奮戦記
【13.05.02】「アベノミクス」のインフレターゲット論と日銀国債買い入れ(facebookより)
日銀の黒田総裁は、「2年以内に消費者物価2%上昇の目標を達成する」と述べている。その時期は、今から2年後の2015年4月ということになる。その時点で、2014年4月に比べて物価が2%上昇していなければならない。
消費税は、2014年4月すなわち来年4月から、税率で3%上昇する。それは、2%程度の物価押し上げ要因になる。ただし日銀は、物価上昇目標には「消費税増税分は入らない」としている。そうなると、物価上昇率は2年後に合計4%になる。物価上昇目標には、円安による輸入価格上昇分は入らない。円安が進めば当然、物価が上昇することになる。
では、2016年4月頃には、どうなっているか。消費税は、(2015年10月から)税率2%分引き上げられ10%になっている。この増税による消費者物価上昇分は、前年比で1%台。それを除いた物価上昇が2%、あわせて3%台の物価上昇になる。これに、円安分が加わる。そうなると、いまを起点に考えると3年後の2016年4月には、計算上10%近い物価上昇になる。こんなことがあり得るのだろうか。
安倍総理と黒田日銀総裁がやろうとしている「アベノミクス」は、まったく辻褄が合わない。こんなインフレターゲットよりも、可処分所得を増やしてこそデフレ脱却が可能となる。
NHKは昼のニュースで、日銀が「大規模な国債の買い入れ」をすすめた結果、マネタリーベースで先月末時点で155兆円を超え2か月連続で過去最高を更新したと報道した。
日銀は、国債を大量にえば国債の金利が下がり、それに連動して住宅ローンの金利や企業への貸出金利なども下がり、銀行からお金を借りる人が増えると想定していたようだ。
しかし、現実には5月1日から住宅ローンの金利が上がっている。それは、これまで国債を大量に買っていた銀行や保険会社などの金融機関が「これから金利がもっと下がる」と予想して国債の買い入れを減らしたから。
そのため、日銀の思惑とは反対に、国債の価格が下がり住宅ローンの金利が上がるという「あべこべ」の結果を招いたのだ(「朝日」5月1日付参照)。