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奮戦記

【13.05.21】財金委で金融商品取引法改正案を質す

   財金委で金融商品取引法改正案について政府を質した。――金融商品取引法案は大変複雑な内容だが、提案されている法案は5つの柱で成り立っている。ほんらい、それぞれ独立の法案で出すべきものだ。
 たとえば、破たん処理は預金保険法の改正、資本性資金の供給強化は銀行法の改正、インサイダーや資産運用規制などは金商法改正として別々に出すべきだ。それを「十把一絡げ」で出してきたのは、ひとつひとつの内容をきちんと議論することを否定するものである。
 最初にこの点を正したが、麻生大臣からは明確な答弁がなかった。

  ◆責任ない者に負担を押しつけるな

 まず「金融機関の秩序ある処理の枠組み」についてだ。
 これまでの金融機関の危機対応のための仕組みとして預金保険というものがあり、金融機関が負担する保険料で成り立っている。預金保険の残高(責任準備金)は、いま1兆円を超えている。
 預金保険の対象となっていたのは、これまでは預金取扱金融機関だけだった。ところが、こんどの法案では、保険会社や証券会社等にその対象を広げることになる。
 預金者を保護するための金融機関の保険制度が、なぜ証券会社の破たん処理などに使われるのか。金融商品取引業者の破たんに、銀行や預金者はどんな責任があるというのか。

 法案は、預金保険機構による資金調達には「政府保証」を付けたり、「流動性供給・資金援助等の措置」ができ、債務超過でない場合でも必要に応じ「資金増強」も可能としている。しかも、「政府補助」を行うことまで可能としている。この「政府補助」というのは、財政負担、税金投入だ。
 これらをみると、金融機関に対して至れり尽くせりの対応だ。
 リーマン・ブラザーズの破たんから何を学ぶべきか。それまでの欧米日各国の金融制度の緩和によって、銀証分離の原則などが形骸化したことが、この金融危機の背景にある。このような投機的な金融市場にならないように規制すべきなのに、それを棚上げして、銀行だけでなく保険会社や証券会社まで破たん処理にまで公的資金を投入する体制をつくるというのは、本末転倒ではないか。

  ◆インサイダー取引規制について

 法案は、インサイダー情報を漏らして他人に取引させ、利益を得させることを規制するものだとしている。しかし、この法改正でどれだけ効果があるのか。
 処罰の対象となるのは、利益を得させたり損失を回避させる「目的をもって」インサイダー情報を漏らし取引の推奨を行うことだ。単に、インサイダー情報を伝達したり取引推奨行為があっただけなら、処罰の対象にならない。つまり刑事罰や課徴金賦課の対象にならないということだ。
 ここで重要なのは、利益を得させる等の「目的」をもってやったかどうか、という主観的要件だ。それを判別するのは、至難の業ではないか。
 さらに、それによって、実際に取引が行われたことを要件(取引要件)とすることとしていることも問題だ。インサイダー情報を伝達したり取引を推奨するという行為があっても、実際に取引が行われなければ、刑事罰や課徴金賦課の対象となることはない。
 これは、いくらでもすり抜けられるザル法だ。金融審議会のワーキング・グループにおける議論では、情報伝達・取引推奨行為自体が、一般投資家の市場に対する信頼を害するものであるとして、取引と結びつかない情報伝達等であっても、処罰の対象にするべきであるとの意見もあった。
 しかし、この意見は採用されず「主観的要件」や「取引要件」を規制の条件に盛り込んだ。そうして処罰の対象は、「利益を得させる目的で情報を漏らし、情報に基づいた不正取引が実際に起きた場合に限られる」としたのである。これでは、ほとんど“尻抜け”になってしまうのではないか。
 こうなったのは、証券会社などが外部の人と必要な情報をやり取りしにくくなるという声に答えたからに他ならない。
 12年12月26日付の「読売新聞」によると、弁護士の田島優子氏は「立証のハードルが高く、実効性が乏しい」と指摘している。
 ヨーロッパでは、EUの市場阻害行為指令を受けて、各国で職務の適切な遂行として行う場合を除き、インサイダー情報を第三者に漏らす行為自体が禁じられている。
 また、証券会社等がインサイダー情報に基づいて取引推奨を行うことも禁じられている。また、アメリカでは、情報伝達者がインサイダー取引の共犯として処罰される可能性があるほか、証券取引委員会の公正開示規則によって、上場会社やその経営者がインサイダー情報を証券会社のアナリストや機関投資家のファンドマネージャーに漏らす行為が禁じられている。これが実態だ。

  ◆AIJ事案を踏まえた資産運用規制の見直しについて

 AIJ事件は、デリバティブ取引等による運用の失敗を隠し、虚偽の基準価格や運用利回りを報告して順調な運用を装って顧客である厚生年金基金の被害を拡大してきた。虚偽の報告書を使って順調な運用を装うことができたのは、なぜか。証券取引等監視委員会や金融庁の監督・検査体制のどこに問題があったのか。ここをしっかり詰めなければならない。
 平成17年度以降、AIJ投資顧問株式会社に関する情報は、証券取引等監視委員会の情報窓口に4件提供されていた。しかし、検査に入ったのは2012年になってからであった。
 なぜ、情報はスルーされていたのか。再発防止策としてとられた今般の措置(内閣府令・ガイドラインもしくは法改正)により万全の体制はとられたのか。この点が明らかになっていない。

 法案審議は、明日22日(水)は参考人質疑を行い、24日(金)にも質疑を行う予定だ。

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