国会での活動
国会での活動 − 国会質問、税制(庶民増税・徴税)
【14.02.26】税務署の消費税収支赤字、輸出還付金が原因
2014年2月26日、財務金融委員会で、2011年度の消費税の輸出還付金が納税額を上回り、消費税収支が赤字になっている税務署の実態が明らかになりました。佐々木憲昭衆院議員の質問に国税庁が答えました。
トヨタや日産など輸出大企業の本社を抱える「企業城下町」の税務署が赤字の上位に並びます。
最も赤字が大きかったのは、トヨタ自動車のお膝元、愛知県の豊田税務署。11年度の納税額が266億円だったのに対し、還付税額は1360億円にのぼり、差し引き1092億円の赤字になっています。2位は、日産自動車本社がある神奈川税務署で、449億円の赤字。以下、マツダ本社のある広島県の海田(267億円)、シャープ本社のある大阪府の阿倍野(138億円)などと続きます。
消費税の輸出還付金は、輸出先には消費税を課税しないため、企業の仕入れにかかった消費税を戻す仕組みです。輸出大企業は、中小企業や下請けに対し単価を買いたたくことが多く、その場合、下請けに「払わなかった」消費税分まで税務署から還付を受けることになります。
国税庁によると、11年度の還付額は、国税分で1兆9000億円。そのうち、売り上げ10億円以上の企業が1兆7000億円で、全体の9割を占めています。
佐々木議員の主張
●消費税増税が中小企業の廃業を招いている
2004年に、消費税納税業者の免税点が売り上げ3000万から1000万に下げられました。このとき新たに134万件の事業者が課税対象となり納税義務を負うようになりました。そのため、課税対象業者は387万件に増加しました。
いまは327万件ですから、60万件減少しています。
佐々木議員は、麻生財務大臣に、「この業者はどこに行ったんですか」とききました。
麻生大臣は 「いろいろな例が考えられる」。「これが答えというのが一つあるわけではございません」と逃げました。
しかし、いちばん大きな理由は、課税業者にされたが消費税が転嫁できないため、自己負担が増え、営業が成り立たなくなって店を閉じたからではないでしょうか。
自己負担になると、経営が厳しくなり滞納せざるを得ないという状況も生まれます。
新規発生滞納の中で消費税の滞納が占める比率を、財務省に確認すると、1989年度が2.7%、1995年度は27.4%、2000年度は44.6%、2005年度45.4%、2010年度49.7%、2012年度53.6%となっいます。
1997年に税率が3%から5%に引き上げられたときに滞納が急増しており、2004年に免税点を3000万円から1000万円に下げたときにも滞納がふえています。消費税を納める負担が増えて経営が厳しくなるからです。このまま、今年4月から税率を8%に上げがれば、いっそう厳しい状況が生まれ滞納もふえるのではないでしょうか。
税制だけが理由ではありませんが、駅前の商店街がシャッター通りになるなど、全体として日本の中小企業の数が減っています。
そこで佐々木議員は、「日本の中小企業数はどうなっているか」とききました。
政府の答弁は「我が国の中小企業、小規模事業者の数は、事業所・企業統計調査によりますと、1991年は520万社、2006年は420万社、それから、この統計の後で後発統計として経済センサスというのが出ていますが、これによりますと、2009年は420万社、2012年は385万社となっている」というものでした。
20年の間に、520万社から385万社へと、135万社も減っているのです。大変な減り方で、驚きました。この間、4分の1の中小企業が消失しているのです。
佐々木議員は、麻生大臣に、「こんなに減ると、労働者の働く場所がなくなってくるのではないか」と、ききました。
麻生大臣は、「景気が悪くなってくると、商売が難しくなる。結果として倒産がふえる、その結果失業が上がる。…極めて厳しい状態が20年続いてきた」と答えました。
●消費税の莫大な還付をうける大企業。赤字の税務署も
他方で、輸出関連の大企業の場合には、消費税の還付があります。
国の分だけで、2012年度の消費税の還付税額は約1兆9000億円です。このうち、売り上げ10億円超の法人の還付金額は約1兆7000億円で、89.8%を占めています。
