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金融(銀行・保険・証券) (金融消費者保護)

2006年04月25日 第164回 通常国会 財務金融委員会 【350】 - 質問

金融商品取引法案「規制の対象が狭すぎる。被害者を出さない規制が必要だ」佐々木議員批判

 2006年4月25日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、「金融商品取引法案」(投資サービス法案)について質問しました。
 金融商品の勧誘・販売については、高齢者などが生活資金や自宅を失う被害が多発しているため、望まない人への勧誘=「不招請勧誘」の禁止と、消費者の財産・知識・目的などに合わない取引を禁止する「適合性の原則」の徹底が求められています。
 佐々木議員は、これまで不招請勧誘が禁止されてきた取引所金融先物取引について、その規制が外されていることを指摘。これは、業界の圧力に原因があることは明白です。
 不招請勧誘を防ぐには、不招請勧誘禁止をすべてに適用する原則が必要です。
 ところが、今回の法案では「政令で定める」ものに限定されており、佐々木議員は「それ以外は自由に不招請勧誘ができるではないか」と質問。
 金融庁の三國谷総務企画局長は、そのことを事実上認めました。しかし、不招請勧誘を禁止すると新商品の説明など「営業の自由を制限する」などと業界寄りの答弁を繰り返しました。
 佐々木議員は「被害が出てからでは遅すぎる。不招請勧誘の禁止を原則とすべきだ」と批判しました。
 さらに、提案された法案では、銀行の融資と預貯金・保険の一部が対象から外されていると指摘。
 佐々木議員は、過剰融資などの被害が多発してきたことを踏まえ、「今後、金融サービス法をつくる際には入れるべきだ」と主張しました。
 与謝野金融担当大臣は、「規制の枠組みについて、引き続き検討したい」と答えました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、与謝野大臣に、提案された法案の基本的性格を確認したいと思います。
 この法案は、金融被害をなくし被害者を救済すること、そのことを通じて市場の信頼を確保していくというところに重心が、重点があるのか、それとも、法の枠組みというのは証取法を踏襲していることから、あくまでも業法としての整備が中心なのか、どちらに重点が置かれているか、その基本的な性格を確認したいと思います。
○与謝野金融担当大臣 今回の法案においては、販売、勧誘ルールは基本的には利用者が資金の出し手になる場合の保護ルールであり、利用者が資金の受け手になる場合である融資に関する契約は、その性格が異なり、業者に義務づける規制が異なることから、本法案の対象とはしておりません。また、保険については、投資性のある金融商品について早期の法制化に取り組むことが必要との金融審議会第一部会の御指摘を踏まえ、一定の保険を含む投資性の強い金融商品に関する横断的な法制として今回の法案を提出したところでありまして、まずは、今回の法案に盛り込んだ利用者保護ルールの徹底を図ることが重要であると考えております。
○佐々木(憲)委員 私が質問したことと随分ずれた答弁ですね。答弁書が違うんじゃないんですか。
 私は、今回の法案の基本性格というのは、消費者という言葉が一言も入っていないわけでございます。消費者保護ではなくて投資家保護ということになっておって、これは基本的には業法の枠組みの改正という性格を持っている。だから、名称を金融商品取引所法にすべきではないかという意見も出ているわけであります。
 そこで、具体的にお聞きしますけれども、まず、提案されているこの法案の金融商品の範囲であります。
 先ほどからも少し議論がありましたが、平成11年の金融審第一部会の中間整理によりますと、この中には、預貯金、保険、融資、こういうものも当然対象として含まれるべきであるとされていたわけですね。しかし、今回出された法案は、投資性商品のみを対象としているため、例えば、先ほども答弁がありましたが、融資が外されている、それから預貯金、保険の一部も外されている。対象としては当初の考えから見ると大変狭いものになっているわけでありますが、金融審の議論の中で融資が外されたのはいつからか、外せと主張したのは一体だれなのか、この点を明らかにしていただきたい。
○三國谷政府参考人(金融庁総務企画局長) いわゆる横断的な法体系の問題につきましては、過去にもこれまでいろいろな形で検討がなされてきたところでございます。平成11年にもいろいろな形で検討がなされまして、中間整理等の段階での報告、そういったものを受けまして、最初は、金融商品販売法、あるいは集団投資スキームといった形で横断的な保護制度の枠組みができ上がってきたところでございます。
 その後もいろいろな法制度の改正には努めてきているところでございますが、今般、この金融商品取引法につきましては、まずは、投資性のある金融商品につきまして早期の法制化に取り組むということから、昨年の金融審議会第一部会の御指摘を踏まえまして、一定の保険あるいは預金を含めます投資性の強い金融商品に関する横断的な法制として今回の法案の提出をしたところでございます。
 まずは、今回の法案に盛り込んだ利用者保護ルールの徹底を図っていくことが重要であると考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 いや、質問に答えていないんですよ。
