奮戦記
【15.06.25】いったい誰が株を買って、株価をつり上げているのでしょうか
6月24日の東京株式市場で、日経平均株価は一時2万0952円71銭まで上昇。終値は2万0868円03銭と、1996年12月5日(2万0943円90銭)以来、18年半ぶりの高値となったということで、安倍内閣は浮かれているようです。
<株が上がったら生活は良くなるのか?>
株が上がったら経済は良くなったと言えるのでしょうか。
マルクスは『資本論』第三巻で、このように言っています。「これらの証券の価値減少または価値増大が、それらが代表する現実資本の価値運動にかかわりのないものである限り、一国民の富の大きさは、価値減少または価値増大の前も後もまったく同じである」と。
現実資本の価値運動つまり実体経済とかけ離れた「架空」資本の価値上昇にすぎないとき、バブルが崩壊しても「国民は…シャボン玉の破裂によっては、びた一文も貧しくはならなかった」と書いています。
異様な株価上昇は、私たちの現実の暮らしとかけ離れたところで発生しているのではないでしょうか。
いったい誰が株を買って、株価をつり上げているのでしょうか。
いまの株高は「官製相場」と言われています。つまり公的な機関が株を買い、意識的なつり上げが行われているというわけです。PKO(プライス・キーピング・オペレーション)とも言われています。
<日銀が株を買っている>
ひとつは、日銀が買っているのです。
日銀は金融緩和策の一環として、2010年の12月15日から「指数連動型上場投資信託(ETF)」を買い入れています。日銀は、企業の大株主になることが法律によって認められていないため、直接株式を購入するのではなくETFを購入しているのです。
日銀の買い入れの注文はどのように行われているのでしょうか。日銀から委託された住友信託銀行から証券会社へ発注されています。注文の受け手となった証券会社は、注文金額と同額のETF構成銘柄を手配しなければなりません。それで、市場需給が「好転」するのです。
これまでの買い入れ額は、どうなっているでしょうか。
2012年 6,397億円
2013年 1兆 953億円
2014年 1兆2,845億円
2015年1月〜6月13日 1兆4,147億円
半年で昨年1年を超え、ますます増えています。
<年金基金が株を買っている>
ふたつは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が買っているのです。
麻生大臣は、2014年4月16日の財務金融融資委員会で、「GPIFの動きが6月以降出てくる。そうした動きが出てくるとはっきりすれば、外国人投資家が動く可能性が高くなる」と述べました。
GPIFは、厚生年金と国民年金の積立金、約130兆円を有する世界一の公的年金資金運用機関。この資金が「出てくる」ということは、年金の積立金を株式投資に使うということです。
もともと、年金積立金運用の基本的な考え方については、厚生労働省の「年金積立金管理運用独立法人の運用の在り方に関する検討会報告」(2010年12月22日)で、年金基金は国民の大切な財産であるから、安全・確実に運用し国民に損害を与えてはならないとしていました。
しかし、安倍総理はそれを無視して、昨年2月24日の予算委員会で、「運用対象の多様化についても検討していく必要がある」と述べました。「多様化」とは、株式にシフトしていくということです。
昨年10月から、これまでの国内債券(国債中心)から株式中心に大きく変わりました。
以前は、国内債券が6割と国債中心の運用だった。国内と外国の株式は24%にすぎなかった。私たちは、それでも多いと批判してきました。
それが、新しい資産構成では、株式が実に半分まで占めるようになったのです。国内債券は35%にすぎません。130兆円のうち何十兆円もの資金が、株式市場に入ってくる計算です。株価が上がるときはいいが下がると国民につけが回る。きわめて危険な運用です。
こんなことは、外国でもやっていません。株価つり上げのために、年金基金という貴重な国民の財産まで投入しようというのが安倍内閣です。
しかも腹が立つのは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のトップの給与を勝手に引き上げたことです。(2015年2月2日の「日経新聞」コラム「風速計」)
これまでの理事長の年収は、約1900万円でした。それを3100万円に引き上げ、新設の最高投資責任者(CIO)の年収を3000万円にするというのです。さらに、新たに設けた運用専門職の月給は最高で145万円。成績が好調なら成績給が上積みされ「理事長の年収を上回る可能性もある」といいます。
厚労省は、いままでGPIFの理事長は「公務員待遇」だったが、日銀総裁の年収(3500万円)を超えない程度に引き上げたと説明(厚労省)しています。――その原資は、国民が汗水流して貯めた年金基金なのです。何という“お手盛り賃上げ”でしょうか。
年金基金という貴重な国民の財産で「バクチを打つ」ように仕向け、外国人が買いに来て大もうけを上げる。しかも、それを運用する人の「給与」は大幅に引き上げる。――こんな「アベノミクス」は、国民に害悪しかもたらしません。ほんらいの安全・確実な管理・運用に立ち戻るべきです。
<郵貯銀行が株を買っている>
みっつ目は、ゆうちょ銀行が株を買おうとしていることです。
郵便貯金の運用資産は、200兆円。いまの貸出金は3兆円もありません。半分以上を国債で運用しています。株式は、2兆1500億円(3月末)。今後3年間で、株式や外国債券に60兆円も投資するというのです。
これらを見ると、国民の貴重な財産をつぎ込んで、株をつり上げていることは明らかです。
しかし株価をつり上げても、もうけの大半は外国人がもっていきます。――野村證券で聞いた話。「外国人はさっと来て、さ〜っと出て行く」と。