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憲昭からの発信

憲昭からの発信 − 論文・対談

日本経済立て直しの道と小泉流『構造改革』

『前衛』2001年8月号

はじめに

 日本共産党は、3月に発表した「緊急経済提言」にもとづいて、経済各分野の方々との対話を重ねています。党国会議員団も分担して、百を超えるさまざまな団体と懇談をおこなってきました。これらの対話を通じて、日本共産党にたいする期待のいっそうの高まりを痛感しています。
 経済・産業団体との懇談では、「景気が最近になって急に悪くなってきた。どうなるか心配だ」という声が寄せられています。私の体験でも、ある中小金融機関の中央組織の幹部は、「構造改革と言われているが、その中身は、生きている中小企業をつぶすことだ」と率直に話してくれました。また、「野党も役割を発揮していない。以前は、野党に中小企業への眼差しが感じられたが、いまは、『規制緩和』で中小企業と大企業を一緒に論じている。中小企業と大企業は区別すべきだと思う」。こう述べて、日本共産党の「緊急経済提言」への期待を表明してくれました。
 いま、党の主張が多くの階層に抵抗なく受け入れられるようになったのは、いまの経済情勢がそれだけ深刻だからであり、これまでの自民党政治の失政が、だれの目にも明らかになっているからだと思います。

一、急速に悪化する経済情勢

◆個人消費の落ち込み
 政府は、その要因として、アメリカの景気低迷にともなう輸出の減少などをあげていますが、肝心なことは国内要因です。政府が4月に決定した「緊急経済対策」の前文でも、「企業部門の復調にも関わらず、所得・雇用環境の改善は遅れ、個人消費の回復は得られていない」と指摘していました。政府がみずから認めているように、GDPの6割を占める家計消費の落ち込みが、景気後退の重大な要因となっているのです。
 総務省統計局の「家計調査報告」(2000年12月)によると、全世帯では、この10年間、消費支出は毎年落ちこみ続け、10年間であわせてマイナス5・0%の落ち込みとなっています。うち食料費は、12・5%のマイナス、被服・履物はじつに35・8%のマイナスとなっています。多くの国民が、どんなに切りつめた生活を余儀なくされているかは明らかです。総務省も、「一世帯当たりの消費支出のうち、『食料』と『被服及び履物』はそれぞれ(昭和38年――1963年)以降で最長となる10年連続の実質減少となっている」と、家計の低迷をはっきり認めています。その一方、高熱・水道、交通・通信などの公共料金、保健医療などの負担はますます大きくなっています。
 では、小泉内閣の「緊急経済対策」のなかに、家計消費を支援する政策はあるのでしょうか。5月16日の衆議院・財務金融委員会で、私は「政府の緊急経済対策のなかに、個人消費を直接支援する政策はあるのか」と質問しました。これにたいし、塩川財務大臣は「個人消費を刺激する直接の対策は盛り込まれておりません」と答弁せざるをえなくなりました。前文では、”個人消費が問題だ”と言いながら、対策の内容には個人消費を支援するものがまったくない。それを認めて平然としているのですから、まったく無責任としかいいようがありません。
 いっそう重大なのは、政府の「対策」のなかに個人消費を支援するものがないばかりか、逆に、昨年から今年にかけて、医療・年金・介護・雇用保険を次々と改悪し、3兆円もの負担増・給付削減を国民に押しつけたことです。年金は、賃金スライドの停止と支給年齢引き延ばしで、1兆2000億円、老人医療の1割定率負担で3000億円、介護保険の高齢者保険料の満額徴収で4000億円、雇用保険の保険料引き上げと給付カットで9000億円。家計を応援するどころか、家計に冷水を浴びせる政策を推進しているのです。小泉首相は、それをまったく改めようとしません。

