東海での活動
【08.07.23〜24】愛知県の設楽ダム予定地の現地調査
7月23日(1日目)
2008年7月23日から24日、佐々木憲昭議員らは、愛知県の設楽ダム予定地の現地調査に入りました。
予定されている設楽ダムは、総工費2070億円で総貯水容量は9800万立方メートルとされています。
しかし、堆砂容量(600万立方メートル)を差し引いた有効貯水容量は、9200万立方メートルです。
さらに洪水調節容量1900万立方メートルを差し引くと、7300万立方メートルです。
ところが、その7300万立方メートルのうち、実に82%にあたる6000万立方メートルが、不特定容量となっており、目的が明確ではありません。
総貯水容量に比べても、65%が目的が定まっていないというのは、きわめて異常なダム計画です。
設楽ダム工事事務所からのヒヤリングでも、「何のために」という疑問に明確な答えがありませんでした。
これまでに行われた豊川総合用水事業(平成13年度まで)が完成したため、ため池などからの取水を含めて、現在は1億トンを超える水が余っています。
利水には、まったく役に立ちません。
洪水調節のためといいますが、雨が降り続いていれば、降水した分の水がそのまま流れていくわけですから、役にたちません。
7月24日(2日目)
2日目は、午前中「雲泉閣山の家」で、地元住民運動の役員の方々と懇談しました。
懇談したのは、「設楽ダムの建設中止を求める会」代表で元愛知大教授の市野和夫さん、「設楽ダム建設の是非を問う住民投票を求める会」の伊藤幸義代表、同事務局長の伊奈紘さんをはじめとする地元住民運動の中心的なメンバーです。
意見交換の中で、次のような問題点が明らかになりました。
第1は、ダムの必要性という点から見て問題があります。
利水にも治水にも役に立たず、これまでの水資源開発機構の事業で十分に水が足りていることが確認されました。全体の65%にあたる約1億トンの水が余ることになります。
第2は、地質に問題があることです。
ダム予定地の右岸の地質は、国土交通省もボーリング調査の結果は「良好でない」と指摘しており、いまだにダムの位置が定まっていません。住民団体の方々は「危険なダム」の可能性があると言っています。
第3は、環境問題からみても、大きな問題があります。
固有種ネコギギ(魚)や鮎などの生息が困難になる危険性が指摘されています。移植なども研究されていますが、成功していません。さらに、三河湾全体の汚濁問題を抱えており、日本環境学会も提言を出しています。
第4は、自治体の財政負担問題です。
ダム本体の負担だけでなく、水源地域整備事業として200億円程度が見込まれており、ダム建設地元の設楽町だけで25億円も持ち出しになり、下流の5市1町でも13億7000万円の負担になります。もちろん、本体と水源地域整備に係る県の負担は膨大なものです。
第5は、天下りや献金などダム建設にかかわるゆ着の問題です。
すでに、ボーリングなどの仕事を受注している会社に愛知県の関係者が天下りをし、そこに仕事がつけられているのです。また、受注企業から自民、公明、民主の各党に政治献金が渡っていることも、明らかになっています。
これらを総合的に考えれば、設楽ダムは中止するしかありません。
この日の夕方、市役所で、記者会見を行いました。
愛知民報の報道
設楽ダム 問題噴出
佐々木議員 「調査の全体像公表を」
「愛知民報」2008年8月3日付
豊川上流の多目的大型ダム建設について、国土交通省は実施の前提となる基本計画の策定作業をすすめていますが、同ダムの安全性、希少生物保護など重大な問題点が浮かび上がっています。7月23、24日には、日本共産党の佐々木憲昭衆議院議員らが建設予定地を調査しました。
もろい地盤
設楽ダム建設計画は豊川上流部に狭いV字谷に高さ約129メートルのコンクリート製ダム(堤)をつくり、最高時9800万トンの水を貯めるものです。
住民が心配するひとつはダム建設予定地点の地盤の弱さ。昨年、国交省がおこなった右側の土質ボーリング調査結果は「あまり良好ではない」。調査関係者によると「安定した岩盤にたどりつかない」といいます。同省はいまだに正確なダム位置を決めることができず、検討中です。
消えたネコギギ
建設予定地の渓流には、伊勢湾周辺の限られた河川上流部にしか生息していないネコギギがいます。ナマズの一種で、環境変化に弱く、国から天然記念物に指定されています。
国交省はダム建設がネコギギの生息地を破壊することを認め、ダム建設予定地の下流部で移植実験をおこなっています。昨年10月に100尾を放流。5日後に10尾が確認されたものの、その後の調査では確認ゼロといわれています。
「環境にやさしいダム」のシンボルであるネコギギの移植事業の効果が疑われています。
佐々木衆院議員は「国交省は希少生物への影響や地盤調査の全体像を隠している疑いがある」と指摘しています。
地元「ショック」
建設予定地の設楽町は、ダム建設で百数十戸の移転、広範囲の水没などで、現在でも過疎化に悩む同町の人口減少に拍車がかかるのは必至です。
同町がダム建設の同意条件として、県と下流市町に拠出を求めているが地元振興の原資となる「設楽ダム対策基金」。このほどその規模が30億円程度であることが分かりました。後藤米治前町長が主張した「100億円」の3分の1。地方紙は「設楽町はショックに見舞われた」(東日新聞7月5日)と書いています。
日本共産党の田中邦利町議は町民の声を次のように語っています。
「30億円の基金では、年額1500万円〜6000万円程度の利子収入にしかなりません。ダムのカネでつくった町施設の維持管理費が賄えるか疑問です。過疎化や経済的衰退を克服する振興事業は望むべくもありません。ダムで栄えた試しはないということか」
設楽町では建設の是非を問う住民投票の実施を求める運動が進んでいます。水余りのもとで、自然破壊の無用のダムといわれる設楽ダム。建設予定地への犠牲と下流住民に費用負担を押し付ける点でも中止すべきです。