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金融(銀行・保険・証券) (銀行の収益性, 銀行公的資金注入, 中小企業融資, 金融消費者保護, 偽造・盗難キャッシュカード問題)

2005年05月17日 第162回 通常国会 財務金融委員会 【302】 - 質問

「中小企業向け貸出の計画を達成せよ」「預金者を守るという立場に立った対応が必要だ」 佐々木議員主張

 2005年5月17日、財務金融委員会で佐々木憲昭議員は、公的資金注入行の「中小企業向け貸し出し」について質問しました。
 公的資金注入行は、毎年、中小企業向け貸出などの目標と、半期ごとの履行状況を金融庁に提出しています。
 2004年9月の実績をみると、これまで中小企業向け貸出に問題があるとして「業務改善命令」を受けてきた3グループが、また計画にたいしてマイナスになっています。
 UFJは、過去2回の業務改善命令をうけ、去年も指摘されているのに、計画に約2000億円足りず、また未達成になりかけています。
 みずほは、03年に業務改善命令を出されたことで、04年3月までに前年より2000億円も増やしましたが、今回は、計画にたいして約6000億円足りません。
 りそなも、計画に対して約2300億円下回っています。
 この3グループをあわせて、05年3月までに1兆円以上増やさないと目標を達成できません。
 みずほやUFJの履行状況に関する報告書(04年9月)には、「金融再生プログラムの最終年度で、不良債権処理の完了にむけた取り組みを行っていて、低格付先の残高が減少したから、中小企業向け貸し出しが減少した」と書かれています。
 佐々木議員は、「不良債権処理が、足を引っ張っているということではないか」と質問したのにたいし、金融庁はまともに答えられませんでした。
 また、地銀、第二地銀については、収益が足りない事にたいして「業務改善命令」は出されていますが、中小企業向け貸出についての「業務改善命令」は出されていません。
 佐々木議員は、「地銀、第二地銀は、特に地域密着型金融機関(リレーションシップバンキング)として、中小企業向け貸出の役割が大きいのではないか」と改善をもとめました。



 続いて、佐々木議員は、金融庁の偽造キャッシュカードに関するスタディグループの「中間とりまとめ」に関連して質問しました。
 副題が「盗難キャッシュカード被害に対する補償を中心として」となっており、偽造キャッシュカードに限定せず、対象を広げようとしています。
 この報告書では、「諸外国においては、実務上、原則として、偽造・盗難の区別なく補償を行っている場合がほとんどである」と書いてあります。
 ここで改正案として「偽造・盗難キャッシュカード被害に対する損失負担ルール」が出されています。
 銀行に全額負担をもとめるには、「預金者の過失」がないということを「預金者が疎明」するということになっています。
 つまり、自分で過失がなかったことを説明し、そのうえで、銀行がそれを認めてはじめて全額銀行負担による補償が受けられるということになっています。
 預金者が「疎明」できるかどうか、銀行がそれを認めるかどうか、この2つをクリアしなければ、銀行と預金者の負担が50対50ということになってしまいます。
 佐々木議員は、「銀行の負担逃れという傾向に拍車をかけかねない。この問題は、しっかりと預金者を守るという立場に立った対応が必要だ」と主張しました。
 また、佐々木議員は、盗難カードに視野を広げたことは一定の評価に値するが、今後は、盗難預金通帳、印鑑の偽造などにも視野を広げるべきだと主張しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。
 私は、公的資金注入行の中小企業向け貸し出しについてお聞きをしたいと思います。
 まず、伊藤大臣に基本的な立場をお伺いしますが、銀行が金融庁に出した中小企業向け貸し出し計画、これは達成するのは当然だと思うんですね、金融庁はそれを促すように指導するというのは当たり前だと思いますが、まず基本見地をお伺いしたいと思います。
○伊藤金融担当大臣 資本増強行のうち、16年3月期末の中小企業向け貸出残高が前年度末に比べて減少となった主要行は一先、そして地銀が3つに対して、銀行法24条に基づき、中小企業向け貸し出しが減少した理由及び今後の取り組みの状況について報告を求め、その内容についてヒアリングや精査を行っております。
 各行からは、中小企業向け貸し出しの減少理由について、貸出先企業における財務リストラによる借入金の圧縮、そして大企業グループ全体における財務リストラに伴う傘下中小企業の資金返済などの要因が大きいものと説明を受けているところでございます。また、今後の取り組みについては、各行とも営業店別の残高目標の設定、その達成度合い等の業績評価への反映、そして進捗の芳しくない営業店への臨店指導、無担保貸し出し等の新商品の投入など、計画達成に向けた取り組み努力が認められているところであります。
