奮戦記
【04.06.29】これで、ほんとうの「主権移譲」と言えるでしょうか?
なんと、それは、あまりにも突然でした。
CPA(アメリカ主導のイラク占領機関・連合国暫定当局)からイラク暫定政府への「主権移譲」です。
これまで予定していた30日の「主権移譲」を、急きょ前倒しして、28日午前に首都バクダッドで実施したものです。
それは、イラク国民の目には触れない密室のなかでおこなわれました。
出席者はたった6人で、“儀式”はわずか5分間だったそうです。
これで、ほんとうの「主権移譲」と言えるのでしょうか。
じっさいアメリカは、職員2000人という世界最大規模の大使館をCPAが本部としている旧大統領宮殿にそのまま残すそうです。
それに、暫定政府の各省庁に外国人の顧問団(ほとんど米国人)を常駐させる方針です。
しかも暫定政府の実権を握るアラウィ首相は、就任前から米中央情報局(CIA)との深い関係を指摘されている人物です。
同首相は、今月19日に米軍がイラク中部ファルージャの民家を爆撃し女性や子どもなど20人以上を殺害した際、これを「歓迎する」と表明した人です。
最大の問題は、14万人もの米軍が多国籍軍の中核として居座り続けることです。
この米軍は、イラク国民や抵抗勢力への残虐な弾圧や武力攻撃を続けているのです。
パウエル国務長官や多国籍軍のケーシー司令官も、反政府勢力への軍事攻撃を続けるとのべています。
同軍はイラクの安全を維持するのに必要な「あらゆる措置をとる権限」をもつとされています。
占領軍は、米軍指揮下の「多国籍軍」に名前を変えて駐留を続けるのです。
CPAが五月におこなった世論調査でも、92%の国民が米軍を「占領軍」と見なしています。
ですから「暫定政府の成立にしろ、主権移譲の式典にしろ、米国がつくりだした偽の写真以外の何物でもない」(カタールのアッシャルク紙)などと言われているのです。
国連の役割はどうなるのでしょう。
イラクの情勢がきわめて不安定なため、国連職員の本格的なイラク復帰のめどは立っていません。
6月8日採択された国連安保理決議は、主権移譲後、正式な中央政府の選出に至る過程で国連が「主導的役割を果たす」と明記しています。
しかし同時に、その支援を「事情が許せば」「イラク政府の要請に応じて」行うと限定してのべているのです。
アナン国連事務総長は17日、「追加の人員の派遣はしない」と述べ、すでにイラク国外に撤去している国連イラク支援団(UNAMI)の本格的現場復帰はないことを明らかにしています。
米軍をはじめとする多国籍軍を撤退させ、国連中心の復興支援に切りかえ、イラク人自身の手によって民主的に選ばれた政権がつくられることなくして、本格的な主権移譲などありえないのです。