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金融(銀行・保険・証券), その他 (金融のバリアフリー, 郵政民営化)

2005年06月21日 第162回 通常国会 郵政民営化特別委員会 【310】 - 質問

郵便局100%設置の視覚障害者対応ATM 民営化で「コスト次第」に 佐々木議員追及

 2005年6月21日郵政民営化特別委員会で、佐々木憲昭議員はATMの障害者対応について質問しました。

 最初に、佐々木議員はユニバーサルサービスについて、麻生総務大臣に確認しました。
 郵政審議会が、1996年に出した最終答申「郵便局ビジョン2010」では、「(1)全国あまねく、(2)いつでも、(3)公平に提供される、(4)生活基礎サービス、すなわち、ユニバーサルサービス」と定義しています。
 麻生大臣は「基本的にはその通りだ」と答えました。
 障害者や高齢者に「やさしく利用しやすい」ということも、金融のユニバーサルサービスの重要な内容です。これが、郵政民営化でどうなるかが問題となります。
 そこで佐々木議員は、郵政公社に「郵便貯金業務の視覚障害者対応がどのようなものになっているか」をただしました。視覚障害のある方々への点字サービスやATMが、きめ細かくおこなわれていることが明らかになりました。
 佐々木議員は、銀行の障害者対応ATMは、どこまで進んでいるのか、伊藤金融担当大臣に数字を確認しました。伊藤大臣は、銀行の視覚障害者対応のATMは、ようやく1割を超えたところだと認めました。
 佐々木議員が、2004年5月に財務金融委員会で取り上げるまでは、金融庁は実態調査すらしていませんでした。しかも、銀行がいま取り組んでいるのは、視覚障害者対応のものだけです。手が震えてしまうような障害を持った方はタッチパネルの利用が困難であったり、車椅子を利用している方には操作画面の位置が高いということで使えないことが多いのです。
 郵政公社では、このような障害を持った方や高齢者の方々にも使いやすいように、操作画面を大型化したり手すりをつけるなど、工夫した設計をしています。
 佐々木議員は、伊藤大臣にたいして、公社は100%視覚障害者対応となっているのに「なぜ銀行では1割程度しか進まないのか。その理由はどこにあるのか」と質問。これにたいして、伊藤大臣は「コスト等の理由により」すすんでいないと、率直に答えました。
 続けて佐々木議員は、「公社が100%視覚障害者対応になっており、さらに改善を続けている。その理由はどこにあるか」と、麻生大臣に質問。麻生大臣は「“公”という意識の問題だ」と答えました。郵政公社は、公共性があるので、障害者対応をきちんとできるということが明らかになったのです。
 現行の「郵便貯金法」では、その目的を規定した第1条で、「郵便貯金を簡易で確実な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用されることによって、国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする」と書いています。
 この「郵便貯金法」を廃止し、民営化によって郵便貯金を民間銀行なみに変質させれば、せっかく進んでいる障害者対応が、銀行並みに崩れてしまいます。
 佐々木議員は、「障害者や高齢者が使いにくくなるような、ユニバーサルサービスをはずす郵政民営化には、断固反対だ」と主張しました。



 次に、株式保有と国の関与について質問しました。
 佐々木議員は、郵政民営化によって、政府が株式保有の3分の1を超える日本郵政株式会社ができた場合、郵貯銀行、郵便保険会社は、このグループから切り離すことになるのか、それともグループ経営を認めるのかを質問。
 竹中大臣は、「持ち株会社は、移行期間中に、郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式を完全に処分しなければならない」と答えました。
 佐々木議員は、「完全な処分とは何か」を追求しました。竹中大臣は、「それ以降は、経営判断として取引の安定化等々のために民間と同様な形で株を持つような場合があるとすれば、法律で排除するものではない」と答えました。
 佐々木議員は、「処分100%というのはある一瞬間だけ。実質的にはずっと継続している、グループ経営が可能になる」、「言っていることと実態が違う」と批判しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、総務大臣にお伺いをしたいと思います。
