国会での活動
国会での活動 − 派遣・視察、財政(予算・公共事業)、その他、景気回復
【04.09.06〜08】衆議院財務金融委員会の派遣・視察
2004年9月6日〜8日、佐々木憲昭議員は、衆議院財務金融委員会の派遣・視察に参加しました。
以下は、佐々木議員の報告です。
1日目…中部国際空港の現地視察
第1日目の今日は、中部国際空港の現地視察に参加しました。
総工事費は、空港建設で6431億円、関連工事費(鉄道・道路アクセス)2006億円、あわせて8437億円という巨額な事業です。
それだけではありません。この他、地元の自治体の関連投資などを含めると1兆円を超える事業に膨れあがると言われています。
名古屋駅から中部国際空港予定地までバスで移動し、概況の説明を受けました。
ここでは、空港会社の平野幸久社長、常滑市の石橋市長、愛知県企画局からの説明を受けました。
空港会社の社長や県企画部長は、中部国際空港の開港と愛知万博によって5年間の経済効果が、2兆2000億円にのぼると自慢げに話をされました。
しかし、地元常滑市の市長は「期待通りではなかった」と苦渋に満ちた面持ちで、説明をしました。
私は、「この空港建設で地元で何人の雇用が増えたのか」と質問しました。
ところが市長は「建設関連の雇用も商業用の雇用も、把握していない」と答えたのです。
空港会社の社長は「かなりの程度あるはず」というだけで、具体的な雇用については触れませんでした。
それだけでなく「地元には若い人がいないから雇用が増えない」などというのです。
会合が終了した後、私は社長に「若い人がいないなんてことはないはずだ」というと、社長は苦笑いしていました。
これらのやりとりを通じて、雇用の点では、地元への波及効果がほとんどないことが、わかりました。
深刻なのは、将来の人口増加への効果です。
私は「何人増えると想定しているか」と聞きました。
常滑市長は「高齢者が毎年500人亡くなるが、生まれる子どもは300人程度で人口減がつづいている。空港の開港を契機に増やしたいと考えている。
そのため、ニュータウンの建設をはじめ1万5000人が新たに住める条件づくりをしている」と答えました。
ほんとうに、そんなに増えるのでしょうか? 大きな疑問です。
私は、そのための先行投資があまりにも大きすぎるのではないかと思います。
市長は「区画整理、ニュータウン事業など、これから5事業が残っている」と言いました。
関西空港の地元のように、市の財政危機の引き金にならなければいいが、と考えてしまいました。
もっと深刻なのは、将来の空港の営業の見通しです。
いま、国際線・国内線の誘致活動をすすめているそうですが、社長は「国際線の誘致が思い通りすすんでいない」と言っていました。
もしも、赤字が累積されるようだと、その負担は誰がするのでしょうか。
国と愛知県、岐阜県、三重県、名古屋市で、全体の6分の5の無利子資金を負担しています。
国民にだけ、莫大なツケが回されるのでは、ほんとうに困りますね。
2日目…愛知万博会場の現地視察
財務金融委員会の派遣・視察の2日目です。
午前中、2005年(3月25日〜9月25日)開催予定の「2005年日本国際博覧会」(愛知万博)の予定地、長久手町の会場を視察し説明を受けました。
会場に近づくにつれ、リニアモーターカーが走る路線と支柱が目に入ります。まさに、ゼネコン中心の土木工事そのものです。
会場予定地に着くと、パビリオンをはじめ、さまざまな建物が次々と建設中です。ここでも、ゼネコン各社の名前が公然と掲げてありました。
私は、自然の叡智をかかげていながら、自然を破壊するものになっているのではないか、という懸念を持たざるをえませんでした。
そこで、中村事務総長に聞きました。
――「海上の森を会場からはずしたことはいいが、例えば「ゴンドラ」が長久手会場から瀬戸会場まで、延々とつくられようとしている。自然とのふれあいを言いながら、なぜこのようなものをつくるのか。このゴンドラの14の支柱のうち2つについては地元住民が貴重な自然を破壊するものと厳しい批判をしている。どのように考えているのか」。
これにたいする回答は、「たくさんの人を運ばなければならないので必要だ。批判があるのでコースについては変更した。工事のために道路をつくると、環境への影響が大きいので、空からヘリコプターで資材を運ぶことにしている」というものでした。
しかし、その近くにはオオタカの営巣が3つあります。
私は、「ヘリコプターを飛ばすことによってオオタカへの影響が大きいのではないか」と聞きました。
