奮戦記
【13.05.21】倫選特で「成年被後見人の選挙権回復」法案の質疑
◆倫選特で「成年被後見人の選挙権回復」法案の質疑を行った。私の主張点は以下の通り。
■選挙権・参政権は、国民の基本的権利であり、すべての国民に等しく保障しなければならない。
その意味で、公選法の「成年被後見人に係る選挙権・被選挙権の欠格条項」の削除は当然であり、もっと早くから実現すべきものであった。
日本共産党は、成年後見人制度の導入時からこの問題を指摘し、選挙権回復について国会審議等で何度もとりあげ「早い選挙権の回復を」と主張してきた。公選法の「成年被後見人に係る選挙権・被選挙権の欠格条項」の削除は当然である。
1999年の成年後見人制度の審議の中で、わが党の木島日出夫議員は、成年後見制度は、認知症や知的障害・精神障害者で判断能力が不十分な人を保護し、支援することが目的の制度である。財産保護のための成年後見人制度と、国民の基本的権利である選挙権は全く関係ない。国民に対して選挙権をはく奪する理由はないと指摘していた。
今年3月の東京地裁判決もあり、全党で「成年被後見人の選挙権回復」法案を共同提案することになった。この本案が5月中に成立することで、今年夏の参院選から成年被後見人の選挙権が回復することとなる。
■憲法15条は、国民の固有の権利として選挙権を保障している。これは、国民が主権者として政治に参加する機会を保障するものであり、国民主権・議会制民主主義の根幹をなすものである。
この憲法上の権利行使には、投票機会の保障が不可欠であり、これなしに選挙権の保障はない。
今回、選挙権が回復する成年被後見人に限らず、障害者を含む有権者全体に、投票機会を保障することが必要だ。
■今回の法改正は、代理投票の適正化という内容が含まれている。
代理投票制度は、現在でも行われている制度である。投票用紙に文字を記入できない選挙人のための制度。投票管理者に申請すると、補助者2名が定められ、その一人が選挙人の指示に従って投票用紙に記入し、もう一人が指示どおりかどうか確認するもの。
そもそも、自書能力を有しないという理由で、有権者を選挙に参加させないということは、憲法が保障する国民固有の権利、成年者による「普通選挙」を保障していることの本旨に反することになる。現在、どれくらいの方が「代理投票」を利用しているのだろうか。
2009年の総選挙では、全投票者数の0.21%(小選挙区150,083票、比例151,181票)。2010年参院選でも、投票者数の0.2%(選挙区129,232票、比例131,200票)だ。今後は、成年被後見人の方々の選挙権が回復することで、代理投票は増えるはずだ。
■この法案では、代理投票の補助者を「投票所の事務に従事する者のうちから」定めるとなっている。その際、意志疎通が困難な方の意思を確認することが、課題になる。
現行制度のもとでも、投票所に行ったが、意志が伝えられず、投票ができなかったという例も聞いている。一方で、自閉症の方や知的障害がある方に対して、投票所内に付き添いの方も入ってもらい、投票所の雰囲気や選管職員に慣れてもらうために、十分時間をとっているところもある。他にも、代理投票の場所で落ち着きをなくした場合、一度その場を離れて、落ち着いてから行うところもある。このように、各地の選管で工夫や知恵を出し、本人の意思を確認し、代理投票を利用していると聞いている。
障害の程度は一人ひとり状況が違うので一律にマニュアル化するのは大変難しい。大事なことは、主権者がきちんと選挙権を行使できるようにすることだ。代理投票の補助者は、これまでの経験や工夫を生かし、本人の立場に立って、意志疎通、意思をくみ取る努力をしなければならない。
■私は、広島県に住んでいる23歳の男性のお母さんから話を聞いた。この男性は、手脚が不自由で、話すこともできないが、お母さんや親しい方は、男性の目の動きや微妙な表情の変化でコミュニケーションをとれるそうだ。
この男性は、1回の地方選挙と昨年の総選挙を代理投票でおこなったそうだ。お母さんが投票所に行く前に、「これから、選挙に行くよ」「あなたも国民の一人だから、その権利があるんだよ」と声をかけると、男性は眼をキラキラとさせるそうだ。投票所に行って、投票所の係員が投票用紙に記載し、本人の手に投票用紙を握らせて、車いすに座ったまま、係員が傾けた投票箱に、本人の手で投票用紙をいれる。投票が終わると、男性は誇らしげな顔をする。
今回の法改正によって、約13万6千人の成年被後見人の方々の選挙権が回復し、これから「代理投票」の利用も多くなる。引き続き、国民の選挙権行使が出来るよう、現場の選管や総務省も最大限の努力をしてもたらいたい。