 ユニバーサルサービスとは何か、郵政審議会が数年前に出した答申に「郵便局ビジョン2010」というのがありまして、こう定義をしております。総務大臣、聞いていますか。全国あまねく、いつでも、公平に提供される生活基礎サービス、すなわち、ユニバーサルサービスと定義をしておりますが、基本的にはこのとおりだと思いますが、いかがですか。
○麻生総務大臣 基本的に、貯金法の趣旨を踏まえて、これは公社の努力によるところも多いんだとは思いますけれども、今、よく言われるように、例えば障害者の対応等々、いろいろ、明確に法令において措置されておらぬではないかとか、いろいろな今御質問に関連したところがいっぱい出てくるんだと思いますけれども、郵便貯金というのをあまねく公平に利用していただくために、公社がみずからの判断で努力していくものと考えるということだと存じます。
○佐々木(憲)委員 いや、私が聞いたのは、ユニバーサルサービスの定義を聞いたんです。全国あまねく、いつでも、公平に提供される生活基礎サービスという定義、これは数年前の郵政審議会が出した答申に出ておりますが、こういうことですねと聞いたんです。
○麻生総務大臣 済みません。聞き間違えました。
 定義としては、今言われた基本的な定義と変わっておりません。
○佐々木(憲)委員 障害者や高齢者に優しく利用しやすい、これも金融のユニバーサルサービスの重要な内容であります。これが郵政を民営化したらどうなるのかという点です。
 まず、公社に現状を確認したいと思います。
 郵便貯金業務の視覚障害者対応についてお聞きをします。視覚障害者へのサービスとしてはどのような点字サービスがあるか、まずお答えをいただきたいと思います。
○斎尾参考人(日本郵政公社理事) お答えいたします。
 郵便貯金では、すべてのATMにつきまして、目の不自由な方にも御利用いただけますように、タッチパネルのほかに、点字表示をした押しボタンによりまして操作ができるようにしております。また、カードや紙幣の出し入れ口などがわかるように点字表示を行っているほか、ATM本体の受話器や備えつけのイヤホンによりまして、操作方法の御案内やそれから取扱金額などを音声でお知らせしております。
 このほか、目の不自由な方のために、郵便貯金や簡易保険の取扱内容や満期につきまして点字でお知らせをしたり、あるいは、点字や文字を大きくしました郵便貯金や簡易保険の御案内を郵便局窓口に常備するなどの施策を行っているところでございます。
○佐々木(憲)委員 今私がお配りしました資料、これの一枚目をぜひ見ていただきたいんですけれども、この中にありますように、点字サービスというのは非常にきめ細かく行われておりますし、ATM、CDの視覚障害者対応機能というものもここに書かれているわけであります。
 具体的にどういうものかということは、二枚目の写真ですけれども、ぜひ見ていただきたいんですが、この写真を見ますと、郵便局のテンキー受話器式操作機、これが大変大事なものでありまして、テンキー部分はこの右側にあります。これは視覚障害者にとっては大変大事なものでありまして、単にタッチパネルですとわからないわけでありまして、このようなサービスをきちっと行っているわけです。
 それから、残高が点字で浮き上がるというのも、これは左下にありますような、非常にわかりやすい、視覚障害者にとって使いやすいものになっているわけですね。
 それから、音声で説明をするのも、イヤホンの差し込み口が右側の方にありまして、右下に、このようなものになっているわけであります。これを4型と言うんですが、最新のこの4型というのは全体の四割程度というふうに私聞いております。
 公社にお聞きしますけれども、最新の数字、これがどのようになっているか、お知らせをいただきたいと思います。
○斎尾参考人(日本郵政公社理事) お答えいたします。
 ATMの総数は2万6千483台ありますけれども、そのうち、最新のものにつきましては、16年度実績で687台、それから17年度予定で1,207台を購入予定としております。(佐々木(憲)委員「何%ですか」と呼ぶ)これでいきますと、1割ということになると思います。最新のものがです。
○佐々木(憲)委員 最新のものが全体としてさらに置きかえられて普及をしつつあるというふうにお聞きしております。
 いずれにしましても、公社の郵便貯金のATMの障害者対応というのは、100%で対応されているわけです。最新型はまだ全体としては少ないけれども、しかし、そういう状況なんですね。
 そこで、問題は、民間の銀行の障害者対応ATMがどこまで進んでいるのかという点であります。この点について、伊藤金融担当大臣に数字を確認したいと思います。