これにたいする答えは、「8月などの営巣の時期をはずして工事をするので、配慮している」というものでした。
しかし、もともとこのようなゴンドラが必要だという発想そのものに、問題があるのではないでしょうか。
どうも、現地を見て話を聞けば聞くほど「万博」と「環境」が、そもそも両立するようなものなのか。疑問が深くなるばかりでした。
万博の総予算は、国が450億円、自治体が450億円、民間が450億円、あわせて1350億円です。
関連事業も含めると1600億円になります。
さらに、その他の費用をを入れると3400億円にのぼります。
私は「この費用は、どの程度回収できるのか。「採算ラインは、入場者何人なのか」と聞きました。
万博の中村事務総長の話によると、「入場者数は1400万人を予定しており、それを達成しないとだめ」と言いました。
入場料は、普通入場で「大人3900円、中人2100円、小人1300円、シニア3100円」です。
たとえば、夫婦と子ども2人で、1万円を超えるような高い料金で、どんどん入場者が入ると言えるでしょうか、疑問です。
大阪万博は6400万人参加して成功しました。しかし、沖縄の海洋博は349万人で失敗しています。その二の舞にならないという保障はありません。
他の議員が聞きました。「佐々木議員が言ったように、赤字が出たときは、誰が負担するのか。万博が終わったあと、天下り先として組織が存続されるということはないか」。
これにたいしては「赤字が出ないようにするしかない」というだけで、具体的な答えはありませんでした。
なんとも、心もとない話です。
このように、さまざまな問題が未解決のまま、万博も中部国際空港も、工事だけはどんどんすすんでいるのです。これでいいのでしょうか。
2日目…焼き物のまち瀬戸市を視察
その後、愛知県陶磁資料館を見学し、タイル産業で成功している会社を視察しました。
陶磁資料館は、縄文時代から現在までの陶磁器の歴史的な資料を展示しており、たいへん参考になりました。
また、タイル産業の若手社長の熱弁と技術開発の熱意にも圧倒されました。
しかし、地場産業としての食器を中心とした焼き物産業の発展の道は、全体としてたいへん厳しい状況にあります。
地域に密着している焼き物を産業としてどう再生するかが大事な点です。
今日の視察だけでは、まだまだ表面的で、実態を把握するところには至っていません。
3日目…岐阜県高山市内を視察
財務金融委員会の派遣・視察3日目(最終日)です。
はじめに、岐阜県高山市内を視察、古い町並みをどのように保存しているかについて、高山市からの説明を受けました。
特に、町並み保存会の組織の特徴、歴史的建造物の保存への公的な規制と支援の制度などについて認識を深めました。
さらに、高山陣屋跡の保存と復興について、高山市から説明を受けました。
この陣屋跡には、大原騒動(農民一揆)に関する資料が展示されており、その説明がなかなか力のこもったもので、感銘を受けました。
明和8年(1771)から天明8年(1788)の18年間にかけて飛騨で起きた農民一揆を大原騒動といいます。郡上一揆からも、戦略・戦術を学んだと言われています。
3度にわたる一揆なので、正式には年号をとって明和騒動、安永騒動、天明騒動と言われていますが、代官の大原氏に対して起こった一揆なので、これらをまとめて「大原騒動」と言います。
この一揆にたいする幕府の弾圧は、苛烈をきわめ、獄門打首24人、入獄死12人、流島17人、鎮庄時の死者49人、追放罰金数千人となりました。
この一気に参加したわずか18歳の本郷村善九郎は、牢前で斬首され、首級を桐生河原へ送られ獄門となりました。
本郷村善九郎が、死刑となる4日前に獄中より妻かよあてに書いた手紙が展示されています。
3日目…岐阜県神岡町のスーパーカミオカンデを視察
つづいて飛騨市神岡町に移動し小柴教授がノーベル賞を受賞したカミオカンデに移りました。
バスを乗り換え、ヘルメットをかぶって坑道をすすみます。
宇宙線の研究を地下1000メートルのところでおこなうというのは、たいへん興味深いものがありました。
ニュートリノの実証が、素粒子研究にとって画期的な意味を持っており、原子物理学の理論体系を書き換えるほどのものだということについても、あらためて認識を深めました。
富山を経由し帰京
その後、バスは富山に入り、地場産業のひとつである配置家庭薬製造販売企業の視察をおこないました。――富山空港から羽田空港に移動。羽田に着いたのは、19時半近くでした。