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憲昭からの発信

憲昭からの発信 − 論文・対談

警察の対応を追及──ヤミ金被害者の携帯通報を放置──

『消費者法ニュース』2010年1月号


 「090金融」とも言われる、携帯を使った悪質なヤミ金被害が広がっています。私は、ヤミ金融に悪用されている携帯電話の情報を提供されていたにもかかわらず、警察が対策をとらずに放置していた問題を、09年3月31日に開かれた消費者問題に関する特別委員会で追及しました。

1500件の情報を放置した警察の怠慢

 ヤミ金が利用している携帯は、本人名義ではなく他人名義の携帯です。被害者から奪った携帯などを使っている場合もあります。したがって、被害者が「この電話番号はヤミ金が使っている電話だ」と情報提供をすることは、捜査を前進させる上で大変重要です。
 2005年に施行された携帯電話不正利用防止法では、他人名義の携帯電話がヤミ金に使われることを防止するため、警察が携帯電話会社に要請して契約者確認を行うことが可能になりました。確認に応じない場合は、使用を停止することもできます。この法律を活用することが求められています。
 私の質問に、佐藤勉国家公安委員会委員長は、「ヤミ金融事犯に使われているとされる携帯電話の電話番号を認知した場合、被害関係者等から事情を聴取するなどいたしまして事実関係の把握を行い、犯罪であると認められるものについては捜査を推進するなどして、厳正に対処しているところでございます」と答えました。
 ところが、実際はどうでしょう。私は、大阪クレジット・サラ金被害者の会(いちょうの会)が2008年7月に提供したヤミ金の携帯談話番号、約1500件を大阪府警がどのように扱ったかを質しました。
 佐藤勉国家公安委員長は、「大阪府警察においては、当該携帯電話がヤミ金融事犯に利用されていると認めるに足りる相当の理由の存否についての判断ができないため、契約者確認の求めを行うなどの措置はとっておりません」と、驚くべき答弁をしたのです。「判断ができない」とはどういうことでしょう。明らかに警察の怠慢です。
 被害者が「私が被害を受けました」と言っているのです。1500件の携帯情報については、ヤミ金に利用されていると「認めるに足る相当な理由」があります。にもかかわらず、警察が「判断できない」というのは、はじめからやる気がないとしか言いようがありません。「この番号はだれのものか」と本人確認をすれば、本人のものでなかったり、確認できない場合には、法律上はすぐ停止できるのです。停止すれば、その後の被害は防ぐことができるはずです。

全国でわずか206件しか確認せず

 私は、携帯電話不正利用防止法の施行後、この法律に基づいて警察が本人確認のために携帯電話会社に照会した件数は何件あるかと質しました。佐藤国家公安委員会委員長は「法の施行以来本年3月30日までに約2万1千件でございます。このうち、実際に携帯電話不正利用防止法に基づく契約者確認の求めを行ったことによりまして停止した携帯電話の件数は、同法の施行以来本年2月20日までに1万456件であると伺っております」と答えました。
 「多重債務問題改善プログラムの実施状況について」という多重債務者対策会議でつくった資料には「平成19年中のヤミ金融事犯に係る電話警告件数は1万557件、同じく携帯電話契約者確認要求件数は206件を実施」と書いています。わずか206件です。
 1万件という数字は、ヤミ金に限らず携帯電話不正利用防止法に基づいて行った本人確認調査ということで照会した件数で、206件という数字は、ヤミ金に関連して携帯電話不正利用防止法の契約者確認を行った件数です。何万件という被害がありながら、ほとんど対応してこなかったことになります。

警察内の「たらい回し」システム

 なぜ、このような対応しかでいないのでしょうか。私は、警察内部の手続に問題があると指摘しました。──警察署長が契約者確認をすることを求めようとするときは、あらかじめ都道府県警本部長に報告をする。報告を受けた警察本部長は、当該都道府県のほかの警察署長による契約者確認の求めと重複しないように調整の上、警察庁長官に報告し、警察庁長官が、当該都道府県以外の都道府県における他の警察署長による契約者確認の求めと重複しないように調整する。──このような複雑で煩雑な手続きがおこなわれているから、まともに対応できないのです。
 米田警察庁刑事局長は、「そのような手順でもって、契約者確認の求めを事業者に対して、県警から、警察庁がオーケーをしたので、それで行ったというものでございます」と、この事実を認めました。
 私は、野田消費者行政推進担当大臣に「被害を受けた方の申し出があった場合は、迅速に対応する。対応できない場合には、どこに原因があるかを明確に調査をした上で、前向きに国民の声にこたえるというのが本来の筋だ」と見解を質しました。野田大臣は、「今の取り組みで不十分であるならばしっかりと検討していただいて、消費者庁ができた暁には、相互に連携をして、私たちは消費者の立場に立ったいろいろな意見具申をさせていただくことになりますので、それは前向きに進められるのではないかと思っております」と答えました。

 政権が代わりましたが、ヤミ金被害者に対して迅速・誠実に対応する警察・消費者行政を推進するよう引き続き求めていく決意です。


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