◆広がる中小企業の経営難、失業増
 消費低迷のもとで、中小企業の経営難も深刻に広がっています。2000年度の倒産は、負債総額で25兆9812億円と戦後最悪、前年度二倍以上を記録しました。件数は、12・1%増の1万8926件と戦後3番目の数字です(帝国データバンク調べ)。帝国データバンクの解説によると、「今後も銀行による企業の切り捨てで、倒産ラッシュが続きそうだ」と、先行きを厳しく見ていることが報道されています。
 問題なのは、企業倒産にともなう従業員の失業が急速に増えていることです。2000年度の倒産統計(帝国データバンク)によると、不況型倒産が75%をしめ、倒産した企業の従業員は20万人をこえています。これが、地域経済にも大変な影響をあたえています。失業の長期化も重大です。政府・総務省が発表した2月の「労働力特別調査」でも、失業期間が1年以上におよぶ完全失業者は83万人で、前年にくらべ10万増え、調査開始以来の過去最高を更新するという状況です。
 金融面からみると、どうでしょう。日銀統計では、97年3月から今年の3月までの4年間で、国内銀行の貸出残高は27・2兆円、5・6%も減少しています。とりわけ、中堅・中小企業向けの貸出は、驚くべきことに34・6兆円、9・0%も減少しています。これは、何を意味するのでしょうか。
 日銀は、「超金融緩和政策」をとり続けています。つまり、銀行にたいしては過剰な資金が供給されているのです。にもかかわらず、銀行から先には十分に供給されていません。そのため、資金が行き場を失い「長期国債の大量買い切り」という好ましくない動きさえ生まれています。
 必要とするところに資金が回らないのは、銀行の「貸し渋り」も一因です。同時に、消費の低迷にともなう実体経済の冷え込みによって資金需要のいっそうの低下がおこっていることが重要です。個人消費を支援し、実体経済を立て直す政策が何よりも重要だということは、この面から見ても明らかなことです。

二、日本共産党が提案する経済建て直しの道

 国民の苦難にたいし正面から応え、日本経済を建て直す展望をしめしたのが、日本共産党の「参議院選挙にあたっての訴えと重点政策」です。この政策のはじめに、「小泉政権の経済運営は、破綻した従来型自民党政治そのもの」という見出しがでてきますが、これが大事だと思います。――小泉政権への国民の支持率は高いけれど、それは「これまでの自民党政治に、国民がいかに強い怒りをもっていたか、『自民党政治をかえてほしい』という思いが、国民のあいだでいかにみなぎっているかを示すもの」(参議院選挙政策)です。こうした国民の願いに小泉内閣は応えることができるのか。まったくできません。あとでもふれますが、小泉内閣の経済政策には、古い自民党政治がむき出しで現れています。
 だいたい、小泉首相が目玉政策としてかかげる「緊急経済対策」は、もとはと言えば、森内閣がその政権末期に4月6日に発表したものです。これ一つを見ても、何も新しくはありません。古い従来の政策を、「改革」のオブラートに包んで国民にむりやり飲ませるようなものです。それだけに、たちが悪いといえるでしょう。
 これにたいして、日本共産党の参議院選挙政策は、自民党政治をおおもとから変える真の「改革」を提案しています。これは、小泉自民党流「改革」路線の対極にある、国民の立場に立った民主的「改革」の提案ということができるでしょう。その最初の柱が、「大銀行・大企業応援から、国民の暮らし応援にきりかえる経済改革をすすめます」という提起です。