 金融庁といたしましては、こうした事情を踏まえて、また中小企業向け貸し出し減少等も勘案して、今後の履行状況を引き続きフォローアップしていくこととしたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 私は具体的な事実関係をお聞きしたのではなくて、基本的な姿勢をお聞きしたので、まあ結構です。
 それで、配付した資料で明らかなように、昨年3月に前年を下回ったのは4グループで、未達は5グループでありました。当然、業務改善命令を出して中小企業向け融資を改善させることが必要であり、それをやったと思いますけれども、その点はいかがですか。中小企業向け貸し出しに関する業務改善命令、これは02年10月にUFJとあさひ、03年1月にみずほ、04年6月にはUFJに対して出されていると思いますが、これは事実ですね。
○伊藤金融担当大臣 過去の業務改善命令の発出については、今委員御指摘のとおりでございます。貸し出し増強への取り組み等から見て、みずから的確に履行しようとしていないと認められた場合には業務改善命令の発動を検討することとしている、これは平成11年9月30日、金融再生委員会が公表した基準でございますが。
 先ほどもお話をさせていただいたように、各行の報告を精査した結果、計画達成に向けた取り組み努力が認められていることから、計画をみずから的確に履行しようとしていないと認められた場合には当たらないと判断をし、今後の履行状況を引き続きフォローアップしていくこととしたものでございます。
○佐々木(憲)委員 表のように、2004年9月の実績、今公表されているのがその数字ですけれども、これまで業務改善命令を出されてきた3グループがまたマイナスになっているんですね。しかも、UFJは2回の業務改善命令を受け、昨年も指摘されていたのにもかかわらず、約2,000億円足りない、未達であります。みずほは03年に業務改善命令を出されたことで、昨年3月までには計画も2,000億円、実績も超過達成、頑張ったようだけれども、今回はまだ約6,000億円も足りない。りそなも、03年3月と04年3月は達成したけれども、今回は2,300億足りない。もちろん、9月ですから、3月までにさらに上乗せということなんでしょうけれども、しかし、この3つのグループを合わせて、ことし3月までに1兆円以上ふやさないと目標を達成できないわけであります。そろそろことし3月の集計が出るはずですが、本当にこれは可能なんでしょうか。この点をお聞きしたいと思います。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) ただいま御指摘いただきましたように、この中小企業向け貸し出しは通期でとらえるという原則になっておりまして、17年3月期を見るわけでございますけれども、この3月期の実績値、決算の計数を前提としてまとめますので、またさらに決算の数字から具体的な確定作業を経て当局で取りまとめるということでございますので、現時点では確たることを申し上げることは困難であるというふうに思います。
 先ほど、基本的に3月期で判断するけれども、16年9月期について減少の傾向を示しているという御指摘もございました。この点につきましては、私どもちょっと情勢をヒアリングいたしましたところ、減少理由につきましては、貸出先企業における財務リストラによる借入金の圧縮であるとか、あるいは大企業グループ全体における財務リストラに伴って傘下中小企業の資金返済があったといった要因が大きいという報告を受けておるところでございます。
 ただ、今後の取り組みが重要でございますので、その点についてもヒアリングをしておるわけでございますけれども、今後の取り組みにつきましては、例えば営業店別の残高目標の設定、その達成度合いを業績評価に反映させるといったこと、あるいは進捗の芳しくない営業店への臨店指導、さらには中小企業向け貸し出しの専担チームあるいは推進拠点の増強、無担保貸し出し等の新商品投入、こういった努力が認められるということでございまして、3月期に向けてこの成果が具体的にあらわれてくるということを期待いたしておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 3月期に向けてと言うけれども、もう3月期は終わっているんですからね。