もちろん還付されたから丸々利益になるかというと、そうではありません。しかし、中小企業に対して、単価を買いたたいて、消費税分をおまえのところで見ろというような話がまかり通っているような状況があるのです。そうなれば、還付されたら自分のところの利益になってしまうのです。
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還付額が大きいため、消費税を集めるより還付の方が多い税務署があります。消費税の収支で赤字になる税務署です。
国税庁の答弁では、2011年度の統計によりますと、(1)豊田税務署、約1093億円、(2)神奈川税務署、449億円、(3)海田税務署、約267億円、(4)阿倍野税務署、約138億円、(5)今治税務署、約96億円、(6)直方税務署、約59億円、(7)右京税務署、約28億円、(8)阿南税務署、約21億円、(9)門真税務署、約21億円、(10)蒲田税務署、約20億円の「赤字」となっています。
驚きました。税務署というのは税金を集めるわけですから、ほんらい黒字なのですが、赤字の税務署がこんなにあるのです。
<PDFはこちらから>
なぜそうなるのでしょうか。愛知県の豊田の場合は、トヨタ自動車、関連会社もあります。神奈川税務署は日産自動車。広島県海田税務署の場合はマツダ本社。大阪府阿倍野税務署の場合はシャープです。それから、愛媛県今治の場合は、造船などの輸出企業がある。福岡県直方税務署の場合はトヨタ自動車九州。京都府の右京の場合は村田製作所本社があります。また、徳島県阿南の場合は日亜化学工業の本社。大阪府門真の場合はパナソニック本社。東京都蒲田の場合は、キヤノンの本社があるからです。
大手企業の城下町のところの税務署は、消費税については赤字になっているのです。
●乗合バスは消費税を「転嫁できない」
消費税の転嫁をめぐって、中小企業だけでなく、地方の公共交通機関も大変深刻な状況になっています。
国交省が、2011年12月12日の政府税調に提出した参考資料があります。その中に、「消費税率引き上げによる乗合バスへの影響」こういう資料があります。それを見ますと、「乗合バスの場合、利用者の大幅な逸走(いっそう)が懸念されるため」と書いています。逸走というのは、いなくなる、逃げ出すという意味ですが、「利用者の大幅な逸走が懸念されるため、運賃値上げによる消費税の転嫁は事実上困難」と書いています。
消費税を上乗せしたら、「運賃改定を行っても利用者の逸走により相殺され、十分な増収につながっていない」。「運賃値上げによるマイカーや自転車、徒歩への移行やバスによる出控えなどが逸走の主な理由」。「運賃値上げによる転嫁が期待できない中、消費税の納税額は確実に増加するため、乗合バスの収支の悪化と路線の廃止・減便、バリアフリー化等の遅れ等が強く懸念される。」と書いています。
タクシーの場合も、同じことが発生します。「タクシーの場合、利用者の大幅な逸走が懸念されるため、運賃値上げによる消費税の転嫁は事実上困難」と。
バスもタクシーも大変に困難な状況であると書いていたわけです。
当時と比べて、経済状況はそれほど好転しているわけではありません。
佐々木議員は、「国土交通省は、どういう対応をしているのか」とききました。
答弁は、「政府として、公共料金等については、税負担の円滑かつ適正な転嫁を基本として対処する方針」なので、「国土交通省では、路線バスを含む公共交通において、消費税の運賃への転嫁が円滑かつ適正に行われるよう取り組んでいる」というものでした。
佐々木議員は、「これは対策になっていない」と言いました。転嫁できないと政府税調に意見を提出したのに、「転嫁せよ」という通達を出しているのですから。「お客さんがいなくなって赤字が出てやっていけなくなることを奨励するという話になる」と言いました。
国交省の答弁は、「これにつきましては、事業者並びに特に利用者の方の御理解をいただくことによりまして、適切に転嫁していくということが必要かと考えております」と、つじつまの合わないものでした。麻生大臣は「カルテルを結んで値段を上げる」などと、的外れな答弁をしました。
佐々木議員は、「カルテルを結んでと言うけれども、乗り合いバスの場合は、カルテルを結ぶといったって、その地域にそれしかないんだから、どうにもならんでしょう」と言いました。
佐々木議員は、こういう深刻な状況を生み出す消費税の増税そのものを中止すべきだと主張しました。