○伊藤金融担当大臣 お答えをさせていただきます。
 民間の状況でございますけれども、昨年10月に実施した調査によりますと、都銀5行につきましては、ATMの台数が約2万3,200台、そしてATMのみの設置箇所数は約4,460カ所、そして、視覚障害者の方々に対する対応のATMの設置数は約4,990台、ATM全体に対する視覚障害者対応のATMの割合は約22%となっており、昨年四月に実施した同様の調査と比較して約7%ポイントの増加となっております。
 次に、地銀65行についてでありますけれども、ATMの台数は約3万7,900台、そしてATMのみの設置箇所数が約1万1,150カ所、そして、視覚障害者の方々の対応のATMの設置数は約3,880台、ATM全体に対する視覚障害者対応のATMの割合は約10%となっております。
 次に、第二地銀48行についてでございますが、ATMの台数が約1万1,700台、ATMのみの設置箇所数は約3,530カ所、そして、視覚障害者対応のATMの設置数が約750台、ATM全体に対する視覚障害者対応のATMの割合は約六%となっております。
○佐々木(憲)委員 それを平均しますと、銀行の中でどの程度ですか、パーセントでいいますと。
 私から言いましょう。13%ぐらいなんですよ。つまり、今、銀行のレベルのATM、障害者対応は、公社は100%やっているんです、銀行は一割程度なんですよ。ですから、これは非常に民間の銀行はおくれているわけであります。いや、私もこの数字を昨年初めて財務金融委員会で五月に取り上げまして、その時点では金融庁は調査もしていなかったんです。ようやく数字が出てきて、そういう状況だと。
 それで、銀行の取り組んでいるのは視覚障害者対応のものだけであって、例えば、手が震えてしまうような障害を持った方はタッチパネルの利用が困難でありますし、車いすを利用している方には、操作画面の位置が高いということでなかなか使えない。ところが郵政公社は、このような障害を持った方や高齢者の方々にも使いやすいように考慮した設計をしております。操作画面を大型化したり、手すりをつけるということもやっております。それはお配りした資料の三枚目、郵便貯金自動預け払い機の写真がありまして、若干この説明もついておりますが、そのようになっているわけです。
 公社の場合は100%障害者対応ができているにもかかわらず、銀行は一割程度だという状況なのですが、金融担当大臣にお聞きしますが、なぜ銀行はそのように進まないのですか。その理由を説明してください。
○伊藤金融担当大臣 進捗のおくれの理由についてお尋ねがあったわけでありますけれども、視覚障害者の方々に対する対応ATMの設置につきましては、先ほどお話をさせていただいたように、各行とも取り組みを進めており、台数について増加をしているところでありますが、コストの問題等の理由によりATMの入れかえ時に対応するなどしていることから進捗はおくれているものではないかと考えております。
 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、視覚障害者対応ATMの導入も含め、利用者利便の向上のための銀行の自主的な取り組みは望ましい方向であると考えておりますので、このような銀行の取り組みを注視していきたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 今おっしゃったけれども、コストの理由だと。
 では、総務大臣、公社の場合は100%対応ができているというわけですが、公社ができるわけでありますが、なぜ公社がこのようにできるのか、民間銀行と比べて、どのようにお考えですか。
○麻生総務大臣 これは公社の総裁に聞かれた方が……(佐々木(憲)委員「いえいえ、担当大臣」と呼ぶ)だと思いますが、それは基本的には公という意識の問題なんじゃないでしょうか。
○佐々木(憲)委員 まさにそのとおりでありまして、民間銀行は利益至上主義ですから、これはコストがかかればやらない。公社の場合は、まさに公、パブリック、そういう考え方が基礎にある。
 ここに郵政省の時代の郵政研究所が発行した郵政研究所月報というのがあります。これを見ますと、「地域における障害者、高齢者福祉の担い手から見た郵便局」、こういうレポートが出ております。大変興味深く見たんですが、これは2000年4月号ですが、ここにこう書いているんですね。「郵政事業がこのような障害者、高齢者向け施策を実施する理由としては、主として以下の二点が挙げられる。」