 みずほやUFJの履行状況に関する報告、去年の9月を見ますと、こう書いてあるんです。金融再生プログラムの最終年度で不良債権処理の完了に向けた取り組みを行っていて、低格付先の残高が減少したから中小企業向け貸し出しが減少したという趣旨。つまり、不良債権処理の時期がことしの3月で終了する、したがってそれに向けて目標を達成するためにやる、したがって格付の低いところは貸し出しが減るんだということで、いわば開き直りのような対応をしているわけであります。
 ですから、これは中小企業向け貸し出しが計画どおり達成できない理由に不良債権処理を挙げている、こういうことであります。どちらを優先するんですか。中小企業向け計画を優先的に達成するようにというのが当然だと思いますが、大臣、いかがですか。
○伊藤金融担当大臣 私どもとして、問題があれば報告を徴求し、ヒアリングをし、その中身を検証していくわけでありますけれども、その中で、計画をみずから的確に履行しようとしているかどうか、この点を検証していくわけであります。
 そうした中で、今まで各行から聞いている中で、先ほど私も答弁をさせていただき、あるいは監督局長からも答弁をさせていただきましたが、営業店別の残高目標というものを設定する、そしてその達成度合い等の業績評価への反映、進捗の芳しくない営業店への臨店指導、無担保貸し出し等の新商品の投入、こうした取り組みを行っているということが認められているところでございますし、また、17年3月期につきましても同じようにこうした取り組みというものがしっかりなされているかどうか、その履行状況というものを引き続きフォローアップしていきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 不良債権処理が足を引っ張っているのではないかということを私は聞いているわけです。大臣の答弁は、今2回同じ答弁があり、また局長の答弁も同じ答弁なので、3度同じことを繰り返されても質問に答えたことにならないですよ。
 地銀、第二地銀についても、業務改善命令で収益が問題だということを出されていますけれども、しかし、中小企業向け貸し出しの業務改善命令は出ていないわけですね。目標より2けた違うようなマイナスがある、しかも連続して未達状況にある。こういうところには当然業務改善命令などの措置をすべきだと思いますけれども、特に地域密着型の金融機関として、地銀、第二地銀というのはそういう役割が大きいと思いますけれども、いかがでしょうか、大臣。
○伊藤金融担当大臣 基本的には、中小企業向け貸し出しの増加計画が未達となって、中小企業向け貸し出しが減少している資本増強行に対しては、報告を徴求した上で必要に応じ業務改善命令を発出するなど、これまでも厳正に対処しているところであります。今後とも、中小企業向け貸し出し目標の未達については、こうした措置を適切に講じて、そして目標達成に向けた取り組みというものを促してまいりたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 数字が出た段階でもう一度ただしたいと思います。
 次に、偽造キャッシュカード問題について簡単に質問をしたいと思います。
 スタディグループの中間取りまとめというものが最近出されました。副題が「盗難キャッシュカード被害に対する補償を中心として」となっておって、偽造だけではなくて対象を広げるということは当然であったと思います。そういうことは必要だと思います。この報告は、諸外国では「原則として、偽造・盗難の区別なく補償を行っている場合がほとんどである」というふうに書いております。私は、日本でも当然そうあるべきだと思っております。
 具体的にお聞きしますけれども、改正案として出されている偽造、盗難キャッシュカード被害に関する損失負担ルールというものがあります。これによると、3つのケースに分かれていまして、銀行に全額負担を求めるケースの場合は、預金者の過失がないということを預金者が疎明する、疎明というのは、自分で過失がなかったことを証明するということらしいんですけれども、その上で銀行がそれを認めて初めて全額銀行負担になる、そういう仕組みだというのですけれども、これはそういう考えでいいかどうか。
 それから、こうなりますと、疎明できるかどうかというのが1つ、それから、銀行がそれを認めるかどうか、2つの問題をクリアしなければいけないわけですね。そういうことになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) 今回、スタディグループで第2次中間取りまとめが行われました、盗難カードに関する補償のあり方のルールにつきまして、預金者に過失がない場合に金融機関が全額負担するというケースについての御指摘は、今御指摘いただいたようなことで整理をされております。
