奮戦記
【13.08.25】強権的「国家改造」を許してはならない!(facebookより)
秋の臨時国会を見据え、安倍内閣が進めている「国家改造」ともいうべき策動は、きわめて危険な内容を含んでいます。
いま準備されている「国家安全保障会議(日本版NSC)」の発足、秘密保全法案、国会「省力化」案、内閣法制局長官の差し替え、集団的自衛権の容認の動きなどに、そのことがあらわれています。それは、「ナチスに学べ」という麻生発言と表裏一体のものとして見ておかなければなりません。
国民の知る権利を侵害する強権的な「秘密保全法」
日本版NSC(国家安全保障会議)は、どのようなものでしょう。内閣総理大臣が「日本の危機」と認定したとき、トップダウンで対処できる「内閣主導」の強権的な仕組みをつくるものです。
危機管理のさい、情報の集約とコントロールが重視されており、秘密保全法制はそのための法案です
報道されている機密保全法案の概要によると、こうなっています。
まず「漏えいすると安全保障に著しい支障を与えるおそれがあり、特に秘匿が必要な情報」を「特定秘密」に指定します。ただし「特別秘密」の定義や範囲は、たいへん曖昧です。秘密にしたいと考えた行政機関の長が指定するのですが、これでは、自分たちに都合の悪いことを「特別秘密」にして、国民の目から隠すことにもなりかねません。
「特定秘密」を扱えるのは、国務大臣、副大臣、政務官、政府が「適性評価」を行った公務員や契約業者の役職員らに限定するとしています。問題は、それを取り扱う人が、思想信条も含め徹底的に調査・管理され、その範囲が家族、友人など周辺の市民にも及び、同意もないまま個人情報が調査される危険性があることです。
そのうえで、「特定秘密」を漏えいした公務員や、不正な方法で公務員などから取得した者に対し、最高で10年の懲役を科すとしているのです。
2011年に出された「秘密保全のための法制の在り方について」(報告書)によれば、秘密漏洩、過失漏洩、特定取得行為、それへの教唆・扇動、共謀などに罰則を科すとしています。
教唆・扇動・共謀が処罰対象となりますから、マスコミや研究者などの自由な取材が阻害され、正当な内部告発もできなくなってしまうでしょう。
◆参考「秘密保全のための法制の在り方について」(報告書)…首相官邸HP
国会機能の低下、議会制民主主義の否定
さらに重大なのは、立法府である国会の機能を形骸化し、事実上、内閣の下請機関にしようとする動きが強まっていることです。
参議院選挙で与党が圧勝したため、衆参両院の「ねじれ」が解消されたとしていますが、そのもとで、多数を握る自民・公明両党が一部の野党を取り込みながら、法案を「効率よく」成立させるため、「国会省力化」案を検討していることです。
そのきっかけとなったのが、日本維新の会(国会改革PT)の「国会改革の推進について(案)」(2013年5月31日)という提案です。
維新の会の松浪国対委員長代理が、6月に自民党、民主党、公明党を回ってこの案を示し「これをやりましょう」と述べ、自民党は「渡りに船」とばかりに「検討する」と応じたそうです。
その提案によると、内閣が提案する重要な人事を国会が承認する国会同意人事の対象を減らすこと、あらかじめ「審議日程を計画」し審議時間の上限を決めておくこと、総理大臣をはじめ閣僚の委員会への出席を大幅に減らし副大臣の答弁を閣僚並みに認めること、等々です。
こんなことが実行されたら、国会はチェック機能を低下させ形骸化することになるでしょう。
いうまでもなく、日本国憲法は、国会を「国権の最高機関」と位置づけ、議会制民主主義を国の統治原則としています。正当な選挙によってつくられる国会は、内閣に対する監視機関であるとともに、国民を代表しその意見にもとづいて立法をおこない、かつ内閣を生み出す役割をも担っています。
国会が民意を正確に反映した国民代表によって構成され、そのうえで充実した審議がおこなわれ、審議内容・行政情報が国民に提供され、立法合意をはかっていく。──これが議会制民主主義の原則です。
「国会省力化」案の実態は、強力な内閣主導で国会審議を弱体化する“国家改造”にほかなりません。それは、国民主権、議会制民主主義という憲法の根本原則に反するものです。
◆参考「国会改革の推進について(案)」…日本維新の会HP
極限まで“解釈改憲”進める
安倍内閣が、内閣法制局長官まで入れ替え、「集団的自衛権」の行使を容認する前駐仏大使を起用したことも重大です。これは、米軍の戦争に参戦する「集団的自衛権」の行使は憲法違反だとした歴代内閣の「憲法解釈」を変えるための布陣です。
民主党政権の時代、内閣法制局長官に国会答弁をさせず、代わって官房長官がその役割を果たすという動きがありましたが、それは破綻しました。
今度は、内閣法制局長官に「集団的自衛権」を認める答弁をさせようという魂胆です。これは、あまりにも身勝手なやり方です。歴代自民党政権の憲法解釈を自ら否定することに他なりません。
集団的自衛権の検討を進める有識者懇談会の座長代理は、その行使を全面容認する意向を表明しました。早ければ11月後半にも報告書をまとめるとも言われています。
こうして、安倍内閣は解釈改憲を極限まで進める構えです。
麻生発言の意味するもの
このように見てくると、麻生副総理が「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気がつかなかった。あの手口に学んだらどうかね」(8月1日)と述べたことが、妙に現実感を持ってきます。
「あの手口に学ぶべき」という発言は、まさにナチズムの肯定そのものであり、閣僚としての資格はもちろん政治家としての資質が問われるものです。絶対に許すわけにはいきません。
1933年1月に首相に就任したヒットラーは、就任直後に国会議事堂放火事件を起こし、それを機に、共産党、労働組合、社民党などを次々に非合法化し、最後に政党の結成まで禁止して1党独裁体制をしきました。
注目すべきは、その過程でヒットラーが「受権法」(全権委任法)を成立させ、ワイマール憲法を機能停止に追い込んだことです。憲法があっても、事実上機能しない事態をつくったのです。
麻生氏が「いつの間にか、ナチス憲法に変わっていた」とのべていますが、ワイマール憲法それ自身は残っていたのです。
麻生氏はその事実をしらなかったのでしょうか、知っていて「解釈改憲」について述べたのかもしれません。「ワイマール憲法という、当時ヨーロッパで最も進んだ憲法下にあって、ヒットラーが出てきたんだから。常に憲法は良くても、そういったことはあり得るということですよ」と述べているからです。
◆参考【13.08.07】自公はなぜ逃げるのか!麻生副総理の「ナチス肯定発言」国会質疑(facebookより)
安倍総理は、憲法96条、9条の明文改憲を狙っていますが、当面、急いでいるのは、「解釈改憲」を極端に進めることです。
「国家安全保障会議(日本版NSC)」の発足、秘密保全法案、国会「省力化」案、内閣法制局長官の差し替え、集団的自衛権の容認の動きなどは、憲法の原理原則を骨抜きにする危険な動きだと言うことを、声を大にして訴えなければなりません。
――国民が気がつかないうちに、「いつの間にか」憲法があっても機能しない事態。こんな状況を絶対につくらせてはなりません!