 私が聞いたのは、融資というものが金融審の議論の中で外されたのはいつごろからかと。具体的に言いますと、平成11年から12年にかけて行われた議論で外された。だれが主張したか。銀行ではないんですか。
○三國谷政府参考人(金融庁総務企画局長) お答えいたします。
 金融審議会第一部会の中間整理(第二次)というのがございますが、そこに添付されましたホールセール・リーテイルに関するワーキンググループ報告では、融資は含まれないとされているところでございます。
○佐々木(憲)委員 結局、最初の段階で銀行の圧力があって外されたと言わざるを得ない。
 イギリスの場合、融資が金融サービス市場法の規制対象になっていると聞いておりますが、そうですか。
○三國谷政府参考人(金融庁総務企画局長) 融資の一部と承知しております。
○佐々木(憲)委員 融資が含まれているわけであります。今回この法案には最初からこの融資が入っていないわけですね。預金、保険の一部も入っていない。これは重大な欠陥なんです。
 そこで、与謝野大臣にお聞きしますけれども、これはステップだというんですね。ジャンプの段階で本格的な金融サービス法を検討するといいますけれども、その際に、当然、イギリス並みに、預金も保険もそれから融資も全部この対象にする、これを検討するというのは当然だと思いますが、いかがでしょうか。
○与謝野金融担当大臣 例えば、昨年末の金融審議会第一部会報告を読んでみますと、金融商品全般を対象とする、より包括的な規制の枠組みについては、次のように言及がなされております。すなわち、投資サービス法の法制化とその実施状況、各種金融商品の特性、中長期的な金融制度のあり方なども踏まえ、当部会において引き続き精力的に検討を続けていくこととしたい、こういうふうに金融審議会第一部会の報告では書かれておりますが、金融庁としても、当然のごとく、この金融審議会における検討状況を踏まえつつ、金融商品に係る規制の枠組みについて引き続き検討を続けていくことになると考えております。
○佐々木(憲)委員 今度の法案で、融資と一体になった金融商品、融資つきの投資性商品については規制の対象になっているのかどうか。例えば、変額保険と融資を組み合わせて取り扱う場合、その融資は規制の対象となるのか、この点をお聞かせいただきたい。
○三國谷政府参考人(金融庁総務企画局長) 本法案におきましては、融資そのものは規制対象とはなっておりませんが、信用取引のような、金融商品に融資が組み込まれている場合につきましては法案の規制の対象となります。例えば、金融商品の商品性に応じまして、契約締結前の書面交付による仕組みの説明が義務づけられますほか、適合性の原則も適用されることになるところでございます。
○佐々木(憲)委員 融資つきの変額保険などについては、対象になるんでしょうか。
○三國谷政府参考人(金融庁総務企画局長) 変額保険につきましては、これは今回いろいろな規制の対象になるわけでございますが、投資性商品と融資を組み合わせて取り扱う場合につきましては、例えば、金融商品取引を行うことを希望する顧客に対して融資を受けることを強要する行為を禁止するなど、抱き合わせ販売の防止措置を講じることとしております。
 また、御指摘のありました変額保険と融資を組み合わせて取り扱う場合につきましては、抱き合わせ販売の防止措置のほか、保険業法におきまして、保険募集人である銀行等に対し、変額保険の運用状況により顧客が融資の返済に困窮するおそれがあるといったこと、その旨を説明する義務づけが行われているところでございまして、これは保険業法施行規則におきまして、この辺につきまして詳細に規定しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 この法案では、これまでに発生した変額保険の被害者に対してどのような補償が行われることになりますか。
○三國谷政府参考人(金融庁総務企画局長) 補償そのものは基本的に民事の話でございますけれども、今回の法案の中で、この直接の金融商品取引法そのものではございませんが、金融商品販売法につきましても内容の充実を図っているところでございます。
 こういった形で、本法案は、金融商品取引法におけますいろいろな開示ルール、あるいは監督規定の整備、あるいは義務等のほか、そういった民事の面につきましても、全体として利用者保護の拡充を図っているということになっているところでございます。
○佐々木(憲)委員 この被害者を出さないということ、それから被害者に補償するということ、このことが極めて重要であります。
 次に、不招請勧誘の問題についてお聞きします。
 消費者の被害のほとんどが不招請勧誘に端を発しているということです。したがって、まず、一般的、網羅的に不招請勧誘を禁止するということが必要であります。その上で、個別の取引を慎重に検討した上で、実害がないと判断されるときに例外的にその規制を外す、こういうやり方をすべきだと思うわけであります。
 ところが、今度の法案では、適合性原則の遵守をおよそ期待できないような場合に限って禁止している。極めて狭いものになっていると思うんですね。適合性原則の遵守をおよそ期待できないような場合というのは、具体的にどういうものですか。
○三國谷政府参考人(金融庁総務企画局長) 基本的に、不招請勧誘の禁止の対象にするかどうかにつきましては、例えば、レバレッジが高いかどうかといった商品性のほか、やはり、これまでのいろいろな取引に伴います執拗な勧誘でございますとか、利用者の被害の発生という実態、こういったことを考慮いたしまして適用対象を定めることになっていこうかと思います。