 一つは、「事業の有する公共性」だと。こう書いているんです。「事業の基本法である、郵便法、郵便貯金法及び簡易生命保険法においては、「公共の福祉の増進」(郵便法第一条)や「国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進する」(郵便貯金法第一条、簡易生命保険法第一条)」そういうことを目的にしているわけですね。「郵政事業には高い公共性が求められている」というのが、これが第一点。まさに今、総務大臣がおっしゃった点を指摘しているわけです。
 二つ目は、「国の機関としての責務」というふうに書いております。「「郵便局ビジョン2010」において「高齢者、障害者福祉等、国の政策課題の実現に必要とされているサービスは、収益性になじまないサービスであっても、郵便局では積極的に実施している」と述べられているように、国の機関として政策課題の実現に寄与する責務があること。」というふうに書かれているわけです。
 総務省の郵政審議会で出された「郵便局ビジョン2010」で書かれているように、郵便局が国民生活を下支えする基盤である生活インフラとして機能し、ユニバーサルサービスの提供の義務があったからこそこういうことができたんだと。そういうことですよね、総務大臣。
○麻生総務大臣 官と民との間に公という感覚が大事なところなんだと何回もお答えしたと思いますが、基本的に、今の郵便につきましても、同じようにこの第一条に書かれているのがその背景だと存じます。
○佐々木(憲)委員 現行の郵便貯金法では、その目的を規定した第一条で、「郵便貯金を簡易で確実な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用させることによつて、国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする。」こう書かれているわけであります。
 竹中大臣、この郵便貯金法を今度は廃止する、民営化によって郵便貯金を民間銀行並みに変質させるとなると、せっかく進んでいる障害者対応が、先ほど見たように、銀行並みにこれは崩れてしまうんじゃありませんか。
○竹中郵政民営化担当大臣 郵便貯金のATM、CDにつきましては、視聴覚障害の方々が容易に利用できるように、現在、これは郵政公社、郵貯、すべてのATM、CDにおきまして、先ほど公社から説明がありましたように、音声による操作誘導、点字つきのキーボード、イヤホン等による操作誘導といったサービスが実施されているということは承知をしております。このようなサービスは、公社が、何か、例えば法律によってその提供を義務づけられているものではないわけでございますが、消費者利便向上のために自主的な取り組みとして行っているというふうに承知をしております。
 民営化後の郵便貯金銀行が、ATM、CDによる各種サービスを含めどのようなサービスを提供するかというのも、これはやはり同じく経営判断によることになるわけでございますが、御指摘の視聴覚障害者の方々に使いやすいATM、CDにつきましては、既に公社においてすべてのATM、CDにおいて導入が図られているところでございますし、民営化後におきましても、そのような取り組みも含め、これまで培ってきました消費者の信頼が経営の基盤になるということから、民営化によってこれを後退させるということは想定されないというふうに思います。
 視聴覚障害者の方々への対応も含めて、ぜひ、創意工夫を凝らし、多種多様なサービスが提供されることによって、より一層利用者の利便性が向上することを期待しているところでございます。
 なお、昨年、これは私が金融担当を兼務しておりますときに、民間銀行についてもそもそも広くこれを普及させていくことが必要であり、その銀行の取り組みをしっかり見守っていきたいという趣旨の御答弁をさせていただいていると思いますが、これはやはり、伊藤金融担当大臣もおっしゃいましたように、金融界全体としてしっかりと取り組んでいかなければいけない課題であるというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 法律によって義務づけられているわけではないとおっしゃいましたが、今の法律では、郵便貯金法でも第一条で、「福祉を増進することを目的とする。」と書いてあるわけですから。つまり、ユニバーサルサービスをやるんだということを明確に書いているからこそ、公的な公共性を重視してそういう取り組みをしているわけです。それを今度外すわけですから。民間銀行並みにするんだ、イコールフッティングだ、こう言っているわけですね。