◆消費税の減税・廃止について
 ここでは、まず第一に、「予算の主役を暮らし・福祉にきりかえ、国民生活をしっかりささえます」と提案しています。消費税減税、介護・医療・年金の「改革」、浪費型公共事業の縮減などの政策が掲げられています。そして、重点的に「福祉・暮らしの予算を確保しながら、税・財政の民主的改革で財政再建の道を開きます」と、財政の民主的改革の道をしめしています
 とくに、消費税3%への引き下げを正面にすえているところが、他党にない大きな特徴です。現在のデフレ状態を脱却するには、個人消費の刺激が決定的に重要で、消費税減税はデフレに対応する重要な政策として位置づけられています。
 政府は、デフレの定義を「2年以上連続して消費者物価が下落すること」としていますが、それは一面的な規定です。現実には、激しいコスト削減で労働者に犠牲転嫁しながら強行される安売り競争がすすんでいます。これは、消費をますます冷え込ませて実体経済を悪化させ、さらに物価が下落するという悪循環に導いています。
 これにたいし、日本共産党の提案している消費税減税は、国民負担の軽減そのものであり、それは、買い物をしなければ減税効果があらわれないのですから、消費拡大に直結します。また、消費税を商品価格に転嫁できずに身銭を切って納税せざるをえない中小業者にとっても、大きな支援になります。なにより、全体として消費者が「買い物をしよう」という意欲(消費マインド)を高める効果があります。消費マインドが1%向上すれば4兆円の経済効果があります。これが、5兆円規模の消費税減税に上乗せされるのです。

◆ルールある国づくり
 第二は、「ルールなき資本主義」から、「まともなルールある国」にする政策です。ここでは、昨年来、日本共産党が発表してきた各分野の個別政策をふまえた提案となっています。日本資本主義は、欧米にくらべ、労働者の権利の面でも、中小企業や農業のを守るという点でも、環境破壊を防ぐという点でも、規制のない抜け穴だらけの状況が続いています。たとえばサービス残業根絶の問題でも、日本共産党が国会で、250回を超える質問をおこない、厚生労働省が「通達」を出すことになりましたが、サービス残業はなお広範に残されています。解雇規制法というヨーロッパでは当たり前の法律もありません。いかに、日本資本主義にルールが欠落しているかは明確で、「まともなルールある国」にしようという訴えは、政党支持や思想信条のちがいをこえて支持され得るものです。

◆対等・平等の日米経済関係をつくる
 第三は、「”アメリカ経済あっての日本経済”という神話からぬけだし、対等・平等の日米関係をきずく」政策です。
 日本では、ながいあいだ、日米軍事同盟のもとでアメリカいいなりの政治が、安保保障の分野でも、外交の分野でも続いてきました。それは、経済の面でも歪みをもたらしています。不良債権処理をアメリカに押しつけられ、630兆円の公共投資基本計画を押しつけられ、貿易摩擦で農業や中小企業への犠牲が押しつけられてきました。まさに、アメリカ経済のために日本経済の土台がほりくずされてきたのが実態です。いまこそ、自主的な経済外交に切り替えなければなりません。
 以上の三点が、今度の参議院選挙での経済政策の主なポイントです。参議院選挙政策は、根本的な改革の提案をしているのが特徴です。
 では、今すぐやるべき対策をうちだした3月の「緊急経済提言」との関係をどう見たらよいのでしょうか。この点について、筆坂秀世政策委員長は、二中総での報告で「わが党は、これまで国民がもとめる緊急に解決すべき課題に全力をあげるとともに、より根本的な解決をめざすという二重の取り組み重視してきました。『緊急経済提言』と参議院選挙政策とは、まさにこういう関係にあります」とのべています。
 日本共産党の経済政策こそ、日本経済の再建と国民の暮らしを守る国民的な展望を示したものであり、これしか日本を救う道はありません。

三、小泉流「構造改革」の正体

 これにたいし、小泉内閣の経済政策はどうでしょうか。“構造改革なくして景気回復なし”というスローガンを掲げ「構造改革」の推進をうたっています。その中心が「不良債権の早期最終処理」です。これは、日本経済と国民をいったいどこに導くのでしょうか。

