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奮戦記

【13.05.13】なぜ、いまリニア中央新幹線なのか(facebookより)

■リニア新幹線について、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
 「スピードが速い」「新しいユメの技術」等々…。しかしリニアは本当に必要なものなのか、よく考えなければなりません。
 振り返ると、2007年4月、JR東海はリニア中央新幹線建設構想の推進を社内決定しました。このリニア新幹線構想をどう受け止め判断すべきか、検討する政府ベースの審議が、2010年3月から国土交通省・交通政策審議会鉄道部会・中央新幹線小委員会で開始されました。そして、2011年5月12日に、小委員会が「最終答申」を発表しました。そのうえで、5月26日には、国交省がJR東海に対して、リニア中央新幹線の建設を指示したのです。国交省のゴーサインを受け、JR東海は来年2014年に着工を予定し作業を急いでいます。
 国民・利用者の声をまともに聞いたのでしょうか。「答申(案)に関するパブリックコメント」では、「反対」「中止」「再検討すべき」の意見が、全回答の中で73%にも達しています。(888の意見のなかで648=72・9%)。「最大限尊重する」といいながら、結局、「手続きを進める」というなら、何のためのパブコメかと言わざるをえません。

■なぜ、いまリニア中央新幹線なのでしょうか。
 建設主体であるJR東海は、リニア新幹線の目的について、当初は「輸送力の限界打破」を掲げていたのですが、その「輸送力の限界」の根拠となる輸送実績は、どうでしょうか。座席利用率は、大幅に低下しています。年間を通してみると最近数年間で約10%も低下し(03年度実績66・2%→09年度実績55・6%)、普段は座席の35〜45%が空席です。年末・年始やお盆の時期の混雑率が、120%になるといわれていますが、これは自由席のことで、こうした混雑は年間10日間ぐらいしかありません。
 これからも、少子高齢化による人口の減少や格安航空会社の相次ぐ就航などで、需要は「横ばい」、「減少」になることは明らかです。
 現に、JR東海の社長は、2010年5月、国交省・交通政策審議会中央新幹線小委員会で、それまで掲げていた「輸送力の限界」については、一言もふれなくなりました。
 本来なら、必要性について徹底的に議論されなければならないのに、審議会では、まともな議論が行われていないのです。それどころか「バイパスをつくらなかったら東海道新幹線の一本足がだんだん朽ちていってリスクがどんどん大きくなる」「これにチャレンジするのは株主様のため」(JR東海社長の発言)と、唖然とするような議論がおこなわれてきたのです。

■東海道新幹線が“老朽化”したのでリニアが必要になったのでしょうか。
 「東海道新幹線の経年劣化(老朽化)」への対応は、乗客の安全面から考えて当然のことです。そのための大規模改修は「全幹法」という法律によって定められており、進められています。大規模改修は当然のことです(費用総額は1兆円超)。
 それが、なぜリニアの必要性につながるのでしょうか。「バイパス」でしょうか。逆に、リニアにおカネを使えば、大規模改修の方がおろそかにならないでしょうか。問題なのは、大規模改修についての計画、展望などが国民・利用者の前にまったく示されないまま、「バイパス論」が持ち出されていることです。
 審議会小委員会では、一部の委員から「(リニアを)つくった場合はこうなります。…つくらなかった場合、つまり今の東海道新幹線を維持するためにはこれだけのコストがかかって、…こういう運休が生じるという2つの選択肢を出していただきたい」という趣旨の発言がありました。しかし、JR東海社長は「私どもは経営者としてやるわけだから(リニア以外の)ほかのルートはデメリットが大きい。本当にこれ(リニア)で進めさせていただくことしか道はない」と強弁するのみでした(2010年5月10日、第3回小委員会)。

