から必要な定員の要求を行っているところでございます。
そして、外国為替証拠金取引については、これまでも証券会社についてガイドラインの策定などにより顧客の保護を図ってきたところでありますけれども、本法律案が成立した後は、当該法律にのっとって、そして適切に業務が行えるよう必要な処置を講じるとともに、法令違反行為については、これを的確に把握して、そして厳正な対処を通じて規制の実効性というものを確保してまいりたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 時間が来ましたので終わります。
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