奮戦記
【07.04.13】自民・公明が本会議で改憲手続、米軍再編法案を強行
今日の本会議で、改憲手続法案と米軍再編法案が自民党と公明党の賛成多数で強行され、参議院に送られました。日本共産党、社民党、民主党は反対しました。国民新党は裁決時に退席しました。
同時に、改悪教育基本法の具体化のための法案を審議する「教育再生特別委員会」が設置されました。
憲法に基づく秩序を「戦後レジーム」として覆そうとする安倍内閣の危険な性格が浮き彫りになってきました。
以下、笠井亮さんが日本共産党を代表して行った改憲手続法案にたいする反対討論と、赤嶺政賢さんの米軍再編特措法案につての反対討論をご紹介します。
改憲手続法案・本会議反対討論――笠井亮衆議院議員
私は日本共産党を代表して、憲法改正手続法案の自民・公明両与党提出・併合修正案、民主党提出・修正案に、反対の討論をおこないます。
改憲手続法案は、国の最高法規である憲法の改正にかかわる重要な法案であり、その審議は、慎重のうえにも慎重でなければなりません。
中央・地方公聴会においても、この間の世論調査や新聞の社説でも、日弁連や憲法学界などからも、拙速をさけ、徹底審議を求める声が、法案への賛否をこえて圧倒的多数です。
にもかかわらず、審議も不十分なまま、法案の採決を強行することは、憲政史上に重大な汚点を残す暴挙だと言わなければなりません。
反対の第1の理由は、本法案が、安倍総理がめざす九条改憲の政治スケジュールに位置づけられたものだということです。
安倍総理は、今年の年頭の記者会見で、「私の内閣で改憲をめざす、参議院選挙の争点にもする、そのためにまずは手続法だ」と言明し、施政方針演説でも、「改憲手続法案の成立を強く期待する」とまで述べました。
そして、時代にそぐわない条文の典型は九条であると、改憲のターゲットまで明言しております。何のため、誰のための手続法案であるかを明確にしたのであります。
法案提出者はともに、「この手続法案は、公正中立なルールづくりであり、改憲の動きとは無関係だ」と、おうむ返しに言ってきましたが、そのような説明を信じる国民は、もはやいないでしょう。
集団的自衛権行使の研究とあわせ、安倍総理が憲法九条を変えて日本を「海外で戦争をする国」につくりかえようとしている、そのための改憲手続法案であることは明々白々です。
第2は、両案とも、改憲案を通しやすくする仕組みは共通しており、修正案もその点は変わりありません。
まさに、憲法の国民主権原理に反する不公正かつ反民主的な法案だといわなければなりません。
1つは、国民の承認にかかわって、最低投票率などの定めがないことです。
国の最高法規である憲法の改正は、主権者である国民の意思が最大限くみつくされることが不可欠です。
ところが法案は、投票率がどんなに低くても国民投票は成立し、有権者の2割台、1割台の賛成でも、改憲案が通る仕組みになっています。
改憲推進政党にとって、都合よく、できるだけ少数の国民の賛成で改憲案を押し通そうというねらいがあることは明瞭です。
2つは、公務員や教育者の自由な意見表明や国民投票運動を不当に制限していることです。憲法改正国民投票では、誰もが自由に意見を表明し、運動できることが原則であり、地位利用を理由として、公務員、教育者の一国民としての国民投票運動を禁止することは許されません。
罰則を定めないとしても懲戒処分の対象になれば、その萎縮効果は計り知れません。まして、与党案の公務員の政治活動を制限する国家公務員法、地方公務員法の規定の適用は、論外です。
3つは、改憲案の広報や広告が、改憲推進勢力に有利な仕組みになっていることです。
国会に設置される広報協議会は、改憲賛成政党が圧倒的多数を占め、広報や無料の広告などにおいても、改憲賛成政党に都合よく運営される仕組みが貫かれています。
また潤沢な資金力を持つ改憲推進勢力が、有料の意見広告を買占めてしまうようなことにも、何ら合理的な歯止めがありません。
4つは、改憲原案を審査、提出する権限をもつ憲法審査会を常設機関として国会に設置することです。
法案は3年後施行としながら、憲法審査会は法成立後、次の国会に設置され、直ちに改憲の議論をおこなう仕組みとなっています。
