奮戦記
【14.04.23】財務金融委員会で日銀黒田総裁に質問
私が、今日の財務金融委員会で質問した内容は以下の通りです。
消費が増えなければ資金需要も伸びない
一昨日おこなわれた財務金融委員会の「地域金融に関する調査」では、リアルな話をきくことができ、たいへん参考になりました。
融資を受ける中小企業からは、「銀行は、余裕のある会社には足繁く来るが、苦しいところには来ない」とか「銀行によっては、なかなか貸してくれないところもある」などの声がありました。末端まで、資金が回っていないというのが実感です。
日銀は、マネタリーベースで、2013年3月末の146兆円から来年2015年3月までに270兆円へと倍化する目標を掲げ、それを達成するとしていますが、いくら「異次元の金融緩和」をして、銀行にジャブジャブ資金を供給しても、茨城県では銀行の貸し出しは、前年比でわずか3%台の増え方です。特に、都銀・信託の融資はマイナス2.9%となっています。これが実態です。
調査で、明らかになったのは、決定的なのは資金需要だということでした。たとえば、旅館業の社長さんの話では、旅館というのは設備産業です。「借りやすくはなっているが、消費税で客足が遠のいたり従業員の給料などを考えると、設備投資にあまりお金をかけられない」と、率直なお話をいただきました。
地域の銀行側からいえば、「貸し出せと言われても、資金需要がないところ、危ないところには貸し出せない」ということになります。
やはり、国民の所得が伸びて消費が増えなければ、事業者の資金需要も伸びないというのが実態です。麻生財務大臣は、基本的にその通りと認めました。
黒田総裁は、異次元の金融緩和をやってマネタリーベース(旧称ハイパワードマネー)を増やせば、その先に資金が流れていくと言われたが、実際にはそうなっていません。
マネタリーベースは、日銀の意志で増やすことができますが、マネーストック(旧称マネーサプライ)は、日銀の意志だけでは増やすことができないのです。
金融というのは、「ヒモ」と似たところがあります。需要側が、ヒモを引っ張ればその力が伝わって資金が供給されます。しかし、需要がないのに供給側がヒモをいくら押してみてもたるむだけなのです。資金需要がないなかで供給をいくら増やしても、銀行にジャブジャブ貯まるだけだということは、すでに証明済みです。
日銀による事実上の「財政ファイナンス」
次に、国債買い入れの問題をただしました。
日銀は、マネタリーベースを拡大するためと称して「長期国債の買い入れ」を大規模に増やしています。日銀の長期国債保有残高は、2013年3月末の91兆円でした。これを、2015年3月末には190兆円へと倍に増やす目標を掲げています。
現在の長期国債の保有残高は、いくらになっているかときいたところ、日銀の黒田総裁は、158兆円と答えました。たいへん巨額です。
日銀が、銀行から大量の国債買い入れをおこない、銀行の当座預金残高だけが、異様に膨れあがっています。
これだけ国債を買い入れると、事実上の国債の日銀引き受けと同じではないか、財政ファイナンスになるのではないか、という問題が出てきます。
もともと、日銀による国債引き受けが禁じられてきたのはなぜでしょうか。どのような理由で、買い入れを禁じてきたのでしょうか。
それは、戦争中に戦費調達のため国債を無制限に発行し、日銀が直接引き受けをおこなったため、その後、大インフレをもたらした経験があるからです。その反省に立って、戦後は、日本国憲法と財政法がつくられたのです。
日本銀行としても、それを踏まえ、安易な「国債引受け」をしないよう、法令上もしくは日銀のルールとして、さまざまな措置をとってきました。
その一つが日銀券ルールです。これは、2001年(平成13年)3月の金融政策決定会合で決定された金融調節上の必要から行う「国債買入れ」を通じて日本銀行が保有する長期国債の残高については「銀行券発行残高を上限とする」というルールです。
アベノミクスで、このルールを停止したため、日銀券発行残高(2014年3月)は86兆6308億円なのに、日銀の長期国債保有残高は154兆1536億円にのぼっているのです。すでに、2012年8月に「銀行券発行残高」を突破し、長期国債の保有が増え続けています。「日銀券ルール」が生きていれば、明らかにルール違反の状態になっているのです。
また、日銀には「1年ルール」というのがありました。これは、1967年につくられたルールで、「発行から1年未満の国債あるいは政保債の買い入れはしない」というルールです。
過去の日銀総裁の国会答弁をみると、昭和46年(1971年)11月01日に参院・予算委員会で、佐々木直(ささきただし)総裁はこう述べています。
「国債の発行を何か当然のように考えている傾向がございますが、これは中央銀行の立場から申しますと、はなはだ警戒すべき態度であると思います。……国債の発行に歯どめを与えるという意味から、すでに御説明のございました財政法第四条の規定、それからまた日本銀行としていまとっております国債の直接引き受けはしない、それからまた発行後一年未満の国債あるいは政保債の買い入れは、これは右から左に消化するという印象を与えるということで、やっぱりそこに歯どめの効果を持たすために一年未満は買い入れをしない、この二つの原則は日本銀行として強く維持していくつもりでおります」。こう答えています。
また、平成11年(1999年)02月09日の衆院大蔵委員会で、速水優(はやみ まさる)総裁は、「国債の買い切りオペ、幾らでもどんどん買えばいいじゃないかという御意見もあろうかと思いますけれども、そうすればやはり引き受けと同じことになってしまいまして、財政節度が失われるおそれもございますし、国債の直接引き受けと大差ないことになってしまう」。こう答えているのです。
これが、日銀の伝統的姿勢です。「日銀券ルール」も「1年ルール」も、この立場から生まれた、極めて大事な原則です。これらの「ルール」も放棄してしまいました。
日銀は、従来の原則を投げ捨てています。時の政権の政策にあわせて、原理原則をコロコロ変えて良いのでしょうか。
国債について言えば、発行後すぐに市場から買っていますが、たいへん問題です。銀行が、財務省の実施する入札に応じて国債を仕入れ、翌日から数日後には、日銀が実施する国債買い入れで売る取引が、昨年の夏から目立っています。
まさに「右から左に消化している」としか言いようがありません。これは、やってはならないと言われてきた「財政ファイナンス」そのものではないでしょうか。
私は、黒田総裁に「現在、長期国債の発行残高に占める日銀の比率は何%になっているか。日銀は、単体として最大の保有主体だとと思うがどうか。また、目標としている一年後に、全体の約何%の保有になると想定しているか」とききました。
黒田総裁は、2013年12月に、日銀保有は全体の17%を占めており、単体としては最大となっている。来年には20%を超えると答えました。
昨年9月、黒田総裁は、「財政ファイナンスとみなされないようにしなければならない」という趣旨の話をされています。
しかし、やっていることは、発行後、期間を置かず国債を買い取り、全体に占める日銀の国債保有がトップとなるほど増えています。こうなれば、どこから見ても「財政ファイナンスでない」という言い分は成り立たなくなってくるのではないでしょうか。
いまのやり方を続けていけば、当面は、国債価格も金利も微妙な安定を保っているように見えますが、これは、綱渡りのようなもので、どこかで限界が来ます。
ある時点で国債を買い入れることができない状況になってくると、国債が暴落し金利が急上昇するなど、たいへんな事態になりかねません。