代理投票は、投票所に行って投票することになるが、投票所へのアクセスの問題もある。投票所が遠くに離れていると、障害者の方には大きな負担となる。この間、投票所数が激減していることは、3月の質問でも指摘した。1996年総選挙の投票所数とくらべた昨年総選挙の投票所数はどうか。1996年総選挙と昨年総選挙を比べると投票所が4000か所も減っている(96年衆院選では53,214か所、12年衆院選では49,214か所)。
■これほど、投票所が激減すると、投票所まで遠くなる人も増える。3月の質問でも指摘したが、国政選挙執行経費基準法が改定され、投票所経費を大幅に減らしていることで、投票所の減少傾向に、さらに拍車をかけている。こういうことはあってはならない。
投票所自体のバリアフリーも問題になる。投票所が1階にないとか、入口に段差があるとか、こういうことで、障害者の方の投票行動を制限させてはいけない。投票所(期日前投票所除く)において、入口に段差があって「簡易スロープ」を設置しているのは何か所で、全体の何%か。
2009年総選挙では、入口に段差がある投票所は28,278か所。(全投票所数50,978か所)うち「簡易スロープ設置」しているのは、12,489か所、約44.2%。
2010年参院選では、入口に段差がある投票所は27,522か所。(全投票所数50,311か所)うち「簡易スロープ設置」しているのは、12,310か所、約44.7%。
総務省としては、「簡易スロープ設置」だけでなく、「人的介助」なども行っており、ほとんどの投票所で措置がされていると言いたいところだと思う。しかし、障害者の方から話を聞くと、「人的介助があるといわれても、遠慮してしまい、結局は投票に行けないと思ってしまう」という。やはり、当事者の立場に立って、何が必要かを考えて措置すべきだ。
■調査しているのは、入口の段差、投票所が1階にない場合の状況についてだけである。
障害者の方に聞くと、「車いす用の投票記載台」「車いす用トイレの整備」など、様々な意見がある。投票所のバリアフリー、投票所のアクセス、これらの問題も、解決していく必要があると思う。
障害者の投票機会の保障にために、総務省として他にも施策を行っている。例えば、「病院等での不在者投票」「郵便投票」「点字投票」など、どれくらいの方が利用しているか。
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2009年総選挙
(全投票者数、選挙区で72,019,655人、比例で72,003,538人)
病院等での不在者投票は選挙区で507,280票、比例で506,810票。
郵便投票は、選挙区で33,020票、比例で33,127票。
点字投票は、選挙区で10,856票、比例で10,799票。
2010年参院選
(全投票者数、選挙区で60,255,670人、比例で60,251,214人)
病院等での不在者投票は選挙区で457,832票、比例で457,369票。
郵便投票は、選挙区で31,592票、比例で31,756票。
点字投票は、選挙区で9,444票、比例で9,461票。
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■現在、選挙権をもっている障害者でも、「代理投票」「病院等での不在者投票」「郵便投票」「郵便代理投票」「点字投票」の方法があることを知らない方も多い。
先に紹介した広島県の男性のお母さんは、当初、このような制度を知らなかったそうだ。男性が成人して選挙権があっても投票できない、投票させてあげられないということが、「しのびない」と思っていた。お母さんが、思い切って選管に相談すると「代理投票が出来る」と知らされたということだ。親が知らなかったために、成人してから数回あった選挙を棄権させてしまったことを、悔んでおられた。
今回、選挙権が回復する成年被後見人の方々とともに、全ての障害者の方々に、このような制度があることを、周知徹底を図る必要がある。
■選挙というのは、投票だけではない。自ら、支持する人を応援する選挙運動を行うことも、参政権の一部である。
聴覚障害や言語障害を持っている方は、電話を使って選挙運動することは困難である。例えば、先月成立したネット選挙運動解禁法案によって、WEB上では誰でも選挙運動が可能になったが、メールは政党・候補者しか利用できない。早期にメールでの選挙運動も可能にするべきだ。他にも、FAXでの選挙運動を可能にすることなども考えられる。
今後、障害者の選挙運動ということも考え、選挙運動の自由を拡大することが必要である。