3年間は改憲原案の「提出・審査」は凍結するといっても、3年間の「調査」そのものが改憲作業の一環であることは明らかです。
まさに九条改憲と地続きの仕組みといわなければなりません。
最後に、日本国憲法は、第九条に代表されるように、日本がおこした侵略戦争の反省の上につくられたものです。
その平和主義は、日本が2度と戦争をする国にはならないと誓った国際的な公約であり、アジア共有の財産です。
この60年、憲法とともに生きてきた多くの国民は、全国6000を超える「九条の会」の広がりに見られるように、改憲をめざす勢力のこのような暴挙に抗して、憲法のめざす平和、人権、民主主義の日本に向かって、力強く前進するでしょう。
本法案の廃案を断固として求め、私の反対討論を終わります。
米軍再編特措法案・本会議反対討論――赤嶺政賢衆議院議員
私は、日本共産党を代表して、米軍再編特措法案に反対の討論を行ないます。
本法案は、「米軍再編」を促進するとして出されたものですが、いまだに再編計画の全容、日本側負担総額、グアム「移転」計画の全容、財政負担の具体的方法など、法案の骨格、基本にかかわる問題が、何ら明らかにされていません。
審議は全く不十分であります。地方公聴会も開かず、関係自治体の意見も聞かず、討論の機会さえ封じて、昨日委員会質疑を打ち切り、採決を強行した政府・与党に対し、断固抗議するものであります。
そもそも「米軍再編」は、アメリカの先制攻撃戦略につき従って、米軍と自衛隊が一体となって海外で戦争できる態勢づくりにほかなりません。
イラク戦争が国連憲章違反の侵略戦争であることは、いまや明白であり、米軍占領の継続が、事態の一層の混乱をつくりだしてきたのであります。
このような米戦略に基づき、司令部から部隊まで一体化し、全国に基地強化を拡大する米軍と自衛隊の再編は、断じて許されません。
第1に、政府は、在沖海兵隊のグアム「移転」を「沖縄の負担軽減のため」と言いますが、これは、グアムに陸・海・空・海兵隊の新たな戦略拠点をつくるという米戦略の一部を担うものにほかなりません。
政府は「在沖海兵隊司令部8000人の『移転』」と説明してきましたが、現地米軍は司令部だけでなく、航空部隊、陸上部隊、後方支援部隊の配備を前提とした計画に着手しているのであります。
このことを政府も認めました。にもかかわらず、政府は名護市辺野古への新基地建設をすすめ、しかも、垂直離着陸機オスプレイの配備の可能性を認めたのであります。
いまや「負担軽減」の口実は、全く成り立たないのであります。
巨額の税金を投入し、沖縄には最新鋭の新基地を、グアムには海兵隊司令部・実戦部隊の新たな拠点をつくってやるなど、言語道断であります。
第2に、法案は、米軍が使用する米国内の軍事施設の建設費用や、我が国から米国への米軍撤退費用を負担するものであります。
沖縄の基地は、米軍占領下に銃剣とブルドーザーで強奪して構築したものであり、この歴史にてらして、米軍撤退費用を負担することは、到底認められません。
しかも、外国軍隊の撤退費用を負担した例は世界のどこにもなく、安保条約・地位協定からも説明できません。憲法の平和原則をふみにじる負担であることは明らかであります。
また、政府は国際協力銀行を通じた出資・融資資金の回収は「アメリカを信じる」としか答弁できず、「真水部分」すなわち直接財政支出は、「これからスキームを協議する」というのであります。矛盾と欠陥に満ちた法案と言わなければなりません。
第3に、政府は、再編による基地強化を受け入れた地方自治体のみを対象に、しかも計画の進捗状況に応じて交付額を増やすという再編交付金を導入しようとしています。
これは、地方をカネの力で分断・懐柔し、基地強化を押しつけるものであり、関係自治体と住民を愚弄するものにほかなりません。
いま沖縄でも本土でも、住民が求めているのは、基地や騒音のない安全なまちであり、危険きわまりない基地再編ではありません。この声を真摯に受け止め、再編計画は撤回し、本法案は廃案にすべきであります。
最後に、安倍内閣が改憲を公然とかかげ、沖縄戦の歴史まで書き換えてすすめようとしている「海外で戦争する国づくり」を、国民・沖縄県民は決して許さないことを強調し、討論を終わります。