 そうなると、先ほど言ったように、一割程度しか進んでいない、なぜか、コストがかかるから進まない、そういう状況になるんじゃありませんか。後退しないと想定されますと言ったって、それは勝手な思い込みであって、現実の収益中心の民間銀行になったら、そうはならないんですよ。
 民間銀行を具体的に見ますと、98年から03年の五年間をとってみましても、国内の店舗数は1,650減っているんですよ。店舗をどんどん縮小して数を減らして、ATMに置きかえて、そのATMの数も、かなりの部分がコンビニに肩がわりなんです。コンビニでは、ATMが設置されているのは四割程度、しかも、ATMの障害者対応の機能というのは、コンビニの場合は全然ないんですよ。
 民営化されればそういうことになる、障害者への対応が後退するということになることは、もうはっきりしているんじゃありませんか。大臣、いかがですか。
○竹中郵政民営化担当大臣 御指摘の点は、社会全体の取り組みとして、これは大変重要な問題であろうと思います。
 これは、障害者基本計画、平成14年12月に決定されておりますが、その中で、「誰もが、快適で生活しやすいユニバーサルデザインに配慮した生活環境の整備を推進する。 このため、障害者等すべての人が安全に安心して生活し、社会参加できるよう、」「バリアフリー環境の整備を推進する。」等々が基本方針として決められております。
 先ほど申し上げましたように、金融につきましても、全体としてそのような方向で今金融庁も御指導をしておられると思います。また、郵政としましても、これまで培ってきたノウハウをさらに生かして、利用者の信頼が経営の基盤になるということを踏まえて、民営化によって、さらにさまざまな創意工夫を凝らして、多種多様なサービスが提供されていくことになるというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 全然説得力がないですよ、それは。社会全体で何とかしましょうという話じゃだめなんです。ユニバーサルサービスを義務づけないと言ったんでしょう、郵便貯金銀行には。それが外れれば、民間銀行並みの収益中心の経営になるじゃないですか。そうなれば進まない。現実はそうなっているじゃないですか、伊藤大臣が認めたように。
 だから、公社を民営化し民間の銀行にしたら、障害者対応が崩れていく、こういうことにならざるを得ないんですよ。期待をしたいとか、社会全体がこうなればいいな、そういう漠然とした空想的な話ではだめなんです。
 2001年1月6日から、内閣に、内閣総理大臣を本部長にして、先ほど少し触れられました、内閣官房長官を副本部長、竹中大臣を初めとして他のすべての国務大臣を本部員とする障害者施策推進本部というのが設置されています。このもとで、障害者施策の総合的かつ効果的な推進に努めているはずなんですけれども、ユニバーサルデザインの観点からのまちづくりあるいは物づくりというのは、単に視覚障害者だけではない、いろいろな障害を持った人たち、高齢者が使いやすくなる、そういうことである、これは国の大方針です。大方針を直接実行するのは公社なんです。民間の銀行が直接はやりません。だから、幾ら大臣がそういう優しい社会づくりということをやっていきたいとかいろいろなことを言っても、そんなに願っているような方向には行かないわけであります。
 だから、去年の5月26日に大臣自身がおっしゃっていたでしょう、「我々としても、しっかりとそれをプッシュするような方向を見出していきたいと思っております。」と。銀行がなかなかやろうとしない、公社はやっているけれども銀行がやらないものですから、どうなっているんだと我々質問したんです。それに対して、なかなかそれは進まないので、それを最初は、見守りたいと言っていたんですよ。見守りたいと言ったって何も進まないじゃないかという質問をして、ようやく、「しっかりとそれをプッシュするような方向を見出していきたい」という答弁に変わったんです。
 民間銀行並みになったら、障害者対応も、先ほど言ったように、経営者の判断が基本だ、利益の上がらないところはやらない、そういうことになってしまうんじゃありませんか。もうこれは明確であります。
 幾ら言っても、同じ答弁しか来ないでしょう。まさに障害者、高齢者が使いにくくなるような、ユニバーサルサービスを外す郵政民営化、こういうやり方には絶対に反対だということを明確に言っておきたいと思います。
 では次に、郵政民営化によって、政府が三分の一を超える株式保有の日本郵政株式会社、これは持ち株会社ですね、これができた場合、郵貯銀行それから郵便保険会社は、最終的にこのグループから切り離すことになるのか、それとも、それを切り離さないでグループの一員としてグループ経営を認めるのか、これがこの委員会の一つの議論になりました。
