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憲昭からの発信

憲昭からの発信 − 論文・対談

出資法の上限金利引き下げについて

『消費者法ニュース』2005年10月号

 昨年の個人破産申立件数は21万件を超え、多重債務者の数は150万人から200万人に達すると言われています。本人の金銭感覚のなさも指摘されていますが、根本的には、病気、怪我、賃金切り下げ・リストラなどを理由とした経済上の理由で、やむを得ず高利の貸金業者から借り入れをする事態が広がっていることです。多重債務に陥る根本に異常な高金利があることを、私たちはしっかりと認識すべきです。 サラ金業者が、異常に高い金利を押しつけ、過剰融資をおこない、過酷な取り立てをする。――これが、多重債務発生の土台になっています。したがって、まずは出資法の上限金利(29.2%)を利息制限法(15〜20%)へ引き下げること、さらに利息制限法の水準をも引き下げることが必要です。
 私たちは、1999年12月にこの立場から改正法案を国会に提出しました。このとき「グレーゾーン」をなくし、貸金業規正法43条の「任意に支払った場合のみなし弁済」規定、利息制限法第1条第2項の「任意に支払ったときは返還請求できない」という規定を削除するよう求めました。これは、当時は実現しませんでしたが、いまでも正しい方向だと考えています。
 出資法の上限金利は2000年6月に、40.004%から29.25%へと下げられました。その後、貸金業界の団体「全金連」(社団法人全国貸金業協会連合会)は猛烈な巻き返しを図り、出資法の金利を逆に引き上げることを求めました。重大なのは、与党議員に接待攻勢をかけたり、政治献金を渡しながら運動を展開したことです。
 資金集めパーティー券購入などで「協力」した自民、公明、民主などの国会議員84人のリストを作成し内部で配布していたことも明らかとなっています。この政治団体=全政連は、政界工作のためパーティー券購入などの「渉外費」に、2002年度で1700万円余を使っていました。
 全金連は、「ヤミ金融被害の急増は出資法上限金利の引き下げと時期が一致している」などと主張。「金利を下げるとヤミ金がはびこる」などと宣伝を強めました。2003年5月の全政連の総会に提出された議案書には、「与党を中心に、ヤミ金融問題の根源には29・2%への引き下げが大きな要因としてとりあげられるようになったことは…大きな成果」と書いています。
 公明党のある参院議員は、金利引き下げで「上限金利以上で貸し出す違法業者が増加している」などとホームページで説明していました。また、ヤミ金融規制法案をつくる与野党協議のなかで、自民党の衆議院議員が同様の発言をしています。私はそれに反論しましたが、この全金連の政治攻勢がかなり深く浸透していることを実感しました。この動きは、いまも続いています。出資法の上限金利をめぐって、サラ金業界からの政治献金=政界工作がモノをいっていたとしたら、絶対に許されないことです。
 当面、出資法の上限金利を、ただちに利息制限法の水準に引き下げることをもとめるものです。

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