 こういった意味で、現在、私ども、一方で政令の道は講じますとともに、現在、不招請勧誘の禁止の対象といたしましては、店頭の金融先物取引、いわゆる外国為替証拠金取引を定めることが適当ではないかと考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 店頭金融先物取引、外国為替証拠金取引、それ以外は適合性の原則の遵守を期待できる、こういうことになるわけですね。そうすると、不招請勧誘の禁止は適用されない、不招請勧誘は自由にできる、こういうことになりますね。
○三國谷政府参考人(金融庁総務企画局長) 不招請勧誘の禁止につきましては、さまざまな御意見があることは承知しておりますが、一方で、不招請勧誘の禁止につきましては、例えば、新たな金融商品・サービスにつきまして顧客の説明機会が限られてしまうなどの、そういった自由を制限する面もございます。
 このため、不招請勧誘禁止の対象につきましては、昨年度の金融審議会の部会の報告では、この報告の中では「適合性原則の遵守をおよそ期待できないような場合」という形になっているところでございまして、先ほども申し上げましたように、レバレッジが高いことなどの商品性の問題、あるいは執拗な勧誘や利用者の被害の発生という実態等を勘案して定めていくことを考えているわけでございます。なお、これ以外にも、再勧誘の禁止につきましては、いわゆる市場の外国為替証拠金取引等も定めることを考えているところでございます。
 それ以外にも、今回、各種のいろいろな利用者保護ルールのための規定の整備につきましては、いろいろなところで努めているところでございます。
○佐々木(憲)委員 いろいろ言いましたけれども、完全に発想が逆転しているわけです。つまり、不招請勧誘というのは、もともと基本的に禁止すべきなんですよ。そして、その禁止の必要のないものについては慎重に外すということはあり得る。しかし、今の説明は、不招請勧誘を禁止するのはこれですよ、それ以外は自由ですよ、こうなるわけです。
 結局、お聞きしますと、店頭金融先物取引は不招請勧誘の対象です、それだけだ。それから、再勧誘の禁止は取引所金融先物取引だけでございますと。それ以外は何の規定もないんですから。つまり、不招請勧誘は自由に行われる、行って結構です、こういう仕組みになっているわけですね。
○三國谷政府参考人(金融庁総務企画局長) まず、基本的な出発点といたしまして、適合性の原則でございますが、これは、取引の勧誘に際しまして、当事者の知識、経験及び財産の状況に照らしまして不適当と認められる勧誘を行ってはならない、そういう規定でございます。
 したがいまして、この適合性の原則、これが平成四年の改正において証券取引法に定められたものでございますが、この規定が適用された上で、さらに、そういったレバレッジとか商品性の実態あるいは被害の実態、そういったものを勘案しながら、再勧誘の禁止あるいは不招請勧誘の禁止といった措置も講じることができる制度としているところでございます。
○佐々木(憲)委員 いや、質問に答えてください。
 政令で定める特定の商品、先ほど言いましたように、不招請勧誘禁止の対象となるもの、それから再勧誘禁止の対象となるもの、それ以外は禁止されないんですから、それは自由ですね。そこを聞いているんですよ、不招請勧誘。
○三國谷政府参考人(金融庁総務企画局長) 適合性原則につきましては、一般的にかかります。それで、この適合性原則というのは……(佐々木(憲)委員「不招請勧誘の禁止」と呼ぶ)不招請勧誘の禁止につきましては、政令で対象を指定することとしておりますが、金融商品取引一般につきまして適合性の原則というものがかかるということにつきましては、この法律としてしっかり定めているところでございます。
○佐々木(憲)委員 適合性の原則を定めるのは当然です。しかし、不招請勧誘の対象となるものを限定すればそれ以外のものは自由にできる、不招請勧誘は自由にできるということになるじゃないですか。そういう仕組みになっているということなんですよ。したがって、ほとんど消費者を守ることにならないんですよ、これでは。フリーパスなんです。そして、被害が出たときに、初めてその被害の実態がどんなに大変なものなのかと調査をやり、そしてこれはまずいなというものだけはつけ加えていく、こういうシステムになっているんです。
 では、その被害を受けた人の被害が補償されるのか。そういう補償はあるんですか。
○三國谷政府参考人(金融庁総務企画局長) いわゆる民事上の損害賠償の問題につきましては、先ほど申し上げましたとおり、金融商品販売法の所要の手当てをしているところでございます。
 次に、不招請勧誘の禁止等でございますけれども、私ども、今回、利用者被害の実態等にかんがみまして、こういった金融商品取引法の不招請勧誘の禁止規定対象に追加すべき商品あるいはサービスが出てきた場合には、政令において機動的に指定できるような、そういった制度として御提案申し上げているところでございます。
○佐々木(憲)委員 被害の補償がされるのかと聞いているんですよ。全然答えていないじゃないですか。
 被害が出てから指定しますというわけでしょう。これじゃだめなんですよ。しかも、取引所金融先物取引については、今まではこれも含めて金融先物取引については不招請勧誘の禁止の対象であった。今度はそれを外して再勧誘の禁止のみと。こういう形で緩めているわけですよ。これでは後退しているんです、これは。
 そういうことからいうと、この仕組み全体が、私は根本的に疑問を持っております。さらにこの点については議論をしていきたい。
 以上で終わります。

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