奮戦記
【06.12.31】フセイン元大統領処刑で、イラクは“混迷”を脱せるのか
日本では、国会が閉会し年末になって、死刑が執行されるというニュースが伝えられました。
イラクでも、サダム・フセイン元大統領の死刑が、昨日、バグダッドで執行されました。
私は、たいへん複雑な思いで、そのニュースを聞きました。
確かに、彼は独裁者であり、国内のクルド人を化学兵器で攻撃するなど「人道に対する罪」もありました。そして、その裁判と処刑は、イラク人によって行われたといいます。
しかし、それは「大量破壊兵器の存在」と「アルカイダとの関係」(この2つとも実際にはなかった)を口実にしたアメリカ軍による一方的な戦争と占領によって、可能となったのです。
アメリカは、イラクを攻撃するとき国連のお墨付きを必要としましたが、国連はイラクにたいする戦争の是非を問う大議論の末、開戦のお墨付きを与えませんでした。
今日の「朝日新聞」で中東アフリカ総局長の立野純二氏が、次のように書いているのが印象的でした。
――「処刑の手を下したのは確かにイラク人自身だった。だが、その死刑台をしつらえたのは、米軍の有無を言わせぬ武力だったという冷めた史実。そして、独裁の夜明けに訪れたものは、国民同士で殺し合う混乱でしかなかったという幻滅――。」「イラク戦争から3年半。元大統領を事実上葬った米軍は今、『去るも残るも地獄』の苦境にある」。
イラクは、いま、激しい“宗派対立”で、治安状況が改善する見通しはありません。アメリカにとっても泥沼状態です。
昨日も、バグダッドなどで自動車爆弾が爆発し、ロイター通信によると少なくとも計72人が死亡したと言います。……