◆倒産と失業をすすめる不良債権処理の異常
 「不良債権処理」の対象となる破綻懸念先などの債権とは、どのようなものでしょうか。不況の痛みに耐えて必死に働いているまじめな中小企業が大部分です。不良債権処理というのは、この現に生きてまじめに働いている中小企業にたいして融資を打ちきり、担保を回収し、息の根をとめることにほかなりません。
 国会での論戦で当初、政府は、倒産と失業者数の予測について「定量的な数字は出せない」とこたえてきました。これ自体きわめて無責任な話です。ある政策を実行しようとするとき、それがどのような影響をもたらすか、あらかじめできるだけ正確に予測し、否定的な影響が想定されるときは、実行すべきかどうかも含めて検討するというのが当然の責任ある態度でしょう。
 ところが、小泉内閣は「痛みをともなうのはやむを得ない」といいながら、どれだけの被害が出るか「やってみなければわからない」という乱暴な態度をとっているのです。
 そこで私は、5月28日の予算委員会で、20万社から30万社の中小企業を倒産に追い込むことになると、具体的な試算をしめしました。別掲の資料を見てください。これは政府が処理するという破綻懸念先以下の債権額12・7兆円から割り出したものです。
 これにたいして柳沢金融担当大臣は、これを「全面的に否定するデータはこっちに持ち合わせておりません」と答えました。そして「常識的に承知をしているところでは、やはり中小企業の場合には、清算型がとかくスピードを持って実現化してしまうことが多いということでございます。というのは、やはり小規模なものですから、清算型ということでやろうとすると、どちらかというと簡単というか、それで非常に件数として多く出てくる」と答弁しました。提起した試算を否定できず、中小企業はつぶれやすいと述べたのです。データそのものは、もともと彼らの使っている数字ですから、否定できるはずがありません。
 クエスチョンタイム(党首討論)でも、日本共産党の志位委員長が小泉総理にこの数字をもとに鋭く迫りました。小泉首相は「生き残れない企業が出てくるのは否定いたしません」と、委員長の指摘を否定できませんでした。日刊ゲンダイは、「30万社が倒産」と一面トップで報道するなど、この数字は大きな反響をよびました。
 中小企業は、1社あたり平均5〜6人の従業員を雇っています。20万社の倒産になると100万人から120万人、30万社となると150万人から180万人の離職者・失業者が発生する計算になります。これはたいへんな数字ですが、民間の調査研究機関の100万人〜130万人の失業者が生まれるという試算結果とも符合します。
 小泉内閣は、中小企業を大規模に倒産に追い込み、100万人から180万人の失業者をつくることを「構造改革」の目玉政策として推進するというのです。これは、きわめて異常であり、恐ろしささえを感じざるをえません。こんなことを経済対策の中心に据えている国は世界のどこにもありません。アメリカの景気対策は、大規模な所得減税による個人消費の刺激です。ヨーロッパでは労働時間の短縮による雇用の拡大をすすめています。
 このような深刻な結果をもたらす「不良債権処理」の強引な推進については、各方面から批判されています。帝国データバンクの熊谷勝行情報部長は、「景気回復どころか、経済の基盤そのものを掘り崩す危険すら出てきます」とのべています(「しんぶん赤旗」5月26日付)。前第一勧銀総合研究所専務理事の山家悠紀夫神戸大教授は、「不良債権処理をしたら……がんばって生きようとしている企業をつぶしてしまう。景気にはマイナスです」と指摘しています(同4月27日付)
 政府は、さかんにセーフティネットをつくるといいます。しかし、そこには何の保障もありません。政府は、この4年間で四回の雇用拡大策を実施してきました。計画では205万人の雇用が増えるはずでした。しかし、結果は、この4年間で69万人も失業者がふえ、「雇用拡大」のかけ声は何の役にも立たなかったことが明らかになっています。にもかかわらず、何の反省もなく「530万人の雇用拡大」という大風呂敷をひろげ、何の根拠もなしに宣伝しているのです。
 中小企業は、倒産したらおしまいです。倒産しないようなセーフティネットは、政府の対策には何も出てきません。倒産で、清算に追い込まれていく企業が圧倒的多数です。この間の開業率と廃業率を見ると、廃業率のほうが上回り、企業数は全体として減少しています。
 小泉内閣は、不良債権処理をやれば経済が活性化するかのような幻想を振りまいていますが、現実はまったく逆で、日本経済をいっそう深刻な事態に落とし込んでいくものにならざるをえません。小泉流の「構造改革」、不良債権処理というのは、急速に落ち込んできた実体経済をますます冷え込ませ、さらに新たな不良債権をつくるという「終わりなき最終処理」への道にほかなりません。この政策は、景気後退の悪循環、デフレ・スパイラルへの道を加速することになります。どうしてもこの危険な道にストップをかけなければなりません。

