奮戦記
【13.05.24】規制当局がインサイダー取引を発見できないのはなぜか
◆証券取引等監視委員会や金融庁は、野村証券の会社内で長年常態化していたインサイダー取引を見つけることができず、1000億円以上もの損失を投資家に負わす詐欺事件が毎年発覚している。なぜなのか。
昨年問題となったAIJ事件では、デリバティブ取引等による運用の失敗を隠し、虚偽の基準価格や運用利回りを報告して「順調な運用」を装い、顧客である厚生年金基金の被害を拡大してきた。MRI事件(4月に行政処分が行なわれた)では、顧客に対し虚偽による勧誘、虚偽の事業報告書などで、1300億円超の資金が集められ、そのほとんどが行方不明となった。虚偽の報告書を使って「順調な運用を装う」ことが、なぜできたのか。
先日の本委員会で、島尻政務官は、「限られた人的資源を的確かつ有効に活用しながら情報収集能力、そして分析能力やリスク感度をより一層高め再発防止策を徹底してまいりたい」と答弁し。果たして、情報収集能力と分析能力だけが問題なのか。
ファンドを取り扱うMRIのような業者は、金融商品取引法で第二種金融商品取引業者であり、全国で計1279社もある。AIJのような投資顧問業者も協会会員で789社もある。これらの検査対象を証券監視委はどれくらいの頻度で検査しているのか。
証券取引等監視委員会の定員は392人(2013年3月末)だが、2012年度に寄せられた情報件数は6,362件もある。これでは対応できない。
人員が足りないので、リスクベースで検査対象先を選定し、優先順位の高いところから順番に手を付けざるを得ない。そのため、十分な検査ができていないのではないか。
米国のSEC職員数は3,785人(12年9月末)、英国のFSAが3,955人(12年3月末)だ。日本は、10分の1で格段に少ない。いくら「情報収集能力」や「分析能力やリスク感度をより一層高め」るといっても、再発防止策を徹底」(島尻答弁)すると言っても、検査対象の絶対量に対してあまりにも体制が少なすぎる。抜本的な定員増を含む改正がなければならない。
麻生大臣も「肝心の人間の絶対量が不足しているんだと私らはそう思っております」(財金委員会、13年5月21日)と答えた。それなら人員を増やすべきではないか。