奮戦記
【09.06.16】議運委で「臓器移植法案を本会議の議題とする動議」に反対意見を表明
今日、衆院本会議で臓器移植法4案を議題とする動議が出され、各案賛同者の討論がおこなわれました。
日本共産党と社民党は、まだ厚労委員会での議論がつくされておらず、各案の問題点が噴出している状況下では、本会議で討論・採決すべきでないと、この動議に反対し審議を尽くすよう求めました。
私が、議運委でおこなった「臓器移植法改正案を本会議の議題とする動議に反対する意見表明」の内容は、別掲の通りです。
臓器移植法案を本会議の議題とする動議に反対する意見表明(全文)
日本共産党を代表して、「臓器移植法改正4法案を本会議の議題とする動議」に反対の意見を述べます。
6月9日の衆議院本会議で、臓器移植法改正法案の「中間報告」が行われました。そのさい私は、厚生労働委員会で審議がつくされていないのに、審議を打ち切って「中間報告」をおこない、本会議での採決にもちこもうとするやり方に反対しました。
厚生労働委員会での審議は、わずか8時間にすぎません。関係者からは、「A案の早期成立」をもとめる声がある一方で、反対の声や慎重審議を求める声も少なからず寄せられています。医療専門家や学会の中でも、さまざまな議論があり、日本小児科学会では意見の一致を見ておりません。日弁連は、A案やD案などで子どもの臓器移植を進めることに反対する「会長声明」を出しています。
この間の法案審議では、A案については、一律に「脳死を人の死」とするもとで、本人の意思がわからない場合に臓器の提供を強いられるのではないのかという問題、またD案では、15歳未満の子どもには家族の意志で臓器提供できるとしてよいのか、という問題が議論の中心になりました。現在、こうした問題点や矛盾点が噴出したままとなっているのであります。マスコミも「移植審議 混迷深め幕」などと論評し、十分な議論の深まりがないことを伝えております。
このような状態で、4法案のいずれかの選択を全議員にせまることは適切ではなく、やるべきではありません。どうしても採決するというのであれば、日本共産党は、4案すべてに棄権する態度をとるしかありません。
そもそも脳死臓器移植は、臓器提供者の死を前提とする特異な先進医療です。臓器の提供を受けることでしか治療の方法がない場合に、臓器提供の意思をふまえ、納得と合意のもとで慎重に道を開くというのが、今日の到達点です。
国会がやるべきことは、情報を公開し、論議を尽くし、合意を形成する努力を行うことではないでしょうか。この役割を果たさず、採決だけを優先すれば、臓器を必要とする患者の願いと、臓器を提供してもいいとするドナーの善意の双方にとって、合意と納得が得られないまま、お互いに歩み寄れなくなる懸念さえあります。
子どもの脳死移植に道をひらこうとするならば、臓器を提供する子どもやその家族への十分な配慮が必要であります。そして、子どもの脳死やその判定基準の厳密さ、子どもの意思の扱い、親の関与をどうするのかなどが、十分に検討されるべきです。議論の中心問題である子どもの脳死判定の問題についても、混乱したままです。
6月9日の本会議で「脳死は人の死」を前提とするA案の提案者が、著名な脳神経外科医の意見として、脳死をめぐる議論が混乱しているのは「脳死という言葉の意味するところが発言者によって異なっているところに原因がある」。「脳死状態は臨床現場での説明のためにあいまいな表現として使われている。定義がなく、使う医師次第」だとして、「混乱の原因」を指摘する書簡を紹介しました。これは、すでに10数年前の「脳死臨調」で議論されてきたはずの「脳死判定」の問題が、いまだに国民の中で理解が得られていないことを示しております。
また厚生労働委員会や小委員会での参考人意見聴取と質疑では、わが党も指摘したように、最優先されるべき子どもの救命救急システムの整備がきわめて不十分なこと、心のケアーも含めた移植に必要なチーム医療の体制が十分でないこと、ドナー家族への支援体制がないこと、子どもの脳死の診断症例が少なく症例の蓄積が必要なこと、脳死判定後30日以上も心臓が動いている長期脳死について十分な理解がなされていないこと、法的脳死判定の前提である無呼吸テストの扱いについての合意が不十分なこと、子どもの虐待死を監視するシステムが不備なこと――など、さまざまな重要問題が提起されました。
臓器移植は、人の命に関わる医療、生命倫理が根本的に問われるものであり、国民の納得と合意形成がどうしても必要です。いま、なすべきことは、医療をはじめ専門家や関係者の参加をもとめ、正確な医学的知見をもとに議論を重ねて、国民の理解を深めることであります。国会は、そうした国民の納得と合意を形成する努力をつくすべきであります。以上で、意見表明を終わります。
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