◆国民負担を迫る大増税路線
 さらに小泉内閣は、「財政構造改革」の名で、消費税増税、国民負担増につきすすもうとしています。
 無駄な公共事業の削減については、小泉内閣もふれざるをえない状況も生まれていますが、それは、あまりにも異常な公共事業肥大化路線の行き詰まりを示すものです。塩川財務大臣は、「630兆円にのぼる公共投資基本計画は見直すべきだ」という私の質問に、「見直す」と答弁をしました。しかし、現在でも、川辺川ダムや関西空港第二期工事が、住民の反対をおしきってすすめられていることを見れば、ほんとうに無駄な部分に切り込んでいけるかどうか疑問です。
 一方で、重大なのは、社会保障の分野で「抜本的改革」をすすめると主張し、国の責任を後退させ国民負担をさらに増やそうとしていることです(詳細は、本号小池晃論文を参照してください)。
 消費税の大増税も計画されています。昨年の政府税制調査会の「中期答申」では、消費税を「基幹税」と位置づけ、増税のねらいを鮮明にしました。小泉内閣は、その路線をいっそう強めようというわけです。塩川財務大臣は、参議院の財政金融委員会(5月24日)で、「3年後以降には、税の増収を図っていかなければいけない。その増収分については消費税が大きい財源になる」とのべています。
 竹中経済財政担当大臣は、『竹中教授のみんなの経済学』のなかで、「消費税は最低でも14%」と主張しています。彼は、この本のなかで「法人税は、企業の国際競争力を失わせることになるので引き上げられません」と主張しています。これは、いままでも財界や自民党がくり返し主張してきたことです。しかし実際には、税制審議会の法人課税小委員会の報告でも、課税ベースが狭いため「一概に高いとはいえない」と述べているように、日本の法人課税は世界的に見ても高くない水準だったのです。
 にもかかわらず、それをどんどん引き下げてきた。そのため現状では、日本の法人税は世界最低水準になってしまいました。日本の企業の税負担・社会保障負担の軽さは、ヨーロッパなどと比べてきわだっているのです。まさに大企業天国です。それを当然視し放置する竹中大臣の主張は、まったく認められません。
 そのうえで竹中大臣は、「消費税を上げるしかありません」と短絡的に結論づけ、「2003年から段階的に消費税を上げ、最低でも14%にしなければならないだろうと考えています。14%など途方もなく高い税率だと思うかもしれません。しかし、ヨーロッパ諸国の消費税が17、18%から25%となっていることを考えると、この数字はそれほど高い数字ではないともいえます」と書いています。
 ここには、大きいなまやかしがあります。標準税率を見ると、日本はいかにも低いように見えるけれども、ヨーロッパでは、食料品など生活関連品目については、非課税やゼロ税率が適用され、実質的な負担は低いからです。たとえばイギリスの場合、17・5%の標準税率が適用されているのは、消費支出の56%にすぎません。あとの44%は、ゼロ税率、非課税、軽減税率が適用されているのです。
 ですから、5%の消費税率を14%にするなどという議論は、どこから見ても許すことができない大増税路線です。