 それで、これの考え方でございますけれども、金融機関への速やかな届け出であるとか、あるいは警察への被害届であるとか、金融機関による調査への全面的協力、こういったことを条件として、届け出の一定期間前以降に発生した被害について、仮に金融機関に過失がない場合であっても、1つは原則として預金者と金融機関が50%ずつ負担する。ただし、預金者が無過失の場合、今の場合でございますけれども、金融機関が全額を負担する。他方で、預金者が重過失の場合、この場合には預金者が全額負担することが望ましいのではないか、こういう整理にいたしております。
 ということで、預金者の無過失が認定された場合には金融機関が全額を負担する、こういう部分が入ってございますけれども、一般的に、キャッシュカードが盗難されて現金が引き出されるに至った事情につきましては、無過失を立証するということは預金者にとって非常に難しいことであろうかと思います。こういったことにかんがみまして、第2次中間取りまとめにおきましては、預金者は自己の盗難の状況等について可能な限り合理的な説明を金融機関に対して行い、金融機関において一応確からしいとの心証を得た場合、いわゆる疎明の状態でございますけれども、この場合には預金者の無過失を認定することを基本とすべきではないか、こういうふうに整理をいたしております。立証責任ということではなくて疎明を求めるというところで区別をしているという点が、1つポイントであろうかと思います。
 それから、預金者に過失がある場合の標準的なケースで、預金者は損害の50%を負担することというふうにしておるわけでございますけれども、これの考え方といたしましては、一方で預金者にはカードが盗難されたことについて何らかの過失があると推認されるケースが多いということがあろうかと思いますが、一方で金融機関にはシステム提供者として預金の安全性への信頼にこたえる責務があるということで、双方に損害発生の責任がそれなりにあるということで、原則双方が損失を負担すべきではないか、これが標準的なケースではないかというふうに整理をしたわけでございます。
 これは実務上の実行可能性ということについても着目をいたしたものでございまして、これらの標準的なケースも含めてすべての盗難被害について個々のケースごとに立証作業を行うということになりました場合には、預金者、金融機関双方にとって実務上の負担が極めて大きくなるということで、争いの長期化ということで、結果的に預金者保護に資することにならない可能性があるのではないかという問題意識でございます。
 それから、もう一点御指摘のございました、海外においては原則として偽造と盗難の区別なく補償を行っているという点でございますけれども、そういうケースがほとんどであるという御指摘でございますけれども、諸外国におきましては、例えばEU諸国のように国境を越えた移動が容易であるといった事情から国外で引き出されるケースが非常に多いということで、具体的な調査が容易でないといったことがあるといった事情、あるいはATMの引き出し限度額が低く設定されているということで1件ごとの損害額が低くなっている、こんな事情があろうかと思います。我が国の場合にはちょっと状況が異なるということで、単純な比較はできないのではないかというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 もう時間が参りましたので終わりますが、非常に中途半端だと思うんですね。銀行というのはもともと預金者の預金を保護する、守るというのが第一義的な仕事であって、その角度からいいますと、どうも銀行負担を逃れようという傾向が銀行自身の発言の中に非常に強い。それから、それを反映しているのかどうか知りませんけれども、50対50というようなところですね、この仕組みを適用しますと、疎明が十分ではないと銀行が判断すれば50対50で半分は預金者の負担だ、こういうふうになってしまうんですね。ほとんどそういうことで、銀行の負担逃れという傾向に拍車をかけかねないという点がありますので、私は、この問題は、原則的にやはりしっかりと預金者を守るという立場に立った対応が必要だ、詳しくは言いませんけれども、この点を主張したいと思います。
 盗難はカードだけではありません、盗難は預金通帳も盗難ですし、あるいは偽造といえば印鑑の偽造というのが非常に自由にできるような状況に今なっている。そういう問題も含めて預金者を守るということをしないと、一体金融庁はだれの味方なのか、銀行の味方じゃないはずだということで非常に批判が強まる可能性がありますので、この点、きょうは時間がありませんので、引き続き議論を続けていきたいと思っております。
 以上で終わります。

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