■大規模地震等の「災害発生のリスクに対する備え」はどうでしょう。
 近い将来、東海・東南海・南海の3海域で、巨大地震が発生することが予想されています。その場合、リニア中央新幹線は果たして耐えられるのでしょうか。
 沿線住民をはじめ、多くの国民は現実にリニア新幹線建設に不安をいだいています。
 たとえば、岐阜県中津川市の方は、こう言っています。「今後30年間に87%という高い確率で発生が予想されている東海地震に対して、その影響を深刻に受けると予測される「警戒区域」に、岐阜県内唯一、中津川市が指定されている。その中津川市西部に中間駅が建設されるという。たとえば、「地上20メートル」の高さにつくられるという中間駅が、東海地震など大規模地震で原型を保つことができるのか?」と。
 神奈川県相模原市在住の人からは、「そもそも大深度の地底(ちてい)にトンネルを掘って、地震や火山の噴火、予期せぬ水脈の切断などにどう対処するつもりなのか」。地下40メートルの鉄道、長大トンネル内で火煙(ひけむり)が立ちのぼるなど異常事態が発生した場合、万全の救出策は用意されているか。狭い空間から高齢者を含む約1000人の乗客をどのくらいの時間内で救出できるのか?」と
 4月15日の予算委員会(分科会)での私の質問に「科学的な知見にもとづき確実に検討している」という抽象的な答弁で、新たな「安全神話」を振りまくようなことを国交省がやっているとしか言いようがありませんでした。本当に「異常時における安全確保」は確認されているのでしょうか。「はじめにリニアありき」でないでしょうか。

■財政面で国民にツケがまわらないでしょうか。
 リニア新幹線は、JR東海が建設主体として建設費用の全額を負担する一方、国は、建設の指示を出すだけです。
 実質的な大規模な公共事業であり、「国家的プロジェクト」と言われながら、国会審議など公共的関与が及ばないまま異例の形で進められてきたのが現実です。事実、JR東海は「自己負担でプロジェクトを完遂」するので「経営の自由、投資の自主性の確保という民間企業としての原則を貫徹する」と断言しています。総額9兆円以上の巨額の資金が投入される今回のプロジェクトに対し、国はJRの主張を追認するだけです。
 需要が低迷するなか、東海道新幹線のバイパスをつくりルートを二重系列化するというのですが、これでは、東海道新幹線もリニア新幹線も、ともに採算が悪化し赤字経営となることは十分想定されます。
 そうなれば、一民間企業の問題にとどまらず公共交通という公益事業にかかわる重大な問題となります。破たんすれば、民間鉄道会社の救済に国が乗り出し、国民の税金が投入される危険性も否定できません。また、運賃の値上げという形で、国民・利用者に多大な負担をかけることにもなります。結果として、国民にツケを回すことになるのではないでしょうか。

 中間駅設置にともない周辺整備のための地元負担は膨大となります。アクセスのための交通整備、中間駅地上部分の建設用地をはじめ様々な負担が発生します。(相模原市では、これらの地元負担は数百億円から2200億円をも超えるとも言われている。)
 名古屋では、「効果」とは逆に「ストロー現象」といわれる地域経済へのマイナス影響が懸念されています。財政事情がきびしいなかでこのような巨額の投資は、福祉・教育へのしわ寄せなど市民生活に大きな影響を及ぼすことになりかねません。

■リニア計画に反対し、計画の撤回を求める。
 2年前の東日本大震災と福島原発事故を経て、大規模な公共事業や電力・エネルギー問題などについては、「これまでのあり方」を見直すべきではないか、との意見が広がりつつあります。
 リニアは、ほかにも技術面での不安、人体への影響、環境問題など様々な未解決の問題をかかえています。これを、わずか1年余りの審議会の議論だけで「見切り発車」していいのでしょうか。
 いま求められているのは、リニア計画に反対し撤回をもとめることです。少なくとも当面、建設計画を凍結し、リニア建設に利害関係のない専門家を含む「第三者機関」を設置し、さまざまな角度から評価・検証を行うことは当然のことです。


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