◆暮らしを守りながらの財政再建はできる
 では、どうすれば財政再建ができるのか。今度の参議院選挙重点政策のなかで、この点について「福祉・暮らしの予算を確保しながら、税・財政の民主的改革で財政再建の道をひらきます」と提起しています。
 歳出面では、ムダと浪費を徹底的に削減すべきだと主張しています。公共事業に、国と地方をあわせ50兆円の財政資金をつかい、その6割を借金でまかなうということは、まったく異常な事態です。公共事業の段階的縮減は当然すすめ、軍事費や経済援助にもメスを入れなければなりません。これは、圧倒的多数の国民の声でもあります。
 財政制度等審議会の財政制度分科会がことし3〜4月に「財政についての意識調査アンケート」をおこなっています。このなかで「国の予算(歳出)のうち、あなたが生活する上であまり役に立っていないと思うものは?」という質問にたいして、「公共事業関係費」と答えた人が43%、「防衛関係費」が24%、「経済協力費」が13%という回答でした。その一方、「国の予算(歳出)のうち、あなたの生活になくてはならない(役に立っている)と思うものは?」という質問にたいする回答は、「社会保障関係費」がいちばん多く60%です。次は「文教及び科学振興費」で18%です。この二つで約8割を占めています。
 無駄な公共事業や軍事費を削って福祉・教育にまわせという要望が、財務大臣の諮問機関である財政制度審議会の「世論調査」にもあらわれているのです。日本共産党の政策が、圧倒的多数の国民の願いを代弁しているということに、あらためて確信をもちました。
 次に、歳入面の改革です。その中心は税制の民主的改革です。大企業・高額所得者優遇の不公平税制を是正するというのがその内容です。東大の神野直彦教授は、日本の大企業課税は、ヨーロッパと比べても決して高くない、社会保障負担を考慮すれば負担は低い、と分析しています。ですから、日本の大企業に適切な負担をもとめるのは当然のことです
 日本共産党の財政たて直し政策は、国民の生活と営業、社会保障を充実させながら、歳出・歳入の両面にわたる改革を推進するものとなっています。

四、他党の経済政策について

 国民にたいしてこのように冷たく、危険な政治を推進しようとしている小泉内閣にたいして、他の党はどういう態度をとっているでしょうか。
 いうまでもなく、公明党や保守党は、小泉内閣の与党として、この政策の全面推進の立場に立っています。たとえば公明党の神崎代表は、4月22日の大阪での演説で、不良債権処理について、「2年なら2年でここまで不良債権を処理するという目標を決めて、政府として宣言して処理すべきだと提案した。政府も公明党の提案を受け入れて2年間で金融機関の抱える不良債権を処理、3年間で新しく生じた不良債権も処理するという方針を決めた」とのべています。小泉内閣の倒産・失業推進政策を提案し、リードしてきたのが公明党だと公言しています。
 では、日本共産党以外の野党はどうか。民主党は、鳩山代表が、衆議院の代表質問(5月9日)で「不良債権処理の抜本処理を2年で終わらせる」と提案しました。「民主党経済対策」では、「株主・経営責任の明確化や徹底した経営合理化を前提として、公的資金による資本注入も検討する」と、税金投入までいっています。
 自由党はどうか。中井議員が衆院本会議で「要注意先債権が不良債権化する可能性が大いにあり、公的資金を導入ぜざるをえない」という主張をしています。社民党は、渕上幹事長が、NHK日曜討論で(5月13日)、「不良債権処理は同時に、セーフティネットをきちんとやらないと支持はえられない」と、不良債権処理をするのが当然の前提という主張です。同党は、「『人』から元気にする経済活性計画」のなかで、「力強い景気浮揚の”障害”となっている金融機関の不良債権の抜本処理を促進するために直接償却の手法も有効に活用」と主張しています。
 いまや、日本共産党以外のすべての政党が、不良債権の早期最終処理をとっても、小泉内閣と正面から対決することができない状態にあります。これは、日本の政治にとっても経済にとってもきわめて由々しい状態です。
 国民の立場に立って、現在の消費不況を打開する緊急の三つの転換を主張し、さらに抜本的な日本経済の展望をしめしている日本共産党の躍進が決定的に重要です。参議院選挙こそ、その正念場のたたかいであると位置づけ、私たちも大いに奮闘したいと思います。

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