 6月3日の答弁で竹中大臣は、銀行と保険というビジネスというのは、「まず極めて重要な信用を背景としたビジネスでありますから、」「何といっても国の関与をしっかり断ち切る。」という答弁をされた。しかし、国の関与を断ち切るという意味はどういう意味か、非常に不明確であります。政府が三分の一超の株式を保有する持ち株会社の実質子会社にしないという意味なのかどうか、確認をしたい。
○竹中郵政民営化担当大臣 佐々木委員のお尋ねは、信用が競争上決定的に重要であるから、国の信用、関与を完全に断ち切ると言ったけれども、それはどのような意味なのか、その一点のお尋ねだと思います。
 信用、関与を断ち切る、これは、信用でありますから、利用者から見ても、その背後に、例えば極端な場合、100%国が株を持っているというような場合は、これは国の影響力が強い、ある程度その所有が減ってきても、国が関与しているというふうな、そういった思いもございますから、そういうものも含めて、国の信用、関与を完全に断ち切る必要がある、そうして初めて民間と同じ競争のラインに立つというふうに考えているわけでございます。
 このため、持ち株会社は、移行期間中に、郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式を完全に処分しなければならない。その中身、内容はというお問いかけでございますれば、それは、完全に処分するということでございます。
○佐々木(憲)委員 大体、完全に処分という意味はどういう意味なんですか。
 郵便貯金銀行というのは、当面、貸出残高などで独禁法の適用を受けるような規模に達しないわけですから、銀行法の規制を受ける。これはこの前の質問で聞きました。50%まで保有が可能だ。
 そうすると、100%処分というのはどういう意味ですか。完全処分とはどういう意味ですか。この間の質疑で明らかなように、信託もできる、自社株買いもできる、実態としては実質子会社が連続的に続くということが可能になる、これと完全に断ち切るという意味と、これはどういう関係にあるんですか。
○竹中郵政民営化担当大臣 まず、完全処分の意味でございますけれども、これは、その所有権を手放す、まさに売却するというのが完全な処分の非常にわかりやすい例でございます。
 しかし、要は国の信用と関与を断ち切るということでございますから、所有権を完全に断ち切らないような場合、例えば、先ほども御質問がありましたが、株式相場そのものがそれを実現するには大変困難な状況下であるような場合、一つの仮定として考えられるのは処分型の信託。これは、処分を前提に信託する、買い戻しをしないというような内容でございますれば、ないしは株主権を行使しないというような内容でございますれば、国の信用、関与を完全に断ち切るというような意味で、完全な処分になるだろうというふうに思っております。それが第一のポイントでございます。
 第二の点で、それ以降についての問題に関しましては、これは、ある意味で民間と同じスタートラインに立つということでございますから、民間と同じ法律の枠組みの中でやっていただく。したがって、経営判断として取引の安定化等々のために民間と同様な形で株を持つような場合があるとすれば、それをわざわざ法律で排除するものではない、そのような趣旨でございます。
○佐々木(憲)委員 信用と関与を断ち切ると言いますけれども、処分型の信託というのはその一形態だと言いますが、例えば価格を設定して、これ以上で売れればいいけれども、それ以下なら戻ってくるわけですよ。そんなものは処分にならない。実質的には保有継続ということであります。それから、その後買い戻すわけでしょう。だから、保有は50%まで可能なんですよ。
 つまり、処分100%というのはある一瞬間だけですよ。瞬間芸のようなものだ。その瞬間だけは100%断ち切ったかのような形はとるけれども、実質的にはずっと継続している、グループ経営が可能になる。だから、国の関与を断ち切ると言ったって、国が三分の一株式を持っている持ち株会社のもとに実質子会社としてそこに入るわけだから、全然断ち切ったことにならない。
 ですから、本当に詭弁なんですよ。言っていることと実態が違う。このことをきょうのところは指摘して、引き続きこの点についても議論していきたいというふうに思います。

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