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医療・介護・年金 (非正規雇用, 年金制度)

2005年06月30日 第162回 通常国会 年金・社会保障両院合同会議 【312】 - 発言

公的年金払えない・もらえない 若者の生活悪化背景 佐々木議員が主張

 2005年6月30日、年金・社会保障両院合同会議が開かれ、公的年金制度の必要性をテーマに各党一巡の冒頭発言があり、自由討論が行われました。佐々木憲昭議員が、冒頭発言しました。

 佐々木議員は、年金不信が広がる背景に若者の生活・就労状態の悪化があることを具体的なデータで示し、最低保障年金制度の創設など抜本的な制度改革を主張しました。
 15歳から34歳の「フリーター」は417万人。多くが厚生年金に加入できない状況にあり、平均年収も約106万円と標準的な正社員の4分の1にすぎません。受け取る年金額も、40年間保険料を納付できた場合で月6万6千円、25年未満の納付ではゼロになります。雇用期間も請負労働者の場合、半年などの例もあるなど短期雇用が増えています。
 佐々木議員は、公的年金未加入の理由のトップに「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」とあることを示し、「多くの若者が公的年金を自分は払えないし、もらえない制度とあきらめているのが実態だ」と強調。フリーターやニートの急増を、政府・与党が「若者の意識」の問題だと責任転嫁してきた姿勢を批判し、雇用・労働条件の抜本的な改善と、膨大な無年金・低年金者を生み出す年金制度の見直しを提起しました。

議事録

○佐々木議員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 国民皆年金がスタートして40年になります。にもかかわらず、公的年金の必要性が若者を中心とする国民に疑われ、それをテーマとして国会で議論されている、こんな国はサミットの諸国を見てもないのではないかと思います。なぜ若者に公的年金への不信が出てくるのか。それは、制度改定のたびに支給開始年齢が先延ばしになることへの不安、保険料流用への怒りなど、さまざまな理由があると思います。しかし、最大の問題は、若者の生活や就労の実態と今の年金制度が余りにもかけ離れているところにあるのではないかと思います。
 今、若者が置かれている実態は、年金も払えないし、もらえないという深刻な状況であります。先ほど公明党から不信感をあおるなといった発言もありましたけれども、現状を正確に認識するということが議論の出発点であります。
 具体的な実態はどうか。パート、アルバイト、派遣労働者、それに働く意思のある失業者を合わせたいわゆるフリーターは、15歳から34歳の世代で実に417万人に上っております。その数は、団塊世代のサラリーマン約500万人に匹敵する規模であります。これらの若者は厚生年金に加入できない状況にあります。
 民間の研究機関の一つでありますUFJ総研は、2004年、フリーターの賃金と年金について調査をしております。
 それによると、標準的な正社員の平均年収387万4千円、これに対して同年齢のパートタイム労働者の平均年収は105万8千円にすぎません。約4分の1であります。ここから年間16万円、2017年以降は20万円になりますけれども、それだけの国民年金保険料を25年間払い続けないと年金を受け取ることができない。
 年金を受け取る金額はどうか。フリーターは、月6万6千円の基礎年金のみであります。それも40年間保険料を納付できた場合に限ります。25年ですと4万2千円です。納付期間が24年11カ月までなら年金の受け取りはゼロになるわけであります。
 フリーターから正社員になれる人は少なく、若年フリーターが大量の中高年フリーターになり、その人たちが保険料を払えず、基礎年金さえ受け取れない高齢者になる、そういう危険性をこのUFJ総研のレポートは指摘をしているわけであります。
 この背景には、政府・与党がフリーターやニートの急増の原因を若者の意識の問題だというふうにとらえて、いわば若者自身に責任を転嫁してきたことに問題があったのではないか。その結果、ここまで深刻な事態となったわけです。
 内閣府国民生活白書も、フリーター急増が若者のライフスタイルや志向によるものではなく、主に企業側の要因であることを認めております。
 最近では財界の側も、若年層の雇用問題が深刻化した最も大きな原因の一つは、若年層に対する求人の不足、多くの企業が雇用調整を行ったことが若年層の雇用問題を深刻化させた可能性は否定できないと言わざるを得なくなっております。例えば、日本経団連、2005年経営労働政策委員会報告がそれであります。
 内閣府の若年無業者に関する調査では、求職活動、学校教育、職業訓練を受けていないいわゆるニートについて、求職活動をしていない理由、最も多いものは何かと聞いたところ、病気とけがだと指摘しております。
 NPO法人派遣労働ネットワークの調査によりますと、派遣労働者の契約期間は約7割が3カ月未満であります。ことし2月にフリーターの実態がNHKの番組で取り上げられました。それによりますと、請負労働者の雇用期間は半年であります。極めて短いんですね。こんな雇用形態が横行する中で、若者が25年以上保険料を払うという展望がなかなか持てないというのが実態であります。
 この合同会議に提出されました資料で見ましても、第1号未加入の理由のトップは、「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」となっております。この合同会議に提出されました「「年金に関する一万人基礎調査」等に関連する既存の資料」、この2ページのところでありますが、これを見ますと、国民年金保険料の未納理由を見ましても、払えないというのが断トツのトップとなっておりまして、回答者の64.5%を占めております。多くの若者が、公的年金を自分は払えないしもらえない制度とあきらめているのが実態ではないかと思うんです。
 こうした問題を解決するためにはどうすればいいか。大前提として、若者の雇用労働条件を抜本的に改善、向上させるということが当然必要であります。同時に、25年間保険料を払わないと年金はゼロ、基礎年金だけでは生活ができない、こういう事態をどう克服するかという点、つまり、膨大な無年金、低年金者を生み出す年金制度の仕組みそのものをもう一度見直すということが必要ではないかと思います。
 少なくとも、まず第一に、受給資格の取得期間をアメリカ、イギリス並みの10年程度に短縮する。さらに、抜本的な解決策として、他の先進諸国のように最低保障年金に踏み出すべきだと思います。そうしますと、現在フリーターを余儀なくされている人も、無年金になる心配はなくなるわけであります。また、保険料を払えば、その分最低保障分の上に給付が上乗せされる、したがって、年金によって老後の生活を安定させる見通しがその分開けていくわけであります。保険料を払おうというインセンティブもそこで働くようになります。
 揺りかごから墓場までという社会保障の基本理念確立に大きな役割を果たしたイギリスのビバリッジ報告、これは1942年のものでありますけれども、社会保険による所得保障について、加入者から保険料を取る以上、最低生活、ナショナルミニマム以上の所得を保障すると主張をいたしました。そうでなければ、保険料を納め続けていこうという国民のインセンティブが働かない、結果的に制度が崩壊するというふうに考えていたわけであります。今まさに日本が陥りつつあるのは、このような状況ではないだろうか。
 これまで政府・与党は、こうした最低保障年金制度をつくることに背を向けてまいりました。また、民主党案によりますと、無年金、低年金者をすべて救済するというのではなく、40年後に最低保障年金を完成させるというものになっております。
 若者の中の、公的年金の必要性そのものを疑っているというこの現実を重く受けとめて、速やかに無年金、低年金者をなくす制度、そういう方向への改革を真剣に検討すべきだということを指摘しまして、発言にかえたいと思います。

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